2021.04.16

サステナビリティは企業活動の根幹にある。
長期にわたってHPが実現する「持続可能な地球、人々、地域社会」への事業活動(前編)

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「サステナビリティ」に対する関心が、世界中で高まり続けている。

2020年に開催された第50回世界経済フォーラムでは「ステークホルダーがつくる持続可能で結束した世界」をテーマに、ビジネスリーダーたちによって激論が交わされた。

また日本でも、2020年10月26日の第203回臨時国会の所信表明演説において、菅義偉内閣総理大臣が「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体として実質ゼロにし、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と表明。世界で遅れていると言われてきた、日本のサステナビリティに対する取り組みが、政府主導により今後一変するのは間違いない。

このような時代において、サステナビリティへの取り組みを抜きにして企業経営を考えるのは、もはや不可能だ。

一方、HPでは創業当初からサステナビリティに対する取り組みを企業活動の根幹に据えてきた。60年以上にわたり推進した環境対策などは、第三者機関からも極めて高い評価を受け、世界でも有数のサステナブルな企業とされている。

そこで、今回は前後編2回にわたり、株式会社日本HP 法務・コンプライアンス本部 環境推進室の原田朋実氏へのインタビューからの書き起こしにより、HPのサステナビリティへの取り組みについてお伝えする。前編の今回は、HPのサステナビリティに対する取り組みの歴史や方針、第三者機関からの評価などの全体像を紹介する。

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株式会社日本HP 法務・コンプライアンス本部 環境推進室 原田朋実氏

創業者の想いから始まった、HPの地球、地域社会、人への貢献

はじめに、HPのサステナビリティに対する取り組みの歴史について、お伝えします。

HPは創業初期の頃から、環境や社会への貢献を企業理念の重要な項目の一つとして掲げてきました。

HPはビル・ヒューレットとデイブ・パッカードの2人のエンジニアが、1939年にアメリカ カリフォルニア州のパロアルトにある小さなガレージで創業したIT企業です。

その後、会社の規模が成長して社員が増えても、創業当時の精神をなくさないようにしたいという想いで、1957年に会社のビジョンが明確に定義され、文章化されました。

その一つに「グローバルシチズンシップ」があります。

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グローバルシチズンシップとは「会社の利益を追求するだけではなく、地域社会、お客様、社員や地球環境に貢献をし、事業を展開する全ての国や地域において良き市民たること」という考え方です。つまり、この年からHPにおけるサステナビリティの取り組みがスタートしたとも言えます。

そして、このグローバルシチズンシップの企業理念に基づき、60年以上にわたり地球環境や社会に貢献するため、さまざまな取り組みを進めています。

例えば、1972年には環境保護の観点から製造方針を明確にしました。1991年にはお客様が使い終わった製品のリサイクルプログラムを開始。また2004年には、電子業界のサプライチェーンにおける強制労働や、その他社会的、倫理的課題の解決に向けて、電子業界のサステナビリティ向上に取り組む業界団体の設立メンバーの一社となりました。他の電子機器メーカーと協働して、電子業界における行動規範も共同作成しています。

また環境負荷を軽減するためには、まず自社の現状を把握する必要があるという方針に則って、2007年には製品の製造に関する温室効果ガスの排出量を公開した初めてのIT企業となりました。

さらに近年は、深刻化するプラスチックごみ問題への取り組みとして、製品にオーシャンバウンド・プラスチックを活用したり、再生プラスチックの使用の割合を増やしたりするなど、さまざまな取り組みを推進し続けています。

変化し続ける世界。世界中の企業はサステナビリティへの取り組みが必須に

このようにHPでは長年受け継がれてきたサステナビリティへの取り組みですが、現代の社会においては私たち一人ひとりが暮らし、かつ企業活動を行っていく上で必要不可欠な考え方となりました。

2019年に世界の人口は77億人を超え、2050年までには98億人を超えると推測されております。さらにそのうち約68%にあたる66億人もの人々が、都市部で生活をするようになるという推測もあります。

仮に都市部で生活をする人々が増加すると、何が起こるでしょうか。

確実に起きるのは、電力消費量の増加です。20年後には、エネルギーの消費率が現在より28%増加すると予測がされています。また発電に伴い、温室効果ガスの排出量も増加すると見込まれています。

このペースで経済成長が続けば、自然資源の枯渇に直面するのは間違いありません。国連の研究データによると、2050年までに地球が2.3個必要になると予測されています。これは個人の生活や次世代の未来にかかわる深刻な問題であり、個人レベルでも、企業レベルでもアクションを起こしていく必要があることをデータが示しています。

さらに、地球環境保護の観点だけではなく、ビジネスにおいてもサステナビリティの取り組みが不可欠であるとHPは考えています。

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注釈1:2018年は9億ドル
注釈2:CDP = 企業の環境問題に対する取り組みや情報開示の質を評価し、格付けする国際NGO

2019年にはサステナビリティの取り組みにより、HPのビジネス全体で16億ドル以上の新規収益が創出されました。これは2018年と比較すると約69%の増加となり、お客様からのサステナビリティへの要求が年々高まっているのは明らかです。

また、企業の環境問題に対する取り組みや、情報開示の透明性などのクオリティを評価し、格付を行う国際NGO団体・CDPが毎年発表している環境ランキングがあります。現在、世界では800もの機関投資家が投資先を決定する際に、このCDPランキングに注目をしているといわれています。

このため、HPではサステナビリティを事業展開上の重要な戦略として位置づけているのです。

また近年は世界中の企業がサステナビリティへの取り組みを進めており、日本国内でも業種を超え、さまざまな企業が取り組みを強化しています。製品の調達が行われる際は、顧客からの調達仕様に、サステナビリティに関する要件が含まれているケースも増えています。そのため、製造業ではサステナビリティに配慮をした製品設計を行うのが不可欠となっているのです。

HPがコミットするサステナビリティへの貢献

HPの創業当初から大切にしてきた社会貢献のDNAは、現在「サステナブルインパクト」という名称で受け継がれています。

これはHPの製品やソリューション、世界中に広がるネットワークを活用して「PLANET」「PEOPLE」「COMMUNITY」の3つの分野に良いインパクトをもたらす取り組みの総称です。

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PLANETは、持続的な地球環境の保護を意味します。そして製造業として製品開発をどのように地球環境を保護しながら進めていくかを自社の取り組みのみならず世界中のパートナーシップをもとに取り組んでいく活動を中心に据えています。PEOPLEは、HPで働く社員の多様性の確保はもちろん、バリューチェーン全体を支える人々の人権保護や福祉の向上、ダイバーシティ&インクルージョンに関する一連の取り組みのことを指しています。またCOMMUNITYは、HPがビジネスを展開する世界約170カ国にて、テクノロジーを通じて教育支援をすることによる格差是正や災害支援といった地域社会で生活していくための活動を意味しています。

HPでは、これらの取り組みが実際に社会や環境にどれだけ貢献しているか判断するため、国連が定めた持続可能な開発目標「SDGs」に沿って、取り組みの成果をサステナブルインパクトレポートで毎年公開しています。

SDGsは、2015年の9月に国連サミットで採択されたもので、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、全ての人々が平和で豊かでいられることを目標に掲げました。国連に加盟している193カ国が、2016年から15年間の間に達成すると決めた17個の目標で構成され、ご存じのとおり日本国内でも関心が高まる一方です。

SDGsの17個の目標のうち、HPでは16個のSDGsに取り組んでおりますが、以下にあるように9つの目標にフォーカスをしています。

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これらは循環型経済、地球温暖化、ジェンダーの平等、経済成長、人権問題や教育問題といった分野に関するSDGsの目標です。HPはそれぞれの分野において具体的な目標を定めて、毎年の進捗状況をサステナブルインパクトレポートで公開しています。

このようなHPの取り組みは、さまざまな第三者機関にて高い評価を受けています。ここでは、そのうちの3つを紹介しましょう。

1つ目は、世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」の開催に合わせて、カナダのコーポレートナイツ社により世界で最も持続可能な100社が選定され、世界の主要企業約7,400社の中からHPは6年連続でその1社として選ばれました。

2つ目は、オフィス機器の省エネルギー制度「ENERGY STAR」のパートナーオブザイヤーに選定されました。また、HP製品のエネルギー効率の向上に対する継続的な取り組みが評価され「Sustained Excellence賞」を受賞しています。

3つ目は、世界で多くの機関投資家が注目をしているCDPランキングにおける評価です。世界の主要企業約5,800社を対象に、国際環境団体であるCDPが実施した2020年度の最新の評価において、HPは透明性の高い情報開示と環境への取り組みが高く評価されました。その結果、気候変動、水資源、森林保護の3つの分野において、最高評価であるトリプルAを2年連続で獲得しています。

このトリプルAを獲得した企業は、世界でHPを含めてわずか10社のみ。日本からは花王、不二製油グループ本社がランクインをしています。さらに、HPはこのCDPランキングにおいて、トリプルAを獲得した唯一のIT企業です。

このように、いくつか最近の評価を紹介させていただきましたが、HPにおけるサステナビリティに対する取り組みは最近始まったことではありません。先ほどもお伝えしたとおり、サステナビリティは創業間もない頃からHPの企業経営においてその根幹にありました。昨今のESGやSDGsなどの設定により急激にその重要性が叫ばれ始めましたが、HPとしては60年以上も続けてきた活動であり、DNAです。今後は、世の中の流れを受け、投資家や企業取引先だけでなく、消費者の目も一層厳しくなるのは間違いありませんが、HPは社員を含めてそのパートナー、お客様とともに長い時間をかけて受け継がれてきたDNAを核に、さらに大きな広がりへと展開したいと考えています。

次回は、HPサステナブルインパクト戦略の各分野、PLANET、PEOPLE、COMMUNITYにおける具体的な取り組みをご紹介します。

後編に続く)