2020.11.30

只今DX推進中 ~マージネット池田社長から学ぶデジタル印刷を活用したDXの実践~

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HP デジタル印刷機
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 デジタル印刷機の導入は、単なる既存の印刷方法の置き換えではなく、すなわち取り組む会社自体のDX(デジタルトランスフォーメーション)の実践を意味している。旧来の印刷手法を単にデジタル化し、小ロットや短納期対応、バリアブル対応に変更するだけではデジタル印刷導入の本当の価値は享受できない。2020年11月10日、HP Tech & device TVは、和歌山に本社を置く総合印刷会社である株式会社マージネット 池田社長をゲストに招き、オンラインライブ番組「只今DX推進中 ~デジタル印刷を活用した中小企業DXの実践実態~」を配信した。中小規模の印刷会社がDXを成功させるポイントはどこにあるのか?マージネットが取り組むダイレクトマーケティングとデータ連動型DMの実践例を軸に、具体的なDXへの取り組みとビジネスの展開方法を紹介する。

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デジタル印刷機導入の決め手となったHPのビジネス開発サポート

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 経済産業省がDX(デジタルトランスフォーメーション)推進のガイドラインを発行してから2年が経過し、デジタル変革に対する国内企業の危機感は日に日に高まっている。しかし、多くの中小企業は依然として二の足を踏んでいるのが現状だ。そんな中、中小だからこそのスピード感を持っていち早くDXに取り組んでいるのが、和歌山県の総合印刷会社、株式会社マージネットである。正社員30名、パート5名という少人数で、得意とする圧着DMをはじめ、ポスターやチラシなどの一般商業印刷のデザインから印刷、加工、出荷までをワンストップで手掛ける。同社がHP Indigo 7900デジタル印刷機を導入したのは2018年のこと。それまではオフセット印刷機を使用してきたが、バリアブル印刷のニーズの増加に伴い、デジタル印刷機の導入に踏み切ったという。池田氏は、導入の背景には、HPの「ビジネス開発(BD)サポート」という制度があり、ここに大きな魅力を感じたと語る。

 HPの「ビジネス開発サポート」は、マーケティングやビジネス開発に活用できるコンテンツの作成やユーザー会の交流サポートといった全体施策から、HP Indigoデジタル印刷の立ち上げ支援、デジタル印刷を活用した事業戦略の策定支援、営業支援、立ち上がり状況に応じたフェーズごとのコンサルティングといった個別施策に至るまで、デジタル印刷機導入後の運用に踏み込んださまざまな支援を実施し、印刷会社と一緒にDXを推進していく仕組みだ。HP Indigoデジタル印刷機は決して気軽に投資できる設備ではない。だからこそ、印刷機を販売して終わりではなく、導入してからいかにそれを活用し、商売として成り立たせるかが勝負だとHPは考える。

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 HP Indigoデジタル印刷機の運用の基盤づくりとして、まずHPは1年にわたりマージネットの社員とともに活動し、デジタル印刷の仕組みの解説、戦略プランの策定、商材模索、商談同行などを行った。さらに1年、後半のフェーズでは、マージネットが自社でビジネス開発を進める中でHPは伴走し、シルバーインキの共同プレスリリースや、コロナ禍での地域貢献活動を取り上げて特集記事を組むなど協調体制を取ってきた。

 ビジネス開発マネージャーの日本HP仲田氏は、「デジタル印刷という初めての試みに対して、高いモチベーションを持って取り組む姿勢は、マージネットのチャレンジ精神を象徴するものでした」とその印象を語る。実際、2018年にUVライトを当てると光るインビジブルインクが出ると、マージネットは即座に活用を決定、翌々月の展示会でサンプルを出品するなど、スピーディな判断と行動力を見せた。

 マージネットの中には、「印刷機のメーカーがここまでやってくれるのか」という驚きもあった。社員からは、「マインドや取り組む姿勢が変わった」「マーケティングやPDCAを意識して業務を回せるようになった」という声も届いている。池田氏は、この2年間を、「率直にいい期間でした。クライアントに仕組みを提案するというのは、請負産業という特性を持つ印刷業の立ち位置を180度変えるものです。お客様との向き合い方も変えていかなければなりません。それを社員に伝え、理解してもらうのは大変なことですが、外部からの助言があるとすっと入ってくれるように感じました。HPのビジネス開発サポートを通して社員も成長したと感じます」と振り返る。

パーソナライズDMを提案し継続受注、PDCAをお客様とともに回しベストパートナーへ

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 次に、マージネットがIndigo印刷機で手掛けたバリアブル印刷の具体的な事例を紹介する。和歌山県の特産品である梅商品の製造販売をおこなう「石神邑」に、商品を購入されたお客様に対するお礼状を兼ねて次の注文につなげるDMを企画。開くと4面が6面になる圧着タイプの往復はがきで提案した。圧着はがきの効果の1つは開く楽しみにある。「隠されているものは開きたくなる」という心理をうまく活用した。ポイントとなったのは、受け取る人に最適な内容だけが掲載されたパーソナライズDMを送ること。梅干しの赤を基調とした写真や、ほかほかのご飯の上に乗っている写真など、商品の魅力を最大限に引き出した異なるクリエイティブを使用し、「拝啓〇〇様」とお客様一人一人に語り掛ける文面で発信。顧客はセグメントで分類し、購入履歴に合わせてアップセルやクロスセルにつながる商品を決定し、顧客ごとに訴求内容を刷り分けた。2回、3回と施策を実施した結果、コンバージョン率は従来の3%から6.87%に、顧客当たりの平均単価も40%増と大きく伸びた。

 数字として大きな成果を上げただけではなく、お客様から喜びの声が届いたことも嬉しい収穫だ。「あなただけ」の特別感をDMに盛り込んだ反響が、注文はがきに添えられたお礼や感想という形で表れたという。通信販売でありながら、対面販売のようなコミュニケーションが成立した事例であり、このDMで売上が上がったことはもちろん、石神邑さんとお客様とのつながりの強化に一翼を担うことができたことが何より嬉しい、と池田氏は振り返る。

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 PDCAを一度で終わらせずに継続させることも重要だ。今回のケースは、一回目の施策ではクライアントは赤字だったものの、2回、3回と改善しながらDM施策を継続することで、投資を上回る収益を上げることに成功している。ここで着目したいのが、1回目の赤字の後でどのように次のDMにつなげたのかである。池田氏は、「お客様とは、PDCAを継続する重要性を話し合い、前もって合意を得ていました。ですから、施策の後はスムーズに販売個数や利益の開示をいただき、改善ポイントを検証して次につなげることができました」と語る。スタート時点でのコンセンサスと信頼関係は成功の大きな要因といえよう。もちろん、クライアントの上流工程に入り込み、快く数字の開示をしてもらえる関係は一朝一夕に築けるものではない。日頃から、お客様の期待値を超える提案を積み重ねてきたからこそ、「マージネットに任せればいい提案をしてもらえる」と思ってもらえるまでになったのだろう。

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地方の中小企業だからこそ取り組んだDX推進

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 DXの取り組みに話を戻すと、番組では、視聴者の46%が「DX推進中だが思うように進んでいない」、38%が「DXに取り組みたいがまだ実施できていない」と回答している。一方でマージネットは、業務と製造の両分野において積極的にDXを推進している。自社開発のMISを中心として、MA、SFA、Webをつなげ、製造面ではワークフローシステムとHP Indigoデジタル印刷機、オフセット印刷機をつないでデータのやり取りをシームレスに実施する。業務の打ち合わせは極力減らし、Slackを活用してオンライン上でオープンに議論する。勤怠管理や休暇申請もすべてオンラインだ。特に人材確保が難しい地方でこそ、それを補えるデジタル化の取り組みは重要だと池田氏は考える。

 DXでは従業員の意識改革も大きなテーマだ。「長年この業界に従事している人ほどデジタル化への敷居は高いものです。マージネットでは、新しい人材を原動力に周囲を巻き込んで半強制的に置き換えていきました」と池田氏は語る。社内にはもはや紙の作業伝票は存在しない。オペレーターも全員タブレットを手に作業する。「デジタル化にすっと入れる人、抵抗がある人、人それぞれですが、最終的には変化に順応できるものです」と池田氏はいう。

 今後は、商談から納品までの自動化をさらに進めたいと池田氏は考える。機械ができることは機械に任せ、人にしかできない仕事のための時間を作る。そう舵を切ることでさらなるDXの推進を目指す。

 最後に、圧着DMを実現するHP Indigo印刷機と圧着テクノロジーをHPの小松氏が紹介する。HP Indigo 7Kデジタル印刷機はデジタルオフセットの構造を維持しながら、エレクトロインキシルバー、ビビッドインク、インビジブルインクなどシリーズの中で最も多くのインクを扱えるのが魅力だ。ワンパスで印字工程までを行うので、工程短縮による短納期化も実現する。やはり、DM分野において強みを発揮するのはバリアブル印刷だろう。同じものを1万枚刷っても異なるものを1万枚刷ってもコストは同じである。それなら、お客様一人一人のニーズや嗜好に合わせれば、より高い訴求効果が得られるのは明白だ。さらに、UVニス、折り、直角曲げ、圧着をワンパスで実施する新しい加工機を使えば、スケールの大きなビジネスにも手が届く。

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 1時間にわたる番組の終盤で池田氏の印象的なコメントがある。人材育成のポイントについて視聴者から質問があがると、池田氏は、「社員に任せ、一回やらせてみて失敗させる、という選択肢を多く取っていると思います。失敗しても必ず成長につながるので、多少遠回りになっても自分たちで考えてやらせることを心掛けています」と回答。失敗はきちんと検証させ、検証結果が甘ければ突き返す。原因を追究して次に生かす中で、自主性が育つ。その裏には、社員との確固たる信頼関係があり、DXという新しい風を取り込みながら柔軟に進化を続ける自由闊達なカルチャーが垣間見える。業界知名度100%を目指し、地方から全国に向けて一歩先を見据えた提案を続けるマージネットの勢いは留まるところを知らない。

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