2024.1.15

これからの自衛隊には遠隔医療が必要になる

映像配信がもたらす自衛隊災害時医療と遠隔支援の未来形

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2023年、地震や記録的豪雨など日本列島は多くの自然災害に見舞われた。自衛隊の災害派遣件数は年間約400件(令和4年)といわれ、その8割近くを急患輸送に占められているという。その実情を踏まえ医師の観点から、遠隔医療支援を目的とした映像配信システムの可能性について、全国各地の自衛隊病院で医官として従事した前村 誠氏に聞いた。(取材協力:医療法人白翔会 千葉白井病院)

※本記事は自衛隊情報誌タイユー2023年12月号にて掲載されたものです。

急患受け入れ準偏を効率化する映像配信への理解

都心から30キロメートルの距離にあり、千葉県の北西部に位置する白井市。都市と住宅が調和する白井市で、地域の医療を担う千葉白井病院は救急指定医療機関として診療科目24科の総合病院である。土・日診療を掲げていることから急患の受け入れも多く、前村 誠氏は病院長として緊急時の医療体制維持のために陣頭で指揮してきた。地域医療の一層の向上と、救急患者への対応として、消防(救急救命士)と地域の医療機関等が連携し患者の適切な搬送先を決定する、遠隔医療において映像配信システムの有用性にも理解を示す方である。

前村 誠(まえむら まこと)
医師。専門分野は消化器外科。日本外科学会専門医。日本消化器外科学会認定医。1984年防衛医科大学校卒業。防衛医大病院、自衛隊横須賀病院、自衛隊阪神病院等での勤務を経て、2019年より医療法人社団白翔会 千葉白井病院 病院長。

救急車内で要救助者の傷病状態を確認できるメリット

今回、前村 誠氏にモニタリングしていただいた映像配信システムと映像受信用ワークステーションは医師不足解消と救急患者の適切な受け入れ態勢強化を目的として現在、全国の各自治体、医療機関と消防署による実証実験が行われているものだ。救急搬送時に地域の二次救急病院、三次救急病院が連携し、高画質な映像を短遅延で共有、患者の適切な搬送先を決定する。ウェアラブルカメラ、360°カメラを用い患者の受け入れ準備の時間短縮や迅速な医療処置など高度化が図られた。

「医療従事者の不足、医療過疎地の増加が不安視される昨今、問題解消の方策の1つである遠隔医療は、通信システムが整備され、関係機関の連携が一層進むと救急医療体制の保持、社会基盤の強化に大いに役立つと思います。私が感じた実用性では、救急搬送を受け入れる医療機関が、鮮明な動画で急患の病態を直接確認できることで、受け入れ準備をスムーズにすることができるようになると思います。HPのワークステーションで見る映像はかなり鮮明なので、ウェアラブルカメラを装着した救命士が気管挿管などを実施できるようになり、その処置に対しても配信された映像を見て医師が指示、アドバイスを送ることもできます。搬送中の救命士の負荷軽減も図れることができるでしょうし、要救助者のリアルな状態を把握できるメリットは大きいですね。(前村氏)」

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