2023.02.24

印刷新時代を担う!中本本店中本社長 × 誠伸商事福田社長 クロスインタビュー

株式会社中本本店/誠伸商事株式会社

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創業100年を超える老舗の印刷会社、株式会社中本本店は、長い歴史を持ちながら、常に時代の新しい価値を取り入れるモノづくりを追求している。クリエイティブ力を根幹の強みとする同社は、HP Indigoデジタル印刷機の可能性を見出し、印刷の専門家とクリエイターが向き合い対話をすることで、クリエイターが求める最適解に導くユニークなサービス「インサツビト」を展開。また日本の印刷情報産業の発展を担う専門商社である誠伸商事株式会社は、HP Indigoデジタル印刷機の販売パートナーとしてデジタル印刷の普及を支えている。2023年、今後の業界全体の動向を踏まえながら、新しい機会を探る両社の社長対談をもとに、印刷業界が進むべく道を探っていく。

株式会社中本本店 代表取締役 中本俊之 氏
1962年 2月11日 生まれ。広島県の大学を卒業後、株式会社光陽社に入社、大阪で3年間勤務する中で製版について学ぶ。25歳で地元広島に戻り、株式会社中本本店に入社、36歳で代表取締役に就任。2001年、日本青年会議所のメディア印刷部会で部会長を務める。現在、広島県印刷工業組合理事長を兼任し『ひろしまDX』を立ち上げて推進している。

誠伸商事株式会社 代表取締役社長 福田和也 氏
1961年4月3日生まれ。大学卒業後、日本プリンティングアカデミーにて印刷の専門知識と技術について学ぶ。卒業後、商業印刷を手掛ける光村印刷株式会社(旧光村原色版印刷所)で5年弱営業に携わり、印刷業界での土台を築く。その後、誠伸商事株式会社に入社し、2000年に日本青年会議所のメディア印刷部会の部会長を務める。現在、誠伸商事株式会社 代表取締役社長。

1. デジタルが主流の今だからこそ、印刷にこだわる

――それぞれの事業についてご紹介ください

中本氏:「中本本店は、1919年に中本印刷所として広島市に創業し、活版印刷の事業から始まりました。創業者である祖父は、地元の中国新聞社で文選・植字の職人をしており、その後独立して会社を興しました。1945年8月6日、原爆被災により工場を焼失し、再びゼロからの出発です。事業としては、活版印刷の時代が長く続きましたが、その後電算写植を立ち上げ、当時横組みしかできなかった時刻表の組版を縦組みにするなど、新しい試みに挑戦してきました。そこから本格的なオフセット印刷が始まります。社内で製版を組み印刷をする中で、当社が特に注力したのがカラーマネジメントです。私は大学を出て3年間製版会社に勤務しましたが、それはカラー製版を内製化したいという先代の思いを受けてのことでした。その後、CTPなどと融合しながらデジタル化に進んでいきました。

初代であるHP Indigo 5600デジタル印刷機を導入したのは2012年のことです。以前より、本格的に企画・デザインをやりたいという思いは抱いていました。ところが、当時は『印刷をお願いするからデザイン料はまけてよ』というような声が多かったのです。デザイン会社や広告代理店と違って、印刷会社という看板ではデザイン料をなかなかもらえない、そんな悔しい思いをしてきました。その事から、1998年にデザイン部門を独立させ、別会社として株式会社インフォ・エヌ(現在のLIGHTS LAB(ライツ・ラボ))を設立したのです。今は時流に合わせて、紙だけではなくWebやデジタルなど、媒体にとらわれず広く企画・デザインを手掛けています。これからも社会の風潮はますますデジタルが主流になっていくでしょう。ただ、それだけに『印刷のこだわり』についてはさらに強くしていきたい。デジタル印刷機を介して『人と人の出会い』や『縁』を大切にすることも、企画・デザインとともに進めていきたいと思っています」

福田氏:「誠伸商事は、印刷機材と材料の専門商社で、今年で創立54年目になります。HPのデジタル印刷機を含め、オフセット印刷機、POD、製本機、インキ、プルーフソフト、検査装置、版材など、様々なメーカーの代理店を兼ねています。売上の8割弱はメーカーからの仕入れによる販売、残り2割は、当社の関連企業が開発・製造する印刷用の薬品や、印刷業界向けの生産系・管理系のソフトウェアなどのオリジナル商品です。営業所は、東京、静岡、新潟、宇都宮、仙台となりますが、営業エリアとしては全国を網羅しておりますので、札幌や福岡、もちろん中本本店さんのある広島にも出向きます。中本社長とは同年代で、公益社団法人日本青年会議所(JC)のメディア印刷部会で、2000年に私が部会長を務め、2001年に中本社長に部会長のバトンを渡したご縁から、長い付き合いになります」

――HP Indigoデジタル印刷機導入の経緯は?

福田氏:「12年程前にシンガポールで開催されたHPデジタル印刷ユーザー会であるDscoopに参加したことがひとつのきっかけですね。当時、デジタル印刷機で高品位の印刷ができるのはHP Indigoデジタル印刷機くらいでした。液体トナーということで元々興味はあったのですが、Dscoopに参加して、機械の良さはもちろんのこと、それ以上にユーザーの成果物や発表、ディスカッションに大いに刺激を受け、それからHPの印刷機に惚れ込んだという経緯があります。

帰国後、関心のありそうなお客様には情報を発信していましたが、当時はようやくPODが一般的になってきたところで、まだまだデジタル印刷機の時代とはいえませんでした。徐々に、HP Indigoデジタル印刷機の高い技術に興味を持たれる会社が出てきて、少しずつ導入が広がっていきました」

中本氏:「Dscoopのユーザー発表会は本当にすごかったですよね。デジタル印刷をどう使い、どうビジネスをつくるのか、全く新しい着眼点で発表されていて強烈なインパクトがありました。特に、使い方の発想には圧倒され、これはすごい会だと感じました。Dscoopへ参加した後に、国際印刷・メディア産業展のDrupaで実機を見て購入に踏み切ったというのが経緯です」

――初代のHP Indigo 5600デジタル印刷機を導入されて苦労はありましたか?

中本氏:「9年前にIndigo 5600デジタル印刷機を導入した時は、菊半裁4色オフセット印刷機を入れ替えるタイミングでしたので、半分チャレンジの気持ちもあっての置き換えでした。HPのデジタル印刷機は機構的にはオフセットですが、やはり運用面ではオフセット印刷機とは違います。当初は、網点の発生や圧のかけ方で印刷がうまくいかないなど、営業が神経質になったこともありました。プレコートも必要で、これまで使い慣れたオフセットとは異なる手間がかかる印刷機という印象でした。ですが、その反面、色々なことができるというメリットもあります。無版という強みもありますし、その適性にピタッとはまるとものすごく強い。少し厚みのある紙が得意で、特色を使用した高品質なものを小ロット・可変印刷できるなど、その威力を発揮すると『同じ印刷機でも使い方が違い、こんな用途でも使えるのだ』という学びに繋がりました。そうやって、デジタル印刷機でできること、得意なことがひとつひとつ増えていったのです」

――2代目となるHP Indigo 7Kデジタル印刷機の導入は順調に進みましたか?

中本氏:「実は、HP Indigo 5600デジタル印刷機を入れ替える話が出た時に、社内では他社のPOD機を推す声が強かったのです。ところが、企画デザインを担うライツ・ラボのメンバーから『Indigoを入れて欲しい』という熱望 があり、議論の結果、彼らの意見を汲んでHP Indigo 7Kデジタル印刷機を導入することにしました。扱いの難しい『じゃじゃ馬』ではありますが、それだけHP Indigoデジタル印刷機には尖った魅力がありますし、それを扱えることが強みにもなると判断したのです」

福田氏:「中本社長から相談を受け、社内で意見が二分されていたことはわかっていました。機器販売としては中立の立場ですが、新しいビジネスとして『インサツビト』を立ち上げようとされているのを聞き、そういったチャレンジをサポートしなければ、という思いがありました。そこで、HPのビジネス開発チームと一緒に社内プレゼンのためのコンセプトづくりをお手伝いさせて頂いたのです。HP Indigoデジタル印刷機には、使用できるメディアの広さ、表現力、特色が使えるなど、POD機にはない魅力が多くあります。HP Indigoデジタル印刷機でなければ、デザイナーさんの想いは再現できなかったでしょう」

2. デジタル印刷機を活用したサービスとさらなる発展

――HP Indigo 7Kデジタル印刷機を活用したサービスについてお聞かせください

中本氏:「2021年5月にクリエイター向けサービス『インサツビト』(https://insatsubito.jp/)を開始しました。印刷表現に関する様々な悩みを解決すべく、印刷のプロとクリエイターが相談しながら高品質なモノづくりができる新しいサービスです。どんな素材やどんなインキがあるのか、どんな加工ができるのか、印刷の仕上がりイメージを知りたい、紙選びの相談に乗って欲しいなど、紙やインキを印刷ラボで見て触れて感じることで、作品を磨き上げるお手伝いをしています。

スタートしてから1年半程ですが、ノベルティ用のイラストを透明フィルムカードに刷りたい、アートブックの制作でシルバーインキを使用したい、このインキに合うオーガニックの紙をセレクトして欲しいなど、作品や商品を最高の状態で刷り上げるために様々なご相談を頂いています。

先日はUMA / design farmさんにご協力頂き、『クリエイターズセッション』を行い、新しい印刷サンプルを完成させました。クリエイターさんたちが印刷機の前で膝を突合せて話し合い、何度もテスト印刷を重ねながら、彼らの作品を『インサツビト』で配付できる印刷サンプルとして創りあげたのです 。パッケージ、フライヤー、名刺、包装紙など、様々な用途をイメージしやすいように紙やインキをセレクトしています。
(2023年2月28日までの印刷サンプルプレゼント企画:https://insatsubito.jp/creators-session/

このように、中本本店はFace to Faceの対話や人とのご縁をとても大切にしています。『インサツビト』のロゴは、人と人が向き合ってとことん会話し、何かを証として残すというコンセプトで印鑑のようなデザインになっています。そのマークをそのまま具現化したのが『インサツビト』なのです。

さらに、『インサツビト』から発展して、未来のクリエイターを育成する『インサツガッコウ』(https://insatsubito.jp/insatsu-gakkou/)という事業も実施しています。デザイン学校などでは、コロナ禍で生徒が登校できず、オンライン授業だけになっていると現場の先生から聞きました。社会に出る前に、実際の印刷機を使いながら、印刷データの作り方などを学べる実地体験の場を提供しています」

――お客様の反応はいかがですか?

中本氏:「『インサツガッコウ』は、実際に就職活動の武器になっているようで、県外のビジネスデザイン専門学校などからも依頼が来ています。遠方の場合は、『インサツビト』のラボで刷った実際の印刷物を事前にお送りし、先生と生徒は実物の作品を見ながら、オンラインで説明を聞いて頂くなど、柔軟に対応しています。

『インサツビト』や『インサツガッコウ』の事業は、クリエイターやその卵が対象ですが、これまでなかなか実現できなかった対話が実現できているのはいい形だと思います。『オンデマンド印刷の常識が変わった』『刷り上がりが桁違い』など喜びの声も多く頂いており、『インサツビト』の縁をきっかけとした新しいビジネスにも繋がっています。他社のPOD機では、このような様々なチャレンジや、こだわったモノづくりは叶わなかったでしょう。まだ売上目標には到達していませんし、もちろんいいことばかりではありませんが、試行錯誤しながら挑戦を続ける中で、デジタル印刷のビジネスは着実に増えています。HP Indigo 7Kデジタル印刷機は間違いなく当社の強みになっているといえます」

3. 選ばれる企業になるために、「今はできない」ではなく「今だからこそやる」

――デジタル印刷機導入に踏み切れない印刷会社さんも多いようですが

中本氏:「現実問題として『今日の飯』『明日の飯』は大事です。将来への投資が大切なのは皆わかっていますが、1年後、2年後ではなく、現実には今飯を食べなければならない。それは当社も同じです。ですが、何かを仕掛けて行かないと、この先どうなるのかと聞かれた時に答えられません。DXも同じですが、とにかく実際にやってみて、その結果や途中経過を共有していくことが業界にとっても必要だと考えています。機器の導入は、皆さんシビアに検討されると思いますが、『この仕事があるからこの機械を入れよう』ではなく、『この先何とかしなくては』という危機感も必要だと思います」

福田氏:「エンドツーエンドで考えて新しいことをやろうとされているのは、実は地方の会社に多いように感じます。中本本店さんも、新しいことにチャレンジされてそれが原動力になっている。こういった国内の事例をひとつひとつ増やして、新しいことに挑戦しようという会社を応援したいですね」

――そんな中、HP Indigoデジタル印刷機をおすすめできるポイントは?

福田氏:「やはり『創造』がひとつのキーワードになるのではないでしょうか。バリアブル印刷などユニークな機能をうまく使い、デジタルで高品質な印刷をすることで創造の幅が広がるのは、他の印刷機にはない圧倒的な強みです。

印刷機を販売する際は、地域事情や、その会社の歴史、背景、強みなどをしっかりと把握した上でお客様のビジネスに最もマッチした製品を提案しなければなりません。私たちは、印刷会社のお力になりたいと考えていますので、お客様の話をよく聞いて、一緒に『創造』するお手伝いができればと思います。他にはない技術を持つHP Indigoデジタル印刷機ですが、その良いところや特性はまだまだ伝えきれていないと感じますので、もっとお客様にお伝えしていきたいですね。機械や材料の販売だけではなく、ビジネス開発面でもHPさんと一緒に協力し、お客様のお役に立てるようなご提案をしていけたらと考えています」

――2023年の印刷業界への想いをお聞かせください

中本氏:「印刷業界のキーワードとしては、『自分を知る』そして『相手を知る』ということに尽きるかもしれません。長きにわたるコロナ禍で、みんな本当にしんどい思いをしています。売上達成も、会社の福利厚生などの充実も、本来できることが思うようにできていないのが現状です。あらゆるものが値上げされ、経営を圧迫し、この3年間は守る一方で何もできなかったという会社も多いのではないでしょうか。そんな時、改めて自分の会社を振り返って知ること、そして仲間やお客様を知ること。そこから何か新しいことができないかという野心を持ち、果敢にチャレンジすることが今こそ大切だと感じます。『今はできない』ではなく、『今やらないと、次がない』。コロナ禍で思い切った設備投資をしたのも、そういった想いからです」

福田氏:「これから何をすべきか、どのようなお客様とビジネスをすべきか、私は『選択と集中』が大切ではないかと感じます。印刷業界は受託産業ですから、どうしても受け身になりがちですが、自社の価値を認めてもらうこと、そして、マーケットを見極めて選択し、集中すると決めたところには惜しみなく力を注ぐことが大切ではないでしょうか。商品やサービスはどこで注文しても同じではありません。中本社長の『自分を知る』ということは、自社の強みを知ることにも繋がりますが、各社の強みを活かしていくことが大切だと思います。その強みを軸に、マーケットやお客様と向き合い、反対にお客様からも『選択される』サービスや情報を提供していくことが重要なのではないでしょうか」

紙とインキで創り上げる「印刷」の世界を徹底的に追求する株式会社中本本店。クリエイターと対話を重ねながら、実際に見て、触れて、五感で感じる印刷の価値と楽しさを、最新のデジタル印刷機を駆使して伝えていく。そして、同社は人と人との出会いや対話を大切にしながら縁を繋いでビジネスを広げている。業界に先立って新しいことに乗り出す「ファーストペンギン」になるのは、決して簡単なことではない。そこには大きなリスクが潜んでいるかもしれないし、勇気も必要だ。しかし、そこにあるのはリスクばかりではない。他社に先駆けて新しいことをやることで、より多くの利益に結び付く可能性もある。混沌とした時代だからこそ、守りに徹するのではなく、アクションを起こして未来に繋げたい、そう考え一歩踏み出す印刷会社に対し、株式会社日本 HPそして誠伸商事株式会社をはじめとする販売パートナーは、惜しみない協力とサポートを約束する。

株式会社中本本店 本社全景(https://www.nakamotohonten.co.jp/

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