2023.03.07

IT管理者もエンドユーザーもメリットありeSIMによる通信サービス利用。eSIMとは何かを解説

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ICカードがいらないモバイル通信! eSIMとは?

自社のノートPCがモバイルネットワークに対応していれば、スマートフォンと同様にいつでもどこでも通信ができます。特にエンタープライズクラスの企業では、その組織内に閉じた閉域ネットワーク接続なども可能ですから、セキュリティ確保の点でも有利です。

多くの企業では、従業員が使うスマートフォンなどのために、法人顧客としてまとめて各通信事業者と契約を締結し、端末を従業員に貸与して各社のサービスを利用しているでしょう。

通信事業者と契約すると、加入回線ごとにSIMと呼ばれる爪先サイズの極小ICカードが発行されて貸与されます。今、日常的にご利用のiPhoneやAndroidスマートフォン、各種タブレットなどにも、専用のスロットが装備されていて、そこにトレイなどを使ってSIMが装着されているはずです。

SIMはSubscriber Identity Moduleの頭文字をとったもので、契約者を識別し、契約されているサービスを利用できるようにするためのものです。SIMと電話番号などの情報が結びつけられて、スマートフォンやタブレット、パソコンなどの各種端末から契約者としてのサービスが受けられるようになります。

端末からSIMを抜き、別の端末に装着すれば、古い端末で使っていた電話番号をはじめ、契約しているサービスが新しい端末で使えるようになります。SIMを元の端末に戻せば、また、以前と同じように使えます。

SIMは小さなICカードです。現在使われている一般的なSIMはnanoSIMと呼ばれるサイズで、12.3ミリ×8.8ミリという極小サイズです。本当に小さいものですが、物理的なカタチを持っています。管理者がエンドユーザーに通信サービスを使わせる目的でSIMを受け渡すためには、郵送や手渡しなどの手段を考える必要があります。

エンドユーザーは、なんらかの方法で受け取ったSIMを自分の端末に装着するか、管理者などが前もってSIMを装着した端末を宅配便などで受け取って通信サービスの利用をスタートします。それがこれまでの当たり前でした。

SIMとeSIMの違い

その当たり前をくつがえした新しい当たり前がeSIMです。eSIMは端末のスロットに装着されたSIMと同等の機能を提供しますが、物理的な形状を持ちません。それがSIMとeSIMの違いです。eSIMの頭についているeは「Embedded」を意味します。仮想的なSIMとして端末内に埋め込まれ、そこにSIMと同様に必要な情報を書き込み、SIMと同様に機能させることができる機構です。最近ではeSIMに対応しているパソコンも増えてきています。

SIMが物理的なICカードで、通信事業者がICカードライターで内容を書き込んだ上で契約者に渡すのに対して、eSIMは端末機器に最初から埋め込まれて実装されているチップです。そして、インターネットを介し、OSのユーティリティやアプリを使ってキャリアのサーバーからプロファイルデータをダウンロード、契約者やエンドユーザー自身の手で端末に実装されているチップにデータを書き込みます。これによって、物理的なSIMの受け渡しをすることなく、サービスの利用をスタートすることができます。

また、端末内に実装されるチップのサイズはnanoSIMが巨大に見えるほど小さなものです。このことは、端末デザインの自由度を高めます。スマートウォッチなど、腕時計単体で通信ができるような小さなデバイスに埋め込まれているのもeSIMです。

つまり、eSIMは、端末ハードウェアに埋め込みチップとして実装されたデータ未記入のSIMです。ダウンロードしたプロファイルデータをそこに書き込むことで、SIMと同じように機能するのです。

モバイルネットワーク事業者各社も、続々とeSIMに対応してきています。また、eSIMに対応したハードウェア機器もスマートフォンやタブレット、ノートPCなど多岐にわたります。小さなICカードを紛失したり、触って汚れるなどで接触不良のトラブルに見舞われたり、破損したりといったこともありません。不要になったら書き込まれているデータを削除するだけです。逆に、欧州用、米国用、日本用、中国用など、異なるエリアの事業者のeSIMデータを保存しておき、出張時に切り替えるのも容易です。

eSIMを活用することで下記表に挙げたようなメリットが得られます。また、物理SIMと異なり人的も金銭的にも送付コストがないに等しく、紛失したり、抜き忘れて機器を除却してしまう心配もないというメリットもあります。プラン変更や契約解除等に伴うSIM返却のコストもかかりません。さらに、Microsoftでは、IntuneなどのMDMを使い、大量の端末に対して遠隔から一気に展開するといった方法も提示しています。各通信事業者による公式なサービスとしてはまだ見当たらず、すぐの利用には工夫が必要ですが、こうした対応も視野に入れれば、その活用によるメリットははかりしれません。

Microsoft Intune で eSIM データ接続を有効にする | Microsoft Learn

  eSIMメリット
形状 機器実装のチップに書き込むデータなので姿カタチがない
装着 プロファイルデータをダウンロードして書き込み
取り外し プロファイルデータを削除するだけ
紛失対応 機器ごと紛失の場合のみ
リモート設定 ネットワーク経由で対応可

管理しやすく、すぐにスタートできるからハイブリッドワーク、リモートワークにも最適

日本HPのモバイルノートPCの一部のモデルは、SIM装着用のスロットを備え、そこに従来型の物理的なnanoSIMを装着して通信サービスを利用できます。そして、それに加えて、もうひとつの仮想的なスロットとしてeSIMを実装し、そこにダウンロードしたプロファイルデータを書き込むことで、物理的なSIMを装着したのと同じ結果が得られます。つまり、契約に基づいて電話番号が有効になり、通信サービスの利用をスタートすることができます。物理SIMとeSIMの同時使用はできませんが、切り替えは可能です。

コロナ禍において働き方は大きく変わりました。従業員全員が毎日オフィスに通勤することも少なくなりました。ある従業員はリモートワーク、別の従業員は郊外のテレワーク拠点やサテライトオフィス、コワーキングスペースと居場所が不定、また、ある従業員は、拠点オフィス勤務、また、得意先を巡回と、仕事の種類や内容に応じて作業場所が異なるハイブリッドワークが新しい当たり前になっています。

これまでは、限定されたネットワーク空間で、ファイアーウォールの内側にある端末だけのめんどうを見ていたIT管理者も、エンドユーザーのハイブリッドワークが当たり前になるなかで、そのネットワークのバリエーションを的確にコントロールし、安心安全に業務ができるようにすることが求められます。

その一方で、エンドユーザーは、自宅など、本来は仕事をする場所ではなかったプライベートな空間で、誰もめんどうをみてくれないネットワーク運用などで苦労しているかもしれません。集合住宅の共有インターネットの狭い帯域で、オンライン会議が滞るといったトラブルはその典型です。だからこそ、トラブルが少ないモバイルネットワークサービスを利用するのです。セキュリティの観点からもそのほうが安心安全です。集合住宅の共有インターネットで見知らぬ第三者とインターネットを共有したり、パブリックスペースで無償提供されているようなWi-Fiを利用することのリスクを考えるべきです。BCPの観点からも有利です。

そして、eSIMを使えば、物理的なSIMよりもずっとカンタンに運用を開始できます。eSIMを利用することで、管理者がエンドユーザーに物理的なSIMを郵送/宅配等の手段で手渡す必要もなくなります。紛失、誤配、盗難といったトラブルも起こりません。管理者はエンドユーザーに端末としてのPCを送付するようにディーラーや販売店などに依頼し、別途、通信事業者と契約して入手したeSIMの在処を示すQRコードやURLを電子メール等で伝えるだけです。

それを受け取ったエンドユーザーは、QRコードを読み取るか、URLを指定することで、自分の端末用に割り当てられたSIM情報をダウンロードして端末内のeSIMに書き込み、その場で通信サービスの利用をスタートすることができます。

このように、eSIMを使えば、管理者にとっても、エンドユーザーにとっても負担の少ない通信サービス利用の開始が可能です。利用後の運用でもトラブルが起こりにくくなります。

注目すべきは、そのプロセスのスピードです。場合によっては、キャリアとの契約、離れたところにいるエンドユーザーへの情報送付、メールやチャット、SMSなどを受け取ったエンドユーザーがSIM情報をダウンロードして通信サービスをスタートするまでのプロセスをすべてオンラインでこなし、所要時間も30分以内といったスピーディな処理も可能です。

日本HPのモバイルネットワーク対応製品の多くは、国内の大手キャリアのネットワークに対応、その相互接続性テスト(IOT)をパスしているため、安心してモバイルネットワークを利用できます。

eSIMが使える日本HPのノートパソコン

モデルとモジュール HP Elite
Dragonfly
G3
HP Elite
Dragonfly
G2
HP Elite
Book
1040 G9
HP Elite
Book
640 G9
HP Elite
Dragonfly
Chromebook
Enterprise
LTE(4G)、LTE-Advanced モデル
インテル® XMM™ 7360 LTE-Advanced
インテル® XMM™ 7560R LTE-Advanced Pro
5G モデル
Qualcomm® Snapdragon™ X55 5G
インテル® 5G ソリューション 5000

通信事業者ネットワークとの相互接続試験(IOT)と対応バンドについて

LTE(4G)・5G対応モデル - ビジネスソリューション | 日本HP

KDDI

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