2020.11.12

柏村印刷、新たな印刷領域に進出〜激変する顧客ニーズにデジタル印刷で対応

HP Indigo 12000 HD デジタル印刷機導入

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 柏村印刷(株)(本社/島根県浜田市、柏村英男社長)は、「HP Indigo 12000 HD デジタル印刷機」を導入し、今年6月より稼働を開始した。創業から108年という歴史の中で、活版印刷からオフセット印刷へと進化してきた同社の印刷ビジネスは、今回のHP Indigoソリューションの導入により、デジタル印刷という新たな領域に進出していくこととなる。今回、同社の柏村社長にHP Indigo 12000 HD デジタル印刷機を導入した経緯や導入後の成果、そして今後の事業戦略などについてうかがった。

柏村 社長

柏村 社長

 柏村印刷は、紙商を営む一方で活版印刷も手がける印刷会社として1912年に創業。以来、108年間にわたり印刷業務を展開してきた。1955年には、高品質・高生産性を目的にオフセット印刷部門を立ち上げ、活版印刷からオフセット印刷への転身を図り、現在では、B2オフセット輪転機2台のほか、菊全8色枚葉オフセット印刷機などの最新設備を有している。

 さらに近年では、印刷業務から事業領域を拡げ、Web制作や、地元・島根県の特産を多くの人に指定いただくためのネット通販、人材派遣業など多角的にサービスを広げ、浜田市に留まらず島根、山陰、また中国地方全域にビジネスマーケットを広げ広島・大阪、東京にも支店を置き活動を展開している。

 印刷物の主な受注品目としては、チラシなどの商業印刷物が中心となっているが、同社の大きな特徴の1つが取引先の種別だ。

 「当社の売上比率に占める官公需の割合は、約20%で、残りの80%は、民間企業との取引先となっている。この辺の地方性を考えると非常に珍しいかもしれない。これは先代である父の時代から、積極的に最新設備を導入し、『守りの姿勢』ではなく、『将来を見据えた経営』を推し進めたことで民間企業との取引が増えた要因と考えている」

 この「将来の見据えた経営」の理念は、現社長である柏村社長にも継承されており、先代の時代から現在まで、5度のM&Aを実行している。20年前に若干39歳で経営のトップに就任した柏村社長も、その中で3度のM&Aに着手し、企業基盤の強化を図っている。

 また、DTP環境の整備にも早くから取り組み、従来のアナログ作業の体制から一気にPCなどを活用したデジタルによる前工程の効率化を実現した。この取り組みは、顧客への提案力の向上にもつながり、その結果、印刷物の受注にも大きな効果をもたらした。

紙媒体減少の要因は顧客ニーズの変化

 オフ輪と枚葉機を有する同社であるが、ここ数年は、オフ輪市場が減少傾向にあるという。一見すると「ペーパーレス化」による紙媒体の減少と思われるが、柏村社長の見解は、その考えとは少し異なっている。

 「お客様の売り方が変化したことが大きな要因と言える。従来のように店舗で商品を販売する形態ではなく、ネット販売やSNSなどを活用したプロモーションなど、お客様自体が商品の売り方を変えてきている。その環境下でチラシを印刷し、不特定多数に配布しても、お客様が満足する成果を得ることはできない」

 加えて柏村社長は、従来型の大量印刷では、リアルタイムによる情報伝達に限界があると指摘する。

 「キャンペーン告知などの販促ツールは、概ね1ヵ月前から制作を開始する。しかし、その間にもお客様が売りたい商品、さらには実際に購入する消費者のニーズは変化していく。結果として印刷物が配布された時には掲載されている商品への興味がなくなり、販促ツールとして費用対効果を生み出すことはできない」

 つまり、従来ビジネスモデルであった広範囲かつ大量に配布する、といった販促ツールの制作ではなく、発注者側の意向、つまり売りたい商品を売りたいタイミングでプロモーションすることが求められている。

 この課題の解決策として柏村社長は、デジタル印刷機の導入を検討することとなる。

デジタル印刷におけるHP社の実績を高く評価

 同社では、以前から可変情報印刷への対応について問い合わせがあったという。柏村社長もオフ輪または枚葉機とPOD機を連携させた可変印刷への対応を検討していたこともあった。しかし、この方法では、オフセット印刷後にPOD機で可変印刷という2工程が必要となる。

 やはり生産性や効率化を考慮するとワンパスで完結することが最低限の条件となる。加えて印刷品質は譲れない条件の1つだ。しかし、柏村社長は、機種選定にあたり、複数メーカーに打診することなく、日本HPに導入を前提に商談を進めていく。

 その点について柏村社長は、「デジタル印刷機を導入するだけでなく、世界市場で印刷のデジタル化を推進してきたHP社の実績やノウハウ、そして当社がデジタル印刷機を有効に活用していくためのサポートを得ることが目的であった」と説明する。

 柏村社長は、デジタル印刷機導入を契機に、これまでのオフセット印刷事業とは別に、新たにデジタル印刷事業として立ち上げる構想をもっていた。

 そのため本格的な生産機としての導入は、今回が初めてとなる同社にとって、ワールドワイドで展開し、多岐にわたるブランドオーナーへの提案・採用実績を誇るHP社の事例は、印刷機本体と同等の価値があると柏村社長は考えている。

 「デジタル印刷機の機能や価値は、当社だけでなく、お客様とともに共有するもの。それには、お客様が求めていることや困っていることなどを把握し、印刷というツールによって解決していくことが重要であり、デジタル印刷機は、それらニーズに的確に対応できる生産機であると確信している」

 そして同社は、「HP Indigo 12000 HD デジタル印刷機」を導入し、今年6月より稼働を開始した。

HP Indigo 12000 HD デジタル印刷機

HP Indigo 12000 HD デジタル印刷機

 同社が導入したHP Indigo 12000 HD デジタル印刷機は、HP Indigoのエレクトロ液体インキ技術と独自のデジタルオフセット機構により高い印刷品質を実現する750mm広幅シート型デジタルオフセット印刷機。大幅な進化を遂げたHDイメージングシステムの採用により、オフセット印刷品質同等の高いレベルの滑らかで鮮明な印刷を可能としている。HP Indigoエレクトロインキは幅広い色域を持ち、基本構成は5色、最大で7色までのインキを使うことで、パントン色域における最大97%の再現が可能となっている。

  さらに同機は、カラーマネジメントの簡素化と自動化のため、ソリューションを統合。これにより色調整や再印刷の回数を減らすことができるので時間とコストの節約にも貢献する。また、HP PrintOSxを利用し、生産現場をネットワーク接続で管理することで、適切なプロセスとより正確な色が確認できる。さらに、オフセット印刷とHP Indigoテクノロジーの間での印刷時期、印刷機、印刷拠点が異なっていても色の一貫性が維持できる。

顧客の声をHP Indigoでかたちに

 本格稼働を開始した同社であるが、当面はバリアブル印刷機能とリモート機能を前面に打ち出した営業展開を中心としていくという。

 「バリアブル印刷については、その機能をいかにお客様のビジネス発展につなげていくかを念頭に置き、提案活動を行っていくことが必須と考えている。また、リモート対応機能については、お客様と当社における中間コスト削減が期待でき、さらに、現在のコロナ禍における業務形態にも適している。また、デザイナーなどの中間クライアントに対しては、色校などの効率化につながるはず」

CMYKに加えライトシアン、ライトマゼンタ、プライマーを搭載

CMYKに加えライトシアン、ライトマゼンタ、プライマーを搭載

 同社の営業スタッフは、18名在籍しているが、柏村社長を含めた5名で、すでに10件の仕事を受注し、HP Indigo 12000 HD デジタル印刷機で生産が行われている。また、デジタル印刷機の機能を顧客に理解してもらうことが稼働につながることから、従来型の営業ではなく、提案型の営業力の向上にも貢献している。

 さらに同社は、デジタル印刷機を有効に活用するための営業基盤を有している。それは、圧倒的な直取引の多さだ。

 「当社は、ほぼ100%、元請け仕事で、中間クライアントが会する仕事はほとんどない」

 未だ同業間ビジネスが多い印刷業界において、同社は、顧客との直取引を主流としている。これには、顧客の生の声を直接感じるというメリットがある。また、中間業者が介在しないということは収益構造の優位性にもつながっていく。

 デジタル印刷機のメリットは、顧客と共有するものと断言する柏村社長は、「この体質がなければ、お客様が本当に求めている付加価値を知ることができない。おかげさまで当社は、B to Bを基本としているので、お客様の声をIndigoでかたちにできる」と、顧客とともに真の付加価値創出をIndigoで実現していく考えを示した。

鮮やかな色再現が可能

鮮やかな色再現が可能

来たるべきデジタル印刷時代への準備

 今回のIndigo導入は、営業および生産部門の意識改革にもつながっている。営業部門では、顧客ニーズを反映した新規物件の提案を、そして生産部門では、より効率的・効果的な稼働を、といったようにIndigoの機能を最大限に引き出すための取り組みが日々行われているという。

 柏村社長は、デジタル印刷事業の確立に3年という期間を想定している。

 「日本HPの担当者からは、もっと短いスパンを目指しましょうと提案を受けているが当社にとって、この新事業は重要なものである。オフ輪、枚葉、デジタルが三位一体となることが理想であるが、残念ながら激変する市場環境では、その構図を存続することが難しくなっていくと思う。その時、デジタル印刷の経験値がなければ、印刷会社としての成長は期待できない。そのためにも3年という時間をかけて、当社、そしてお客様に最適なデジタル印刷事業を構築していきたい」

 同社では、技術検証を行いながらデジタル印刷の実績を着実に積み上げいくことに注力していく。そしてパッケージ印刷への展開や後加工設備などを増強することで、さらなる付加価値創造の幅を拡げていく方針だ。

【本記事は 印刷時報株式会社 が制作しました】

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