2023.10.31
和歌山大学
観光は非日常を味わったり、これまでになかった体験ができたりと、人間にとってかけがえのない時間を提供してくれる。和歌山大学ではそんな観光を研究することで、資源としての観光の発展や、持続可能な地域づくりに役立てようと、日々研究を重ねている。その中で現在注目されているのがXRを使ったドームシアター向けのコンテンツで、その研究にHPのワークステーションが活用されているという。どのような取り組みか、直接話を伺ってきたので紹介しよう。
和歌山大学 理事 副学長 学術博士
尾久土 正己 氏
和歌山大学 観光学部 観光実践教育サポートオフィス 教育研究支援員
中山 文恵 氏
和歌山大学は、和歌山県和歌山市に本部を置く日本の国立大学で、1922年に創立され、1949年に和歌山県唯一の国立大学として設立された。現在では、教育学部、経済学部、システム工学部、観光学部、そして社会インフォマティクス学環の四学部一学環からなる近畿南部の中核をなす総合大学として、多くの優れた人材を輩出し続けている。
「私が所属している観光学部は、観光地域づくりを要請する全国初となる専門職大学院『観光学科研究科観光地域マネジメント専攻』を創設するなど、これからの日本の観光学研究の中心を担う人材育成に取り組んでいます」と語るのは和歌山大学 理事 副学長を務める学術博士 尾久土 正己氏(以降、尾久土氏)だ。
観光学部が扱う観光はホテルや旅行会社といった従来の観光業だけでなく、観光に関連する幅広い研究をおこなっている。「以前は旅行会社が集客して、現地へ案内して観光をするといった誘客送客がメインでしたが、情報化社会が進むにつれてスマートフォンで行き先や宿泊施設を自分で選ぶようになりました。このような時代で大切なことは受け入れる側で観光地をいかにプロデュースできるかなのです」と尾久土氏は語る。
さらに、これからの観光地には持続可能な視点も必要だと尾久土氏は力説する。「特定の場所やホテルだけが注目され、周囲には観光客が来ないといった状況は持続可能とはいえません。逆に現在の京都のように誘客はとても成功している一方で、マナーの悪い観光客の増加、交通渋滞や地価の高騰などで地域住民にとって住みづらい地域になってしまう、いわゆるオーバーツーリズムも問題です」(尾久土氏)。
北海道から沖縄まで、和歌山だけでなく、すべての地域を研究対象としている観光学部が今盛んに取り組んでいるのはIT活用による地域創生だ。「今の人々は観光先について、SNSなどを使って積極的に情報を集めています。京都、奈良といった観光地はもちろんなのですが、SNSでは何がきっかけで注目を浴びるのか分からないところもあります。地域の人にとっては当たり前の光景が、海外の人からみたらものすごく美しい風景に見え、大勢の観光客が押し寄せるといった実例もたくさんあります。そうしたユニークな文化を、観光などをきっかけとした地域創生に使えないかということでITの活用が注目を浴びるようになりました」と尾久土氏。その場に行って感動を得る前に、現地を体験する。いわゆる「Sightseeing」を、観光地に行かずとも体感できれば、直接そこへ行けない人に対しても良好なサービスが提供できるというわけだ。そのために活用されているのがXRテクノロジーだ。
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