2020.11.25
コロナ禍で変化、「テレワーク」主体の職場づくり
建設コンサルタント業界のリーディングカンパニーとして躍進を続ける日本工営。インフラ整備に関わるコンサルティング事業・都市空間事業をはじめ、電源や電力装置を含む電力エンジニアリング事業にも定評があり、約160カ国以上において社会資本に関わるプロジェクトを成功に導いてきた実績がある。同社は、業界内でいち早く「働き方改革」に取り組んできたが、今年のコロナ禍をきっかけに、テレワークやオフィス環境の整備において大胆な制度改革を行った。同社の職場づくりに関する考え方やその背景について、人事部長の国峯紀彦氏と同部長代理の浅野隆人氏、生産効率推進室長代理の森岡昌昭氏に話を聞いた。
日本工営では、以前より「働き方改革」と「生産性向上」をテーマに、労働の質を重視した裁量的かつ多様な働き方を可能とする制度や環境の整備に注力してきた。これまでの取り組みについて、同社人事部長の国峯紀彦氏は次のように語る。
「多様性の受容やワーク・ライフ・バランスの確保など、働き方改革を推進することは、建設コンサルタント業界をけん引する当社の社会的使命の一つです。従業員が日本工営で働いてよかったと実感することが、顧客満足度の高い成果を出すための原動力になると考えています。これまでも、オフィスシステム、管理業務、生産活動における効率化を目指し、テレワークやサテライトオフィスの積極導入をはじめ、契約管理や営業ツールの電子化、労務管理の可視化、出産・育児支援など、さまざまな改革を進めてきました」
日本工営株式会社
経営管理本部人事部 部長
事業戦略本部デジタルイノベーション部 生産効率推進室長 国峯 紀彦氏
同社では2016年より順次テレワークやサテライトオフィスの導入を開始。その背景には、従業員の通勤時間削減によるストレスの軽減と時間の有効活用、個人の集中作業による生産性向上を促す狙いがあった。
「テレワークをはじめ、多様な働き方を容認することは、人材確保や離職防止につながると考えました。特に小さな子どもを持つ従業員は、テレワークのほうが効率よく働ける場合が多い。しかし、自宅で子どもの面倒を見ながら働くのも集中できない、かといって通勤するのは大変という声が上がりました。そこで、自宅や会社とは別に集中できる環境を整備するため、2019年7月より横浜とつくばにサテライトオフィスを設置し、運用を開始。約20席を用意し、利用対象者は入社6年目以上から部長職相当、週2回までの利用としました。テレワークに関しては社員区分等による対象者の限定やコアタイムの導入、上限は週2回までなどの規定を設けました」(国峯)
同社が取り組んできた生産性向上策の事例では、RPAの導入や会議の効率化、ペーパレス化の推進が挙げられる。RPA導入の一例として、ホームページ経由で届く問い合わせメールを自動でエクセルにまとめるシステムを採用。広報担当者の作業省略化につながった。長時間かつ不要な会議を削減するため、会議効率化のガイドラインを策定し、事前資料の共有やペーパレス化、Web会議を推奨。今後は主要会議時間の40%削減を目指す。
他にも、稟議や各種社内申請の電子化、電子サインの導入によるペーパレス促進、フレックスタイム制度による総労働時間の削減などに取り組んできた。
同社が、働き方改革に関わるさまざまな取り組みを着実に推進できた背景には、各取り組みへの徹底した「制度化」「仕組み化」に秘けつがあると言えそうだ。
これまでは一定の制限のもとにテレワークを運用していたが、今年3月、世界保健機関(WHO)のパンデミック発表とともに感染拡大防止措置やテレワーク推奨が実行にうつされた。また、4月に緊急事態宣言が発令されると、全社員を対象とした実施を余儀なくされた。サテライトオフィスとテレワークの運用については、対象者・利用回数などの制限やコアタイムを撤廃。完全フレックスタイム制に移行するなど、より柔軟性を持たせて対応したが、ネットワーク環境などのインフラ面において課題が発生した。事業戦略本部 生産効率推進室長代理 森岡昌昭氏は次のように振り返る。
「社内インフラの整備を担当する当社の情報基盤センターでは、今年の3月頃、全社員のテレワーク実施に合わせたインフラ面の整備やリモートアクセス権限の付与などにおいて、非常に苦労したと聞いています。当初は従業員から『つながりにくい』といった声もありました。ただ、リモートアクセスの環境については、もともと管理職が出先でも承認業務を行えるように整えていたので比較的スムーズに行えたと感じています。管理職以上の社員は、既にリモートアクセスに慣れていたこともあり、スムーズに移行できたと思います」(森岡)
日本工営株式会社
事業戦略本部デジタルイノベーション部 生産効率推進室 室長代理 森岡 昌昭氏
現在(2020年9月末時点)は、本社オフィスの出社率を5割程度に留めているが、今後もテレワークを推進する上で、最も注意しなければならないのはセキュリティだと森岡氏は言う。
「外に持ち出すPCには、二重、三重のセキュリティをかけているため、現状では問題はありません。ただ、どこにいても社内ネットワークにアクセスができる分、その持ち出すPC(エンドポイント)のセキュリティは引き続き徹底していく必要があると考えています。」(森岡)
テレワークへのシフトチェンジは比較的問題なく対応できたが、「PC環境においては発展途上の部分がある」と話すのは人事部 部長代理の浅野隆人氏だ。
「『技術を軸に社会に貢献する』ことが行動基準である日本工営では、働き方によって成果物の質が落ちてしまう事態は避けなければなりません。特に一部の技術者は、3次元データを使って関係者間の情報共有を行うCIMやBIM、CADの使用や高度な数値解析や画像分析を行っているため、ハイスペックのPCが必須です。大体の業務は問題なくこなせるそうですが、テレワークで使用するPCのスペックを鑑みたとき、テレワークに適さない業務に適応させるための改善余地がまだあります」
日本工営株式会社 経営管理本部人事部 部長代理 浅野 隆人氏
一部に課題は残るものの、コロナ禍をきっかけに、一気にテレワークを浸透させたことで得られたメリットも多くあるという。
「これまでは、育児中など家庭の事情がある従業員を主体にした制度でしたが、全従業員がテレワークにシフトできるいい機会だったと思います。新卒採用の面談もオンラインに切り替えたことで、さまざまな業務に応用できるオンライン化のベースができました」(浅野)
続けて森岡氏は、「テレワークでは、部下の勤務態度や進捗を把握しにくいため、リーダー職の管理意識がより高まりました。タスク管理ツールなどを活用して、部下のタスクを『見える化』することで、より適切な対応ができるようになったと感じています」と笑顔を見せた。
一連のコロナ対応措置により、テレワークの浸透に向けた素地が形成された同社では、これを機に、さらなる働き方改革を進めていく方針だ。
今年の7月1日には、社内におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)をより積極的に進めるため、デジタルイノベーション部生産効率推進室を設置。これまで以上にRPAや電子ツールの導入を進めることで、テレワークの効率化を図り、生産性の向上を目指す。
現在、電子サインの導入による契約業務の電子化やWeb会議の積極推進による交通費などの経費削減、クラウドシステムを利用したデータ管理など業務のDX化を進めている。Microsoft Plannerなどのデイリータスクを可視化するツール、在宅勤務用就業時間登録アプリも活用していく。
DXを促進すると同時に、同社では本社機能のスリム化にも着手。これまで分散していたオフィスを、本社オフィスをはじめとする千代田区麹町エリアに集約し、サテライトオフィスの積極活用を進めていく。電話の取次業務を削減するため、内線電話のスマートフォン化も実施した。
「直近の計画では、近い将来、本社オフィスの出社率を7割にし、神奈川、埼玉、千葉県に新たなサテライトオフィスを設置します。現在、来春の利用開始を見込んで、在宅勤務とサテライトオフィスの勤務ルールを整備しているところです。サテライトオフィスでは、スタンドアップミーティングやオンライン会議用スペース、集中作業室等を用意し、各業務内容に適した環境を選択できるようにしていきます。
また、一部の部門で既に実施しているフリーアドレスを定着させ、組織横断による連携を強化。部署を越えたコミュニケーションによってイノベーションが起こることを期待しています」(国峯)
日本工営は、働き方改革を「仕組み化」し、具体的な制度に落とし込むことで、ワーク・ライフ・バランスの実現を目指してきた。withコロナが前提となった今、働き方の多様化はますます進むと予想されるが、これから改革を進めていく企業はどのような点をポイントにすればいいのだろうか。
「企業のトップ層の中には、いまだテレワークに関して懐疑的な人も少なくないのではと想像します。それがネックになってテレワークが普及しない状況であれば、まずトップ層がWeb会議なりチャットなりを経験して『問題ない』と理解することが第一歩ではないでしょうか。当社でも、緊急事態宣言により全従業員がテレワークを余儀なくされたことで、問題なく仕事ができることが証明されたと思います。あとは、会社全体として改革に取り組む意識を高め、全従業員を巻き込む仕掛けを実施していくことがポイントになるのではないでしょうか」(国峯)
※本記事は 2020年11月19日 JBpress に掲載されたコンテンツを転載したものです
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