2023.10.31
和歌山大学
和歌山大学の観光学部はドームシアターを保有している日本でも数少ない学部だ。直径5mのドームスクリーンに専用設計された魚眼レンズを装着した4Kプロジェクターにより、360度の視界へコンテンツを投影。まさに現地でしか得られない人間が認識できる視覚を最大限に体験できるというわけだ。
観光学部学舎
「例えば、ガイドブックで見た写真の風景を探して実際にその土地で同じ風景を体験します。次にこのドームシアターで同じ風景を映すと、その人は『あの場所と同じですね』と答えてくれます」と語る尾久土氏。
実際に、南米チリでの皆既日食を映像コンテンツにしたものを見ると、雑誌やテレビでは分からなかった、日が遮られる様子が実際にそこで起こっているかのように体験できる。また、観光地を歩きながら、頭上を飛行機が通りすぎるシーンなどは、思わず見上げてしまうほどの迫力のある映像が楽しめる。「つまり、『見る』だけの観光であれば、XRコンテンツが放映可能なドームシアターに置き換わる可能性さえあるのです」と尾久土氏はXRコンテンツへの手応えを語る。そしてこのコンテンツの編集や投影に使われているのが、HPのワークステーションとなる。
半天球型のドームシアター。XRコンテンツと組み合わせると、これまでにない体験が得られる
和歌山大学が今回導入したのは「HP Z4 G5 Workstation」だ。プロセッサーに最新のSapphire Rapidsをベースとするインテル® Xeon® w3 2425プロセッサーを搭載し、メインメモリは64GB、ストレージには1TBのHP Z Turbo Driveを採用。グラフィックスにはNVIDIA RTX A6000を搭載した充実のモデルだ。「ドームシアターに投影すると、サイズによっては4K(前半球)+4K(後半球)でも粗く見えてしまいます。この環境で人間の視力により粒子感が無くなるには20Kが必要です。とはいえ、それは現在の技術では難しいので、当面の目標は8K+8Kの計16Kであれば、不満を感じることはないと思います。しかし、この超高解像度コンテンツを編集するのは並大抵のコンピューターでは難しいと思います」と尾久土氏。
観光学部が所有していた以前のコンピューターでは、超高解像度編集を行う際にカクツキや、レンダリング時の負荷が高く、不便を強いられていたという。「現在はプロジェクターの関係で4K+4Kの編集が多かったのですが、それでも編集時のスムーズなプレビューや、レンダリングは非常に重い印象でした。今回、最新のインテルXeon w3-2425搭載のHP Z4 G5 Workstationを導入したところ、まったく問題なくプレビューでき、レンダリングに至ってはコンテンツの長さにもよりますが、体感で半分の時間で完了することができています」と導入の手応えを語るのは、実際にXRコンテンツの編集やドームシアターのオペレーションをおこなっている和歌山大学 観光学部 観光実践教育サポートオフィス 教育研究支援員 中山 文恵氏(以降、中山氏)だ。
ドームシアター向けのコンテンツ撮影に最適な360度カメラで撮影した映像の編集には、主にAdobe Aftereffectなどが用いられるが、負荷の高い作業を行っても以前の環境に比べてかなり快適になったという。「また、中山氏は大学では6時間勤務となるため、これまでは帰り時間を考慮してレンダリングをセットし、結果を見るのは翌日というタイムスケジュールでした。しかし、HP Z4 G5Workstationの場合、これまで8時間かかっていたものが4時間で終わるので、その日のうちに結果を見ることができるようになりました」と尾久土氏も導入効果に満足げだ。
レンダリングではプロセッサーパワーもかなり使用するが、その恩恵も十分に体験できているという。「以前のコンピューターのプロセッサーと比較して、レンダリングが高速化しているのはCPUによるところが大きいと思います。
また、編集に使っているソフトウェアの起動や一部のエフェクト処理はCPUに依存しているので、スムーズな編集作業もそのおかげだと思います。映像コンテンツなのでGPUにばかり目がいきがちですが、パフォーマンス全体の底上げにプロセッサーが大きく影響していることがよく理解できました」と中山氏は語る。
ドームシアター向けのXRコンテンツ制作に使われているHP Z4 G5 Workstation
「XRコンテンツの制作・編集だけでなく、ドームシアターの投影システムにもHPのワークステーションを使っています。以前、オープンキャンパスの途中で故障が発生したことがあったのですが、すぐに連絡したところ、保証期間中であったので無償で即日対応修理してくれました。おかげで次の日には通常通りにオープンキャンパスを続けることができてとてもありがたかったです」と尾久土氏は目を細める。
こうした手厚いサポートによる信頼から、今回も数多くの選択肢の中からHPワークステーションを指名した和歌山大学。「日本には数多くのプラネタリウムがあります。それらの施設と連携して、ドームシアターによる地域創生の実現を進めていきたいですね。現在、ドームシアターにもLED化の波が訪れています。LED化が進むと先に述べた8K+8Kによる超高精細なXRコンテンツの描画も夢ではなくなり、多くの人々に素晴らしい体験を届けられるようになると確信しています」と尾久土氏は将来の展望を語る。
観光学部によるXRコンテンツの取り組みが、いよいよ社会実装へ向けて動き始めている和歌山大学。「ドームシアターの体験が、人間の視野と変わらないことが分かってから、スポーツ観戦にも向いていることが分かってきました。様々な分野に展開できるテクノロジーになるので、今後も研究を続けたいと思います」と尾久土氏は次の施策に向けての熱意も語ってくれた。HPはこれからも和歌山大学をサポートしていく。
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記事事項は2023年10月現在のものです。
HP Z4 G5 Workstation
インテル® Xeon® w3-2425 プロセッサー(3.0GHz 最大4.4GHz / 6コア / 15MB / 4400MHz)
64GB DDR5 SDRAM(4800MHz / ECC / Registered / 16GBx4)
1TB HP Z Turbo Drive(システムドライブ)
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