2022.10.13
企業活動を行う上で、必ずコストは発生します。適切にコストをコントロールすれば、利益を増やし、経営を安定させられます。しかし、むやみやたらとコスト削減することは、品質の劣化やモチベーションの低下も伴います。
では、どのようなポイントを押さえてコストを削減していくべきなのでしょうか。注意するべきポイントや、効果的な施策を紹介していきます。
そもそも企業のコストには、どのようなものがあるのでしょうか。企業において発生するコストは、製品やサービスを作る上でかかる製造原価に含まれるものと営業活動として計上される販売管理費(以下、販管費)に大別されます。これら両方において適切なコスト管理を行うことで、業務効率化や生産性向上にもつなげられます。
しかし、コストばかりに目が行き過ぎてしまうと、製品品質が落ちたり、ミスやトラブルが起きたりすることで余剰コストが増え、結果として財務指標に現れる生産性も落ちてしまいます。コスト削減の目的である生産性向上につながるよう意識して実施していくことが重要です。
まずは、コストの中で大別される変動費と固定費の中身を見ていきましょう。
まずは、販管費における変動費と固定費について説明します。固定費は売上や事業の状況に関わらずかかる経費のことです。代表的な固定費は、人件費・通信費・オフィス賃料・光熱費などがあげられます。人件費は、一般的に固定費の中でももっとも割合が高いものです。
変動費は売上や事業の状況に応じて変動する経費のことを指します。代表的な変動費は、残業代・広告宣伝費・在庫管理費・消耗品にかかる費用・交通・出張費、採用・教育費などです。
製造原価においても、変動費と固定費が発生します。例えば、印刷会社における商業用の印刷機に関しては固定費として人件費や印刷所の賃料が、変動費として用紙代・インク代・電気代などが発生します。
製造原価は費用によって年単位で変化がないものと、月単位や日単位などで変化があるものに分かれます。
コストは、見えるコストと見えにくいコストにも分けられます。見えるコストは、仕入れの費用や人件費など、帳簿に反映され算出しやすいコストです。反対に、見えにくいコストとはどのようなものなのでしょうか。代表的な見えにくいコストとして、オペレーションコストがあります。
オペレーションコストとは、契約や保守管理、発注・トラブル対応などにかかる人的かつ時間的なコストです。オペレーションコストは把握が難しく、増大するとコア業務や事業経営そのものに影響を及ぼしかねません。
例えば先ほどの例と同じ印刷会社の場合、一定の時間内でどれだけ印刷できるかという能力は導入している機械によって決まるため、同じ機械を有する競合他社とは差別化できません。
ではどこでコスト削減や効率化を行うのでしょうか。その1つがオペレーションコストです。各部門間の打ち合わせや、省力化や自動化の実現、業務プロセスの短縮化などをどれだけ効率的に行うかという点で差を出すことが可能です。
コスト削減はコストを削ることが最終的なゴールではなく、企業の生産性向上が目的です。そのため、単に削るだけではあまり意味があるとはいえません。生産性向上、すなわち付加価値を伴った利益率向上への貢献、あるいは質に影響を与えずに実施するコスト削減、のどちらか、あるいは両方に貢献することが重要です。アウトプットの質は前者、量の向上は単価削減という点で後者ということになります。
コスト削減を行う際の注意点には、どのようなものがあるのでしょうか。
上述のとおり、コスト削減の目的は生産性の向上です。不要なコストを削減することで、粗利や営業利益を増やせ、財務状況を改善できます。財務状況の改善は、金融機関・企業調査会社からの評価を高めます。業務プロセスにおけるムリ・ムダ・ムラを減らすことで、生産性の向上も期待できます。
しかし、あまりにもコスト削減に固執して業務遂行のモチベーションが落ちるような削減や、品質が落ちる削減、あるいはプロセス自体の複雑化を行ってしまうと、品質劣化による顧客離れやトラブル(見えないコストの増加)の要因が発生していますので注意が必要です。
コスト削減の結果、生産性がどう変わったかについて検証することがもっとも重要です。費用削減施策を実施しても、効率が悪化したり、質が低下したり、利益率や総合コストの増加が発生していれば当然のことながら見直すべきです。コストの削減は効果の見極めと継続性が重要ですので、PDCAプロセス作りが欠かせません。
コスト削減を行うステップには具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
コスト削減を行うには、まず現状の可視化が必須です。ムリムラムダをなくすためには、まず業務プロセスを可視化して現在の工数を算出していきます。これまでの業務における工数や人員体制などのデータを収集することで改善すべき点も見えてきますし、効果測定もしやすくなります。
製造コストについては原価計算が必須で見えやすいため、注力している企業も多いですが、販管費についてはおよその計算になりがちです。
さらに、最も可視化しにくいのが人的工数とそのコストです。必要に応じて現場へもヒアリングしましょう。最終的には可視化された人的工数の増減を含めた評価をしていくことになります。
現状を可視化し、分析を行うことで改善点や目標が見えてきます。具体的なコスト削減案を立案し、目標を定量化しておくことで、後の効果測定も容易になります。
目標設定も、コスト削減だけではなくそこから得られる生産性向上の指標まで落とし込むようにしましょう。また従業員のモチベーションを損なわないような目標設定や、ルールづくり、施策の合理性や実現性に配慮することも重要です。
一気に高い目標を目指すのではなく、実現可能な目標を少しずつクリアし、結果的に大きな目標達成を目指すなどのアプローチも有効です。
実施と検証の際には、PDCAを定着させることが望ましいといえます。一度実施して終わりではなく、常に現場で自発的に改善し続ける土壌や文化を作ることが重要です。
コスト削減の実施には、各種ITツールの導入も効果的です。ペーパーレス化を促進することで、紙の印刷や、郵送代、保管代を削減できます。同時に、ハイブリッドワークなどの多様な働き方にも対応できます。
また、ルーティンワークが発生している場合にはRPA(Robotic Process Automation)をうまく取り入れることで自動化でき、大幅な工数削減に繋げられる場合もあります。ミスやトラブルが減り「見えないコスト」も削減可能です。
入力作業などが多い場合には、使えば使うほどAIが学習してくれるAI-OCR(Optical Character Recognition/Reader)を導入することで帳票などを自動で変換し、入力できます。印字テキストをデータ化することで、分析やレポーティングなどのデータ加工が容易になります。
このように、発生する業務の頻度やシチュエーションに応じてITツールを活用することで、コスト削減だけでなく、生産性向上や従業員のモチベーション向上などが期待できます。
生産性向上にもつながりコスト削減も期待できる施策を紹介していきます。
新型感染症の拡大に伴う緊急事態宣言などにより、リモートワークやハイブリッドワークは急速に浸透しました。オフィス勤務とリモートワークについて両立するハイブリッドワークを導入し、働く場所を選べるようにすることでその時々にふさわしい働き方ができます。
たとえば集中したいときは在宅で、発想を刺激したい場合は人と触れあうオフィスで、など個々人のパフォーマンスが最大化できるような仕事環境の構築が実現可能です。同時に通勤費や出張費等の削減にもつながります。
参考・出典:テレワーク推進の中小企業の課題とは?事例や補助、導入方法を解説│HP
上記に関連して、オフィスや就労環境の見直しは生産性向上に寄与します。例えば、固定席をなくして、フリーアドレスについて導入することで社内コミュニケーションが活発になることも考えられます。(フリーアドレスについては、近年フリーアドレスもいずれ固定席化されてしまう事例も増えており、導入後の結果管理や改善も重要)
また近年、ワーケーションやABM(Activity Based Working)も注目されています。ワーケーションは海辺などのリラックスできる場所から働くことを指します。ABMはより柔軟で、気分に合わせて働く場所や時間を選ぶワークスタイルです。
個々人に合わせた場所や時間で働けることから、長い目でみた個人の生産性向上も期待でき、加えてオフィス賃料の最適化が実現しやすくなります。
総務部門やIT部門に代表されるバックオフィス部門においては、利益確保のためコスト削減が命題となっていることも多くあります。日本企業においては、無駄を省く、というコスト削減方法が定着していますが、業務を効率化できるツールの導入や、イノベーションを起こしやすくすることで結果的に利益をあげていくアプローチも効果的です。
また、コスト削減と生産性向上の両立を実現するには、印刷環境見直しのインパクトは大きいといえるでしょう。
仕事を進めていく上で発生する印刷、スキャンといった業務を管理していく間接的なコストをまで考慮し、印刷環境を可視化して見直すことで、プリンター・複合機の数を最適化し、またプロセスを見直すことで消耗品であるトナーや印刷用紙の削減、そこにかかる工数削減にもつなげられます。利用しているデバイスのデータを分析し、間接的なコストまで見直すことで従業員の働き方や業務フローを見直すことも可能です。
包括的な印刷環境の見える化や分析に有効なのがMPS(マネージドプリントサービス)です。
HP MPSは、複合機など印刷機器の調達から消耗品管理ツールなどを一括で行えるアウトソーシングサービスです。HP MPSを利用することで、印刷環境の見える化と最適化が実現可能になります。例えば、可視化できる項目には以下のようなものが含まれます。
これらの情報により、改善するべき項目がわかればコスト削減も容易です。詳しくはぜひHP MPSの資料で確認してみてください。
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