2022.09.05
コロナ禍の「ハンコ出社」で「ワークフロー」が注目を集めています。ワークフローは、業務について一連のやりとりの流れを意味し、業務を改善する方法として活用されてきました。最近では、「紙とハンコ型」のワークフローを見直し、DXの名のもとシステムを導入、または改善して効率化を進める企業が急増しています。この記事では、ワークフローの基礎知識から、「ワークフローシステム」の定義やメリット、導入方法などを詳しく解説していきます。システムの無料活用法なども掲載していますので、ぜひご参考にしてください。
ワークフローという言葉はよく聞くけれど、そもそもの意味や詳細がよくわからないという方も多いと思います。はじめに、ワークフローの意味や必要性、従来のワークフローの問題点、システム化への流れなどを解説します。
ワークフローは、英語の「Work」(仕事)と「Flow」(流れ)を組み合わせた言葉で、業務における一連のやりとりの流れを意味します。組織の中で行われる大半の業務には「誰がどのようにスタートし、どのような判断や処理を経て、完了させるのか」という流れが存在しています。
たとえば物品購入の発注業務では、欠品が発生した部署の担当者が申請書を起案し、上司の確認、決裁を経て、総務部などの購買担当者が物品を発注するという流れです。
また、新規取引先の与信申請など、組織の意思決定である稟議書に関する業務では、取引金額に応じて、判断をする人や人数・ステップなどの流れが、複雑に変化することもよくあります。
組織の中で複数人がかかわる業務を、ルールや慣習であらかじめ決められている流れに沿って処理すること、またその流れを図式化したものをワークフローと呼びます。業務の改善を考えるとき、まずはその業務の流れのパターンを洗い出し、ワークフローを定義して客観視することで、問題点や改善策を発見できます。
ワークフローは、「申請内容について組織として承認するのかどうか」という企業の意思決定にかかわる重要な工程です。
ワークフローが適切でなければ、意思決定のスピード感を損ない、誤った経営判断を下してしまう可能性も高まります。また、不要な業務が発生して、生産性の低下につながるリスクもあるのです。
たとえば物品購入申請では、すべての物品の申請を同じ流れで承認するのではなく、価格に応じて、承認を受ける上司の数を変えたり、添付資料を変えたりするなど、ワークフローの組み方を変えます。
このように、ワークフローを見直して改善することで、意思決定の迅速化や精度向上につながり、無駄の削減による生産性向上が期待できます。
ワークフローはコロナ禍で、紙の書類にハンコを押すためだけに会社へ出社する必要がある「ハンコ出社」という形でも注目されました。
法人向け名刺管理サービス大手のSansanが2022年3月に行った「企業の契約業務に関する実態調査」(※)によると、調査対象者の約8割が、現在も「紙の契約書」を取り扱っており、リモートワークが可能でも「ハンコ出社」したことがある人は約7割に上ります。また押印関連の作業に、1人あたり月間で約10時間もかかっていることが判明しました。
※調査出所:Sansan|「企業の契約業務に関する実態調査」(調査期間:2022年3月)
https://jp.corp-sansan.com/news/2022/0421.html
この結果から、日本企業のデジタル化の遅れと、全員出社を前提としたワークフローが長年にわたって構築、維持されていることがわかります。
ワークフローを見直し、業務タスクを整理するだけでも、業務効率はかなり向上します。しかし、多くのボトルネックは、業務タスクの中身ではなく、各ステップ間に潜んでいます。
紙で運用されるワークフローの問題点は、申請書を探す、承認者・決裁者をその都度調べる、輸送や保管することなどに手間がかかることです。「探す、調べる、運ぶ」はそれぞれ些細な作業でも、こういった手間や小さな停滞が積み重なることで、他のどの業務手順を改善したとしても効率化に限界ができてしまいます。
この流れの部分を円滑にするために作られたのが「ワークフローシステム」です。次の章では、「ワークフローシステム」について詳しく解説していきます。
はじめに、ワークフローシステムの定義や機能についてご説明します。また、最近では、色々な機能を持つワークフローシステムが登場していますので、タイプ別に比較ポイントを解説していきます。
ワークフローシステムとは電子的な手段によって業務の流れを定義し、その流れに従って自動で業務を流し、その状況をモニタリングできるコンピュータソフトウェアやアプリケーションです。
紙ベースの業務を電子化することにより、業務の大幅なスピードアップと効率化を実現するだけではなく、業務ルールの順守、情報管理レベル向上などの効果が期待できます。英語では「Workflow Management System (WFMS)」と言います。
ワークフローシステムは、紙ベースで行われている情報伝達、承認、決裁を電子的な手段に置き換えます。
一例をあげると、申請者が、ワークフローシステム上の申請フォームを使用して起案をすると、申請者の組織・役割、申請内容によって自動的に承認者・決裁者を特定してリレー・決裁され、データや電子ファイルとして保管されるといった流れです。
これにより、書類の配布にかかる時間はゼロになるのです。申請者は、書類の流れを簡単に確認できますし、配布された人はPCやスマートフォンで内容を確認し、承認、決裁できます。また、経費精算など、現在使用している他のシステムと連携することも可能です。
ワークフローシステムは、対象とする業務や規模によって重視するべき機能が変わります。一般的な機能をご紹介します。
ワークフローシステムは自社に合ったシステムを選ぶことが重要です。市販されているソフトウェアを比較する際には、「自社の企業規模に合っているか」「WordやExcelなど、利用したい申請書様式に対応しているか」「どの業務まで対応させるのか」などがポイントとなります。大きく5つのタイプに分類できますので、ご紹介します。
Excelで作成した申請書など各種ファイルをそのままアップロードして利用できるなど、Excelと連携し使えるタイプです。これまでに社内で多くのExcelの申請書を運用しており、「システム化した後も活用したい」という企業に向いているシステムです。
メールや社内SNS・カレンダー・掲示板機能などを有するグループウェアシステムの一つの機能として、ワークフローを利用するタイプです。ワークフロー専用のシステムに比べれば機能は限られますが、申請書の内容や承認までの経路が複雑でない場合は、活用できる場合も多いでしょう。
一度に関係する人数が十数人程度の企業で、申請・承認・回覧など、それほど複雑な承認フローが存在しない企業向けのシステムです。比較的コストや手間はかかりますが、同一のシステムでワークフロー以外にも経費精算・スケジュール管理などについても対応できます。
目安としては従業員数1,000名以上の規模の大きな企業向けです。複雑な稟議・決裁にも対応できるような、柔軟なワークフローや高機能フローエンジンを備えたシステムになります。複雑な組織構成や承認フローにも柔軟に対応できるタイプや、すでに利用するシステムが多数ある場合は、マスタ連携やデータ連携に柔軟に対応できるタイプ、海外展開する企業の場合は、多言語対応できるタイプなどもあります。
勤怠管理や経費精算など、他のバックオフィス業務と一体化して運用するタイプです。勤怠管理や工数管理、経費精算、電子稟議、社内SNSなどを備えたシステムがあります。業務ごとにシステムを使い分けたり、グループウェアを利用したりするのではなく、「共通の基盤で統一して運用したい」というニーズにあったシステムです。
ワークフローシステムにより、紙ベースの申請・承認業務や報告業務のスピードアップと効率化が実現できることをご説明しました。具体的にはどのようなメリットが期待できるのでしょうか? 従来の紙ベースのワークフローと対比しながら解説します。
ワークフローシステム上では、申請・承認・決裁業務に関わる人物や組織の範囲、情報とその流れが可視化されます。
紙ベースでは、申請書の所在や承認の進捗状況を確認することに手間や時間を要しますが、システム上では簡単にモニタリング可能です。
ワークフローシステムは、プロセスの変更に、柔軟に対応できます。たとえば、稟議書は取引金額に応じて、判断をする人や人数・ステップなどの流れが、複雑に変化することが多いものです。
紙ベースの運用では、手間と時間がかるフローの変更が、ワークフローシステムによってスピードアップと効率化できるでしょう。
ワークフローシステムでは、申請書を電子化することにより、紙ベースのワークフローで発生する手作業の煩わしさや、回付、確認に要する時間を大幅に削減できます。
また、記入内容の自動チェック等により、記入ミスや手戻りの防止ができるうえ、過去データの利用や他システムとデータ連携で、無駄な入力が不要になり人為的なミスも減らせるでしょう。
システム導入による業務効率化はもちろん、導入後の定期的な見直しにより、継続的に業務を改善できます。
ワークフローシステムでは、システム上に申請内容を一括保管します。検索性が格段にあがり、ファイリング・保管スペースも不要なため書類の管理が楽になるのです。また、ペーパーレス化により、紙代、プリント代、メール・FAXの通信費、郵送費などのコストも削減できます。
【関連リンク】DXの入り口となるペーパーレス化。その重要性とメリットを解説
https://jp.ext.hp.com/techdevice/business/mps_sc40_06/
紙ベースのワークフローは、全員が出社していることを前提に運用されているため、コロナ禍では「ハンコ出社」を余儀なくされるなど、その問題点が浮き彫りになりました。クラウドなどを活用したワークフローシステムは、オフィスワークとテレワークを組み合わせた、ハイブリッドワークにも有効です。場所や時間にとらわれない、柔軟で多様な働き方が実現します。
ワークフローシステムの導入はセキュリティや内部統制の強化にも繋がります。「いつ」「誰が」「何を」決裁したのかという証跡を残して書類の動きをすべて可視化することで、適正な流れに沿った「公正な業務」の実現や、データ改ざんなどの不正防止につながります。
決裁が完了したデータを編集不可な設定で保管し、書類の閲覧権を制御することで、セキュリティを強化することも可能です。
ワークフローシステムを導入するには、いくつかのプロセスが必要です。各プロセスのポイントを交えながら、導入方法を具体的に説明していきます。
最初に、現状の業務フローを明確にします。申請書の種類や担当者、各申請書が、どのようなプロセスを経て決裁完了にいたっているのかを可視化していきます。その際、提出率や決裁までの時間、ヒューマンエラーの状況などを現場にヒアリングして、問題点を洗い出すことも重要です。
次に、現在使用しているシステムを確認します。休暇届けであれば勤怠管理システム、交際費申請であれば経費精算システムというように、他の業務システムにもワークフロー管理機能が搭載されている場合もあるでしょう。
ワークフローシステムを導入する際には、現在どういったシステムを使用しているのかを洗い出し、「どのシステムでどこからどこまで対応させるのか」を事前に検討しておく必要があります。
ワークフローシステムに必要な要件とは、利用人数や必要となる機能、オンプレミス型(※)かクラウド型かなどです。また、導入後もフローの見直しやフォーマットの変更が発生する可能性が高く、適切に運用するためにメンテナンス担当者を決めておくとよいでしょう。
システム導入には文書の電子化が不可欠となりますが、文書によっては電子帳簿保存法などの法令対応が要件となることもあります。電子帳簿保存法が対象となるのは、「国税関係帳簿」「国税関係書類」「電子取引」の3種類で、どの書類やデータが該当し、どのような保存措置を求められているかなど確認が必要です。
※「オンプレミス(on-premises)」は、サーバー機器などのハードウェアおよび業務用アプリケーションなどのソフトウェアを、使用者の管理する施設内に設置して運用することです。
ワークフローシステムは自社に合ったシステムを選ぶことが肝心です。前述の「ワークフローシステムのタイプ」でも解説しましたが、「自社の企業規模に合っているか」「WordやExcelなど、利用したい申請書様式に対応しているか」「どの業務まで対応させるのか」などが選定のポイントです。
また、ワークフローシステムを浸透させるためには、使いやすさや、メンテナンスの容易さ、サポート体制、なども考慮しておく必要があります。
せっかく導入したシステムも、活用されなければ意味がありません。啓もうや勉強会、トレーニングを継続的に行う必要があります。担当者の任命や、マニュアルの整備、問い合わせ窓口の設置も有効です。
ワークフローシステムのイメージがつかめない場合は、無料でワークフローシステムを体験する方法もあります。機能は限定されますが、本格的にワークフローシステムを導入するためのトライアルとして、実際に使ってみるのもよいかもしれません。
Slackなどのチャットサービスと、Googleドライブなどのクラウドストレージを使い、簡易的にワークフローシステムを構築することもできます。
「Slack」は、アメリカの企業が提供している、社内用のビジネスチャットツールです。「ワークフロービルダー」という新機能が追加され、定型的なアクションやコミュニケーションを自動化するワークフローを、簡単に作成できるようになりました。
Googleが提供する、クラウドベースのグループウェア「Google Workspace 」はGmail、カレンダー、ドライブ、文書作成、オンライン会議などの機能をパッケージした社内コミュニケーションツールです。ワークフロー機能はありませんが、他の機能と組み合わることで、簡易的なワークフローを作成できます。
無料で利用できる経費精算システムなどがありますので、そういったサービスを利用して、ワークフローシステムを体験するという方法もあります。ただし機能が限定的であったり、セキュリティに不安があったりするため、本格的なワークフローシステムを導入するためのトライアルといった位置づけで利用することをおすすめします。
ワークフローというと、システムを含むデジタルな部分にのみ注目が集まります。しかし意外と重要なのが、物理的な紙の文書からデジタル・ワークフローの入口と出口に当たる、「スキャンと印刷」です。見落とされがちですが、ワークフローを構築する際には重要です。
文書の電子化に関する議論では、「脱ハンコ」がクローズアップされがちでした。しかし、オフィス以外の場所で働くことが日常となった今、物理的な紙の文書の扱いこそがリモートワークのネックになっています。多様な働き方に対応するためには、「脱ハンコ文化」とともに、文書自体を電子化することが必須となります。
また、文書の電子化は、世界中で急速に対応が迫られているサステナビリティへの取り組みにもつながるのです。ゴミの削減にも影響する紙の使用や印刷環境の見直しは、オフィスからの温室効果ガスの排出量を削減するための努力にもなるからです。
働く場所と働き方の変化が起こったこれからの時代には、今後も起こりうる変化に柔軟に対応できる業務フローの構築と、それに伴う文書のデジタル化と新しい文書管理の構築が急務と言われています。
「スキャンと印刷」についてコスト面を整理すると、実は、プリンター利用時には、印刷コストだけではなく、多くの管理コストが発生しているとわかります。
目に見えるコスト(インフラコスト)
目に見えないコスト(人的・時間的コスト)
印刷コストのうち、インフラコストはわずか10%で、90%が目に見えないコストです。それらを最適化し、業務効率を改善できるのが、MPS(= Managed Print Service)です。
HPが提供するMPS(= Managed Print Service)は、印刷ソリューションサービスです。印刷におけるサービス、ソフトウェア、ハードウェアをワンストップで提供するソリューションです。HP MPSの導入により、印刷環境を可視化でき、無駄な印刷機器の削減や最適な配置を実現できます。
サプライ品はHPからタイムリーに提供されるため、印刷における「見えないコスト」の削減が可能です。
HPが提供するMPS(= Managed Print Service)には、「Workpath Apps」というApp(アプリ)があります。「Workpath Apps」は、既に企業内で利用されているクラウドサービスと印刷や文書保存を簡単に連携できます。紙の書類をスキャンして、PCに保存、そこからクラウドに保存するといったワークフロー構築ステップを大幅に削減することが可能です。
これにより、働き方やオフィスの形態の変化に柔軟に対応できる環境が実現します。
ワークフローの改善は、業務効率化や生産性向上に大きな役割を果たします。しかし、システム導入と活用の大きな障壁となる紙の文書はまだまだ多いのが現実です。まずは、ワークフローシステムの入口として、文書の電子化からはじめてみてはいかがでしょうか?
【関連リンク】HP MPSで実現するハイブリッドワーク時代の印刷環境づくり
https://jp.ext.hp.com/techdevice/business/coreprint70_03/
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