2024.06.28
今や待ったなしと言える医師の働き方改革の実態は? ワークライフバランスや医療現場のあり方はどう変わる?医療ニーズを満たすDXとはどのようなものなのか? 机上の議論を超え現場に足を運びリアルな現状を描きます。今回は、山本院長にお話を伺い、地域密着の医療に情熱を燃やす開業医が構築するリモートシステムにスポットをあて、株式会社 日本HPが発売した「HP Anyware」がもたらした現場の進化を紹介します。
※本記事はRadFan2024年7月号にて掲載されたものです。
いむれ内科クリニック 院長 山本 景三先生
いむれ内科クリニック
院長:山本景三
住所:愛知県豊橋市飯村北5-2-15
TEL:0532-69-5678
いむれ内科クリニックは2011年2月愛知県豊橋市に開院しました。院長の山本景三先生はかつて豊橋市民病院の感染症内科勤務医でしたが、幅広い病気と向き合い地域に密着した医療を行いたいという想いからこの地に開業されました。クリニックの名前に地名の「飯村(いむれ)」が使われていることからも、地域の皆様に親しまれる身近なかかりつけ医を目指すという先生の熱い想いが伝わります。また感染症内科・呼吸器内科・アレルギー科の専門家として培った知識と経験をもとに高度で専門的な医療サービスの提供を行っています。2020年からCOVID-19パンデミックに伴い発熱外来も積極的に実施されています。
―― リモートシステムを導入されたきっかけを教えて下さい。
開業前にいろいろな診療所を見学させて頂いた時です。先生方みなさん診察室の机の下にずらっとパソコンを置いてあるんです。蹴っ飛ばしそうだったり埃が溜まったりと安全面や衛生面に問題がありそうでした。ファンの騒音も大きく診察室で患者さんと向き合う時にはどうなのかな、と思いました。モニター、キーボード、マウスだけを診察室に置き、パソコン本体は離れた場所に置けないかと思案したことがきっかけです。最初はKVMエクステンダー1)を検討しましたが、それほど長い距離がとれず断念しました。次にELSA VIXEL2)というPCoIPベースのゼロクライアント端末を使う機会を得ました。1Gbpsの院内ネットワークを介して手持ちのパソコンとつないでみたら非常に良い操作感で使えた、これがリモート導入のきっかけでした。
1) KVMエクステンダー:コンピュータ本体とモニター・キーボード・マウスとの距離を拡げる延長接続機器
2) ELSA VIXEL:(株)エルザジャパンが提供するCPU、HDD、OSを持たないゼロクライアント端末。現在HP社が取り扱っている。
―― リモート環境構築にあたって留意されたことを教えて下さい。
まずはレントゲンの画質です。ロスレス伝送ができることが最も重要です。もうひとつはセキュリティです。遠隔操作が可能になれば場所を選ばずアクセスしたい欲求が出てきますが、院外で使う端末にデータを残すことは非常に危険なので端末内にデータを置かない仕組みが必要です。ここで問題になるのが、転送時間です。サーバーから画像をロスレスで転送しなければなりませんから、遅延があるシステムは医療のリモート運用には適しません。最近は動画も扱うようになってきました(図1)。
図1:ロスレスで転送を可能にしている。動画で左右のモニターにおいてほぼ同時の動きがわかる。
―― 重いデータでも遅延なく取り回しできるかどうかが大切ということですね。
その通りです。遅延がないことが非常に重要なポイントです。現在使っているリモートシステムHP Anywareは、ロスレス画像の表示はもちろん動画表示においても遅延を感じることがまったくありません。画質も非常に綺麗で問題なく使えています。
―― HP Anywareの導入で先生のお仕事はどのように変わりましたか?
診療がスムーズに進むようになりました。コンピュータを別場所に置くことで診察室がすっきり清潔になりますし、騒音がないので患者さんに意識を集中できます。また院内にサーバーを構築してカルテやレセプトの保管管理を行っているのですが(図2)、これまではサーバーの管理を自分で行ってきました。しかし、昨今のサイバーセキュリティ問題への対応は個人の範疇を超えています。HP Anyware導入でしっかりしたセキュリティを確保できるようになったので、安心して診療に取り組めるようになりました。
図2:セキュリティ強化のため、院長自らネットワークを設計し構築した。
―― そのほかHP Anywareをお使いになったメリットはありますか?
診療報酬のレセプトチェックですね。チェックは私自身で行うのですが、自宅のネットワークを介して院内システムにアクセスしています(図3)。リフレッシュした気持ちで自分のタイミングで作業を行えるのは、とてもありがたい。業務の効率が上がりストレスが減ったことを実感しています。これまでゼロクライアント端末導入といえば大規模病院の案件だったかもしれませんが、これからは医師一人ひとりの働き方改革とワークライフバランスも重要な観点になるでしょう。開業医においてもリモート環境構築の意義は高まってくるのではないでしょうか。
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図3:電子カルテや画像システムのサーバーはそれぞれ別のネットワーク(IPサブネット)にある。通常は各サーバーに実装されたリモートワークステーションカード(RWC)やゼロクライアントは、そのサーバーと同じIPサブネットに設置するところだが、当院では別のPCoIP専用IPサブネットを割り当てて全システムのPCoIP機器をここに設置している(緑枠)。これにより(面倒なネットワーク設定なしに)全PCoIP機器をManagement Consoleで統合管理したり、自宅とクリニックの間でフレッツ光ネクストのNGN網内折り返し(フレッツv6オプション)による広帯域低遅延のレイヤー2VPN接続ができる。
―― 今後の展望をお聞かせください。
すぐに実現できるかどうかは別として、開業医の立場として考えられるのは往診です。無線ネットワークを介してカルテや画像にアクセスする。外出時の緊急対応から感染症対策や在宅医療まで、リモートの強みを存分に発揮できるはずです。
―― 日本HPさんへご意見やご要望はありますでしょうか?
開業当初から苦労して自前でリモート環境を造ってきました。逆に言えば、リモート環境構築は開業医にとってさまざまなメリットを秘めているということです。往診に積極的な先生であれば尚更でしょう。強固なセキュリティ対策のもと、いつでもどこでも、安心してよりよい医療を実現できる環境を日本HPさんから提案していって欲しいですね。HP Anywareで簡単にそれを実現できるのですから開業医に対して積極的にアプローチしていただきたいです。例えば、ベンダー提供のシステムに最初からHP Anywareを標準で組み込むとか、システム構築のアドバイザーやコンサルタント人材を地域に育成するとか、気軽にリモートにチャレンジしたくなる環境整備をしていただければありがたいです。プライマリーケアの現場にリモートの有用性と価値がさらに拡がってゆくのではないでしょうか。
医療のリモートシステムにおける最先端セキュリティ技術
令和3年5月総務省からリモートワークのセキュリティに関するガイドライン(第5版)が示されました。このガイドラインのなかで次世代セキュリティ対策ソフトとして紹介されたEDR(Endpoint Detection and Response)を製品実装化したのが、日本HPの「HP Wolf Security」です。「HP Wolf Security」は、EDRのキモであるエンドポイント(ネットワークを介してつながる端末デバイス・コンピュータ・サーバなど)のリアルタイム監視からAIによる問題検知と対策をユーザの手を煩わせることなく自動実行する高度なセキュリティソフトです。日本HPのワークステーションには「HP Wolf Security」が標準搭載されているため安心できるリモート環境を構築できます。
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