2024.01.31

より良い市民サービスを目指し、前橋市が取り組むDX計画に HP Chromebook が貢献

前橋市役所

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前橋市は群馬県の県庁所在地として知られ、赤城山のふもとに位置することからもわかるように都市と自然が融合したとても暮らしやすい位置にあり、現在では約32万人が暮らす、中核市に指定されています。また、詩人の萩原朔太郎の出身地でもあり、文学館をはじめ文化を育む施設も多くあります。保育施設、教育機関、医療が充実しており、市民が安心して暮らせる街として知られています。

そんな前橋市はICTについても積極的に取り組んでおり、現在もDXを推進しています。ここ最近、職員のパソコンも Chromebook へ刷新するなど、大胆な改革も行っています。どのような背景で現在に至っているのか、担当者に話を伺ってきたので紹介しましょう。

編集:中山一弘

前橋市役所 情報政策課 主任 佐藤 萌恵氏

前橋市役所 情報政策課 臼井 秀充氏

DX計画を進める中で Chromebook を選択

大津山:Chromebook をお使いですが、どのような経緯で現在の環境になったのですか?

佐藤:大きなきっかけはコロナウイルスの感染拡大により、前橋市としても分散勤務が必要になる状況になったことです。分散勤務にあたっては前橋工科大学と協力し、プリンタや電話がない環境で通常業務を進められるのかといった検証をした結果、良い結果を得ることができました。

大津山:それは情報政策課が率先して参加した形だったのですか?

佐藤:そうです。そもそもペーパーレスや固定電話の排除はDX促進の面からも進めたかった取り組みなので私たちで実証実験をしてみました。実はコロナが流行する前に、遠隔地同士で情報のやり取りをする手段ということで、Microsoft 365 を導入し、Microsoft Teams のWebミーティングとチャットでそれが実現できるのではないかと、実証実験に取り掛かっていたこともきっかけになっています。

臼井:前橋市の各支所のメンバーを集めて会議をするにはコストがかかります。その費用削減や業務効率化を考えての取り組みでした。最小限の環境が整ったところでコロナ禍が始まったので、庁舎に残るメンバーと前橋工科大へ行くメンバーで、ペーパーレスや固定電話のない環境の中で情報共有や業務効率化がどれぐらい進むのか検証したという形です。
結果的に固定電話や紙媒体がなくても何とかなることが分かり、分散勤務でもやっていける手応えを得ることができました。

大津山:デジタル化が一気に進むイメージですね。

佐藤:はい。前橋市DX推進計画では8つの重要事業を掲げましたが、市役所のDX推進もその中のひとつとなっています。テレワークやペーパーレス、モバイル端末や無線LANを導入し、生産性が高く、働きやすい職場環境の整備を目指すというもので、2025年までに市役所のフルデジタル化を目標にしています。

大津山:その働きやすい環境のために Chromebook の導入があったのですね。

佐藤:Chromebook 自体は特にその際に計画したものではなかったのですが、セキュリティや管理性で選択したというのが大きな理由です。最終的に導入したのは2680台で、すべてHPの製品です。

前橋市がHPを選択した理由はこちら

奥野:管理とセキュリティが高次元かつシンプルに実現でき、なおかつ低コストで導入しやすいという理由で Chromebook を選択する自治体は増えています。セキュリティに関しても Windows 環境ではいろいろと手間やコストをかける必要がありますが、Chromebook の場合は最初からビルドインされているというのも大きな特徴です。

左から、株式会社シンクライアント総合研究所 取締役 奥野 克仁氏(自治体コンサルタント)、株式会社 日本 HP エンタープライズ営業統括 営業戦略部 大津山 隆氏

臼井:セキュリティやOSアップデートは Google が自動的にやってくれますし、なによりインターフェイスが分かりやすく、職員の端末管理がやりやすいです。

奥野:Chromebook は必然的に1対1のアカウントで動作しますから、行動証跡を含めてログが残りますからね。

臼井:アカウント管理には Google のIDPを使っていて、シングルサインオンでAzure ADも利用します。まだ Windows 環境を必要とする職種があるので、それぞれに適応するためにこのような仕組みを採用しています。

職員の使い勝手を含めたIT施策を実施

大津山:いま、Chromebook はいわゆる自治体の3層モデルの中でどのようにお使いなんですか?

臼井:既存の3層の中の一つであるLGWANの役割を縮小し、新たにインターネット上にVPNで構築したWANのような仕組みを作り、UTMとクラウドプロシキを使ってインターネット上のクラウドサービスに直接繋がるような構成になっています。一部の業務用にLGWAN系のWindows環境は残っていますが、基本的にエンドポイントは Chromebook へ移行しています。

大津山:先ほども話に出ましたがこの環境の中で Microsoft 365 を利用しているのですよね。

佐藤:はい。基本的には Chromebook を使い、インターネット経由で Microsoft 365 のブラウザ版を運用しています。オフィスツールはもちろんですが、Outlook や Microsoft Teams も活用しています。ほかのツールも使ってはいますが、基本は Microsoft 365 ですね。

奥野:Google Workspace を使うという話は出なかったのですか?

臼井:それ以前に Office 365 の時代からMicrosoftのオフィスツールを使った資源がたくさんあり、やっぱり有効活用していこうということで使用を続けています。

佐藤:これまで作ってきたデータが Microsoft Office のものでしたから、それらもすべて移行させるとなると負担も大きいですし、現場からの反発も考えられます。Chromebook に変わったというだけでも大変革ですから、その上中身までとなると負担が大きすぎると考えました。

奥野:私が見てきたほかの自治体では、長い期間を設けて Google Workspace への移行をするケースもあります。しかし、そのような自治体でも技術職は Windows 環境がどうしても必要なので残していますからね。Microsoft Power Apps もお使いなのですか?

佐藤:今その取り組みを始めたところです。情報政策課の管理部門の職員がテスト段階で動作確認をしていて、2024年から移行を始める予定になっています。2023年末には担当課の職員が自由にアプリ開発に取り組めるようになりました。ノウハウのある業者さんなどに検証をしてもらいながら進めていく研修も始まっています。取り急ぎ、全庁で使えるモデルを作ってみて、それを2024年度から横展開していく予定です。

奥野:Microsoft Power Appsを、Chromebook で動かすことを前提に進められているのはとても面白い取り組みだと思います。

大津山:その研修には各部から有志が集まるのですか?

佐藤:DX推進計画に基づいてDXを進めていく中での課題ごとにワーキングチームがすでに結成されています。その中でも一番大きなグループとしてすべての課が参加するBPR推進ワーキンググループがあります。そこで各課の業務で発生する課題にはどのようなものがあるか、かなりの期間を使って整理してきました。そこで提起された問題点の中から複数の課が同じような壁にぶつかっている案件を3つ選択し対応を始めています。

大津山:一番効果が高そうな課題から取り掛かるのは良いことですね。このようにエンドユーザー部門がいわゆるローコード/ノーコードを使って、業務の自動化を行っていくと、今後はLGWAN系のWindows 環境はどうなりますか?

佐藤:2024年度の6月に今まで使っていたグループウェアの保守期限が切れるのでそこが大きなターニングポイントになると思っています。その際に、グループウエア上でできた業務を単純に自動化するのではなく業務を見直した上で自動化するよう職員に意識するようにしてもらっています。現在残っている Windows 環境からの脱却も強制はしたくないので、理解を深めてもらい自発的に移行してもらう方向で進めています。

大津山:今後はテレワークも増えていくのですか?

佐藤:窓口がない業務の担当職員はある程度自分の裁量で働き方を決められます。例えば私たちの情報政策課でいうと、メンテナンス等の業務がなければ在宅ワークも可能です。ただし、市民がお越しになる窓口がある職種の場合は、思ったようには取り入れられないですね。

奥野:教育関係ではデジタル・シティズンシップという言葉が頻繁に出てくる時代になりましたが、学校だけではなく、地域全体でDXをどのように進めるかという議論は必要だと思います。それは自治体にもそのまま当てはまりますから、庁内だけでなく、庁外でも働き方については考えていかなくてはならないと思います。

職員が当事者意識を持つことがカギ

大津山:テレワークのときはどのようなネットワークを使っていますか?

臼井:閉域のモバイルLTEを使っています。

奥野:閉域でつながっているから、在宅ワークでも通常通りのアプリを使っても問題ないということですね。自治体によってはこのアプリしか使えないといった縛りや、わざわざテレワーク用のパソコンを用意しているところもありますが、そういうケースのほとんどは使われなくなってしまいます。

佐藤:私たちも以前はその状況でした。今は、Microsoft 365 はもちろん、すべてのツールが在宅でも使えます。Microsoft Teams もコミュニケーションツールとして使っています。ただし、いくらツールを渡したり、研修をしたりしても、組織体質のようなものが残ってしまっているケースがあります。そこを変えていかなければ、どんなツールを導入しても変革は起こりません。
ですから、今回の取り組みが始まってからは、有志を募る形ではなく、すべての部署からワーキンググループに参加してもらうことにしたのです。実はそれ以前のケースでは有志がいるような部署ではDXが進んだのも事実ですが、進まなかった部署とはこの2年間で大きな差ができてしまいました。

大津山:すべての部署に参加してもらうというのは出発点ですよね。これからはどのようなメッセージを出されるおつもりですか?

佐藤:こういうことをします、というメッセージでは抵抗する人も出てきてしまいます。ですから、不満や課題があったらどんどん出してください、といったように相手が理解している言語で伝えてもらうようにしています。じつはこれこそがBPRの方向性になると思って続けています。

大津山:全体のBPRをするには、すべての組織が対象になるというのが必要で、まずはそこを理解してスピードが遅いところの人の言葉でそれを説明してもらうということが大切なのですね。

佐藤:はい、そのようになります。おそらくこちらが思っている課題と、向こう側が考えている課題は違うフェーズにあるという気がしていて、その差が埋まらなかったのがこれまでのやり方だったと思います。そういった差があることを認識し、課題をわかりやすく言語化してもらい、そこに対してサポートするというやり方にしたところ、どんどん成果が出てくるようになりました。
恐らく該当の課はBPRとは思っていないと思いますが、やっていることはまさにBPRのそれですね。このプロセスはうまく機能していると思います。

奥野:自治体のDXを進めるにあたり、全員が当事者であるということをマインドセットして、デジタル文化を醸成していくのは大きな変革を遂げた自治体に共通した手法です。前橋市役所様が今まさにそういうタイミングであることが分かりました。これからもがんばってください。

大津山:とても良いお話を伺うことができました。前橋市様においては今後も順調にDXが進められていくことが確信できました。私たちも精一杯サポートしますので、今後ともよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

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