日本酒業界を変革するAgnavi
日本酒を手軽に購入できる仕組みを構築し、缶ラベルにHP Indigoデジタル印刷機を採用
2025-01-30
株式会社Agnavi(神奈川県茅ヶ崎市本村、玄成秀社長)は現在、全国の蔵元と提携し、1合(180ml)のアルミ缶を容器に採用した日本酒の新たな販売事業「Ichi-GO-CAN」を展開している。同事業では粘着ラベルを1合缶に貼付することで、各蔵元の日本酒を訴求。多品種小ロットのラベルに関しては、株式会社トッパンインフォメディア(東京都港区芝浦、堀正史社長、TEL03-6367-5550)がHP Indigo 6900デジタル印刷機で印刷を手がける。日本の食文化を担ってきた日本酒の消費拡大に挑戦し続けるAgnaviのビジネス展開と、デジタル印刷の採用動向をリポートする。
Agnaviは2020年、玄社長が東京農業大学の博士課程在学中に創業。当時は新型コロナウイルス感染拡大の最中にあり、緊急事態宣言の発出に伴う行動制限を受けて、飲食店へ酒類を供給してきた蔵元は事業展開に大きな痛手を被っていた。そこで玄社長は東京農業大学および日立キャピタルグループの日立トリプルウィン株式会社(現MHCトリプルウィン株式会社)とともに日本酒産業の支援を目的とした「日本酒プロジェクト2020」を手がけ、日本酒を4合びんで販売。プロジェクトに際してクラウドファンディングを活用し、多くの賛同を得て56蔵元への支援を行った。
さらに同社は新たな日本酒販売チャネルの構築を目的に一合缶事業をスタート。国内はもちろん、日本酒の需要が拡大している海外市場も視野に入れた販路開拓を模索する。
同事業における最大の特徴は、日本酒の容器として主流のびんではなく、1合缶を採用した点にある。同社は缶での日本酒販売にあたり、東洋製罐グループと資本業務提携。日本酒を缶へ充てんしたのち、ふたをして中身を密閉する技術を確立したことで、事業化へと漕ぎつけた。
日本酒産業を取り巻く市場ニーズの変化について、玄社長は「私自身、料理の美味しさを増幅させる日本酒が好き」と前置きしたうえで「日本酒を販売する店舗は現在、スーパーやコンビニが中心で、一升びんなど大容量での販売には不向き。日本酒は海外で人気が高まっているほどの魅力的な商品でありながら、商流の変化に対応できず、蔵元さまが消費者へ価値訴求に苦労している」と分析する。
事実、ビールなどの酒造大手は新商品開発や容器設計の見直しなどを図ることで、商流のトレンドに則したビジネスを展開している。しかし、中小がメーンの日本酒は従来の生産ラインや醸造量を大幅に変更するのが容易ではない。それでも純米酒や大吟醸など味にこだわった付加価値の高い日本酒を少量で製造する取り組みを推進している蔵元が増えている。
このような状況を、玄社長は「”日本酒は美味しい・楽しい”という認識が広がっており、素晴らしい傾向。あとは生産者の蔵元さまと消費者を結び付ける効果的なプラットフォームがあれば、日本酒の魅力をさらに幅広く伝えることができる。当社はそのプラットフォームとして一合缶を立ち上げた。国内の蔵元数は現在、約1200蔵とされるが、そのうち当社と取引いただいている蔵元さまは約120蔵で全体の10%を占め、商品の種類は200種近くに上る。これが一合缶の強み」と説明する。
缶での販売メリットとは
1合サイズの容器に缶を採用したメリットとして第1に挙げられるのが「軽量・高耐久性」。従来のびんは重量があり、輸送コストが高騰する物流の現状を鑑みた場合、マイナスとされる。またびんは輸送時に破損する可能性があり、防止策としての緩衝材などに費用がかさむ。これに対して缶は重量がびんよりも軽く、しかも衝撃に強いため、輸送コストの抑制と緩衝材の資源削減に貢献できる。
また第2の理由として、一合缶は日本酒の「品質保持」にも対応。缶はびんと異なり日本酒の大敵である紫外線をほぼ100%カットできるため、品質を保つのに効果的とされる。さらに180mlの内容量は、飲みきりサイズとしても最適で、愛飲家が飲み比べできるといった長所もある。
ただし缶による日本酒の販売には課題があった。それは「缶は直接印刷がほとんどのため、大ロット生産向け」といった点。酒造大手が製造するビールやチューハイなどは、銘柄を示す方法として缶に直接印刷を施している。これに対して日本酒は高付加価値化への取り組みもあり小ロットの傾向が強く、缶が不向きとされていた。そこで一合缶は、銘柄表示に粘着ラベルを採用。日本酒を缶へ充てん・ふたによる密閉を行ったのち、印刷された1枚のラベルを缶に巻き付けることにより小ロット対応を実現した。
粘着ラベルの採用について、玄社長は「たとえ中身が一緒でも、缶に貼付されたラベルのデザインを変えれば、そこに日本酒としての新たな価値が生まれる。当社はこれまで出版社や百貨店などとのコラボレーションで限定商品を販売した実績があるが、このような小ロットの商品に粘着ラベルを採用すれば、日本酒のニーズはさらに拡大できる。ラベルは商品のいろいろな表情を出すことが可能であり、コレクター意欲も掻き立てられる。それこそが一合缶の狙い」と語る。
商品に貼るラベルの枚数はさまざまだが、平均で5000枚程度。印刷方式について、玄社長は「これまで、商品のロットによってオフセットとインクジェット方式のデジタル印刷を選択していた。そのような中でトッパンインフォメディアさまから、液体トナーによるEP方式のデジタル印刷でラベルを製造するといった提案を受け、特にデザイン性を重視する当社のラベルに適していると判断した」としている。
広い色域が採用の鍵に
トッパンインフォメディアでは現在、一合缶のラベル印刷に関して、HP Indigo 6900を活用している。稼働状況について、第一営業本部第一部の白石裕部長は「当社はもともと多色機による大ロットのラベル製造がメーンだったが、小ロットへのニーズ対応を目的に21年、当機種を導入した。現在、2000~3000mの仕事を中心に稼働させているが、オフセット輪転機やフレキソ機と比べて段取り替えの時間が短いため、1日に多くのジョブをこなせるなどハンドリングに優れる。加えて操作性もよく、オペレーターのキャリアに依存せず安定した印刷品質が可能」と評価する。
同社がAgnaviのラベルを製造することになったきっかけは、同部三課の武者杏奈氏がIndigoの機能に関して積極的なプレゼンを行ったこと。
武者氏は「Agnaviさまのホームページを見て、缶のラベルデザインが魅力的だったことに加え、小ロットかつ高品質な商品展開を図っていることに着目。当社の保有するIndigoならば、製版を必要とせずに高い色再現性を実現するほか、短納期にも対応できると考えた。24年3月に訪問し、Indigoによるラベル製造のメリットをご提案したところ、6月から採用いただけることになった」と話す。
玄社長は、武者氏とのやり取りについて「自然体での提案に好感を持った。そもそもびんに貼付されるラベルを発注する際、コストのみを重視する蔵元さまが少なくない。しかし丹精込めて醸造した日本酒を多くの人に飲んでいただくことを望むならば、機能や訴求効果などの重要な要素があるはず。コストダウンの結果、基材がミスマッチで冷蔵庫に保管していたらラベルがボロボロになってしまいげんなり…という声も聞く。またデザイン性の重視については、同じ酒類でもベンチャー系クラフトビールの方が先行している印象。これらの課題対策に関して、トッパンインフォメディアさまは経験に基づく知見があった」と振り返る。
トッパンインフォメディアでは現在、ラベルを対象としたオンライン印刷サービス「Happy Labels」を展開。Indigoによる多品種小ロットで高品位なラベル印刷に対応する。
同サービスは多品種小ロットのラベルユーザーをターゲットとし、業績は右肩上がりで伸長。特に飲料・酒類のラベルが多数を占める。受注する印刷枚数は平均2000枚だが、さらに極小の依頼も。また小ロット以上にラベルの訴求効果を重視するニーズが多い。
トッパンインフォメディア事業企画本部の石井伸明課長は、同サービスの核となるIndigoの有効性について「訴求効果のニーズに関しては、玄社長のおっしゃったようなクラフトビールメーカーさまにその傾向が強いと感じる。これに対してIndigoは、色の再現についてCMYKだけでなく中間色も設定されており、色域が幅広い。加えて白やシルバー、蛍光といった加飾に効果のある印刷が可能。また可変ソリューションソフト『HP SmartStream Designer』を活用した高付加価値印刷もできる。今後も、当サービスをさらに幅広く活用していただけるように、営業部門と連携しつつPRに努めたい」としている。
「日本酒の未来」を左右
Agnaviはこれからも日本酒の蔵元が安定して事業を継続できる仕組みづくりを模索するとともに、日本酒の魅力を消費者へ訴求するデザイン性の向上に注力する。
玄社長はこれからのビジネス展開に対して「当社が展開してきた事業には、まさに追い風が吹いているという印象を受ける。それでもこれまで日本の食文化を担ってきた日本酒はいま、産業としての未来を左右する分岐点を迎えているとも認識している。だからこそスーパーやコンビニの商品棚に対し、デザイン性に富む一合缶が並ぶ…そういう日本酒の販売風景をアップデートしていきたい」と夢を語る。
続けて「缶に貼り付けたラベルはデザインの有効面積が大きく、訴求効果を高めるのに適する。加えて当社は海外市場にも販路開拓を推進しており、その地域に適したデザインや内容表示を変更する際、ラベルならば対応しやすい。さらには日本酒としてのブランド保持といった観点で、セキュリティー機能も必要になるだろう。一合缶の展開にラベルは欠かせない存在と考えている」と締めくくった。
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【本記事はラベル新聞株式会社が制作しました】