2024.03.25
フリーランスライター:山田 祥平
筆者撮影:岡戸 伸樹氏(日本HP 代表取締役社長執行役員)
年明け間もない2024年1月18日、日本HPは日本HP報道関係者向けに事業説明会を開催、これから始まるであろうAI PC市場にかける同社の意気込みを力強く宣言しました。HP Future Ready戦略に基づくもので、AI、柔軟性の時代、セキュリティ、サステナビリティが、この先の成長を牽引していくなかで、AIは、特に価値あるイノベーションを提供するであろうというわけです。まさに2024年は日本HPにとってAI PC元年として飛躍の年になり、革新的な製品とサービスを提供していくことを同社は約束しました。
説明会でステージに立った日本HP 代表取締役社長 執行役員の岡戸 伸樹氏は、これからのAI PC市場立ち上げに伴い、AIを使って新しいサービスやソリューションを創ると説明しました。つまり、市場の拡大促進のためにも、AIが使われるということです。まさに、ハイブリッドワークに代表される柔軟性の時代の到来を告げる宣言だといえそうです。
岡戸氏は、すぐ先に大きな需要が発生すると予想します。PCはパーソナルコンピューターからパーソナルコンパニオンとなってわれわれに併走する存在になるというのが同氏の考えです。
これは、AI周辺のテクノロジーが、今よりもずっとわかりやすくなって人間に伴走するイメージがつかみやすくなるということでもあります。それが人間のコンパニオンということであり、今のAI活用は、多くがクラウドベースであることから、遅延、セキュリティ、通信コストなどの問題を抱えがちですが、これからは、その多くの利用モデルがオンデバイスのエッジで処理できるように変貌を遂げることになりそうです。
それによってAI活用に要する時間は5倍速くなり、そのコストも8割削減できるようになるそうです。そういうことなら、AIはエッジで処理するほうがいいに決まっています。岡戸氏によれば、今後、市場に出ていくPCの4割から5割はAI PCになるとのこと。それが、市場で買い換えの促進を牽引していくだろうと岡戸氏は読んでいます。もちろん、そのためには、インテルのようなシリコンベンダーとの強い連携も必要です。
AIは人間から仕事を奪ってしまうのではないかと懸念する議論もあります。確かにそれはゆゆしき問題ですが、かつて、馬車がクルマに役割を奪われたのと同じで、その方向性は止められません。だからこそ、人間にしかできないことを探さなければならないのです。逆に、それができるのが人間です。
つまり、AIに使われるのではなく、AIを使う側に立たなければならないということです。AIなしでは生産性に差がつくのは当たり前です。これまでのコンピューターは、それを役立てるために、人間側にかなりの学習やトレーニングを要しました。場合によっては人間がコンピューターに寄り添い、機械にあわせないと、言うことをきいてくれない面もありました。
プログラミングなどはその典型です。もちろん、ノーコード、ローコードといったアプローチで、その敷居を下げるチャレンジはありました。でも、思い通りにコンピューターを動かすには、かなりのスキルが要求されました。アプリの使い方ひとつとってもノウハウを身につけるのはたいへんでした。それは、パーソナルコンピューターの登場から、程度の差こそあれ、連綿と受け入れざるを得なかった事実です。
AIが実用になりつつある今、そのAIが本当に役にたつのかどうか、今の時点では、これは、作っている側もよくわかっていない状況ではないかと思います。でも、使ってみた限りの印象では、少なくとも、今まで以上に洗練されたコンピューターとの対話の中で、問題が短時間で解決されていく印象をもちます。
AIへの依頼と、AIが生成した回答、そのキャッチボールを続ける中で、今までとは異なる結果が得られるからこその問題解決です。これまでのコンピューターは、与えられた命令に対して、たったひとつの反応を返すだけでした。でも、その反応にさらに問いかけ、新たなリクエストを与えることで、もっと別の何かが得られる環境。そうコンピューターに教えるあの感じ。それがAI利用の醍醐味ではないでしょうか。
とりあえず走り出さないと追いつけなくなる。それが今のAI活用です。とにかく立ち止まっているわけにはいかないのです。
岡戸社長の語る戦略を聞くまでもなく、今、PC界隈に起ころうとしていることは、ほんの少し前に勃興した生成AI活用が巻き起こした、ある種のブームにも似た浸透です。あまりにも急速に拡がったために、そのユセージモデルについては、まだ、海のものとも山のものともわからない状況でもあるといえます。
それでも出遅れてはたいへんとばかりに、関連業界のハードウェア、ソフトウェア各社は、AIの研究開発と投資、その使い方の提案に懸命です。
そんな中で、インテルは同社のPC用プロセッサーを刷新、AIの利用に欠かせないNPUを統合した初代のCore Ultraプロセッサーをデビューさせました。AIのために構築された電力効率の高いプラットフォームとして、多様なクライアントのAIワークロードをサポートし、GPU、NPU、CPUを統合したこの製品を、インテルは40年に一度の大きな変革だとしています。
40年前というと1984年ということになりますが、この年はアップルのMacintoshやIBM PC ATが発売された年でもあり、今はHPとなったコンパック社がBIOSを自社開発して世界最初のIBM PC互換機を発売したのはこの前年でした。1984年にはフェニックス・テクノロジーなどが互換BIOSを各社に供給開始します。その当時の衝撃と同じことを興すというのですから、その変革のスケールが想像できます。大げさではなくPCがコンピューターからコンパニオンに再定義されるという岡戸氏のスピーチにも納得できるというものです。
一方、Microsoftもまた、生成AIの最先鋒ともいえるChatGPTの開発元であるOpenAI社への積極的な投資を継続し、サービスとしてもあらゆるニーズに対応する各種のAIサービスの提供を、Copilotブランドでスタートしました。
こうした動きは、昨年秋以降のたった数ヶ月の間に、PC界隈であわただしく起こったことです。そのスピード感は、もはや、めまぐるしいどころか、一瞬でも目を閉じてしまったら、そこでどんな変化が起こったのかを見失ってしまうほどの勢いです。
ご愛読いただいているこのHP Tech & Device TVも、この流れを積極的に取り上げ、AIがPC界隈に、そして、われわれの暮らしやビジネスにどうかかわっていくのかなど、生成AIという、この新しいインテリジェンスがもたらす変化や影響について積極的に取り上げていくことになりました。
その第一弾として、シーズン1の一連のコンテンツとして、プロセッサーを筆頭とするPC関連のハードウェアにAIがどのような変貌を遂げさせようとしているのかについてフリーランスライターの笠原 一樹氏に、Windowsに代表されるプラットフォーム製品のAI対応や、企業向けサービスなどのAIについてはやはりフリーランスライターの三浦 優子氏に、また、赤井 誠氏(キャリア・デベロプメント・アドバイザー、MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長)には、企業内におけるこれからのアプリ活用にAIがもたらす変化や影響等を如実に示す可能性について、MicrosoftのAIであるCopilotを解説していただきます。
これらのリニューアルコンテンツは、各氏独自の観点で、AI元年となる2024年最初のコンテンツとして、その衝撃を語っていただくものとなります。ぜひ、お楽しみください。HP Tech & Device TVは、日本HPによる、日本で最もAI利用に詳しいオウンドメディアとして、読者の方々に興味を持っていただける新鮮な情報を提供していきます。どうかご期待ください。
※このコンテンツには日本HPの公式見解を示さないものが一部含まれます。また、日本HPのサポート範囲に含まれない内容や、日本HPが推奨する使い方ではないケースが含まれている可能性があります。また、コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。
※2024年3月26日時点の情報です。内容は変更となる場合があります。
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