2024.03.25
マイクロソフトは、企業のAI導入を支援する様々な製品やサービスを提供しています。その中核となっているのがCopilot製品群です。開発者やナレッジワーカー、業務部門、セキュリティ担当者など様々な業務向けCopilotを提供し、仕事のやり方を変えていこうとしています。マイクロソフトがCopilotによってどのような変化を起こそうとしているのか、その戦略を検証します。
フリーランスライター:三浦 優子
出典:2023年12月13日開催 Microsoft Ignite Japan広報配付資料より
マイクロソフトは、企業のAI環境を整えるために様々なAIソリューションを提供しています。企業が独自にAIソリューションを構築するための基盤を開発するためのもの、アプリケーションに組み込んで提供することで導入しやすいものなど多岐にわたります。
その中で「Copilot」は、アプリケーションやサービスに組み込んで提供される導入しやすい製品群です。業務に合わせ複数のCopilotが用意されています。どんなCopilot製品があるのかは後述しますが、マイクロソフトでは各業務に特化したCopilotによって、短期間に比較的容易にAIを導入することを目指しています。マイクロソフトのCopilotは、手軽にAIを導入するために用意された、マイクロソフトのAI戦略の中核製品です。
ちなみに、日本語では馴染みが薄い単語であるCopilotという単語ですが、日本語にすると「副操縦士」を意味します。「主役はあくまでも人間で、AIは人間をサポートするという意味でAIサービスに副操縦士を意味するCopilotと命名しました」とマイクロソフトでは説明しています。Copilotのロゴマークも、人間とAIが握手をしている様子をイメージして決定したそうです。
2023年12月に開催された「Microsoft Ignite Japan」の基調講演のタイトルは、「Microsoft Copilot で実現する AI トランスフォーメーション」でした。この講演で、日本マイクロソフトの代表取締役社長である津坂美樹氏は、「日本マイクロソフトは、あなたの“Copilot”として成長を支えます」とアピールしました。製品としてのCopilotと、日本マイクロソフトが企業や開発者のCopilotとして支えていきたいという狙いを持っての発言でした。
さらに、「以前行った調査では、7割の人がルーティンとなっている仕事をできるだけAIに任せたいと考えているという調査結果が出ました。実際にCopilotを導入すると、77%の人がCopilotは業務に不可欠と答えています。私自身も、数ヶ月、毎日Copilotを利用し、私にとっては100%ないと困ると感じるものとなっています」と自身がCopilotの有用性を感じていることをアピールしました。
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出典:2023年12月13日開催 Microsoft Ignite Japan広報配付資料より
それではCopilotとしてどんな製品が提供されているのかを紹介していきましょう。働く人の生産性向上のために全方位でCopilotが提供されています。
最も有名なのが「Copilot for Microsoft 365」です。多くの企業で日常的に利用されているOfficeアプリケーションにCopilotを組み込むことで、ナレッジワーカーの生産性向上を実現することを狙った製品となります。前述した日本マイクロソフトの津坂社長が毎日利用しているというのがCopilot for Microsoft 365で、自身の業務を効率化するために活用しているそうです。
ソフトウェア開発者の生産性向上を支援するのが「GitHub Copilot」です。Copilotシリーズの中で最初に提供が始まりました。AIがコーディングを支援してくれるツールで、マイクロソフトでは「55%コーディングスピードが高速化する」と説明しています。
開発のプロではなく、現場担当者がソフトウェア開発を行うことを支援するのが「Microsoft Copilot Studio」です。ユーザー企業がカスタムCopilotをローコードで開発可能な統合プラットフォームです。1100以上のプラグインとコネクタが標準搭載され、OpenAI GPTとプラグインの作成と使用が可能となっています。自分だけのCopilotをゼロから作成できるプラットフォームとなります。
セキュリティ運用における生産性向上を支援するのが、「Security Copilot」です。クラウドベースのAIプラットフォームで、インシデント応答、脅威ハンティング、インテリジェンス収集など、さまざまなシナリオでセキュリティ担当者をサポートし、作業を効率化します。
業務部門の生産性向上を支援するのが「Dynamics 365 Copilot」です。マイクロソフトのビジネスアプリケーション「Dynamics 365」を利用する際の生産性をあげるためのAIアシスタントで、データ分析、顧客管理など多岐にわたる業務の自動化、さらにユーザーが洞察を深めていくためのサポートを行います。
各産業別に特化したCopilotを提供するのが、「DAX Copilot」です。医療分野に特化したもの、Sales分野に特化したものなど、産業別のCopilotを提供し、現場の生産性向上を実現していきます。
ちなみに、マイクロソフトが提供しているAIソリューションはCopilotだけではありません。独自のAI基盤構築を目指すユーザー向けに、「Azure AI」として様々なサービスを用意しています。AI知識のない開発者でも先端のアプリケーション開発が行える「Azure AI Service」、生成AIアプリケーションのための情報検索ソリューション「Azure AI Search」、機械学習プロジェクトのライフサイクル管理するためのクラウドサービス「Azure Machine Learning」、複数のAzure AIをまとめた「Azure AI Studio」などが提供されています。
生成AIの大規模言語モデル(LLM)についても、生成AIの代名詞といえるChatGPTのOpenAI社が提供しているLLMを採用した「Azure OpenAI Service」を提供するだけでなく、Facebookで有名なMeta社が提供しているLLMを採用することや、Hugging Face社が提供するLLMなど、評価が高いLLMを利用することも可能です。
マイクロソフトでは、生成AIを活用する企業の代表的なユースケースとして次の4つをあげています。
この4つ以外にも生成AIによって効率化を実現することは可能ではありますが、少なくともこれらは企業の業務効率化の代表といえるものです。Copilotは各業務においてこれらの実現を支援していきます。比較的容易に実現するのが1で、2,3、4の順に実現のためのハードルが上がることになります。
生成AIを、より自社に適したものとするためには、カスタマイズが必要になっていきます。カスタマイズは、Microsoft Copilot Studioを使ってローコードで開発が可能であり、さらにAzure AI Studioでプロの手によってより本格的なカスタマイズを行うこともできます。
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出典:2023年12月13日開催 Microsoft Ignite Japan広報配付資料より
こうしてマイクロソフトが提供するAIソリューションを見ると、Copilotはユーザーが手軽に日常業務にAIを活用するのに最適なものであり、そこからさらに自社に特化した内容へと深化させていくことも可能な手段を用意していることがわかります。もちろん、深化させることなく、Copilotによって日常業務の生産性向上につなげることを導入目的としてもかまいません。ユーザーの状況、さらに狙いによって、手軽なAI導入から深い活用までトータルな環境を用意していることがマイクロソフトのAI戦略の特徴といえるでしょう。
その中でCopilotは、最初にユーザーがAIによる生産性向上を実感する入り口という大きな役割を果たすものといえそうです。
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