2022.11.09

インクジェットデジタル輪転機の新プラットフォーム発表
日本HPが操作性を追求したコンパクトモデルの革新的なデザインを採用

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drupa2008での発表以来、その圧倒的な生産性と高品質な印刷仕上がり、そしてデジタル印刷機特有の柔軟性のあるシステム構成で全世界の印刷会社で導入されてきたインクジェット方式のデジタル輪転印刷機「HP PageWide Web Press(PWP)」。発表から約14年間にわたり進化を続け、印刷会社のビジネス成長を支援してきたPWPに、このほど新たなプラットフォーム「HP PageWide Advantage2200シリーズ」が追加された。今回、(株)日本HP・デジタルプレス事業本部の鈴木仁志氏とHP社のアジア・パシフィックにおけるPWPカテゴリーマネージャーのトニー・パグイリガン氏に、最新機種であるA2200の機能などについて聞いた。

鈴木氏(左)とトニー氏

「HP PageWide Advantage 2200シリーズ(PW A2200)」は、出版、ダイレクトメール、商業印刷、トランザクションのユーザー向けに開発されたHP PageWide Pressの新たなプラットフォーム。カラーで最高152m/分、モノクロで最高244m/分の高速印刷を実現。また、高カバレッジ印刷では、A4サイズのモノクロ画像を最大8万5000枚/月、さらにパーソナライズされたA3カラー両面シート21万4000枚(1シフトで換算)を印刷できる処理能力を有する。

加えて「HP Brilliant Ink」と2400ノズル/インチの高精細プリントヘッドを採用することで、よりカラフルな一般書籍や教育書籍から、市場での差別化を可能にするインパクトのある高カバレッジのダイレクトメールまで、付加価値の高い多様なアプリケーションに対応。40gsmから最大300gsmまで幅広い坪量のメディアに対応し、印刷事業者が必要とする汎用性を提供する。

メンテナンスが容易な「シングルプリントアーチデザイン」

新たなプラットフォームとして開発されたA2200の特徴の1つは、革新的なマシンデザインだ。PW A2200は、より少ないコンポーネントで構成される革新的かつ堅牢なペーパーパスを備えたシングルプリントアーチデザインを採用している。

「従来のPWPは、半円形のプリントエンジンの設計であったが、PW A2200は、それをさらに小さくした四分円形のシングルプリントアーチデザインを採用することで、機械サイズのコンパクト化を実現している。さらに機械サイズをコンパクトにしたことで管理する部品の数を減らすことができ、これにより全体的な保守や修理の時間を短縮し、信頼性の向上と稼働時間の最大化を実現している。また、高さも3m以下、と他社メーカーとの遜色ないサイズを実現している」(鈴木氏)

機械本体の大幅なサイズダウンは、メンテナンス性の向上にもつながっている。具体的には、新たなプリントヘッドポケットを採用したことで、ヘッドの取り付け作業が簡素化されている。さらにシングルプリントアーチの円弧上の部分には、透明なアクリル製のフロントスライドドアを採用。視認効果の高いアクリルを採用したことで、アクセスポイントを外側からすぐに確認できるのでプリントヘッド交換など、オペレーターの作業性の向上にも寄与している。また、サイドドアを部分的にメッシュ形状にすることで、内部の稼働状況を目視確認することができる。

「生産性の向上を開発コンセプトの1つとしており、専門エンジニアを待つことなく、オペレーター自身でメンテナンスを行うことで、ダウンタイムを短縮して稼働させることができる」(鈴木氏)

ユニークな紙パスで両面印刷に対応

コンパクト化を実現したPW A2200は、その斬新なマシンデザインに加え、ユニークな用紙搬送方式を採用している。

300gsmの厚紙にも高品質印刷が可能

従来のPWPでは、半円形のプリントエンジン2基を接続し、それぞれのプリントエンジンで表面、裏面を印刷していたが、PW A2200では、新たなプリントエンジン「シングルプリントアーチ」で表面を印刷し、ドライヤーユニットを経由後、ターンバーを介して印刷面を反転させ、再度、シングルプリントアーチで裏面印刷を実行する。つまり、「シングルプリントアーチ」を2回通すことで、両面印刷を行っている。そのため用紙幅22インチ対応モデルのA2200は、PWPの42インチモデルのプリントバーを使用している。PWPと部品の共通化を図ることで、新たな部品生産のコスト削減につなげている。

「コンパクト化により従来2週間かかっていた設置期間も7日間に短縮することができた。これにより導入ユーザーは、今までよりも早く印刷機を立ち上げることができる」(トニー氏)

出版印刷でも効果を発揮

モジュール設計の冷却ユニットとドライヤーユニット

PW A2200は、モジュール設計の冷却ユニットとドライヤーユニットを採用している。また、ドライヤーユニットは、最大3台を接続することができる。

冷却ユニットは、「パッシブ(空冷)」と「アクティブ(水冷)」の2種から用途に応じて選択することができる。また、ドライヤーユニットは高効率の乾燥システム「High Efficiency Dryingシステム(HED)」を採用し、乾燥プロセスにおいて加熱された空気の最大80%を再循環させることにより、高速印刷時の電力使用量を最小限に抑えてくれる。

これらのユニットは、ユーザー側のビジネスの成長、またはアプリケーションミックスの変化に合わせ、柔軟に印刷機を拡充できるモジュール設計を特長としており、ユーザーは1台、2台、または3台のドライヤーモジュールとパッシブ(空冷)または、アクティブ(水冷)の冷却モジュールを用途に合わせて選択可能。

HP PageWide Advantage 2200

自社のビジネスに最適なシステム構成が可能

基本構成としては、3基のドライヤーユニット+冷却ユニット(アクティブ)の40~300gsm対応モデル、2基のドライヤーユニット+冷却ユニット(パッシブ)の40~250gsm対応モデル、そしてドライヤーユニット1基の40~160gsm対応モデルと、坪量や印刷内容に応じた3タイプを用意している。

印刷速度は、生産性モードとHKDモードが152m/分と、従来のPWP T200シリーズと同等だが、高品質モードでは、101m/分とPWP T200シリーズ(76m/分)よりも33%の高速化を実現。さらにA2200では、244m/分のモノクロモードも使用することができる。

PW A2200のシステム構成

「PW A2200は、40~300gsmと、薄紙から厚紙までの用紙に対応可能だが、これら冷却ユニットおよびドライヤーユニットを組み合わせることで厚手のオフセットコート紙への高カバレッジジョブを152m/分、また、高品質モードであれば101m/分の高速かつ高品質印刷が可能となる。これにより出版印刷からDMだけでなく、あらゆるアプリケーションに対し、紙厚などを気にせずに印刷することができる」(トニー氏)

当初は、ドライヤーユニットが少ない構成で導入したとしても、その後ビジネス条件の変化に応じて、ドライヤーユニットの増設や冷却ユニットのアップグレードが可能であり、これはモジュール設計によるメリットといえる。

また、モジュール式のインク供給システムを採用しており、HPのトレーニングを受講することで、オペレーター自身でフィルター交換することもできる。

これらの新たな機械構造により、作業性の大幅な向上が期待できるほか、オペレーターの作業負荷の低減にも効果を発揮する。

シングルプリントアーチで両面印刷に対応

用紙対応力と高品質化を実現するHP Brilliant Ink

この高品質印刷を支えているのが、HP Brilliant Ink(ブリリアントインク)とオプティマイザーだ。HP Brilliantインクは、インキ定着性のほか、広い色域による人目を引く色彩、大胆な赤、目に鮮やかな青と光沢のある仕上がりにより高品質印刷を実現する。加えてインクジェット方式の課題ともいえる「にじみ」の改善などの機能性により、従来のトランザクションや出版・書籍といった印刷領域から、ポスターやカタログ、DMなど、一般商業印刷領域への進出も可能となっている。またオプティマイザーは、HP Brilliant Ink用に開発されたインク定着剤で、CMYKインクが載る場所だけに塗布され、インクを定着させる。この技術により、インクジェット専用紙のほか、一般的なオフセットコート紙やオフセット上質紙などにも高品質な印刷が可能となる。

PWPのアップグレードも発表

2022年10月19日から21日にわたり、米国・ラスベガスで開催された「PRINTING United Expo」では、PW A2200の発売開始が正式に発表されたほか、PWPシリーズのアップグレード情報も発表された。

それによるとPWP T250シリーズにおいて、新たにモノクロモードがA2200と同等の244m/分で印刷できる。これにより単色のドキュメントや出版印刷に対し、より効率的な生産が可能となる。

もう1つは、PWP T490シリーズのアップグレード機種としてHP Brilliant Inkが搭載可能なT485が発表された。これにより42インチモデルでもHP Brilliant Inkによる、より高品質な印刷が可能となる。

PWPシリーズはフィードで機器をアップグレードできるのが大きなメリットだ。ハードウェアの初期投資後、その後に発表される機種に搭載される新機能を取り入れながらアップグレードを行い、最新機種と同等の機能を備えて稼働させることができる。アップグレードは長期的にはTCOを低く抑え、ユーザーの投資を保護できる。

機械本体はそのままに、機能を常に最新化できるPWPシリーズは、今後も最新機種であるA2200と並行して市場投球されるとのこと。

なお、日本HPでは、11月24日から開催される「IGAS2022」において、パネル展示や動画などでPW A2200を紹介していく。

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【本記事は 印刷ジャーナル が制作しました】

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