2020.05.13
働き方改革による多様な働き方の推進によりテレワークが進むなか、感染症予防対策としても急ピッチで在宅勤務の導入を進める企業も多い。企業は社員に貸与するPCの選定や就業ルールの改正などやるべきことが多く、在宅勤務の導入によって大きな失敗を引き起こすのではないかと不安を感じるシステム管理者や人事担当者も少なくない。そこでこの記事では、在宅勤務を適切に導入するために覚えておきたい問題点やリスクと、その対策を解説する。
在宅勤務とは、会社員が会社でやる仕事を自宅ですることをいう。在宅勤務者と会社との間に雇用関係が成立しているのが特徴であり、フリーランスが自宅で仕事をするような場合の在宅ワークと区別されている。すでに省庁では在宅勤務と在宅ワークを明確に使い分けているので、特に人事担当者などは覚えておくとよいだろう。
IT技術を利用し、さまざまな場所で仕事をすることをテレワークという。在宅勤務はこのテレワークの一種だ。省庁では、自宅で働くテレワークを在宅勤務、電車やカフェ、出張先などで仕事ことをモバイルワークと呼んでいる。また、サテライトオフィスやテレワークセンターなどで働くことは施設利用型勤務と呼ばれる。
在宅勤務には常時在宅で働く場合や週1回、午前中などさまざまなケースがあり、企業のなかには、完全在宅勤務、部分在宅勤務などと分けているところもある。
在宅勤務が注目される背景には、IT環境が整ったことがまずあげられる。多くの家庭にインターネットがあり、テレワークに適したノートPCも低価格で購入できる。さらにはデータ共有が容易なクラウド環境や、チームで使えるビジネスチャット、Web会議システムなども充実してきた。「短期間で在宅勤務を実施するのは無理」と考える担当者も多いが、実はノートPCとインターネット環境さえあれば、かなりの業務が在宅で可能だ。
また、働き方改革で多様な働き方が推進されているのも背景にある。超高齢社会の日本において労働力不足は深刻だ。多様な働き方を実現して一億総活躍社会を実現するには、子育て中や介護中の人などが在宅勤務できる環境作りは欠かせない。障がい者やシニア層も在宅勤務なら働きやすいケースも多いだろう。働き方改革においてはライフ・ワーク・バランスの向上や、長時間労働の是正などの効果も期待されている。
さらに最近、在宅勤務・テレワークの実施率や企業の意識を一変させたのが世界的な感染症の蔓延である。オフィス勤務がメインの企業の多くは、通常通りに業務が遂行できない問題に直面したのではないだろうか。好ましいきっかけではなかったが、このことで在宅勤務を含めたテレワークの急速な普及が進むだろう。企業活動のリスクヘッジという観点からも在宅勤務に注目が集まっている。
ここでは、在宅勤務のメリットを主に企業の立場から紹介していく。
地震や台風など日本は災害が多い国である、また、先の見えない感染症拡大に発生している。そのようなときに社員の健康と命を守り、事業継続できる環境を準備しておくことはとても重要だ。
また、在宅勤務を導入すれば、通勤ラッシュや交通渋滞が発生する時間帯を避けて時差通勤できるため、通勤中に災害や非常事態に遭ってしまうというリスクも減らすことができるだろう。まだ、十分な対策を講じていない企業は、この機会に事業継続のための設備を準備すべきだ。
在宅勤務、テレワークによってコスト削減が見込めるのは、交通費や光熱費、オフィススペースの節約による賃料などである。また、全国各地に営業拠点があるような企業は、拠点の一部を減らすこともできるだろう。ICT(情報通信技術)環境を整えるにはある程度費用がかかるが、長期的にみれば投資額を上回るコスト削減は十分可能だ。
仕事を続けたいのに育児や家族の介護などを理由に離職してしまう人は多い。優秀な人材を長期雇用できないことに悩んでいる企業も多いだろう。在宅勤務で働ける環境があれば、貴重な労働力を失う問題を軽減できる。今後、労働力人口がますます減っていくなか、在宅勤務環境を用意しておくことは非常に重要な対策といえるのだ。
地方の企業のなかには、在宅勤務環境を整えることで全国に求人を出せるようになり、優秀な人材の確保につながった事例もある。場所に制限がない在宅勤務なら、海外に労働力を求めることも可能だ。
また、間接的なメリットとしては、多様な働き方を実現することで、会社の魅力を高められることがある。ライフ・ワーク・バランスを重視する考えは着実に広まっているので、テレワークの整備は長期的な人材確保の戦略としても重要なのだ。
在宅勤務に関する生産性向上のエビデンスとして有名なのは、NASDAQの上場企業のコールセンター業務に関する調査結果だ。これによると、在宅勤務によって30%程度の生産力向上が達成できたという。すべての企業に適用できる数値ではないが、少なくとも単独作業が多い業務は生産力が向上しやすいと考えられている。
その他「通勤ストレスがないので本来の能力を発揮しやすい」「打ち合わせや顧客からの問い合わせが少なくなったので業務に集中できる」などの声もある。また、在宅勤務のシステムを導入すれば、Web会議やWeb商談なども容易に実現できるため、こうした業務の効率化による生産性向上も見込めるのだ。
在宅勤務を導入することでどのような問題が発生するリスクがあるのだろうか。主なデメリットや課題を紹介する。
非常時における在宅勤務で問題になりやすいのが育児問題である。保育施設や学校に子どもを預けられない状況になると、育児をしながら仕事もこなさなければならない。「現実的に両立は難しい」という声もよく聞かれる。企業側としては、このような状況に対する寛容な姿勢や業務量を調整するなどのフォローも必要になるだろう。ノートPCにコミュニケーションツールを入れておき、子育て中の従業員たちを繋ぐといった施策も考えられる。また、寝ている赤ちゃんの近くで仕事をするなども考えられるため、万が一に備えて堅牢性の高いノートPCを選ぶなど、細かな配慮もしておきたいところだ。
在宅勤務ではオフィス内とは違うセキュリティ上の問題が発生しやすい。たとえば、社員のプライベート用PCを使って作業してもらう場合は、最新のウィルス対策ソフトが動作している保障はない。OSやブラウザなどのセキュリティ設定も違うため、セキュリティを担保するのは困難だ。
重要なデータが個人のPCにコピーされるというのもセキュリティ上問題になるだろう。また、PCの紛失・盗難の問題もある。常に在宅で働くのであればリスクは低いが、カフェや図書館などで仕事をする人もいることも想定すると、このような場では情報を盗み見されてしまうことも考えられる。
在宅勤務では社員の勤務状況が把握しにくい面がある。テレワークを導入した3割程度が勤怠管理とスケジュール管理を悩みに挙げているという調査結果もある。その一方で、勤怠管理ツールや在席管理ツール、コミュニケーションツールも充実してきている。価格も比較的安くなってきているので、こうしたツールを導入してはどうだろうか。
対面営業や商品の企画会議など、直接会ってコミュニケーションをしたほうが効率的な業務の場合、在宅勤務では生産性は落ちてしまうこともあるだろう。在宅勤務に適した業務とそうでない業務の切り分けが必要になることは間違いない。
また、非常時にテレワークを導入する場合は、PCやツールの操作に慣れていないなどで一時的に生産性が下がってしまうリスクもある。PCのスペック不足も生産性を下げる大きな要因だ。個人がプライベート利用を目的として購入したマシンでは、処理が遅い、通信が遅いなどの問題で、生産性が大きく下がってしまう恐れもある。
在宅勤務にもデメリットはあり、育児と仕事の両立など企業の力だけでは解決できない課題もある。一方で、設備投資や運用方法によって解決できることもあるだろう。ここでは在宅勤務の課題解決のための対策例を紹介する。
在宅勤務において効果的な環境整備のひとつは、企業がノートPCや通信機器を用意して貸すことだ。できるだけ社員それぞれにあったICT環境を用意し、業務ルールの順守を徹底することがセキュリティを保つ重要なポイントである。
高いセキュリティを重視するなら、スマートトラッカーやショルダーハッキングなどを搭載したPCが望ましい。スマートトラッカーとは、スマホと連携することでマシンとの距離が離れたときに置き忘れや盗難を警告・通知する機能だ。もちろん、在宅勤務ではリスクは少ないが、他の形式のテレワークも考慮するとスマートトラッカーは有効だ。
また、自宅から別の場所にロケーションを変えてのテレワークでは、ショルダーハッキングの問題もある。ショルダーハッキングとは「のぞき見」のこと。ショルダーハッキングによる情報漏洩は少なくないため注意したい。正面からしか画面が見えない動作モードを搭載しているPCもあるので、機能の有無を確認しておこう。情報漏洩による被害にならなくても、社員の家族や友人、知人にデータを見られるのが企業ポリシーや倫理上の問題になる場合もあるだろう。こうしたときに情報が見られないためにも、ショルダーハッキング防止機能が付いたノートPCを選んでおいたほうが安全だ。
ICT環境の整備にはある程度の費用がかかる。しかし、非常時には国や自治体からの助成金が出ることも多いので確認しておこう。たとえば東京都では、感染症等の拡大防止と事業継続のための「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」がある。1000人未満の企業なら250万円を上限として、PCやルーターなどの設備を自己負担ゼロで整えられる。非常時はピンチではあるが、逆に企業改革を進める絶好のチャンスともいえるかもしれない。
業務によっては処理が重い作業や専門的なアプリケーションを使う場合も考えられる。在宅用ノートPCではこうした環境を実現できないこともあるだろう。解決策の1つとしては、企業にあるサーバーやPCを遠隔操作する方式を採用することだ。自宅のパソコンはキーボードやマウスによる入出力を処理しているだけなので、会社でやる作業のほぼ全てができる。また、企業にあるサーバーやPCが処理をしているので、ノートPCにデータが残らない。セキュリティ面でもメリットがある運用方法なのだ。
ただし、パソコン自体が処理を行わないため、通信量が増える傾向にある。長く快適に使えることを考えると、Wi-Fi 6による高速無線通信など通信スペックが充実しているノートPCを選んだほうがいいだろう。
なお、別記事では、安全なテレワーク環境構築について動画でわかりやすく説明している。詳細を知りたい方は下記URLをより視聴いただけると、安全なテレワーク環境構築についてより理解が深まるだろう。
在宅勤務の導入にはコスト削減や労働力確保などのメリットがある反面、セキュリティ面での不安や一時的な生産性低下のリスクがある。一部の問題はオフィス内と同じように業務を行えるPCとアクセス面の仕組みが整備しきれていないことで発生する。そのため、生産性の高い在宅勤務を実現するためには設備投資が欠かせない。特にセキュリティリスクの軽減や作業効率においては使用するPCに依存するところが大きいため、設備が整っていない企業は在宅勤務導入をきっかけに購入・更新を進めたほうがいいだろう。本サイトでは、在宅勤務を導入する企業に向けたテレワーク向けノートPCを紹介している。またテレワークの本質やメリットについてのホワイトペーパーを以下よりダウンロードできるため、さらに詳細を知りたい方は確認してみてはいかがだろうか。
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