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クリエイティブワークに活用できる大判印刷
- 後藤デザイン室 × 日本ヒューレット・パッカード
レーザープリンタやオフセット印刷、インクジェット印刷と、さまざまな印刷方法がある中で、デザイナーが意外と縁遠いのが大判印刷の分野である。しかし、販売促進ツールの分野では大判印刷はもちろん、用紙の幅広さを活かした面白い試みが次々に生まれている。
デザイナーはその実情を知れば、さらに新しい大判インクジェットプリンタの使い方が生まれるはずだ。
そこで日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)に販売促進ツールにおける大判インクジェットプリンタの使われ方や、デザイナーに向けたお薦め機種について伺った。
※この記事は『DTP&印刷スーパーしくみ事典2015』(ボーンデジタル刊)に掲載されたものです。
大判印刷のKey Person
日本ヒューレット・パッカード株式会社
プリンティング・パーソナルシステムズ
事業統括ワイドフォーマットビジネス統括本部
統括本部長 根本 勲氏
後藤デザイン室
後藤 豪氏
表紙のデザインが大判印刷で「作品」になる
「普段は書籍や雑誌のデザインが多く、大判プリンタを見たり、使ったりする機会はほとんどない」と語る本誌のデザインを担当する後藤デザイン室の後藤 豪氏。しかし、雑誌や書籍などの表紙データをそのままポスターサイズに拡大し、宣伝ツールに使われる機会はあるとのことで、まずはその印象を伺った。
「自分が作った物が大きく印刷されるって、それだけで嬉しいし、完成品を見ればテンションが上がります。でも、実際にどんなプリンタで出しているのかを見るのは今回が初めてです」(後藤氏)
「普段は書籍や雑誌のデザインが多く、大判プリンタを見たり、使ったりする機会はほとんどない」と語る本誌のデザインを担当する後藤デザイン室の後藤 豪氏。しかし、雑誌や書籍などの表紙データをそのままポスターサイズに拡大し、宣伝ツールに使われる機会はあるとのことで、まずはその印象を伺った。
「自分が作った物が大きく印刷されるって、それだけで嬉しいし、完成品を見ればテンションが上がります。でも、実際にどんなプリンタで出しているのかを見るのは今回が初めてです」(後藤氏)
日本HPによれば、現在、大判サイズの販売促進のツールは、そのほとんどがインクジェットプリンタで印刷されているという。たとえば、駅構内に見られる柱巻広告やポスター、店内POP、サインボードなど、その活用範囲は大きく広がっているそうだ。
日本HPワイドフォーマットビジネス統括本部長の根本 勲氏は「今は販売促進の方法が昔より短期間に集中的に投下されることが多くなっているので、大判印刷の裾野が広がっているんです。従来通り印刷会社やプリントショップで印刷することもあれば、飲食店や小売・流通業では店内にプリンタを置いているところも増えています」と話す。
とはいえ、個人で事務所を構えるデザイナーは、HP Designjet Zシリーズのようなサイズを置くスペースも予算も見込めないと考える方が多いだろう。後藤氏も、「大判プリンタが手元にあれば、デザインデータだけでなくポスターなど、同じデータを使用して営業品目を増やすことができる」と期待するが、やはりコストや設置スペースが気になるようだ。
「それなら、ラインナップ中で一番コンパクトでお手頃価格のA1サイズまで印刷できる『HP Designjet T520』はどうでしょう? スタンドを外せばデスクトップや棚などに設置する事が出来ますし、WiFi標準搭載で設置場所にも困りません。また、A4~A3 のカット紙トレイが付いていますので、通常の事務用プリンタとしても活躍します」(根本氏) HP Designjet T520は低価格にも関わらず、最終成果物として活用できる印刷品質を充分に備えているため、B4クラスの大判紙を見開きで出してカンプを作成したり、小ロットのポスターを印刷したりと、さまざまに利用できる。加えて4色機であれば多色機に比べてインクの購入本数も少なく済むので、インク切れが起きても懐は痛みにくい、という個人事業主に扱いやすいメリットを持つ。
HP Designjet T520
24インチ(A1ノビ)モデル、36インチ(A0ノビ)モデルを用意。ロール紙を前面から給紙できるので、設置面積のデッドスペースを作らず、プリンタ上部はフラットな作りになっているので、プリント物を広げるテーブル代わりに使う事も可能。本体上部にはA3ノビサイズまでのカット紙を給紙できる。
「でもやっぱりプルーファとして使えるプリンタの機能も気になります」と後藤氏。プルーファには、データに忠実な色で出すこと、連続印刷時の色安定性などが強く求められるが、「もうひとつのお薦めは『HP Designjet Z5400 PS』です」と根本氏。
低価格にも関わらず、Adobe純正PostScript 3のハードウェアRIPを搭載しており、グレーを含む6色インクシステムにより、データに忠実な色再現が可能だ。さらに駆動系の動作音を押さえた設計で、印刷中に印刷音を感じることはほとんどないので、静かな事務所中でも邪魔にならない。
「当社の大判プリンタの特徴は、データ通りに色を出すこと。至極当然な特徴に思えますが、プルーフ出力にはこれが最も重要なポイントなのです。逆に見栄えが重視されるポスター印刷では、金赤はより金赤らしく、といった具合に、プリンタドライバで調整して印刷できます。それぞれの用途にあわせて、簡単に、目的通りの印刷物が出来上がるように考えられています」(根本氏)
お薦め機種が見えたところで、大判印刷の活用例として2つの項目を紹介しよう。デザインのアウトプット先として、仕事に活かせるアイデアが見つかるはずだ。
HP Designjet Z5400 PS
低価格と低ランニングコストを重視して作られたB0ノビ機。インクはグレーを含む6色でAdobe PostScript 3 RIPを内蔵。ダブルロール給紙により、ロール紙の入れ替え作業を軽減する。
A1サイズのカラー写真も高品質モードで約5分で印刷。品質とスピードのバランスがとれた1台
活用方法その1 ポスターやPOPを出力
「今は本当に何でもインクジェットで出せてしまうんですよ」と根本氏。最近ではポスターやPOPも定型サイズでただ印刷するのではなく、設置場所に合わせて形やサイズを調整するのが主流だそうだ。
ショールームには、インクジェットで出した物をスチレンボードに貼り、さらにカッティングマシンでカットしたPOPや、ポリエステル生地に印刷したのぼり旗なども展示。後藤氏も、これまでにデザインした書籍やムックの表紙データを持ち込み、ポスター印刷を体験した。
「以前より印刷が早くなっているし、印刷の色もイメージ通り。文字やグラフィックのキレが良いので、遠目で見ても伝えたい情報がハッキリ分かりますね」(後藤氏)と、大判印刷を楽しんだようだ。
まだ取材時はデザイン検討段階だった本誌表紙や、ハイライト部分の調子が見たいと持ち込んだ雑誌表紙を大判印刷。「何の設定も加えていないのにオフセット印刷の色に近い。グラフィックや写真がより力強い仕上がりとなり、細かい文字もハッキリと印刷されているので、情報伝達力が高いですね」と後藤氏
ショールームに掲示された切り抜きPOPやのぼり旗をみて、素材の多さや見せ方のバリエーションを学ぶ。
根本氏によれば、とくに最近多いのが切り抜きPOPやエクステリアに合わせた形状に仕上げるサイネージの類なのだそうだ
活用方法その2 用紙のバリエーションでデザインをより魅力的な物に
インクジェットプリンタの魅力は、多彩なバリエーションからデザインに合わせて用紙を選べることにある。今回は、2013年版の本誌表紙データを使用し、用紙によってどんな印象に変わるのかを試してみた。
「2013年版の表紙はKaleido(広演色インキ)を使うことが前提のデザインなので、ポイントはグラデーションの発色性です。実は当時、編集部から『社内プレゼンでKaleidoインキのイメージを伝えることが難しい』と言われていました。レーザープリンタでは、広演色インキをシミュレートすることが難しかったんですね。でも今回、同じデータを光沢フォト用紙で出してみると、かなり実物に近い。これなら、クライアントへのプレゼンも説得力があるし、デザインの意図もすぐに伝えられます。バックライトフィルムは、書店店頭や展示会でかなり映えそう。逆にキャンバス紙の場合は色が濃く出ましたが、イラストなどのモチーフに、はまりそうな質感がありました」(後藤氏)
Kaleidoのような広演色印刷のプルーフは、オフセット印刷より広い色再現域をもつインクジェットプリンタにとって得意分野とも言える。また、顔料系インクジェットプリンタの裾野が広がり、内製化が進むうちに、インクジェット専用紙の分野も充実してきており、そのバリエーションは膨大な数となっている。
「デザインの内容に合わせて紙を選ぶ、そんな仕事の提案も良いですね」と後藤氏。改めて、大判インクジェットプリンタの面白さと使い勝手の広さに驚いた一日になったようだ。
用紙の種類による違いを確認
速乾タイプの光沢紙
厚手のコート紙
インクジェット用クロス
インクジェット用キャンバス
インクジェット用クロス
柔らかな不織布のような風合いで、印刷した後に折って持ち歩けるユニークな素材のインクジェット用クロス。タペストリーのように使ったりすることができる。「布っぽい素材に濃色がしっかり印刷され、グラデーションもキレイ」(後藤氏)
インクジェット用キャンバス
凹凸の感触が見た目にも分かるインクジェット用キャンバス。印刷してすぐに触っても問題ない速乾性の高さは、溶剤系のインクジェットプリンタにない、顔料系プリンタならではの特徴である
高彩度印刷のプルーフにも使える
速乾タイプの光沢紙に印刷したものを一目見て「店頭で売られた実物に近い」と後藤さん。速乾タイプの光沢紙のグロス感が、PP加工したような艶やかさを模しているように感じたそうだ。これなら高彩度印刷の事前チェックも、印刷色のコンセンサスも取りやすい、と評価した
対象プリンター
HP Designjet T520 24inch ePrinter
A1対応で世界最小・最軽量!
低価格を実現した大判インクジェットプリンター
- 高精度な線画再生でA1サイズのカラー印刷が約35秒
- カット紙にも柔軟に対応する専用トレイ搭載
- 低ランニングコスト
- スタンド標準装備
HP Designjet Z5400PS
グラフィックスの現場に低ランニングコストと
高生産性を実現させるマルチロールモデル
- PostScript(ポストスクリプト)に標準で対応
- ダブルロールで高生産性を実現
- 低ランニングコストで経済的
※競合他社同等8色インク搭載グラフィックモデルとの比較(HP 自社調べ)