2023.01.31
株式会社サード
株式会社サード
専務取締役/TGR TEAM SARD チーム代表 営業本部ディレクター 近藤 尚史 氏
モータースポーツの楽しみ方はいろいろある。EV車で郊外へ出かけ、ドライブを楽しんだり、SUVに乗ってキャンプをしたりと、日本では様々なライフスタイルに合わせた車種を選ぶことができる。SDGsへの意識が高まる中、ガソリンエンジンとマニュアルクラッチを搭載する、いわゆるスポーツカーもここへきて人気が再燃している。そんなスポーツカーの楽しみを何倍にも膨らませてくれるのがカスタムパーツの存在だ。車をスポーツとして楽しむための製品群をリリースしている株式会社サードではHPワークステーションを使った製品開発が行われている。どのようなコンセプトのもと開発が進められているのか伺ってきたので紹介しよう。
株式会社サード(以降、サード)は、モータースポーツ関連自動車の企画・開発・製造・販売や一般自動車関連用品の製造・販売を中心に活躍する企業だ。国内でも絶大な人気を誇る SUPER GTシリーズにも「TGR TEAM SARD」として参画して上位争いを繰り広げるなど、あらゆるジャンルで活躍する実力を持ち合わせているメーカーでもある。
「TGR TEAM SARDとして、脇阪寿一監督、および関口雄飛、中山雄一の両ドライバーの体制で2023年もチャンピオンを目指します」と、2023年(取材時)の抱負を力強く語る近藤氏。同氏はチームの代表としてレースをマネジメントし、サードでは経営のみならず、開発にも携わるなど多忙な日々を過ごしている。
「若者の車離れが話題になっていましたが、ここへ来てトヨタ自動車をはじめ、国産メーカーが次々とガソリンエンジンを積んだマニュアル車を発表しています。EV車全盛と思われている中、思い切った施策ですが、これが消費者にはとても受けているのです」と、自動車業界の盛り上がりについて語る近藤氏。一時期、車は排気ガスをもたらすいわば悪役のような捉えられ方をしていた時代もあったが、エコなEV車が普及すると同時に自動車本来が持つ魅力を再認識する動きが出ているのは事実だ。やはり、車の魅力はダイナミックな挙動と、自らがハンドルを握り、操る感覚にあるのだ。
「若い時代にスポーツカーに乗っていた世代が、大人になり当時を懐かしんで旧車を買うようなことは以前もありましたが、そうした世代にも現在のスポーツカーはとても人気です。加えて、父親が楽しそうに車に乗っているのを見て育った若い世代もスポーツカーに乗れるような年になってきたこともあって、そうした世代にも受け入れられるようになってきています。この先、いつまでガソリンエンジン車に乗れるか分からない。そんな思いが世代を超えて広がっているように思えますね」と近藤氏は語る。こうした自動車業界が盛り上がるにつれて、ムーブメントをけん引するのもサードの役目となる。自らのレーシングチームの活躍はもちろん、スポーツカーをより魅力的にするオリジナルパーツの開発など、様々なシーンで精力的に活動する彼らを支えているのがHPワークステーションだ。
SUPER GTシリーズで常にトップ争いを繰り広げるTGR TEAM SARD。彼らの活躍をぜひレース場で見て欲しい
「開発に使うワークステーションにはその世代でもっともハイエンドなスペックを求めています。CPUもグラフィックスもどちらもパフォーマンスは高ければ高いほど良いのです」と言い切る近藤氏。これまでもHPワークステーションを使い続けているサードが今回導入したのはHP Z8 G4 Workstationになる。インテル® Xeon® Gold 6226R プロセッサーをデュアルで搭載し、合計32の物理コアによる高い演算能力を発揮。96GBメモリ、HP Z Turbo Drive M.2 1TB TLC SSDのストレージ、グラフィックスにはNVIDIA RTX A5000という、ハイエンドパーツがバランスよく配置されることにより、あらゆる開発用のソフトウェアがそのポテンシャルを発揮できるスペックとなっている。
「パーツの開発には3Dデザインも使いますし、CFD解析のデータも活用します。ですからグラフィックスもCPUもどちらのパワーも大切です。ワークステーションのパフォーマンスが高いということはそれだけトライアンドエラーの回数を増やせます。それによって製品化までの期間も短縮されますし、品質の向上にもつながります。そういう意味ではHP Z8 G4 Workstationはとてもよく働いてくれていますね」と近藤氏は評価する。
今回導入されたHP Z8 G4 Workstation。ワークステーショントップレベルのパフォーマンスでサードの開発環境を支える
同氏によると、製品開発を担当するデザイナーにも変化が起きているという。「製品開発を担当するデザイナーには新卒の若手を起用しています。彼らは専門技術を若いうちから学んでいるので、とても優秀です。また、私たちの世代とは違うセンスも持っているので、それを伸ばすためにも、ベテランは彼らがのびのびと長所を伸ばしていけるような環境づくりをする役目を担ってもらい、若手には実力をさらに伸ばしてもらいたいと思っています」と近藤氏は語る。若い世代へのスキルを引き継ぎ、企業としてあるいはブランドとしてのサードの歴史を紡いでいく。そんな明るい未来像が近藤氏には見えているのだろう。
若手デザイナーの活躍が著しいサード。自動車業界の未来は明るい
また、サードはトヨタ自動車と協力関係にあることから、スポーツカーに関する3DCADデータを提供されている。「このデータは大容量ですから、HP Z8 G4 Workstationクラスでないと扱うことが難しいほどです。さらにデータをシミュレーションにかけると、もっとパフォーマンスがあっても良いかと感じるほどです」と近藤氏。もちろん、都度、こうしたデータを扱うわけではないが、最大負荷を考えるとHP Z8 G4 Workstationクラスが求められることは容易に想像がつく。パフォーマンスに振り切ったワークステーション運用で、レースに勝つための設計や、ユーザーニーズにマッチする製品開発の速度が上がるのであれば、投資対効果はかなり高いといえる。