2023.12.14
2023年11月16日、東京ビッグサイトで「Adobe MAX Japan 2023」が開催されました。このイベントは「クリエイターの祭典」として知られ、グラフィックデザイン、写真、Web制作、UI/UXデザイン、映像制作、3D制作などに携わるクリエイター、そして、それらを目指す層を対象とする日本最大級のクリエイティブイベントです。10月に開催された米国でのアドビ本社開催のユーザー向け年次イベントで披露された最新情報の日本バージョンとして位置づけられています。
クリエイター支援という意味では、ハードウェアも重要な要素です。プロセッサー大手のインテルは、このイベントのダイヤモンドスポンサーとしてイベントをサポート、日本HPもインテルのパートナーとして、クリエイティブ作業の心強いサポートを約束するパワフルな各種のワークステーションを展示スペースで紹介しました。
約3,600名のクリエイターが集結し、クリエイター同士がつながる1日として開催されたAdobe MAX Japan 2023ですが、その基調講演では同社のデザインおよび新興製品担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CSO(最高戦略責任者)スコット・ベルスキー氏が登壇、Adobe Fireflyのアップデートなど、生成AIがクリエイティブにもたらす新しい当たり前の数々を披露しました。
アドビ、デザインおよび新興製品担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CSO(最高戦略責任者)スコット・ベルスキー氏
ベルスキー氏は、近い将来、マーケッターとクリエイターのそれぞれの役割が再編成されるときが確実にやってくると断言します。そして、これからのクリエイティブの世界がコラボレーションのためのハイブリッドデザインに移行していくことを示唆しました。これからのクリエイターはマーケティングも視野に入れるべきだし、マーケッターもクリエイティブな作業を厭わないようにしなければならないということです。ベルスキー氏は「十分に進歩した技術は魔法と区別がつかない」というアーサー・C・クラークの名言をひき、アドビの提供する生成AIが、まさに現実としてクリエイティブにもたらす魔法と区別がつかない技術の数々を披露しました。
基調講演後の記者会見で、ベルスキー氏は、クリエイティブに参加できる人を増やすために、そのプロフェッショナルではない人がその分野に参加することが求められるようになると解説しました。その一方で、プロはプロとして、自分の専門分野外での創造が必要とされているとも。仮に、役割は分担しているとしても、ミクストメディア展開によって、クリエイターにはあらゆるスキルが求められるようになるということです。
もちろん、そこには特定分野のクリエイターなどの専門家から、別のクリエイターが仕事を奪うことになる懸念があるかもしれません。ベルスキー氏は、クリエイティブのプロがやっていることの半分は、実はやりたくない仕事であるとし、その時間を使って本当は新しいことを考えたい、時間がかかる繰り返しの作業を自動化したいと思っているといいます。こうした可能性の模索の中で、マーケティングの改善が見込めるはずだと同氏。企業がアイディア指向になれば、もっとたくさんの人を雇用できるようになるし、今、エンジニアの独創性、ポテンシャルが拡大しているのはそのおかげであり、クリエイターも同様で、採用が増え、仕事がなくなることはないといいます。
つまり、これからの世の中で重要視されるのは生産性よりもクリエイティビティだというのがベルスキー氏の考え方です。効果的なマーケティング、クリエイティブに自分を表現することが、今よりもずっと高く評価されるようになるのです。
アドビはこれまで、クリエイターを支援するさまざまなクリエイティブツールを提供してきましたが、これからは、ビジネスパーソンすべてにこれらのツールを提供するようになると同氏は宣言しました。その支援で、あらゆるビジネスパーソンは最高のプレゼンテーションができるようになります。生産性はコンピューターに任せればいいと同氏は断言します。
今、アドビのAIソリューションは、そのほとんどがクラウドベースです。でも、おそかれはやかれ、それらのソリューションはローカルコンピュータベースでも使えるようになるとベルスキー氏はいいます。
あるいは、ユーザーのリクエストで、クラウドとローカルを選択できるようになり、さらに、ローコストで経済的なアクションをローカルモデルで行えるようになることで、AIはローカルとクラウドのハイブリッドとなるはずだと同氏。そしてそれは、企業にとってのトータルコストとパフォーマンスの改善を実現する手段としても有効です。
人はもっとクリエイティブにならなければならないし、それをアドビはサポートしたいとベルスキー氏は言っています。これからのアドビによるソリューションは、ベルスキー氏がいうように、ビジネスパーソンすべてがクリエイターとなり、生産性や効率の面はコンピューターに任せればいいという世界観が、さらに前面に出てくるのでしょう。
アドビのような企業と同様に、インテルもまた、クリエイター支援を全面的に推進してきた企業として知られています。今回のイベントでも、同社はダイヤモンドスポンサーという最高位の立場でアドビのイベントをサポートしています。
こうしたイベント参加をする一方で、インテルは『インテル® Blue Carpet Project』と称するクリエイター支援の施策を継続しています。クリエイションとテクノロジーの関係がますます密接になっていく中で、インテルが創作活動と最新テクノロジーの橋渡しをすることで、クリエイティブ・シーン全体を底上げし、クリエイティブの最前線で活躍するクリエイターが主役になれる機会を創出、そこから生み出されていくコンテンツがより多くの人々に届くことを支援していくプロジェクトです。具体的には、さまざまなプラットフォームや創作ジャンルで各クリエイターの新たなチャレンジを支援します。
展示会場ではさまざまなステージで専門セミナーが実施された