2022.10.31
株式会社マリモレコーズ
映像制作に欠かせないワークステーション。カメラで撮影されたデータをはじめ、CG、音楽などをひとつの作品にまとめ上げるにはコンピューターのパワーは必須となる。業務の中心ともいえるワークステーションにおいて、HPを指名し続けるプロダクションがある。同社を導き、自身も著名なクリエイターとして知られる江夏 由洋氏に話を伺った。
株式会社マリモレコーズ デジタルシネマクリエーター 4K・8K Producer 江夏 由洋
マリモレコーズは少数精鋭のクリエイター集団として、数々の映像作品を生み出してきた映像プロダクションだ。映像から音楽まで、作品の中に息づくすべてを手掛け、様々なニーズに応えるプロフェッショナルな手腕には定評がある。「この事務所ではHP製品がほぼすべてなのです。マリモレコーズを起業し、ある出来事からHPのワークステーションに触れてから、ずっと使い続けています」とにこやかに語る江夏氏。
マリモレコーズが起業したのが2006年。その当時江夏氏はITリテラシーの高さもあって自作PCによる動画編集やレンダリングを行っていた。そんなある日、3Dコンテンツ作品の制作時にある問題が起こったのだという。「自作PCでレンダリングすると、終了まで2週間掛かることが分かったのです。納期に完全に間に合わなくなるので、慌てて当時からお付き合いのあったAdobeさんに相談したところ、HPさんを紹介してもらいました」と江夏氏は当時を振り返る。
事情を聞いたHPは、その当時のハイエンドモデル「HP Z800 Workstation」を貸し出し、課題のあった作業でのレンダリングを試してもらったのだという。「自作PCで2週間掛かる作業が、Z800だと3日で終わりました。おかげさまでその仕事を乗り切ることができたのがすごくうれしかったです」と笑顔で語る江夏氏。同氏はすぐに導入を決定。2台のZ800がマリモレコーズに設置されることになった。
その出来事以降、すべての作品において歴代のHP Workstationシリーズを使い続けているマリモレコーズ。使ってきた製品も「HP Z820 Workstation」「HP Z840 Workstation」「HP Z8 Workstation」「HP Z620 Workstation」「HP Z4 Workstation」「HP Z2mini G5 Workstation」など、あらゆるモデルを適材適所で活用してきたヘビーユーザーといえる。
HPのマシンを知り尽くしている江夏氏はHP グローバルアンバサダーにも選ばれており、オフィシャルインフルエンサーとして制作した「PROJECT Z」という作品もリリースされている。 「ぼくはZしか使いません。それぐらいこのWorkstationを信頼しています」と言い切る江夏氏がHPを指名し続ける最大の理由が「電源の安定性」なのだという。
HPとの協同で制作された「PROJECT Z」
「Workstationのアーキテクチャの良さに尽きるのですが、これまでOSのトラブルでブルースクリーンが出たことがあっても、マシン的なトラブルを体験したことは一度もありません。ですから、コンピューターが理由になって仕事が止まったこともない。マシンの安定性の根幹を支えているのは電源ユニットです。マザーボードに差し込まれているグラフィックスカードも、SSDもすべては正しく電力が供給されて始めて正常動作するのです」と江夏氏。
例えば自作PCの場合、マザーボードと電源をそれぞれ購入しても、事前にオプティマイズしているわけではない。当然、決められた規格はそれぞれにあるので動作はするが、同じように寄せ集めたそれ以外のパーツに正しく電力が供給されているのか調べるすべはないのが現実だ。「その点、HP Workstationならすべてのパーツを知り尽くしていますから、どんな組み合わせでも正しく電力が供給されていることが分かっています。ですから、安心して自分が導入したいグラフィックスカードやSSDを搭載させることができるのです」と江夏氏。
HPへの全幅の信頼を寄せる江夏氏だが、同時に自身でもPCの構成について詳しくないといけないという。「例えば、今までのコンピューターに最新のグラフィックスカードに差し替えたり、RAIDを組むためにHDDを何台か追加したら、突然動きが不安定になることもあると思います。それは故障ではなく、電源の容量が不足していることが原因かも知れません。グラフィックスカードやHDDのピーク消費電力がどの程度なのか、きちんと自分で理解していないとそういったことも起こりがちになります」(江夏氏)。
また、同氏はHPのWorkstationではコンピューターの各パーツの取り付けをスクリューレスで行なえるようになっている部分も評価しているという。「これはメーカーとしての自信の表れだと思っています。例えば自作PCの場合、マザーボードにパーツを追加していく際にケースにネジ止めして固定します。実は個人的にこのやり方はいつも疑問に思っていて、差し込んだときとネジ止めしたときではPCIスロットなどに与える負荷が変化しますよね。これを繰り返すとマザーボードに対するダメージが蓄積してしまうと思うのです」と語る江夏氏。
ネジ止めの場合、逆の言い方をすれば、ネジで固定しないとパーツが正しく差し込めていない、あるいは外れやすい状態にあるということにもなり得る。江夏氏はPCを構成する各パーツを取り付ける際の「精度」にこだわっているのだ。
「HPのWorkstationはグラフィックスカードを取り換えたときでもサクっと一発で収まります。この精度なら、パーツを交換しただけでマザーボードにダメージが蓄積することはないでしょう。ですから、HPのWorkstationはとても長く運用できるのだと思います」と江夏氏は語る。
実際にマリモレコーズが導入したZ800シリーズなどはいまだに現役で活躍しているのだという。「インテル® Xeon® プロセッサー搭載のZ820、Z840を買ったのはもう6年は使っています。グラフィックスカードはさすがに最新モデルに替えていますが、まだまだ使える状態です。この分ならあと4年は確実に活躍してくれるでしょう。確かにこのクラスのワークステーションになると高額ですが、10年使えることを考えればコストパフォーマンスは良好だと思いますね」と江夏氏は語る。
CGとの合成映像の8K出力には、Z8 G4のフルパワーが必要だった