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軟包装業界にデジタル革命 – ユニードパックの新市場開拓戦略

HP Indigoで多品種印刷を実現、柔軟な発想で市場を拡大

2025-07-22

集合写真
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香川県まんのう町に拠点を置くユニードパック株式会社は、軟包装資材の製造・販売を手掛ける企業だ。従来はグラビア印刷を中心に事業を展開してきた同社だが、他社との差別化と持続的成長を模索する中で早くからデジタル印刷技術への転換を図った。2010年、国内では前例の少ない軟包装向けデジタル印刷機「HP Indigo」を導入し、小ロット多品種・短納期という新たな顧客ニーズに応えるオンデマンド印刷ビジネスに乗り出したのである。

1990年代末、ユニードパックはMacによる製版内製化に着手し、データから直接印刷する基盤づくりを進めていた。そして2010年、当時まだ黎明期にあった軟包装向けデジタル印刷機「HP Indigo WS4500」の導入を決断した。背景には、「同じことをしていては競争力がない」との経営判断がある。印刷業界では小ロット・短納期化への要求が高まっており、従来のグラビア印刷では版の作成や色替えに時間とコストがかかるという課題があった。そこでユニードパックは版を用いずデータ処理から直接印刷まで行うオンデマンド印刷という新機軸で他社と差別化を図ろうとしたのだ。この決断により、必要な数量だけ無駄なく迅速に生産できる体制が整い、高付加価値サービスの提供が可能になった。

しかし導入当初、この挑戦には未知の困難が伴った。初代Indigo機(幅330mm対応)は社内製品の約2割にしか適用できず、また当時のデジタル印刷技術では軟包装フィルムへの対応が発展途上で、「版なし印刷」による軟包装製造という前例のない試みに社内外から不安の声もあったという。実際、デザイナーが作成したデータをそのままでは使えず微調整が必要になるなど、従来手法とのギャップも課題として表面化した。

課題
課題
永森孝一社長
永森孝一社長

こうした課題に直面しながらも、ユニードパックは粘り強く解決策を講じていった。同社はまず海外の最新事例とノウハウ収集に乗り出す。導入前から米国ダラスで開催されたHPユーザー会「Dscoop」に参加し、世界の先進事例や運用ノウハウを積極的に学んで自社戦略に活かした。国内に手本がない状況下、グローバルな知見を取り入れたことがこの挑戦を後押しした。次に、段階的な市場開拓戦略を採った点が注目される。いきなり大規模展開を狙うのではなく、まずデジタル印刷で対応可能な領域から着手したのだ。具体的には、幅330mmで印刷できるパッケージやラベル類の小ロット案件をテスト的に受注し、一つひとつ実績を積み重ねていった。例えばWeb経由で注文を受けるオリジナル菓子パッケージ企画「オリジナルうまい棒」では、ユーザーが好きなデザインやメッセージをお菓子のパッケージに印刷できるサービスを提供し、イベント向けノベルティとして人気を博した。このようにして小規模でも確実に成果を出し、徐々に顧客基盤を拡大していったのである。地道な取り組みの結果、導入から約2年でデジタル印刷ビジネスは軌道に乗り始めた。

さらにユニードパックは技術基盤の強化にも注力した。2014年には2台目となる幅760mm対応の「HP Indigo 20000」を導入し、従来は難しかった中〜大型パッケージまでカバーできるようにした。これによりデジタル印刷適用範囲は自社製品の7~8割に拡大し、本格的な生産体制が確立できた。加えて、2016年にはエスコ社のワークフローシステム「Automation Engine」を導入してプリプレス工程を自動化。入稿から面付け、RIP処理までを自動化することでDTPオペレーターの手作業を大幅に削減し、従来比20%(5分の1)の作業時間で対応可能にすることに成功した。納期も約2/3に短縮され、複雑な可変デザインや多数の小ロット案件を同時処理する生産効率の向上につながっている。さらに伝票類のペーパーレス化など社内DXも推進し、煩雑な事務プロセスの効率化にも取り組んだ。

効率化にも取り組んだ
効率化にも取り組んだ
高野様
高野様

デジタル印刷技術への転換は、ユニードパックに大きなビジネス機会と生産効率向上をもたらした。同社はデジタル印刷機の特長を活かし、新規商品開発から大口顧客の獲得まで様々な成果を上げている。

まず、新規市場・顧客の開拓である。オンデマンド印刷により実現した可変データ印刷は、従来になかった付加価値サービスを生み出した。前述の「オリジナルうまい棒」のように、一人ひとり異なるデザインのパッケージ提供が可能になり、イベント向けのノベルティ用途などで高い人気を獲得した。また、大阪マラソンのスタート時には可変ゼッケンを制作するプロジェクトで、初年度から3年連続で受注するなどパッケージの領域を超えた顧客の獲得にもつながった。この新商品開拓戦略により、現在では非常に幅広い製品ラインアップへ事業を拡大しており、1台のHP Indigoから実に多彩なアプリケーションが生み出されている。デジタル印刷機ならではの柔軟性を武器に、ユニードパックは新規事業創出と差別化に大きく寄与したと言える。

商品
商品

次に、競争優位性の確立と社内への好影響だ。他社に先駆けた取り組みにより、ユニードパックは業界内で「軟包装のデジタル印刷と言えば同社」と認知される存在となった。実際、デジタル印刷対応の軟包装ビジネスは同社の独自ドメインとなり、新規参入の少ない分野で確固たる地位を築いている。さらに、デジタル技術の導入は社員の働き方にも好影響を与えた。揮発性溶剤インキを扱うグラビア印刷に比べ作業環境がクリーンになり、煩雑な手作業が軽減されたことで社員の定着率も向上したという。実際、「人が離れない企業」として離職率が非常に低いことも、同社の安定した成長を支える要因となっている。

グラビア印刷との対比
グラビア印刷との対比

この挑戦を成功に導いた背景には、永森社長の前向きなチャレンジ精神と人を大切にする企業文化がある。永森社長は非常に温厚で社員想いの人格者でありながら、新規開拓営業という最もタフな現場にも自ら立って陣頭指揮を執るリーダーだ。創業以来培ってきた「製造だけでなく販売まで一体で進める」という姿勢をデジタル時代にも適用し、社長自ら顧客開拓に奔走するその姿勢が社員の背中を押した。社内には失敗を恐れず新技術に挑戦する風土が根付き、部門の垣根を越えて協力し合う温かなチームワークが醸成されている。実際に離職率が極めて低いことが物語るように、社員一人ひとりが会社と仕事に誇りを持ち、長く定着して力を発揮できる環境が整っているのだ。

永森社長のリーダーシップの下、「人が離れない会社」を実現していることは、デジタル変革を推進する上でも大きな強みとなった。従来の熟練スタッフがデジタル機に習熟するまで粘り強く教育し、また新たな人材にも働きやすい職場を提供することで、技術と人の両面で盤石な基盤を築いたのである。このような企業文化と経営姿勢があったからこそ、ユニードパックは前例の少ないデジタル印刷への挑戦を成し遂げ、現在も継続的な成長を遂げているのだ。

ユニードパックは今後もデジタル印刷技術を軸に、新たな価値提供と市場開拓を進めていく考えである。現状、日本の軟包装市場ではコスト面や品質面の理由から依然グラビア印刷が主流を占めているが、環境規制の強化や顧客ニーズの多様化により状況は変わりつつある。また、国際的なカーボンニュートラルやSDGsへの対応は避けて通れず、小ロット・オンデマンド対応力は将来ますます競争力の鍵となるだろう。そうした業界の潮流において、ユニードパックは現在運用しているHP Indigoのさらなる性能向上にも期待を寄せている。具体的には、生産性と安定性が一段と向上すれば、デジタル印刷でこれまで対応しきれなかった小ロット全般に置き換えが進み、従来以上に幅広いニーズに応えられると見込んでいる。

また、同社は引き続き社内プロセスのデジタル化・自動化を推進し、人手に頼らない効率的な生産モデルを磨いていく方針だ。創業以来大切にしてきた「製造と販売の一体運営」という姿勢をデジタル時代にも貫き、技術革新と市場開拓を両輪で進める戦略は今後も不変である。

ユニードパックの歩みは、印刷関連企業の経営層にとってデジタル時代の戦略立案に多くの示唆を与えるものと言えるだろう。今後、同社のように環境対応とオンデマンド生産を両立した取り組みが業界全体に広がっていくことが期待される。

永森孝一社長の率いるユニードパック株式会社は、伝統的な軟包装業界に新風を吹き込みながら、今日も次なる挑戦に向けて歩みを進めている。革新的なデジタル印刷技術と温かい企業文化を両立させた同社の挑戦は、まさに“軟包装デジタル革命”と呼ぶにふさわしい。今後、その革命の波がさらに大きなうねりとなって軟包装ビジネスの未来を拓いていくに違いない。

対談風景
対談風景

2025年7月
株式会社 日本HP デジタルプレス事業本部 マーケティング 永嶋ゆり記

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