2021.08.16

隈研吾建築都市設計事務所の3DCG制作に
大きな変革をもたらしたHPワークステーション

隈研吾建築都市設計事務所

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 建築家として広く知られている隈研吾氏。同氏が主宰する株式会社隈研吾建築都市設計事務所は、世界屈指の技術力を持ち、国内外問わずこれまで多くの施設を設計してきた。

 同氏の実績や思想などを知ることができるイベントも多く、「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」もそのひとつだ。この展覧会では、最新のCGを使ったコンセプトムービーが上映され、その制作にHPワークステーションが活躍したという。どのような作品なのか、同事務所のCG担当者に話を伺った。

ネコの視点で都市の在り方を再発見

 2020年11月3日から、2021年9月26日まで開催されている「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」。高知県立美術館からスタートし、長崎県美術館を経て東京国立近代美術館と巡ったこの展覧会は、世界的に評価され続けている隈研吾氏が手掛けた作品の中から公共性の高い建築を、模型や写真、モックアップなどにより紹介するほか、VRや3DCG映像などのコンテンツも展示された。

2020年11月3日から、2021年9月26日にかけて全国で開催されている「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」(写真は東京国立近代美術館)

 特に映像作品においては、都市を住処とする半ノラのネコの視点から人間の生活の新たな方向性を見出すリサーチプロジェクト「東京計画2020:ネコちゃん建築の5656原則」が発表され、大きな話題となっていた。

 「この映像作品はTakram様との協働で作られたもので、公共性や都市の在り方を考えるきっかけとなるように、実際に神楽坂に住み着いているネコの視点を借りて街を見つめなおす取り組みになります。映像では3DCGやプロジェクションマッピングなどの技術を使って、彼らの行動やその舞台となる都市空間を表現しました」と話すのは株式会社隈研吾建築都市設計事務所(以降、隈研吾事務所)で3DCG制作を担当する土江俊太郎氏(以降、土江氏)だ。

隈研吾事務所で3DCG制作を担当する 土江俊太郎 氏

 作品は、GPS機器を取り付けた2匹のネコの動きを記録し、日々どのような行動をとっているかをマッピングした「テンテン」。彼らが歩きやすい空間について、肉球に直接触れる素材という観点から振る舞いを映像にした「ザラザラ」。臆病な性格の彼らが生きるために必須としている緑地を表現する「シゲミ」。個々のなわばりを示すためのマーキング行動を視覚化した「シルシ」。広い場所よりも自分の体に合った空間を好む彼らの行動を分析した「スキマ」。屋根や堀など、ネコが好む生活空間をどのように歩いているかを線でヴィジュアライズした「ミチ」の5つの映像によってコンセプトを伝えている。

 「当初はネコにビデオカメラを取り付ける案や、我々スタッフが現地でカメラを持って歩くということも考えましたが諸事情により実現が難しく、3DCGとGPSデータで表現しようということになりました。よりリアルな質感を表現したかったのでゲームエンジンを使いましたが、これが当事務所では初めてUnreal Engine 4で作った作品となりました」と土江氏は振り返る。そして、この作品の制作に使われたのがHPワークステーションだったのだ。

よりリッチなコンテンツを目指して

 隈研吾事務所では、継続的にHPワークステーションを導入してきた経緯がある。「この作品でも当初は通常の建築パースの制作用に使っているワークステーションで作業をしていました。しかし、もっと細部まで作り込んでいこうとリッチな映像にこだわっていった結果、当初のマシンでは作業が重くなってきたのです」と土江氏。そこで同事務所が用意したのが、HP Z8 G4 Workstationだった。

 新しく3DCG制作用に用意されたマシンは、プロセッサーにインテル® Xeon® 6240が2基、グラフィックスにはNVIDIA Quadro RTX 8000 2基、メモリは384GB、1TB M.2 SSDというハイエンド仕様のものだ。「当初のマシンもNVIDIA Quadro RTX 5000を搭載していましたから、決してスペック的に劣るものではないのですが、よりリッチにという考え方からこの仕様を選びました」と土江氏。

HP Z8 G4 Workstation とNVIDIA Quadro RTX8000。隈研吾事務所では独自に最新のNVIDIA RTX A5000 の試用も始めているとのこと。土江氏がグラフィックスの進化に大きな期待を寄せていることが分かる

 他にも同氏にはこれだけのハイスペックにしたかった理由があるのだという。「それはどれだけフローを高速に回していけるかという観点です」と土江氏。

 ゲームエンジンでの3DCG制作では影などをベイクすることで計算量が減り、マシンへの負荷も軽減するがその処理にはどうしても時間が掛かる。Takramとの協働ということもあり、定期的な打ち合わせが行われたが、その都度ベイク等の作業が発生すると効率が落ちてしまうのだ。

 それを解決する方法としてなるべく高性能なワークステーションを使い、パフォーマンスを活かしたリアルタイムレンダリングをしながらのデータ共有などが考えられた。

 「それには圧倒的なGPUパワーが必要になりますが、このマシンならそれが可能でした。おかげで常に最終ルックと同じものを見ながら進められたので進行に無駄がありませんでした。ムービーとして書き出す際にも時間の短縮は圧倒的でしたから、打ち合わせ時に見たい部分だけをその場で切り出して一緒に確認するといったこともできます。当初と比較して各フローが改善するだけでなく、やり方自体が大きく変化していったのが印象的でしたね」と土江氏は導入の手応えを語る。

表現できる領域も拡大

 「制作を開始したのが2020年の2月。試行錯誤しながら進めて今回のマシンを導入したのが4月でした。本来の発表は同年7月からの予定でしたから、当初の予定よりも時間に余裕ができたこともあって、見せたかったものはしっかり形にできました」と語る土江氏。

 確かに展覧会で直接見る映像はとてもリアルで、来場者からは「これは本物のネコ?」といった声も聞こえていた。

会場でもひときわ注目を集めた映像作品「東京計画2020:ネコちゃん建築の5656原則」(写真は「シゲミ」)

神楽坂で生活するネコが好む空間をマッピングモデルと映像で見る「ミチ」。それぞれのネコが高低差のあるコースを自由に歩んでいる様子が伝わってくる

 今回映像としてまとめた作品の中でも特に負荷の高かったものに草むらとネコのシーンがある。これにはレイトレーシングを使った表現も多用されている。

 「建築業界では最終成果物を映像として出すことが多くなっています。物の陰影は非常に大事なのでレイトレーシングは常に使いたい技術のひとつでもあります。あのシーンではこのマシンでも重くなるぐらいの負荷が掛かったのですが、映像として出力できれば編集はできるので表現を大切にするためそのまま使うことにしました」と土江氏は振り返る。

 隈研吾事務所の作品にはルーバーからこぼれる光や木漏れ日などを活かした表現が多くみられる。今回得たノウハウは今後の作品づくりに活かされていくはずだ。

 もう一点、以前は3DCG映像の制作は外部の制作会社に委託していたものが、今回の経験をきっかけに自社内で制作できることを証明できたことが、隈研吾事務所にとっては大きな収穫だったのだという。

 「以前は期日に間に合うよう、なるべく早めにコンセプトを伝えなくてはなりませんでしたが、自社で完結できればギリギリまでアイデアを詰められます。社内にCGチームを持っている建築事務所であるメリットがこれまで以上に出せるのではないかと大きく期待しています」と土江氏は語る。

テクノロジーの進化が業界の発展に寄与

 今回の3DCG制作を受け、テクノロジーの進化を実感したという土江氏はワークステーションを使うあらゆるシーンで新しい可能性を感じているという。

 「例えば、弊社では設計スタッフもある程度3DCGが制作できます。最終的な成果物にするにはレンダリングをするわけですが、ソフトウェアの関係でこれまではCPUパワーに依存していました。しかし、GPUレンダリングが可能なソフトウェアも増えてきたので、今後は効率のよい方を使って進めていくことができるようになります」と土江氏。

 進化が著しいグラフィックステクノロジーにおいては、土江氏が指摘するようにあらゆる分野でGPUコンピューティングの活用が進んでいる。その恩恵を最もうまく業務に活かしていくのは最先端で活躍する土江氏のようなデザイナーなのだろう。

 「建築業界においてムービーで何かを表現するというのは新しいことではありません。しかし、今後は3DCGだけでなくVRを含めてよりインタラクティブなコンテンツが増える方向へとシフトしていくのだと思います。今回の映像作品もまさにそうなのですが、実はもう一つやりたかったことのひとつに、投影されている映像の前にセンサーを置いて、お客様の動きに合わせてネコの動きを変えるというものがありました。コロナ禍だったこともあり会場内にあまり密な状態を作りたくないという配慮もあって今回は見送りましたが、技術的には十分可能だったはずです。今後はそういった手法を使って建築のプレゼンをしていくことも増えるでしょう。これからもZ8 G4のハイパフォーマンスをフルに活かして、インタラクティブなコンテンツをはじめとした新しい建築表現をみなさんにお届けしたいですね」と土江氏。

 次なる構想を伺ったところ、「GPUパワーが必要な業務をリモートで実現する『HP ZCentral Remote Boost』や高解像度VRヘッドマウントディスプレイ『HP Reverb G2 VR Headset』によるシミュレーションなど、HPのテクノロジーを活用してさらにワークフローの改革を続けていきたいですね」と笑顔で語ってくれた。

 世界中で人々を魅了する建築を続ける隈研吾事務所。ワークステーションのパフォーマンスをフル活用し、その恩恵を新たな創造へと結びつけていく姿勢はそのまま作品へと注がれていた。今後もHPは隈研吾事務所のサポートを続けていく。

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