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株式会社INEI×株式会社ボーンデジタル 導入事例

この記事は『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』(ボーンデジタル刊)に掲載されたものです。

コンセプトアート、
マットペインティングをもっと身近に。
CG作品がインクジェットプリントで
アートに変わる。

- 株式会社INEI×株式会社ボーンデジタル

株式会社INEI 代表取締役/コンセプトアーティスト 富安健一郎氏

株式会社INEI 代表取締役/
コンセプトアーティスト
富安健一郎氏

株式会社ボーンデジタル 販売戦略室 西原紀雅氏

株式会社ボーンデジタル
販売戦略室
西原紀雅氏

欧米では、クリエイターが制作した写真やグラフィックなど作品をインクジェットプリントし、アート作品として販売する「ジークレーグラフィック」と呼ばれるビジネスが確立されている。元々はシルクスクリーンやリトグラフなどで複製されてきたが、デジタルデータがオリジナルになった現在では、インクジェットプリントが主流になってきた。この新しいクリエイターの作品発表の場を作ろうとしているのがボーンデジタル。そして、その試みに賛同し、自身のアート作品の提供を考えているのがINEI代表の富安健一郎氏だ。日本HPの大判プリントテクノロジーを最大限に活かしたインクジェットプリントでアート作品を販売しようとする試みについて、販売側、アーティスト側それぞれの意見を伺った。

裏方の仕事に光を当てるアート展

映画、ゲーム、アニメなど映像制作の裏側には、そのアイデアや世界観を視覚的に伝えることを主な目的にしたコンセプトアートやマットペインティングといった仕事がある。普段は見る機会のないこれらのアートを間近に見られる展示会『コンセプトアーティスト&マットペインターの仕事展 ー映像制作 Then and Now ー』が、2016年10月12日から4日間にわたって東京都豊島区にあるターナーギャラリーで行われた。

企画したのは3DCGや映像制作の専門誌「CGWORLD」を発行するボーンデジタル。「普段は裏方に徹していて、しかも職業としてもあまり知られていないコンセプトアート、マットペイント、そしてこれらを生み出すアーティストをもっと知って欲しい」という思いから、アート展の企画が始まった。まず企画の段階では、趣旨に賛同して作品を寄せてくれるアーティストや会場探しなど、さまざまな準備があるが、いちばん気を遣ったのが、作品をより良く見せるためのプリンタ選びだった。

かつてコンセプトアートやマットペイントは手書きだったが、現代ではほぼフルデジタル。つまり、ディスプレイをキャンバスに、RGBで作品が描かれている。当然、プリントする場合は、作品に描かれた色をできるだけアーティストのイメージに合わせたものに仕上げなければならない。ボーンデジタルでアート展の企画を担当していた同社販売戦略室の西原紀雅氏は、「これはインクジェットプリントしかない」と考え、すぐに日本HPに連絡を取った。「コンセプトアートやマットペインティングを集めたアート展をやりたい。しかもその作品は日本を代表するアーティスト達のものだ」と。すると日本HPは、海外のプリント事例を紹介しながら、すぐに協力を申し出てくれたそうだ。

「日本HPの方から『海外では“ジークレープリント”という形でこれまでのリトグラフなどと同じような価値を持ったアートがインクジェットプリントで複製され、高く評価されている。Designjetはその実績も高い』と聞いて。アーティストの方の作品を展示するにあたって、日本でも同じようなビジネスができないか、そんなことも試してみようかという話になりました」(西原氏)

コンセプトアーティストでもあるINEIの代表取締役、富安健一郞氏は、このアート展で作品を発表した一人。アート展の参加について「販売する、しないは別にして、見てくれる人がいるってことがとても楽しかった」と語る。

「コンセプトアーティストとしての仕事は、普段一般の方に見せるためにやっているわけではなくて、プロジェクト内の関係者のみに見せることがほとんどです。アート展に参加して、自分がもともと持っていた多くの一般の方に見てもらいたいという欲求を思い出したというか、とにかく高揚感がありました。作品を見てくれる人の生の声が聞きたくて、連日会場に行って自分の作品を見ている人の後ろに立って聞き耳を立てていましたからね。あの場所ではちょっと怪しかったかもしれません(笑)」(富安氏)

コンセプトアーティスト&マットペインターの仕事展

『コンセプトアーティスト&マットペインターの仕事展』の会期中は延べ1,000人が来場。奥に見えるのが幅3.3メートルの大きさにプリントされた富安氏の作品。このサイズでパネル貼りするとかなり予算が……ということで富安氏自身が角材などを入手して掲示準備をした思い入れの強い作品とのこと

コンセプトアーティスト&マットペインターの仕事展

CGアートを大サイズでプリントすることでアーティストが本当に訴えたいものが大きく見えてくる。富安氏によれば、「インクジェット+キャンバス紙にプリントすると風合いがアナログに近くなる」とのことで、多くの来場者が至近距離から観察したり実際に触れてみたり、という場面が多く見られたそうだ

アート作品の価値を守るためにプリンタに必要なこと

アート展では、現場に大判インクジェットプリンタの「HP Designjet Z6200」が搬入され、その場でプリントできるという催しもあった。作品をプリントするにあたって富安氏は、用紙選びから関わり、プリントされた色を見ながらデータを修正し、自分がイメージしていた世界をプリントで表現することにチャレンジしたという。

「インクジェットプリントは以前にもやったことがあって、そのときにキャンバス紙でプリントした仕上がりがとても良い印象として残っていました。今回も、ぜひキャンバス紙でやりたい、とお願いしたんです。それから大判の迫力。幅3.3メートルっていう大きさでプリントしたのはインパクトがありましたね」(富安氏)

西原氏も、メディアによって作品のイメージが変わることを考慮して、参加アーティストとは綿密に打ち合わせした。用紙サンプルを持ちながら打ち合せを繰り返し、アーティストが納得のできるメディア、色にこだわったという。プリンタとして搬入されたHP Designjet Z6200は8色のインクを搭載するモデル。とくに赤色は「クロムレッド」という発色性の高いものを採用しており、色域の広さと鮮やかさが特徴だ。そして、分光測光器を内蔵してキャリブレーションと用紙プロファイル作成機能を備えていること(追加オプションが不要という点もポイント)がアート作品としてのプリントには欠かせない、として日本HPが推薦してくれた。

「アート作品としてビジネスを成立させるためには、その価値を守るためにプリントそのものの劣化も防がなければなりません。Designjetの場合、プリントされた後は200年という耐光性期待値を持っていると聞き、安心してプリントを任せることができました」(西原氏)

会場内に設置されたHP Designjet Z6200

会場内に設置されたHP Designjet Z6200。最大幅1,067mmのロール紙がセットできる大判機(規定サイズではB0サイズまでプリントできる)。とくに赤色のインクの発色性が高く、富安氏が出品した作品の絵柄にもマッチして納得できるプリント結果が得られたそうだ。普段は「4KサイズなどをベースにCG作品を作っている」という富安氏。「もしインクジェットプリントを念頭に作品を作るなら、どんなサイズでプリントするかを考えて、その解像度に合わせてイチから作ってみたい」と語ってくれた

インクジェットプリントはアートビジネスとして成り立つか?

もし自分の作品がアートとして販売されるとしたら?と富安氏に聞くと、「それは本当に嬉しいし、モチベーションも上がる」という言葉が返ってきた。

「やっぱり自分の作品が一般の方に評価されることって嬉しいものですよ。日本だとまだ部屋に好きなアートを飾るという行動そのものが少ないかもしれない。でも絵が上手でも画家にはなれない、依頼された物でしか自分を表現できないと悩んでいるアーティストは多いと思います。少しでも作品を見てもらえる、手にとってもらえる、そして毎日眺めてもらえる、そんなことが実現したら、励みになりますし、世界広がると思いますね」(富安氏)

「まずは、日本にこんな素晴らしいアーティストがいるんだということを知ってもらうこと。これが私たちの使命だと思っています。今回作品をDesignjetで出してみて、私たちもアーティストの方々も、これはどこに出しても恥ずかしくない、ビジネスとして充分に納得できる品質になることが分かりました。それにもともとデジタルツールで描かれたアートはデジタルプリント向きでしょう。今後は、CGWORLDのECサイトを通じて、オリジナルアート作品のプリント販売を積極的に考えていきたいと思っています」(西原氏)

富安氏は、「デジタルの世界で描いたものがキャンバス紙にプリントされると、途端に愛着のあるものに変わる、所有欲が出てくる」と語る。なるほど、普段はディスプレイの中で見ているものが、イメージしたサイズそのまま大判で出せるインクジェットプリントには、人の心を惹き付けるものがあるのかもしれない。好きなアーティストのオリジナルで希少価値の高いものがオンデマンドで入手できる。これが、新しいアートの楽しみ方、というわけだ。

HP DesignJet Z6200 を使って作成されたレプリカ 誓願寺門前図屏風

HP Designjet Z6200によるプリントは、グレーの階調や赤から黒にかけてのシャドウの再現、硬質なブルー、RGBで描いた色合いがイメージ通りに再現されている。「CG作品って印刷するとなかなか思い通りに色が出せないから修正も必要だけど、今回はその修正も予測が付くレベルでスムーズだった」(富安氏)

対象プリンター

HP DesignJet Z6200

B0世界最速フォトモデル

HP DesignJet Z6200

  • 写真品質を世界最速
  • HP Vividフォトインクでさらに向上した写真品質
  • 分光測光器「i1®」内蔵で色を正確に再現

※ HP調べ

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