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2022.08.31

カーボンフットプリントが重要な理由とは? 事例も交えてわかりやすく紹介

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製品を購入する時などに、カーボンフットプリントという言葉をよく耳にするようになりました。英語ではCarbon Footprint of Productsを省略してCFPと記載されることが多い言葉です。

製品ライフサイクルが自然環境に与える負荷をわかりやすく見える化し、製品やサービスに示すための概念として注目されています。カーボンフットプリントの算出方法や、具体的な企業の取り組み事例まで包括的に解説していきます。

1. カーボンフットプリントとは

カーボンフットプリントは、日本語で直訳すると「炭素の足跡」という意味の言葉です。製品やサービスにおける、材料調達・生産・流通・販売・廃棄・リサイクルまでを通して排出される温室効果ガスの総量を指します。

温室効果ガス排出量を算出することで、目指すべき削減量も明確になる効果があります。

① LCAとの違いや関連性

LCAはカーボンフットプリントを算出する手法の一つで、ライフサイクルアセスメントの略語です。ある製品やサービスの材料調達~廃棄・リサイクルにおける環境負荷を測定します。カーボンフットプリントは温室効果ガスを対象とし追跡を行いますが、LCAでは資源の枯渇なども考慮する点が異なります。

LCAの実施においては、ISO規格にて世界標準の基準が定められました。

日本においても、サステナビリティレポートやCSRについて報告する際にこの基準が利用されています。

参考・出典:エコリーフ/カーボンフットプリント(CFP)│一般財団法人日本品質保証機構
https://www.jqa.jp/service_list/environment/service/cfp/footprint.html
ISO 14040:2006│ISO
https://www.iso.org/standard/37456.html

② CFPプログラムとは

CFPはカーボンフットプリントの略です。CFPプログラムはCFPを見える化するためのプログラムで、一般社団法人サステナブル経営推進機構が主体となり推進しています。CFPプログラムの目的は製品やサービスの温室効果ガス排出量を見える化し、排出量削減についての気づきをシェアすることです。プログラムを申請することで、「エコリーフマーク」や「CFPマーク」を製品に掲載できます。

また、サプライチェーン全体で協力し温室効果ガスを削減することも目指しています。

2020年以降はSuMPO環境ラベルプログラムに活動が引き継がれており、相談会などが実施されています。

参考・出典:SuMPO環境ラベルプログラムとは│一般社団法人サステナブル経営推進機構
https://ecoleaf-label.jp/about/

③ スコープの概念

GHGプロトコルは、98年に世界各国のNGOや政府機関によって作成された温室効果ガス排出量の算定や報告に関する基準です。スコープとは、サプライチェーン排出量を算出するためGHGプロトコルで定められている温室効果ガス排出量の定義です。

サプライチェーン排出量の算出では、事業活動におけるすべての排出量を算出する必要があります。そのために考案されたのがスコープの概念であり、それぞれ以下のように定義されています。

Scope1排出量 自社による直接排出
Scope2排出量 エネルギー使用による間接排出
Scope3排出量 Scope2以外のサプライチェーン全体で発生するすべての間接排出

カーボンフットプリントについても、サプライチェーン全体での排出量、すなわちScope3における排出量も対象にする必要があります

参考・出典:サプライチェーン排出量算定をはじめる方へ│環境省
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/supply_chain.html

2. なぜカーボンフットプリントが注目を集めるのか

なぜカーボンフットプリントが注目を集めているのでしょうか。背景を確認していきましょう。

① 温室効果ガスによる気候リスクの高まり

温室効果ガス排出による気候変動によって、世界中で気温上昇や大雨などの異常気象または災害が起こっています。

そのほかにも、農業への影響や熱中症の増加、疫病や害虫などが生息するエリアが広まることなどが懸念されており、気候リスクは年々深刻になる一方です。

今後気候変動が長期にわたり続くと、社会経済へ不可逆かつ深刻な影響が生じることが懸念されています。

参考・出典:気候変動影響への適応│環境省
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r01/pdf/1_2.pdf

② ESG投資とESG経営の促進

ESGは、
・Environment(環境)
・Social(社会)
・Governance(ガバナンス)
の頭文字を取った言葉です。

気候変動問題や人権問題を背景とし、企業活動はこれらの観点にも注目して行われるべきだという概念です。国連で紹介されたことにより、ESGについての認知が一躍広まることになりました。

近年ESG投資も注目されるようになり、各企業における環境への取り組みが注視されています。その規模は既に世界で約4500兆円。投資家は、投資を決定する際に企業がどのように環境問題に取り組んでいるか、必ず確認するようになりつつあります

金融業界の動きを受け、企業のESG経営への取り組みも加速度的に活発になっています。各種情報開示やカーボンニュートラルに向けた実践を行う上で、カーボンフットプリントの可視化は避けて通れません。

このように、ESG投資の拡大と連動したESG経営の加速からもカーボンフットプリントに対する注目が集まっているのです。

関連リンク:ESGとは?意味やSDGsとの違いと関連性、企業の取り組み事例など解説
https://jp.ext.hp.com/techdevice/sustainability/planet_sc40_10/

③ 日本企業においても開示義務化の流れ

日本企業においても、カーボンフットプリントやカーボンニュートラルに関する開示義務化の流れができつつあります。この背景には、東京証券取引所が2021年に改定したコーポレートガバナンス・コードが大きく影響しています。

これを受け金融庁は、プライム市場(旧東証一部市場)における上場企業約4,000社に、温室効果ガス排出量の開示などを求めることを検討しています。なかでも、Scope3の開示要求が高まっており、Scope3の開示を行うということは、この4,000社のサプライチェーン傘下にいる企業も自ずと開示を要求されていくことにつながります

参考・出典:排出量・損失影響、4000社に開示義務金融庁、気候変動巡り│日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO76373730V01C21A0EA1000/

3. カーボンフットプリントの算出方法

具体的なカーボンフットプリントの算出方法にはどのようなものがあるのでしょうか。

① LCAとPCR(商品種別算定基準)

カーボンフットプリント算出の前提となるいくつかの考え方があります。ここでは、LCAとPCR(商品種別算定基準)について紹介していきます。

・LCA(ライフサイクルアセスメント)

ある製品やサービスを使う時のみでなく生産時、輸送時、さらには廃棄時にもエネルギーは使われます。製品が製造されてから廃棄されるまでの排出量を総合的に考慮することを、LCA(ライフサイクルアセスメント)と呼びます

・PCR(商品種別算定基準)

PCRはProduct Category Ruleの略語で、日本語では商品種別算定基準のことを指します。同一の商品群に対して、カーボンフットプリントを算出するために一連の規則や指示がまとめられたものです

PCRでは、対象となる製品サービスの定義と範囲・データ収集方法・算出に使用する二次データなどが定義されています。

参考・出典:初心者のためのCFP│CFPプログラム
https://www.cfp-japan.jp/beginner/

② サプライチェーン排出量の算出

サプライチェーン排出量とは、材料調達から廃棄までの事業活動全体で発生する温室効果ガスの総量を指します。自社の排出量のみでなく、事業に関わる取引先などのステークホルダー全体で排出する総量を算出できます。

サプライチェーン排出量を算出することで、どの段階でどれくらいの排出量を抑制すべきかがわかるというメリットがあります。サプライチェーン排出量はGHGプロトコルによって定義された、各スコープの合計量(Scope1+2+3)です

まずは自社の排出量である直接排出(Scope1)と間接排出(Scope2)を把握し、それから自社以外の排出量(Scope3)を測定していきます。

参考・出典:サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて│環境省
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SC_gaiyou_20220317.pdf

4. カーボンフットプリント算出の課題とその先

カーボンフットプリント算出や、その後にはどのような課題があるのでしょうか。想定される課題を見ていきましょう。

① サプライチェーンにおけるデータの取得や可視化が難しい

カーボンフットプリント算出の課題には、まずサプライチェーンにおけるデータの取得や可視化が難しいことがあげられます。これは、サプライチェーン上の排出量算出において、取引先などをはじめとするステークホルダーの協力が欠かせないからです。

ステークホルダーの協力が1社でも得られなければ、正確な算出は困難になってしまいます。

温室効果ガス削減の第一歩であるカーボンフットプリント算出がいかに重要か、という啓蒙活動から始め、賛同を得ることが求められるでしょう。

② 活動量と排出原単位による算出では施策を検討しにくい

現在主要な温室効果ガス排出量の測定方法は、環境省も企業に対して推奨している活動量と排出原単位を掛け合わせる手法です。ですがこの手法では、業種業態などの特徴を加味することはできないことが課題として挙げられています

このような課題を受け、少しずつ温室効果ガス排出量の算定サービスを提供する企業が現れはじめています。

③ 算出するだけでなく目標設定が重要

排出量を算出した後は、どう排出量を削減していくかという目標設定が重要です。目標設定には、SBTなどが使われています。SBTはScience Based Targetsの略語で、科学的な目標設定という意味の言葉です

これは、パリ協定における水準に合致する温室効果ガス排出量削減目標で、5-10年後を見据えて策定されます。SBTには認定機関とプロセスがあり、2022年3月現在で認定を受けている日本の企業は164社となっています。

また、カーボンフットプリントはサプライチェーンを主たる対象に算出します。しかしながらCO2排出量の削減を実現するには、消費活動も含めたバリューチェーン全体を意識して取り組みを行わなければならないといえるでしょう。

参考・出典:国際的な取組│環境省
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/intr_trends.html

関連リンク:パリ協定とは?内容や合意までの変遷、カーボンニュートラルなど企業に与える影響など
https://jp.ext.hp.com/techdevice/sustainability/planet_sc40_12/

5. 企業のCFPに対する取り組みや開示状況

企業のCFPに対する取り組みや開示状況には、どのようなものがあるのでしょうか。具体的な各企業の取り組みを見ていきましょう。

① HP

HPにおける気候変動対策で特徴的なのは、サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量だけでなく、バリューチェーン全体における排出量も可視化していること。

スコープ1-3を含むバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量ネットゼロを達成目標として、2030年末までに50%削減し、2040年までにネットゼロを達成するとしています

エネルギー効率向上などの各種取り組みにより、2021年におけるカーボンフットプリントは、2019年比で4%減少しています。さらに、2030年までに製品および梱包材における循環利用を75%に引き上げる予定です。

参考・出典:サステナブルインパクト│日本HP
https://jp.ext.hp.com/info/sustainable-impact/

② 大和ハウス

大和ハウス工業では、ESGに関する取り組みについてまとめたサステナビリティレポートを発行しています。レポート発行にあたり、編集方針まで詳しく公開しています。

その中におけるもっとも大きな特徴は、GHGプロトコルに基づいたスコープ1~3の排出量を表とグラフで細かく開示していることでしょう。同様にエネルギー効率や再生可能エネルギー比率も詳細に示されており、eラーニングや研修を通じて、環境教育マネジメントにも力を入れています。

また各都市でサプライヤーと気候変動問題などについて話し合う取り組みも実施。

サプライチェーンマネジメントにも注力しています。

参考・出典:サステナビリティレポート2022│大和ハウス工業株式会社
https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/csr/esg/csr_report/

③ ソフトバンクグループ

ソフトバンクでは、環境に配慮して事業を行うための環境ポリシーを定めています。

・関連の法令順守
・記憶変動への対応
・環境負荷低減と省資源

などが含まれています。

TCFD提言に基づいた気候変動情報開示も行っており、気候変動への対策としては、気候テック分野に対して積極的な投資を行っていくとしました。グループ全体では、2030年度までにカーボンニュートラルを達成するという目標を立てています

環境関連のデータ開示における特徴は、ソフトバンクとヤフーを対象にスコープ3の内訳を詳細に公開している点が挙げられます。

参考・出典:環境への取り組み│Softbank Group
https://group.softbank/sustainability/environment

6. まとめ

気候変動リスクの高まりやESG経営の機運が高まっていることを鑑みると、各企業でもカーボンフットプリントを考慮して事業に取り組むことが欠かせなくなっています。企業が行う気候変動対策の第1歩とも言えます。

とくに日本でも、コーポレートガバナンス・コード改定により、上場企業に温室効果ガス排出量開示が求められており、このことに対応するためには、彼らが構築しているサプライチェーン全体で対応していくことが不可欠です。サプライチェーンの傘下には多くの中小企業が世界中に存在します。

このように、脱炭素経営はあらゆる企業における必須命題です。すでに取り組んでいる企業はもちろん、開示要求をまだ受けていないとしても、まずは現状の可視化から始めてみてはいかがでしょうか。

【関連リンク】サステナビリティは、企業間のパートナシップを前提に創り上げていく協働作業
https://jp.ext.hp.com/techdevice/business/coreprint70_02/

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