2022.06.28

サステナビリティは、企業間のパートナシップを前提に創り上げていく協働作業

~印刷環境再構築から始める第一歩~

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もはや企業単体の取り組みではサステナビリティは達成できない、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー。それらへの移行を実現するには、サプライチェーン全体を巻き込む必要がある。しかしながら、どうやって? とお悩みの担当者も多いのではないだろうか。

そんなとき、ESG経営の選択肢としてサステナブルな商品・サービス展開をし始めているサプライヤー企業をパートナーに選ぶ、あるいは、すでにある枠組みの中に企業活動を同期させていく方法がある。もちろん、自社の目標設定や開示戦略は必須ではあるが、今すぐにできることのひとつがサプライヤーを見直し、調達方法を変えていくことだ。

実はHPは早くからサステナビリティに取り組み、2001年以来、毎年レポートを公開してきた。世界で多くの機関投資家が注目するNGO団体CDPによるランキングでは、最高評価であるトリプルAを3年連続で獲得している企業なのだ。

HPは、お客様とともに「最も持続可能で公正なテクノロジー企業」になることを目指している。そのように大きな目標に向けて私たちが取り組んでいること、そして、パートナーシップにより実現するサステナビリティの在り方について紹介していく。

1.日本企業においてもESG経営への対応が生命線となる

平成の「失われた20年間」。日本企業が低成長に悩み続けていたこの間に、グローバル企業は長期的な成長に向け大きく舵を切っていた。その旗印に掲げられたのが「ESG経営」だったが、ESG経営の本質を正しく捉えていた日本企業はほんの一握りだった。

グローバル経済社会においては、ESG経営に取り組まない企業は投融資先としての魅力を急速に失う。日本企業でも取り組まなければいけない重要課題であることを、今一度確認したい。

① ESG経営に関するグローバルと日本での認識の違い

ESG経営に対する考え方は、グローバルと日本とで大きな差がある。それぞれの認識を大まかに表現すると、グローバルでは「中・長期的な取り組みによって、利益の創出を後押しするもの」。日本では、「企業の短期的利益を圧迫してしまい取り組みが難しいもの」という見方が以前強い。

このような認識の差がどうして生まれたのだろうか? それは、ここ15年で起きた世界的なできごととその捉え方の違いが大きく影響しているように見える。

グローバルにおいてESG投資への機運が急速に高まったのは、2006年、PRI(※国連責任投資原則)により投資判断の際にESGを考慮すると提言されたことが大きい。

PRI(国連責任投資原則)

ESG、つまり「E:環境」「S:社会」「G:ガバナンス」に積極的に取り組む企業を高く評価するという方針が示されたのだ。これにより、グローバル企業はサステナブル経営へと大きく舵を切ることになった。

その後、2015年パリ協定の採択を通じてグローバル経済全体がサステナビリティに向かって進んでいく。パリ協定では、「気温上昇を産業革命以前と比べ最低でも2℃、できれば1.5℃に抑える」という目標が設定された。

一方、日本では2014年に、長期的思考により企業の持続的な成長を促そうとする「伊藤レポート」が発表されていた直後である。ここでは日本企業の生産性の低さを改善する取り組みがフォーカスされ「ROE(自己資本比率)を8%以上にする」という目標が注目され、ROEつまり短期的指標の改善に向けた経営の見直しが大きなテーマとなり、中長期的結果を重視するESG経営に目を向けられることは少なかった。

伊藤レポート(2014年版)

② ESG経営への転機

そんな中、2020年に行われた菅政権によるカーボンニュートラル宣言は、日本のESG経営の大きな転機となる。脱炭素社会に向けて、2050年のCO2排出量実質ゼロを目指すことが国家方針として表明されたのだ。この大きな出来事をきっかけに、日本でも投資家や金融機関、大企業を中心に意識が本格的に変わり始めた。

とくに金融機関がESG指標の優先度を上げたのは、大きな転換点といえる。ESG経営に取り組んでいない企業は、投融資先としての優先度を大きく下げるという意思表示ともとらえられるからだ。

グローバル経済、そして日本でも政府や金融機関、大企業はESG経営にすでに舵を切っている。まずはその動かしがたい現状に、私たちは目を向け危機感を持たなければならない。さらに重要なことは、どの企業にもサプライチェーンを中心とする企業間連携が企業活動に組み込まれている以上、どの企業も経営方針を見直すことが必須であるということだ。

※PRI=責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)
投資に対する原則として、国連が2006年に提唱。投資家が企業の分析・評価や意思決定を行う上で、財務指標に表れにくいESG要素を考慮すべきだとするガイドライン。

2.真のESG経営は自社だけで実現できない

日本でも徐々にESG経営が取り入れられ、中でもE(環境)に関してカーボンニュートラルの達成が喫緊の課題となっている。だが、実際のところカーボンニュートラルは自社単独では達成が難しい。

サプライチェーン全体でCO2排出量を把握・開示するよう社会的要請が強まっているためだ。自社の活動だけで製品やサービスの提供を実現するのは難しいため、調達から製造・物流・廃棄など一連のサプライチェーン全体を自社活動として捉え、全体のCO2排出を管理しようという考え方が必要である。

例えば、上流企業単体ではCO2の排出が少ない業界でも、下流企業群が膨大な量のCO2を排出していることもあるかもしれない。それではその上流企業の活動を促進するのみではカーボンニュートラルは達成できない。また、サプライチェーン上のボリュームゾーンは中小企業だ。それらの協力企業とともに、CO2削減に取り組む必要がある。

次の章では、自社だけでESG経営が達成できないことを念頭に置きつつ、その実現方法について考えていきたい。

3.ESG経営とは「CO2ゼロ」と「格差ゼロ」を目指すこと

では、企業はどのようにESG経営に取り組めば良いのか? まずはESG経営の要素を整理してみよう。

ESGはSDGsとも深い関連があり、SDGsを人類が目指すゴールだとするとESGはそのゴールに向かうために企業に与えられた手段だとみることができる。また17の開発目標をもつSDGsの要素を集約すると「CO2ゼロ」「格差ゼロ」の社会をつくり維持していくことと捉えることもできる。そのことにESGを対応させると、

  • E:サステナブルな環境 = CO2ゼロ を目指す
  • S:サステナブルな社会 = 格差ゼロ を目指す

そして、これらEとSの活動を管理、監督していく活動がG(ガバナンス)となる。

CO2ゼロ・格差ゼロが達成されゆく社会の中で、長期的な視点でゴールを定め、そこに向け日々の企業活動を管理し、対応させていく。また、加えて気候変動のみならず、未来に予想されるあらゆるリスクに対処できる企業体質に変革させていく。

あるべき姿に向けて企業活動を管理・監督し、それら企業活動を全ステークホルダーに開示していくのがガバナンスであり、ESG経営において重要な点である。

4.HPのESG経営への取り組み

HPもまた製造業であり、多くのステークホルダーを持つ。HPはどのように “サプライチェーン全体として” ESG経営に取り組んでいるのか。その具体例を紹介したい。

HPでは、最も持続可能で公正なテクノロジー企業になることをゴールに定めている。そのための計画を「サステナブルインパクト戦略」にまとめ、グローバル全社員で取り組んでいる。

持続可能性の高い企業活動を実践する戦略の具体的な軸は、「気候変動対策」「人権」「デジタルエクイティ」の3つだ。

① 気候変動対策

低炭素社会の実現において、2040年までにHPのサプライチェーン全体で温室効果ガス排出量のネットゼロ(排出量を差し引きゼロにする)達成を目標とする。これは世界中の企業がカーボンニュートラルへの目標設定をおおよそ2050年とする中で、それよりも10年早い目標達成を目指す。

そのための活動分野を「サーキュラーエコノミーへの移行」および「森林破壊ゼロの達成」「再生エネルギーへの転換」の3つに置く。

(1)サーキュラーエコノミーへの移行
全バリューチェーン(サプライチェーンに加えて、すべての協働活動を行うパートナーを含んだものをHPではバリューチェーンとして設定している)を循環型経済に構築・推進していく。廃棄物を出さない、あるいはサプライ品に使用される資源を循環させていく取り組みだ。

  • 2025年までに、HPのパーソナルシステムズおよび
    プリンティング製品ポートフォリオ全体で再生プラスチックを30%使用
  • 2030年までに、製品と梱包材の循環利用率75%を達成  など

(2)森林破壊ゼロの達成

  • HPブランドの用紙と紙製梱包材に関連する森林破壊ゼロを継続(2022年時点ですでに達成しているため、これを継続)
  • 2030年までに、HP製品とプリントサービスで使用されるHP以外の用紙による森林破壊を抑制 など

(3)再生エネルギーへの転換

  • 2025年までに、グローバルの業務で、再生可能エネルギーを100%利用 など

② 人権

人権においては、グロ―バル全体で強力なダイバーシティとインクルージョンの文化を創造する。人権および社会的な公正、人種とジェンダーの平等を推進していく。HPの企業内とサプライチェーンパートナーに対しての2つのアプローチで取り組みを進める。

(1)HPの企業内における取り組み

  • 2030年までに、HPの幹部職において男女比率50%のジェンダー平等を達成
  • 2030年までに、技術職およびエンジニア職における女性の割合30%以上を達成 など

(2)サプライチェーンパートナーに対する取り組み

  • 2030年までに、労働者エンパワーメントプログラム(主に工場に従事する労働者について教育を施し収入を得られるように支援する活動)を通じて100万人の労働者を支援
  • 2030年までに、主要な契約製造サプライヤーすべてとリスクが懸念される
  • 二次サプライヤーに対して労働関連の人権尊重を保つ  など

③ デジタルエクイティ

デジタルテクノロジー企業の責任として、デジタル格差を解消する。インターネットで世界中が繋がる中、デジタル格差があるために適切な雇用や教育、医療へのアクセスを満足に得られない地域がまだまだ存在している。そうした地域の人々も十分なサービスを受けられるよう、総合的なソリューションを主導、提供していく。

  • 2030年までに、1億5,000万人のデジタルエクイティ(公平性)を推進
  • 2016年から2025年の間に、100万人のHP LIFE(無償のスキルトレーニングプログラム)ユーザーを動員
  • PATH(Partnership and Technology for Humanity)の取り組みを通じ、十分なサービスを受けられない地域社会に向けデジタル格差を縮小  など

HPではこうした取り組みにより、テクノロジー企業としての責任を果たすとともに、バリューチェーン全体でESG目標を達成していきたいと考えている。そのことにより、CO2ゼロ、格差ゼロの社会を創り、そうした社会の中でビジネスを継続していくことを目指している。

また、HP製品を購入・サービスを使用するお客様は、CO2ゼロ、格差ゼロの社会を一緒に構築していくパートナーとして捉えている。お客様も一緒に、直接的・間接的に、CO2削減や格差ゼロに取り組んでいる、つまりお客様事前のESG経営の一部が実践されているということになるのだ。

5.HP MPSの活用でサステナビリティへの貢献が実現可能に

ESG経営の実施は経営活動そのものに関わり、企業全体の方針転換を迫られる。だからこそ、小さく始められる取り組みからスタートし、小さな成功体験を積むことが重要だ。

例えば、印刷環境は取り組みやすい分野である。HPが提供するMPS(マネージドプリントサービス)を利用いただくだけで、とくに「E(環境)」の面において以下のメリットが得られる。

① 気候変動への影響を軽減
② 循環型低炭素経済への移行
③ 健康的な室内環境

① 気候変動への影響を軽減

HP純正サプライ品は、気候変動の影響を軽減するよう設計されており、HP MPSを導入することで、気候変動の影響を低減できる。

  • 温室効果ガスの排出量の削減割合12%
  • 資源効率の改善割合13%
  • HP MPSの活用による生態系におよぼす影響の低減割合12%

※HP MPSと、HP Enterprise LaserJetプリンターの従来型取引ビジネスモデルを比較した場合。

参考:Assessment Shows Service-based Models Deliver Positive Environmental Impact

② 循環型低炭素経済への移行

HPのプリンティング事業の特性上、森林資源の保全はサステナビリティの実現にとってポイントとなる。

そのため、調達・製造段階からお客様の使用、製品の廃棄に至るまで、サーキュラーエコノミーを構築することで廃棄物ゼロを目指している。現時点でもすでに森林破壊ゼロを達成しているが、その継続とさらなる応用を展開していく予定である。

  • HPブランドの用紙と紙製梱包材に関連する森林破壊ゼロを継続
  • 2030年までに、HP製品とプリントサービスで使用されるHP以外の用紙による森林破壊を抑制
  • すでに、HPトナーカートリッジの100%およびHPインクカートリッジの85%に再生材料を使用
  • 同じくすでに、1日に約100万本のペットボトルをHPインクカートリッジに使用するためにリサイクルしている

※100%のHP純正トナーカートリッジで、1~75%の使用済みまたは産業廃棄物リサイクル材料が使用されている。85%以上のHP純正インクカートリッジで、4~75%の再生プラスチックが使用されている。対象製品は、以下の参考を参照。

参考:hp.com/go/TonerRecycledContent
参考:hp.com/go/InkRecycledContent

③ 健康的な室内環境

HP純正サプライ品は、健康的な空気室気質(IAQ:Indoor Air Quality)にも貢献する。空気室気質は、室内・建物の空気中に含まれるガス成分量を数値化したものだ。酸素や二酸化炭素をはじめ、人体に有害な物質が空間内にどれくらい含まれるかを計測している。

HP純正サプライ品により、お客様はIAQエコラベルの排出基準を満たすことができる。またHPの多くの製品が、EPEAT®(電子製品環境評価ツール)の最高ランクであるゴールド認証を取得していることは事実である。

  • IAQに関するエコラベル(EPEAT®など)の排出基準に準拠
  • EPEAT®やBlue Angelなどのエコラベルの排出基準に準拠するために、家庭/オフィスのプリンターとサプライ品の室内空気質の性能を自主的に設計、試験
  • 非純正トナーカートリッジの94%がEPEAT®の室内空気質テストに不合格(※)-つまり純正トナーが大きくIAQに貢献している

HPのサステナビリティ実現に関する以上のような取り組みは、外部機関からも高く評価されている。世界で多くの機関投資家が注目をしているCDPランキングでは、最高評価であるトリプルAを3年連続で獲得しており、このような評価を客観的に得ている企業はグローバルでもほとんど存在しない。

繰り返しになるが、HP製品の購入やサービスを利用するお客様は、サステナブルな社会への貢献をHPと共に実践していくパートナーとなり、より大きな循環の中で企業活動が展開できるようになる。CO2ゼロ、格差ゼロへの貢献がより大規模で実現するのだ。私たちはこの輪をぜひ、日本企業のみなさまにも広げていき、2050年日本全体でのカーボンニュートラルへと貢献したい。

※APJ地域で購入された15種類の非純正カートリッジの2021年2月WKI Blue Angel室内空気質調査(HPの委託による)。
参考:HP.com/go/IAQnonhpAPJ2021

※EMEA、NA、LA地域で購入された26種類の非純正カートリッジの2019年11月WKI Blue Angel室内空気質調査(HPの委託による)。

まとめ:印刷環境の再構築からサステナビリティへの一歩を

ESG経営はもはや世の中に存在するすべての企業の重要課題だ。取り組まなければ、投融資を受けづらくなってしまうだけでなく、経済社会から取り残されてしまうリスクがある。

しかしながら、何から始めればいいか悩んでしまう企業が多いのも事実だ。ESG経営の実施には、長期的な視点の設定とリスクの特定、そしてサプライチェーン全体を巻き込む活動が必要になるからだ。

そんなとき、HPのようにESG経営を、事業の中核へとすでに取り込んでいるパートナー(サプライヤー)を選ぶとわかりやすく活動が開始できる。もちろんCO2量の現状測定も始めなければならないが、一方でスモールスタートを前提として、このような企業に相談してみることも大切ではないだろうか。

まずは、取り組みやすい印刷環境の見直しからサステナビリティへの取り組みを始めることも選択肢のひとつとして考えてみてほしい。

下記必要事項を記入の上、ボタンを押してください。

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