Windows11 より少ない労力でより多くのことを実現

2024.07.09

普及が進むWindows AIアプリケーション、
普及の鍵は「DirectML」「Windows Copilot Runtime」

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フリーランスライター:笠原 一輝

Microsoftが5月20日(米国時間)に行なった記者会見で発表されたWindows Copilot Runtime

AI PC、そしてMicrosoftのCopilot+ PCなど、Windows OSでAIアプリケーションが実行できるPCがトレンドとなっている。そうしたPCで重要なのは、ISV(Independent Software Vendor、独立系ソフトウエアベンダー)と呼ばれるサードパーティのソフトウエアベンダーが開発するアプリケーションの存在だ。特にAI PCでは新しい種類のプロセッサーとしてNPU(Neural Processing Unit)が追加されている。どのようにそれを実装していいのかと悩むISVも少なくない。

こうしたNPUを提供するハードウエアベンダーであるAMD、Intel、Qualcommらと、OSベンダーとしてのMicrosoftは協力し、ISVがNPUやGPU(Graphics Processing Unit)を利用してAIの演算を高速に処理できるようにするソフトウエア的な仕組みを整えていて、既にその環境は実現しつつある。鍵になるのは「DirectML」(ダイレクトエムエル)、「Windows Copilot Runtime」(ウインドウズ・コパイロット・ランタイム)といった標準化されたAPI、ランタイムなどだ。

CPUだけでは十分な性能を実現するのが難しいAIアプリケーション、GPUやNPUの活用が必須

MicrosoftのCopilot+ PCで採用されるNPUは40TOPS(1秒間に40兆回の命令を実行可能)以上の性能を実現している

WindowsのAIアプリケーションは、非常に複雑な仕組みを活用して成り立っている。一般的なWindowsアプリケーションは、特に何も指定しない場合には、基本的にCPUを利用して動作や演算を行なう。アプリケーションの起動、データの処理などだ。

しかし、現代のPCにはCPUだけでなく、GPUやNPUといった別の種類の演算器が用意されている。Windows OSから見ると、こうしたCPU以外の演算器は、そのままではその存在が何も見えないため、DDI(Device Driver Interface)と呼ばれる仕組みに対応したデバイスドライバー(デバイスを利用するためのソフトウエアのこと)を経由して利用する仕組みになっている。

もともとDDIはGPUを利用してグラフィックス処理を行なうために用意されていた仕組みだが、近年NPUにも拡張されて利用できるようになっている。WindowsでNPUを利用する場合には、GPUと同じようにNPUのためのデバイスドライバーが必要になり、AMD、Intel、Qualcommがそれぞれデバイスドライバーを提供している(現状ではWindows Updateを通じてデバイスドライバーを提供する形になっているが、将来的にはGPUと同じようにベンダーのWebサイトから提供される可能性はある)。

CPUはもともと逐次処理に特化したプロセッサーで、アプリケーションの起動やデータ量が小さな場合の処理に向いている。それに対してGPUは並列処理が得意で、大容量のデータを処理するのが得意だ。NPUも大容量のデータを処理することが得意なのだが、AI特有のデータを処理することに特化しており、GPUで同じ処理をした場合に比べて電力効率が優れている。バッテリー駆動時にバッテリー駆動時間に大きなインパクトを与えることなくAIの処理を実行できる特徴を持つのがNPUだ。

従って、現代のAI PCでは大容量のデータを処理するときにはGPUを利用し、バッテリー駆動時など消費電力が重要になるシーンなどではNPUを活用するというのがベストケースの使い方になる。

AIアプリにはAIモデルを実装する必要があり、かつ異なるハードウエアに対応する必要があった

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Windows OS環境におけるAIアプリケーション実行の仕組み(筆者作成)

AIのアプリケーションは、通常のWindowsアプリとはやや違う部分がある。具体的にはAIモデルやファウンデーションモデルなどと呼ばれる生成AIのモデルを含む必要があるのだ。

GPT、GeminiなどのLLM(Large Language Model、大規模言語モデル)、Phi-3などのSLM(Small Language Model、小規模言語モデル)、Stable Diffusionなどの画像生成モデル…さまざまなAIモデルがオープンソースで用意されているが、それらのモデルを自分のアプリケーションに組み込んで活用することができる。

最近ではHugging Faceのような、そうしたモデルだけを提供するサービスも用意されているので、自分のアプリにそうしたサービスを活用して最新のモデルを組み込んでアプリケーションを構築することが可能になっている。

MicrosoftはこれまでWindows向けのAIアプリケーションを構築するAIモデルを利用する仕組みとして「ONNX Runtime」(オニックス ランタイム)の利用を推奨してきた。

ONNX RuntimeはONNX(Open Neural Network eXchange)と呼ばれるオープンソースのAIモデルを簡単に利用するための仕組みで、ランタイムそのものもオープンソースで配布されている。ONNX Runtimeを利用すると、CPUだけでなく、GPU、NPUなどさまざまなプロセッサーを利用してAIアプリケーションを構築することが可能だ。

というのも、ONNX Runtimeには、ハードウエアベンダーが提供しているGPU、NPUなどを利用するためのプラグイン(EP:Execution Provider)を簡単に組み込めるからだ。例えば、IntelのNPUやGPUなどを利用したい場合には、Intelが配布しているOpenVINO-EPと呼ばれるプラグインを組み込めばいい。

また、Microsoftはそうしたハードウエアの差異を吸収する仕組み(API)として「DirectML」(ダイレクトエムエル)を既に提供している。DirectMLはDirectXの一部として提供されており、DirectXのうちDirect3Dが3Dゲームの普及に大きく貢献したのと同様の役割を担っていく。

DirectMLの登場以前には、NVIDIAのGPUならCUDA、IntelであればOpenVINO、AMDであればRyzen AI Software、QualcommならQualcomm AI Engineという各社が用意したミドルウエアをISVが利用し、ハードウエアに対して最適化を個別に行なう必要があった。しかし、DirectMLが登場したことで、今後はDirectMLがそうしたハードウエア各社の違いを吸収していくことができるようになった。

Windows環境ではそうした標準のAPIが導入されたことで、アプリケーションの普及が進んだ実例がある、それが3Dゲームだ。3DゲームではISVのソフトウエアは、Direct3Dを標準APIとして利用することで、AMD、Intel、NVIDIA、QualcommといったGPUハードウエアの差を意識しなくてもどのGPUでも実行できるようにしている。PCゲーミングの発展が、Direct3Dあればこそであるように、DirectMLも今後はWindows PCにおけるAIアプリケーションが標準的に利用していくAPIになっていく可能性が高い。

新しいCopilot+ PCでは「Windows Copilot Runtime」という新しいソフトウエア実行の仕組みが導入される

HPのCopilot+ PCに対応したノートPC。左側が一般消費者向けのHP OmniBook X 14 inch Laptop AI PC、右側が一般法人向けのHP EliteBook Ultra AI PC。

HPの新しいAI PCにはこちらのAiロゴが添付される

5月20日(米国時間)にMicrosoftが発表した新しいPCプラットフォーム「Copilot+ PC」では、そうしたAIアプリケーションが新しく利用する仕組みとして「Windows Copilot Runtime」が導入される。

このWindows Copilot Runtimeは、AIモデルそのものを利用する仕組み、さらにハードウエアであるNPUを利用する仕組みまでのすべてが1パッケージになったものだ。

Copilot+ PCの標準アプリ(リコール、コクリエイター、イメージクリエーター、ライブキャプションなど)もこのWindows Copilot Runtimeを利用してAIアプリケーションを実行していく仕組みになっている。

このWindows Copilot RuntimeはそうしたMicrosoft純正のAIアプリケーションを動作させるだけでなく、ISVの開発者も今後はこの仕組みを利用できるようになる。Windows Copilot RuntimeにはMicrosoftが用意したモデルが標準で用意されているため、例えばLLMや画像認識の機能などを、ISVがこれまでよりも手軽に実装することができるようになることが、今後、AIアプリケーションが普及していく上で大きな意味を持ってくるだろう。

このWindows Copilot Runtimeは現時点ではNPUのみの対応になっているが、NVIDIAと共同でGPUを活用できるように開発を進めると発表も行なわれており、将来的にはGPUを利用してより高い性能で演算することができる可能性も出てきている。

このように、Windows OSでは、AIアプリケーションを構築する環境が着々と整いつつある。既にあるGPU、NPUを認識するデバイスドライバーの仕組みも用意されているし、ハードウエアを抽象化するDirectMLの存在もAIアプリケーションの普及にとっては重要な存在だ。

さらに、Microsoftが新しく発表したCopilot+ PCで、Windows Copilot Runtimeが新しいアプリケーションの環境として用意されたことで、より手軽にISVがAIアプリケーションを提供する環境が整ったと言える。Windows環境下のAIアプリケーションの普及に向けて弾みがつきそうだ。

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※2024年7月9日時点の情報です。内容は変更となる場合があります。

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