ウィズコロナ時代のハイブリッドワークで主に使われるのはノート型のモバイルPCだが、デスクトップPCと比べて処理性能に劣ると思われがちだ。しかし、そうした“常識”は過去のもとなりつつある。革新をもたらしたのは、インテルの第12世代インテルCoreプロセッサである。新時代のPCと働き方について、IT機器関連のレビュー／評論で知られるビジネス書作家の戸田 覚氏が、インテルの佐近 清志氏、日本マイクロソフトの仲西 和彦氏、そして日本HPの村上 信武氏に聞いた。

※本記事は日経ビジネスに掲載されたコンテンツを転載したものです

ビジネス書作家
株式会社アバンギャルド 代表取締役
株式会社戸田覚事務所 代表取締役
戸田 覚氏

インテル株式会社
セールス & マーケティンググループ
ビジネスクライアント・テクニカル・セールス・スペシャリスト
佐近 清志 氏

日本マイクロソフト株式会社
デバイスパートナーソリューション事業本部
マーケティング本部
Commercial Windows戦略部長
仲西 和彦 氏

株式会社 日本HP
クライアントビジネス本部
CMITビジネス企画部 部長
村上 信武 氏

「ペルソナ」の発想に基づいたプロセッサ開発

戸田：ここ数年、モバイルPCの売れ行きが爆発的に延びており、もはやPCのスタンダードになったといって過言ではありません。軽量化やバッテリーの長時間化など、様々な要因があると思いますが、私が最も驚いているのが処理性能の向上です。インテルの第12世代以降のプロセッサではCPUパワーが飛躍的に向上した印象がありますが、背景にはどのような理由があるのでしょうか。

佐近：一般的な理由として新しいIntel 7プロセス採用による微細化が挙げられますが、加えて大きな能力向上をもたらしたのがアーキテクチャの変更です。第11世代までのインテルCoreプロセッサは、同タイプのコアを複数搭載していました。これに対して第12世代以降は、高性能なPコアと高効率（省電力）なEコアという異なるタイプのコアを組み合わせたハイブリッドアーキテクチャによって、パフォーマンスを最大限に引き出します。

戸田：なるほど。私も第12世代インテルCoreプロセッサを搭載したモバイルPCを仕事で使用していますが、4K動画の編集も普通に行うことができます。これは5年くらい前なら絶対に考えられなかったことです。このあたりは、モバイルPCに対するユーザーのニーズに応えるために、CPUの増強を図ってきたという側面があるのでしょうか。

佐近：私どもはプロセッサの設計開発に際して、数年前から「ペルソナ」という発想を取り入れてきました。簡単に言えば、人それぞれの職種や働き方に合ったPCを利用できるようにすることで、業務効率を最大化するというものです。結果論でありますが、コロナ禍で在宅勤務が拡大する中でこのペルソナの考え方に沿ったPCの需要が加速的に増大し、私どもの戦略と合致したといえるかもしれません。

AIチップ搭載でグラフィック機能が大幅強化

戸田：コロナ禍が始まったころ、「打ち合わせをWeb会議でやりませんか」と呼びかけても、「自宅のモバイルPCでは処理負荷が重くて無理です」と断られた相手が何人かいました。同じような場面に直面した人は少なくないでしょう。

佐近：確かに Teams のWeb会議で参加者が顔を見合わせながら PowerPoint の画面を共有し、プレゼンテーションを行うといったシーンを考えると、それなりのCPUパワーを備えたPCが必要です。さらに Power BI を使って本格的なデータ分析を行ったり、戸田さんのように4K動画の編集を行ったりする人にとっては、より大きな処理性能が求められることになります。

一方で、日常業務では Word や Excel が使えれば十分、コミュニケーションする際もチャットがほとんどという人もいます。ウィズコロナの時代でハイブリッドワークへの移行が進み、まさにPCがオフィスとなった中、こうしたペルソナを意識しながらPCを選択する企業が確実に増えていることを実感しています。

戸田：ハイブリッドアーキテクチャのほかに、第12世代インテルCoreプロセッサにはどのような特徴がありますか。

佐近：内蔵グラフィックス機能が、最新のAIアクセラレータやイメージング・ユニットにより大幅に強化されました。例えば、在宅環境からWeb会議を行う際に「背景をぼかすことができなくて恥ずかしい」という声が多く聞かれましたが、第12世代インテルCoreプロセッサを搭載したPCでは、背景ぼかしのような画像補整のほかノイズキャンセルなども余裕で行うことができます。

戸田：ビジネス向けのパソコンに注目の機能「インテルvProプラットフォーム」についてもご説明をお願いします。

佐近：こちらは、様々な場所で使われているPCのセキュリティを担保し、管理性を向上する仕組みとして、特にハイブリッドワークを推進していく上で必須のプラットフォームとなっています。