現在、社会の要請などで在宅勤務のテレワークにシフトされている方も多いだろう。しかし、本来テレワークは場所にとらわれない働き方のことで、カフェや電車・飛行機などの中で働くモバイルワーク、サテライトオフィス勤務なども含まれる。ただ、テレワーク普及とともに働きやすい環境が見つからない「テレワーク難民」も増えている。この記事では、テレワーク難民の実態、モバイルワークのメリット、生産性を維持できる意外なワークスペースを紹介する。非常時が収束した後、より良いモバイルワークの形を探すために役立てていただきたい。

※本記事は2020年4月現在の社会情勢においてモバイルワークを推奨するものではございません。

働き方改革で政府が推進するテレワーク

この記事では、主にモバイルワークを取り上げる。モバイルワークはICT（情報通信技術）の活用によってあらゆる場所で働くことができるテレワークの一種だ。会社と雇用関係のある人がカフェや図書館、飛行機の中などで業務を行うことをいう。サテライトオフィスやレンタルオフィスでの業務もモバイルワークに含まれることもあるが、施設利用型勤務のテレワークとして区別する場合もある。会社の業務を自宅で行うのは在宅勤務だ。

テレワークは国によって導入が推進されてきた。さまざまな助成金や無償セミナー、専門家の派遣事業などもある。その理由として最も大きいのは、働き方改革が掲げている新たな労働力の創出である。育児・介護中の人やシニア、通勤困難者など多様な人材が多様な働き方をすることで一億総活躍社会を目指そうというのだ。また、他の先進国に遅れていると指摘されている女性進出、ワーク・ライフ・バランス（仕事と生活の調和）などの課題解決にもテレワークが果たす役割が大きいとされている。

企業がテレワークを導入するメリット

ここではテレワークを導入する企業のメリットのうち、主にモバイルワークに関係したものを紹介する。

効率性アップ

テレワーク導入企業のなかでも最も活用度が高いのがモバイルワークだ。総務省「平成30年版情報通信白書」によると、テレワーク導入済み企業のうちサテライトオフィスの活用が12.1%、在宅勤務が29.9%に対してモバイルワークは56.4%と高い。これには、外出先の業務をテレワークで行うのが効率的だからだろう。たとえば営業職なら、オフィスに戻らず多くの顧客に効率よくアプローチできる。会議や打ち合わせをWeb会議を出張先などで済ませれば、対応や決断のスピードも速くすることも可能だ。離れた場所にいるスタッフ同士が、移動に都合がいい場所のレンタルオフィスに集合する方法も考えられるだろう。

コスト削減

テレワーク全般にいえることだが、モバイルワークを導入すると移動が減り、それによって交通費を削減できる。出社する社員が少ない分、オフィスの光熱費や固定費などの削減も見込めるだろう。また、2019年の総務省「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」によると、テレワークを積極的に推進している企業の約6割が労働時間短縮を達成できたとある。モバイルワークを含めたテレワーク導入によって、残業時間削減も期待できるのだ。

人材を確保しやすくなる

場所にとらわれない働き方に対するニーズが高まっている。たとえば共働き夫婦では、子どもを保育施設に預けた後に通勤をすると時間的に厳しい場合もあるだろう。このようなときに近くのワークスペースでモバイルワークができれば非常に便利だ。テレワークによる多様な働き方を実現している企業は働きやすい企業と認識され、人材を確保しやすくなる。また、レンタルオフィスやサテライトオフィスなどを用意することで、今までアプローチできなかったエリアの人材も雇用できるだろう。モバイルワークによって、今までにはない形の柔軟で効果的な拠点づくりに成功している企業事例もある。

テレワーク難民とは？働き手の「場所」の悩み

モバイルワークを行う場所のひとつとして代表的なのが「カフェ」である。しかし、すべてのカフェにコンセントや Wi-Fi環境が整っているわけではない。また、作業に適した席をいちいち探すのは大変だし、満席で入れないこともあるだろう。席を確保できたとしても、長時間居座ることははばかられる。さらに、「テーブルが狭くて資料を広げられない」「騒音や音楽がうるさくて業務効率が落ちる」などの悩みもある。働きにくさに加え、パソコン画面のショルダーハッキング（盗み見）や資料、パソコンの盗難、公共LANからの情報漏洩なども心配だ。場所にとらわれないのがモバイルワークだが、意外に場所の確保が難しいのだ。国や企業のテレワーク支援はいろいろあるが働く場所についてのサポートがほとんどない、という意見もある。

テレワーク難民を救済！ワークスペースの新しいカタチ

働きやすい場所が見つからない、そのような人に向けて新たなワークスペースの試みを紹介する。なお、繰り返しになるが、本記事は2020年4月現在の社会情勢においてモバイルワークを推奨するものではない。

ひとりシェアオフィス

株式会社ブイキューブがテレワーク難民救済の一助にと開発したのが「STATION BOOTH」。電話ボックスのような形状の「ひとりシェアオフィス」だ。デスクや照明、無料Wi-FiやUSBポートを備えている。2020年4月現在、都心の主要駅で実験的に運用されているが、今後はビルやオフィス内にも展開していくということだ。スターバックスの一部店舗と提携するなど利用場所も増えている。カプセルホテルのように、新たな形のモバイルワークのワークスペースとして、今後定着するか注目したいところだ。人によっては圧迫感を持つかもしれないが、集中しやすいと感じる人もいるだろう。コアタイムのみ利用するなどの使い方も考えられる。

レンタルスペース

Web会議だけではコミュニケーションしにくいと感じる場合もある。特に相手との距離を縮めるためのブレインストーミングや実物の商品を使っての打ち合わせなどでは、同じデスクで作業したほうが効率的なことも多い。そのようなときに便利なのがレンタルオフィスだ。カフェのようなインテリアのスペースや企業の会議室のようにホワイトボードを備えた一室など、さまざまなレンタルオフィスが提供されている。広さや設備によって料金は違うが、1時間あたり500～2000円が一般的な相場だ。

ホテルやカラオケなどのテレワークプラン

ホテルやカラオケ店のなかには、テレワークプランを提供していることもある。今のところ非常時限定だが、モバイルワークが普及していけば、このようなサービスが増えるかもしれない。環境が静かなホテルは、カフェなどでは落ち着いて仕事ができない人に向いている。個室なのでセキュリティが確保しやすい点もメリットだ。カラオケボックスは価格的にレンタルオフィスと大差がないが、予約なしに利用できる手軽さがメリットといえる。フリードリンクや「会議＋宴会セットプラン」などがあるのもカラオケ店ならではだ。

場所選びと環境構築がテレワーク成功の鍵

さまざまなロケーションで働けるのがテレワークのメリット。それを実現するために、企業は環境構築に力を入れるべきだ。最も重要なのがパソコンの選定である。軽量で堅ろう性が高く、ハイパフォーマンスのマシンが理想的だ。業務内容によってパーツや機能をカスタマイズして注文できることが望ましい。テレワークに考慮されたセキュリティが高いパソコンを選ぶのも重要だ。本Tech & Device TVでは、総務・人事部門の視点からみたテレワーク導入のポイントや、在宅勤務に適したデバイスの紹介などを行っている。以下より一度資料をダウンロードしてみてはどうだろうか。