2021.05.28

日本HP サービス・ソリューション事業本部高木聡による印刷環境再構築への提言 第一弾

総務部門とIT部門の協働で新しく実現するニューノーマル時代の印刷環境とは?

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リモートワークの普及やドキュメントのデジタル化など、企業のワークフローは今大きく変化しつつある。さらに、コロナ禍や企業が積極的に推進するDXやCX(コーポレートトランスフォーメーション)の影響で、その変化はさらに加速している。

このように不透明かつ変化が激しいビジネスの現状において、企業の印刷環境はどのようになっているだろうか。例えば、リモートワークの普及に伴い、オフィスの印刷機の稼働率がこれまでのピーク時に対して半分以下に落ちたというケースもあるだろう。またDXの掛け声とともに推進されたデジタルソリューションの導入に伴い、特定機能の利用のために遠くの印刷機を使わざるを得なくなったというケースもあるかもしれない。

ニューノーマル時代の印刷環境では、こういった問題の解決はもちろん、働く場所と働き方の多様性に応じて、変化していくオフィスの形態へと適応していくことが要求される。そこで今回は、ニューノーマル時代にあるべき印刷環境そしてその実現手法について、株式会社日本HP サービス・ソリューション事業本部 マネージドサービスデリバリー部 部長・高木聡氏のインタビューを通じて考察する。

なぜ印刷環境の再構築が必要か?

近年、多くの日本企業では「働き方の多様性」を実現することが強く求められてきた。これは、コロナ禍で加速しつつあるテレワークをただ単に導入する、ということではない。画一的な働き方を要求するのではなく、従業員の状況に応じたその人にあった働き方を実現させることで生産性や満足度の向上に努めよう、というのがこの「働き方の多様性」である。これに対応すべく、まずはテレワークの導入から進めてきたのではないだろうか。その結果として、有給休暇の取得促進や、在宅のみならず、サテライトオフィスやオフォス以外で業務を行う柔軟な働き方の実施など、さまざまな形で働く環境が特にこの1年で大きく変わったはずである。

そして現在、そのような働く環境の変化にあわせて、オフィス自体の見直しやそれにあわせた各種デジタルツールの導入、また新しい環境にあわせた業務フローそのものを見直す企業も急激に増えている。もちろん企業だけでなく、各省庁もこれまでの業務フローに疑問を唱え、「脱ハンコ」などを中心に業務プロセスのデジタル化が実現したのは、その一例とも言える。

テレワークの導入にしても、脱ハンコにしても、以前から問題として捉えられながらも、なかなか実現しなかったことを考えると大きな進歩である。しかしながら、この変化は企業にとってまだ序章にしか過ぎない。高木氏のコメントからそのことを説明していきたい。

「働く”場所”の選択肢が増えたり、企業によっては本社を地方に移転したり、完全にリモートワークに切り替えるケースも見られます。しかし『これがベスト』という正解が出ているわけではありません。つまり、一度変化しただけで終わりにならない可能性が高いのです。今起きている変化が第1フェーズなら、企業を変革するための第2フェーズ、第3フェーズの変化が起こるでしょう」

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そもそも、いま様々な企業で行われている働く環境を変えていく意義はどこにあるのか。その目的は「働き手の多様性を受容しつつ、イノベーションを創発しやすい状況を創り出す」というところに行きつくのではないだろうか。

さらに今、急転直下で対応を求められているのがサステナビリティである。政府によって温室効果ガス排出への対応など具体的なゴールが示されたことにより、いよいよ本格的な対応が不可避となってきている。これもまた、オフィス環境や業務フローに対して大きな改革がもたらされる非常に大きな要因となっていくであろう。日本企業にとっては、急にふってきた課題のように聞こえるかもしれないが、ここ10年に渡って世界では企業活動の喫緊の課題として捉えられてきた大きなテーマである。

このように、自発的、強制的にかかわらず様々な側面からみて、多様性を受容しイノベーションを起こす環境の構築、それに向けたオフィスの再定義が急務となっていることは明白である。その中でもオフィスにおける印刷環境は、デジタル化やDXプロジェクトと共に変化するであろう業務フローの中に組み込んで考えるべきものであり、今後ますます重要性を増していく。また、サステナビリティ対策の一環としても、省エネルギー、温室効果ガス排出抑制へ向けて大きな改革が必要になっている。今まさに、オフィス改革とともに印刷環境の再構築が求められているのである。

ニューノーマルな印刷環境に欠かせない「柔軟性」と「管理性」

これまで説明してきたように、今、企業は様々な外部要因により変化を常に求められている。それでは、そこで実際に働く環境となるオフィスには、具体的にどのようなことが求められているのだろうか。変化に対応した業務フローを適切に提供できる柔軟性をもち、創造的なイノベーションを生み出す土台となる環境とはいったいどのようなものだろうか。

今、企業の管理部門に求められることも変化している。高木氏は、近年の傾向として「より複雑かつ多様な業務を、少人数で行うことが求められているように見えます。テクノロジーが進化し、BPO(Business Process Outsourcing)のようなサービスも一般的になってきています。社内、社員でやるべき業務とそうでない業務をきちんと切り分けて生産性をあげ、社員はより創造的な業務へとシフトしようという考え方です。このように、管理部門の業務も改めて見直されているのではないでしょうか」と説明する。

高木氏はさらに「お客様からのご相談内容を見ると、より柔軟でシンプルなインフラを求める傾向が強いです。バックグランドのインフラを全てクラウド化したり、そことの連携を強化して、よりシナジーを高めるような方向にシフトしています。これも複数の業務とのシナジーでイノベーションを双発しようという考え方に起因します」と語る。

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このようにオフィスや管理部門に求められるものが変化する時代に、印刷環境は従来のままでいいのだろうか。やはり、印刷環境も変化し続ける社会情勢やそれに対応する企業変革にフィットしたニューノーマルな印刷環境が印刷環境が求められている。

それでは、ニューノーマルな印刷環境に求められる条件は何か。それは大きく分けて「柔軟性」と「管理性」の2つが挙げられる。

「柔軟性」は変化に対応して、働く場をより良い環境に常にアップデートし続けられることである。今回のコロナ禍のような急激な変化を求められることが今後も生まれることは想像に難くない。その都度最適な環境を築けるか。印刷環境であれば、組織や業務内容の再編があった場合でも、常に最適な場所にデバイスがあり、従業員が部門やエリアにとらわれず、いつでもどこでも同じやり方で業務に必要な文書を印刷、スキャンできるのが理想だ。そうすることにより、印刷環境にとらわれず、より付加価値が高い業務に集中できるのである。

では、柔軟に変化する印刷環境を築くためには何が必要か。まずは環境の可視化である。オフィス内の印刷機の稼働状況や傾向をタイムリーに把握し、余剰や不足が無いかを確認できなければ、柔軟で適切な印刷環境など考えづらい。

さらに、適切に印刷できる環境が常に整えられていることも重要である。機密文書などが放置されることが無いか、または個人利用の文書がカラーで印刷されているなど不適切な印刷がなされていないかをチェックできることなどである。つまり印刷環境の「柔軟性」を実現するには「管理性」もあわせて必要なのである。

どれくらいの紙が印刷されているのか。もしくは、リモートワークが加速したことで、そもそも印刷機が当初の想定どおりに稼働しているのか。これらが把握できることにより、前者であれば、資源の無駄を減らすことにつながり、企業のサステナビリティに関する取り組みに直結する。また後者であれば、印刷状況に応じて印刷機の設置を見直し、より効率的な運用が可能になる。

ニューノーマル時代は、変化が絶えず訪れる。だからこそ、印刷環境も柔軟にかつ管理可能な形を模索する必要があるのだ。

実際、高木氏は顧客と接する中で、印刷環境に対するニーズの変化を感じている。

「ひと昔前でしたら、印刷スピードなどのスペックに焦点が当たることが多かったです。しかし、最近はどのような印刷環境なら管理の手間を省けるかを気にするお客様が増えています」

HPが提案するニューノーマル時代の印刷環境整備とサービス提供モデルの導入

このような状況を踏まえ、HPでは顧客により良い印刷環境を整備できるようMPS(=Managed Print Service)の導入を提案している。このサービスでは印刷機だけではなくHP独自の多様なソリューション群により、それぞれのお客様の環境に即した形で、管理性に富み変化に柔軟に対応できる印刷環境を提供している。

ここでは、HPが提供する印刷環境の可視化や継続的な最適配置を実現する統括的なソフトウェア群である『HP Advance』で、どういったオフィスの印刷環境構築が可能なのかをみてみよう。

例えば、オフィスのすべての印刷機器を『HP Advance』で管理することにより、どのデバイスでも同じ業務が行えるようセットアップし、余剰や不足がある場合にも場所の移動を容易にすることができる。また、『HP Advance』のアカウンティング機能を利用すれば、ユーザーの利用状況や印刷機器の稼働状況を定期的に把握し、稼働の少ないエリアでは撤廃もしくはダウンサイズするような変革を常に行い、最適化を将来にわたって継続的に行えるようになるのである。

さらに、『HP Advance』で管理することで、利用者はつねに認証され、ドキュメントが意図しないユーザーに渡るリスクを排除。また利用者はどの印刷機であってもどれを使っているという意識をすることなく、利用することができるようになるのである。これにより印刷機の削減や増設がより容易になる。

「今は『HP Advance』を利用したオンプレミス環境での管理が主流ですが、最近はクラウド環境での管理についてもお客様の関心が高まっています。HP MPSでは『HP Secure Print』や『HP Workpath』といったソリューションにより、クラウド環境に対応し、かつ安心安全な新しい環境を構築することも可能です。これらを組み合わせれば、Google DriveやOneDriveとの連携など、印刷機とクラウドサービスとの親和性を高め、文書の印刷やスキャン後の管理が容易になります。また、『HP JetAdvantage Insight』を利用すれば、クラウド環境下であっても印刷機1台ごとの印刷状況が可視化でき、誰がいつ、どこで印刷したか、トラッキングも容易になり、管理性が高まります。」(高木氏)

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また、忘れてはならないのがHP MPSの大きな特徴の1つである「サービス提供モデル」による印刷環境の提供だ。これは、顧客が印刷機などを「購入」するのではなく「サービス」として契約できる仕組みである。

「こうしたサービス提供型モデルのメリットは、印刷環境を柔軟に変更できることです。先ほども申し上げましたとおり、ワークスペース(働く場所)はこれからも変化し続けます。そして、印刷環境もそれに応じて変化しなければなりません。サービス提供型モデルなら、フェーズ1だけでなく、フェーズ2,3など断続的に続くであろう変化に応じて契約内容を変え、印刷状況に応じてその環境を常に最適化できます。加えて、契約で結ばれた企業との間との関係性は、モノの売買契約とは異なり、業界の最新動向をタイムリーに共有しながら、その時々の環境変化に応じて対策を打ちやすくなるという、真の意味でのビジネスパートナーとしてより強固になっていくのも特長です。」(高木氏)

さらに印刷機などをサービスとして契約すれば、資産計上されることもない。この部分を見直すことで資産の圧縮につながり、ROICやROAといった経営指標にも好影響を与えることができる。経営指標への好影響といった観点からも見直しのメリットはとても大きい。

ニューノーマル時代に対応した、印刷機環境を整えるソリューションはすでに揃いつつある。しかし、これらのソリューションをただ導入するだけでは効果は上がりにくい。

そのような事態を避けるため、高木氏は印刷機環境を導入するためのファーストステップを示す。

「まずは、企業における印刷環境の『現状把握』からスタートしましょう。どの拠点に、印刷機が何台あるのか。そして、印刷枚数などその稼働状況はどうなっているのか。これにより、現状の印刷環境の課題と改善点が浮き彫りになります。また私たちもお客様に印刷環境をご提案する際、印刷環境とそれを取り巻くITインフラについてヒアリングします。これにより、ITインフラとのシナジー効果を高めた他社とは異なる提案ができると考えています」

HP MPSでは、今回ご紹介したソリューション以外にもクラウド化によるセキュリティや管理性の向上、ユーザー利用のしやすさの改善、さらにはサステナビリティへの取り組み支援など様々なソリューションやサービスを提供している。これらは次回以降、続けてご紹介することとしたい。