2024.04.10
日本HPがAIテクノロジー内蔵PCのポートフォリオを拡充しました。既発表のコンシューマー向け「Spectreシリーズ」に加え、法人向けノートPC「HP EliteBookシリーズ」、モバイルワークステーション「HP ZBookシリーズ」を発表、また、個人向けには「Envyシリーズ」が追加され3月以降夏にかけて順次発売されます。最新のインテル® Core™ Ultraプロセッサーや次世代AMD Ryzen™ プロセッサーを搭載し、NPUを統合することで、各種のAIタスクをローカルで効率的に処理できる新しい世代のAI PCです。
2024年3月27日午後、東京・表参道のイベントホールで開催された報道関係者向けAIテクノロジー内蔵PC新製品発表会。その冒頭でステージに立った日本HP 執行役員の松浦 徹氏(パーソナルシステムズ事業本部 本部長)は、グローバルでも日本でも、ビジネスリーダーやナレッジワーカーともに多くの人がAIは仕事との関係性、ワーク、ライフ、バランスなどに良い影響をもたらすことを期待していると指摘しました。同氏は、AIが従業員の生産性を根本的に転換する可能性があり、その重要性を考えると、企業はAIの活用に今すぐ着手することが重要だとしました。また、AIの活用にあたり、その処理スピードが重要になってきていることに加え、セキュリティ強化も重要な課題であると述べました。
日本HP 執行役員の松浦 徹氏(パーソナルシステムズ事業本部 本部長)
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続いて登壇したコンシューマービジネス本部の吉川 直希氏(コンシューマー製品部 プロダクトマネージャー)は、コンシューマー製品であるENVYシリーズで稼働する音楽編集ソフトをデモンストレーションし、AIがそこでどのように貢献しているかを披露しました。シンプルなソフトウェアで誰もが使えるアプリですが、IntelのOpenVINO™のプラグインをインストールすることで、こういったAI楽曲生成といった複雑な処理のサービスを誰もがインターネットから遮断されたパソコンでもローカルで楽しめるようになります。
吉川氏が作業を開始し、Windowsのタスクマネージャーでプロセッサーの稼働の様子を確認すると、Intel Core Ultraプロセッサーに新たに統合されたNPUが動き出していることがわかります。一方、CPUの稼働率の方は旧製品であれば100%に振り切り気味で使われていたのに対して、新しいIntel Core Ultraプロセッサー搭載製品の方では 10~20%ぐらいしかCPU負荷がありません。
最終的に新製品のAI PCでは約33秒で処理が終わり、実際に音楽BGMとして「ジャズグルービー」というテキストを入力して生成されたAI楽曲が会場に流れました。比較対象の前世代製品では2分39秒を要したところ、最新製品ではたった33秒ということで、大幅にスピードアップが図られ、80%の時間短縮につながっていることがわかります。NPUを搭載したプロセッサーであれば、クリエイティブな作業などは非常に効率的に進められると吉川氏はいいます。
パーソナルシステムズ事業本部の岡 宣明氏(CMIT製品部 部長)
続いて登壇したパーソナルシステムズ事業本部の岡 宣明氏(CMIT製品部 部長)は、最初にHP EliteBook 635 Aero G11を紹介、日本の強い要望により、日本のスペックに合わせて開発をしてもらった製品で、薄軽にフォーカスした設計で、本国に先行しての日本リリースとなる製品だと同機を紹介しました。
さらに、岡氏はHP EliteBook 1040 G11をフラッグシップモデルとして紹介、筐体が新しくなってスタイリッシュになった真新しいボディをお披露目しました。
岡氏はワークステーションにも言及、その幅広いモバイルワークステーション製品群において、エントリークラスのHP ZBook Fireflyシリーズから最高峰のHP ZBook Furyまで、そのすべての製品がAIテクノロジー内蔵のワークステーションとして提供されることを強調しました。
最後に岡氏は、この販売開始されるモデルから、各製品のキーボードにCopilotキーが装備されていることを明らかにしました。このキーは、MicrosoftのWindowsにビルトインされたAIサービスCopilot in Windowsを呼び出すための専用キーです。
AI PCにはキーボードにCopilotキーを装備。右Altキーの右側に配置される
また岡氏は、ローカルPCにおけるAI利用について、昔であればクリエイターがGPUをフル稼働させ、何時間もかけてやるような修復作業が、今や、数秒でアプリケーションが終わらせてしまう時代に入っているとし、各製品に実装されたHP Smart SenseがAIを使用することで、パフォーマンスを自動最適化することができるようになっていることを説明しました。大幅なデバイスのノイズ削減、温度、パフォーマンスなどの要素をワークフローに合わせて自動的に最適化するそうです。もちろんそれが静音化に貢献します。
法人向け製品は、HPと合併したワークプレイスコラボレーションソリューション企業PolyによるPoly Studioを統合、同社の持つノイズリダクションの技術などを積極的に活用し、Dynamic Voice Leveling、AIノイズリダクション、および自動フレーミングといったテクノロジーによってコラボレーションがより自然になり、シームレスなユーザーエクスペリエンスを実現することを強調しました。
ここでは、NPUが積極的に使われ、その負荷が他の作業に影響を及ぼしにくいことがポイントであると岡氏。今後、サステナビリティが重要視されていくのは明らかで、PCなどのデバイスの消費電力を抑えていくことが、世界中で求められていることを受け、ここにフォーカスして開発をしているということです。
エンタープライズ営業統括の大津山 隆氏(営業戦略部 プログラムマネージャー)
最後にステージに立ったエンタープライズ営業統括の大津山 隆氏(営業戦略部 プログラムマネージャー)は、HPビジネスPCのセキュリティの基盤となるHP Endpoint Security Controller(ESC)チップが刷新されたことをアピール、量子コンピューティングによるハッキングからファームウェアを保護する世界初のビジネス向けPCとして機密データを将来の脅威からも保護する製品となったことを明らかにしました。
ESCというのは、セキュリティ専用マイクロプロセッサーで 、HPの法人向けPCの中に入っているチップです。簡単に言うとパソコンの中に専用の監視チップとしてESCが入っていて、パソコンの中のいろんな変更などを監視しています。
大津山氏は一連の防御の動きを次のように説明します。
「電源を入れると普通はCPUに電源が入ります。でも、HPの法人向けパソコンはまずESCに電源が入り、全部をチェックし、問題がなければ普通の起動をし、BIOSファームウェアが侵害されていたといったことが発見され、マルウェアなどによって改変されているということであれば、それを正しいものに書き換えてから立ち上がるという動きをします。ハードウェアに対して加わった変更を、すべてこのチップの中に書き込んでいくログ機能があるのですが、そこに従来の暗号アルゴリズムに加えて、耐量子暗号のアルゴリズムも搭載しました。これが、今回の発表の機能的な中身です」
大津山氏は説明を続けます。
「ただ、そもそも量子コンピューターはまだできていません。未完成です。非常に基礎的な研究がされている段階です。これがいつ頃完成できるかという話ははっきりしません。いろいろと各国が国家レベルの投資をしています。当然、戦略的な投資として、なるべく早く実用化しようとしています。 けれども、今後10年以内ぐらいにできるかどうかというのが一番長いというか、現実的なスパンでしょう。どんなに早くてもあと5年ぐらいかけて実用化できるかどうかといったところです。特に量子コンピューターは今のコンピューターと動作の意味が違うところがあり、得意な処理には向き不向きがありますが、非対称暗号を解くことができてしまうようになると、今のデジタル署名の仕組みが破られてしまう可能性があります」
大津山氏は、HPをはじめとする多くの企業からのソフトウェアアップデートが本当に正しいかどうかをデジタル署名で担保している現状で、将来に備えてすぐに量子暗号への移行を計画し、ハードウェアに実装していくことで、悪用される事態が起こったときに、量子コンピューターを使った攻撃があっても耐えられるようなアルゴリズムの標準を今から準備しておく必要があると訴えます。 AIが生産性を上げることはもちろん重要です。でも、それに加えて、将来のセキュリティを担保するために今まで通りのインフラでも使えて、さらに将来の量子コンピューターによる攻撃が現実化した時に、そのアルゴリズムでそのまま現行のセキュリティハードウェアを使えて防御できることが重要で、今の投資とプロテクションを考慮しつつ、その継続性も考えたようなロジックで今の脅威、将来の脅威の双方に備えるべきだと説きました。つまり、それらを担保し、ずっと安心して使っていけるのが、日本HPのビジネスPCであるということです。
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