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2020.03.25

DX推進の鍵を握る「データマネジメント」の考え方

管理・活用・保護を相乗的に捉える、三位一体の視点とは

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PwCコンサルティング合同会社
ディレクター
高橋功氏

 あらゆる産業分野にデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の波が押し寄せている。精力的に推進して順調に変貌を遂げている企業がある一方、危機感を覚えながらも足踏みしている企業もある。そんなDXの根幹ともいえるのが「データ活用」であり、その実現に必要なのが「データマネジメント」だ。企業はデータに対してどう向き合えばいいのか、そのためのデータマネジメントとはどのようなものなのか。データドリブン経営を説き、多くの企業のDXを支援してきたPwCコンサルティングの高橋功氏に聞いた。

以前とは異なる「データマネジメント」の中身

――様々な企業のDXを支援する中、成功できるかどうかはデータマネジメントにかかっていると主張されています。その理由はなんでしょうか。

高橋功氏(以下、高橋氏) まずデータマネジメントという言葉自体は、新しいものではありません。私たちが実施した「世界CEO意識調査」では、直近の2019年はもちろんのこと、約10年前の2009年においても、多くの経営者がデータマネジメントの重要性を認識しています。ただし、同じデータマネジメントでも、この10年間でその意味するところは大きく変わりました。

以前のデータマネジメントでは、「集めたデータをどう管理するか」が焦点でした。外に出すというよりは、社内できちんと管理しながら、自社製品の開発などに活用するという意識が強かったのです。

しかし現在は、データ活用を推進しようとすると、社内だけでなく外に対しても活用していくことになります。そうなると、一部の限られたデータマネジメント担当者だけでなく、企業全体でデータを活用するという文化を確立することが重要になります。

――「外に対してもデータを活用する」とは、具体的にどのようなことでしょうか。

高橋氏 典型的な例が、スマホのアプリでしょう。一般ユーザーにデータを入力してもらったり、ウェアラブルデバイス経由でヘルスケアデータを取得したりできます。それらのデータに自社ならではのデータを組み合わせて付加価値を出し、外部に提供します。

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 ユーザーのデータを慎重に管理しつつ、他のデータとの組み合わせなどによって価値を生み出す。その際に、何をどう出せば安全かなど、プライバシーの観点も考える必要があります。

あらゆる企業にとってデータ活用が不可欠なものに

――データを扱うことそのものをビジネスにしている企業だけでなく、それ以外の企業にとってもデータマネジメントは重要になってくるのでしょうか。

高橋氏 そうなっていくはずです。例えば、かつての製造業にとって自社製品は顧客のライフサイクルの一部でした。しかしこれからは、顧客のライフサイクル全体を意識して、長期的に自社のファンになってもらう活動が求められてきます。単なる製品のアフターケアではなく、製品の購入前から信頼関係を築いて支持してもらったり、製品に対して継続的にフィードバックしてもらったりするわけです。

 あるいは、活動量計などヘルスケアの測定機器なら、従来は機器そのものが製品でした。しかし今では、アプリと連動してデータを管理できたり、各種データに基づいて健康アドバイスを提供したりできます。顧客が本当に求めていたのは、機器や睡眠データではなく、それらに基づいた健康アドバイスです。

 製品としてモノを届けるのは当然。それに加えて、使うことで何が起きるのか。データに基づいた予測までも製品の一部として組み込む。今の消費者は、モノとサービスの相乗効果で商品や企業を選ぶ意識が強くなっています。そして、製品だけでなくアプリなどを通して消費者個人のデータもやりとりするようになると、その扱い方には慎重さが求められてきます。個人情報やパーソナルデータですから、相手に不快感を与えない使い方やデータ保護の視点も必要になります。

 このように現在のデータマネジメントは、以前とは違って「データ管理」「データ活用」「データ保護」という3つの視点で捉える必要があります。

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昨今のデータマネジメントには「管理」に加えて「活用」と「保護」の観点も欠かせない

――「データ保護」について、企業は何に気を付ける必要がありますか。

高橋氏 従来のセキュリティだけでなく、個人情報保護法や欧州のGDPR(一般データ保護規則)などのプライバシー保護がわかりやすい例でしょう。以前は、最初に大きな規制があり、それをどう守りながらサービスを企画するかというものでした。しかし情報化が進んだ近年は、サービスのほうが先行していて、規制はあとから追いついてくる、という状況です。

 サービスを企画するとき、多くはPoV(Proof of Value:価値実証)から始めますが、その段階で将来の規制やそれに対応したデータの扱いもデータマネジメントの一環として早くから意識しておく必要があります。

データ活用は「宝探し」ではなく目的と方針ありきで

――以前からデータマネジメントに取り組んでいる企業も多くあります。データマネジメントの在り方が変化したいま、それらの企業が改めて留意すべきことは何でしょうか。

高橋氏 10年以上前に「データ統合」の重要性が叫ばれていた頃は、顧客マスタの一元化など、物理的な統合が中心でした。しかしそれも、グローバル規模だと現実的に難しかったり、そもそも全てを統合する必要があるのかといった議論が出たり、考え方は時代とともに変化してきました。  

 現在では、必ずしも統合を目的とするのではなく、どこにどんなデータがあるかを把握しておいて、必要なときにアクセスできるようにしておく、という考え方が主流です。あくまでも、使いたいときにすぐ使えるようにしておくこと。そして、目的と使う価値が生まれた時に、そのデータの所在がわかることが重要です。この背景には、昔に比べてデータが巨大過ぎたり、多様なクラウドのソリューションがあったり、といった理由があります。技術的に見ても、いかにスピーディーに活用できるか、という視点が求められています。

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 その上で重要なのが、やはりデータが資産としてきちんと管理されているかどうかということです。そして、「データの山に何かあるかもしれない」という宝探しではなく、まず事業の価値や目的があり、PoVでどうデータを活かすか、事業にどう貢献できるかという視点で考えるということです。現在は、データを外部から購入するという選択肢も豊富にあります。そういう連携も視野に入れておくべきでしょう。

成功の秘訣は「IT企画」ではなく「業務企画」としてトップダウンで推進すること

――DXを推進する上でのデータマネジメントの重要性は理解できました。しかし、実際に現場で取り組もうとすると、人間関係や組織の壁といったものが立ちはだかります。これを打破して推進するにはどうすればよいでしょうか。また、DXの担い手として適した人材や部署というのはあるのでしょうか。

高橋氏 私たちは、DXを推進するにあたり、次の6つの視点で検討を進めます。

  1. ビジネスの意思決定とアナリティクス
  2. データとインフォメーション
  3. 技術とインフラ
  4. 組織とガバナンス
  5. プロセスと統合
  6. カルチャーと人材
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DXを進めるうえで重要な6つの視点

「1. ビジネスの意思決定とアナリティクス」は、データをどう使うか、事業とデータの関係をどう捉えるかという意味です。「2. データとインフォメーション」は、どのようなデータがどこにあるのか。必要なときにすばやく統合できるかどうか。これらはDXの実践においてセオリーと呼べるものです。

 実は、より重要となるのが4~6の人材や組織です。1~3までを実現できるかどうかは、4~6にかかっているといっても過言ではありません。

 組織におけるDX推進の中核人財を、「推進エージェント」と呼んでいます。これは、CIO(チーフインフォメーションオフィサー)とは別の役割としてCDO(チーフデジタルオフィサー)が登場したように、推進エージェントという役割を明確にすべきと考えているからです。従来のIT部門ではなく経営企画部などが、デジタル推進をIT企画ではなく業務企画として取り組んでいる企業のほうが成功しやすいのです。

 もし、IT部門がその役目を担うなら、サービスやインフラの企画ではなく、あくまでも「こういうデータがあるから活用しよう」という活用企画として、データアーキテクトやビジネスセンスのある人材を抜てきしたり、経営企画と共同で取り組んだりするとよいでしょう。どのような組み合わせが適しているかは、組織体制や人材によって異なります。

 いずれにしても、成功している企業の多くはトップダウンで進められています。社長や財務系の承認がないと予算が付きにくいですし、組織の壁を下から破るのは難しいものです。

先行する海外企業に対して日本企業は「品質」で強みを発揮

――グローバルの視点で見たときに、日本企業のDXはやはり遅いと感じますか。また、進んでいる国というのはどこでしょうか。

高橋氏 日本でもインターネットの登場以降に生まれて成長してきた企業は、昔ながらの製造業に比べて古いしがらみもなく進んでいるほうです。ただ、企業のデータ活用に限れば中国のほうが先行しているといえます。国策という面もありますが、ゼロベースで取り組めるので非常にやりやすいのです。競争力では中国に差をつけられてしまうのではないかと考えています。しかし、中国企業のデータ活用が文化として浸透しているかについては疑問もあります。

 私は、データの「品質」については、日本企業が強みを発揮できるのではないかと考えています。品質はマネジメントの世界では重要な要素ですが、日本のお家芸ともいえます。まずは、そこに至るまでの前段の課題を突破しなければいけませんが、日本企業の底力になるのではないかと期待しています。

*本記事は 2020年3月24日 JBpress に掲載されたコンテンツを転載したものです

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