企業での Microsoft Copilot 活用事例|導入効果と成功ポイント
2025-05-21

生成AIの進化は、私たちの働き方を大きく変えようとしています。特に、Microsoft Copilot(コパイロット)は、AIを活用して日々の業務を効率化し、生産性を向上させる強力なツールとして注目されています。
Microsoft Copilot とは、WordやExcel、PowerPoint、Outlook、Teamsといった Microsoft 365 のアプリケーションに組み込まれた、AIアシスタントです。OpenAIのGPT-4を基盤とし、高度な自然言語処理能力によって、まるで"副操縦士"のようにユーザーの業務をサポートします。
Microsoft Copilot についての解説記事はこちら。
本記事では、Copilot を導入し、実際に業務で活用している企業の事例を紹介します。各社の成功事例から、Copilot 導入のヒントや、効果的な活用方法を学びましょう。
ライター:國末拓実
編集:小澤健祐
企業でのCopilot活用事例
Copilot は、すでに多くの企業で導入が進み、様々な成果を上げています。ここでは、具体的な活用事例を見ていきましょう。
ベネッセホールディングス
ベネッセホールディングスでは、Copilot for Microsoft 365 の利用に加え、「Copilot Studio」を活用して、社内からの問い合わせに回答するカスタムAIアシスタント「社内相談AI」を開発しました。
- 課題:新規事業の発足に伴い、社員が様々な情報を必要とする場面が増加。しかし、必要な情報が社内のどこにあるのかが分かりにくく、情報収集に時間がかかっていました。
- Copilot 活用:社内イントラネットに蓄積された情報を基に、社員からの質問に回答する「社内相談AI」を開発。Copilot Studio を活用することで、ノーコードで開発を実現しました。
- 効果:社員は、部門横断的に必要な情報を素早く検索できるようになり、情報収集にかかる時間を大幅に削減。各部門の担当者に直接相談する手間も省け、業務効率が向上しました。
住友商事
住友商事は、日本企業として初めて Microsoft 365 Copilot をグローバル全社導入しました。
- 課題:従業員の生産性向上と創造性の向上が課題となっており、特に会議の議事録作成やメールの処理など、日常的な業務の効率化が求められていました。
- Copilot 活用:Copilot をWordやExcel、Teamsなどの業務アプリケーションに組み込み、会議の議事録作成やメール文書のドラフト生成を自動化。
- 効果:従業員は、Copilot の支援により、より戦略的・創造的な業務に集中できるようになりました。また、Copilot が大量のデータから必要な情報を瞬時に抽出するため、意思決定の迅速化にも貢献しています。
富士通
富士通は、社内での Copilot 活用を積極的に推進しており、Microsoft 365 Copilot のトライアルを実施しました。
- 課題:社員が日々利用するOfficeツールやTeamsなどの、業務効率化と、社内ナレッジの効果的な活用が課題となっていました。
- Copilot 活用:Copilot をTeams会議に導入し、会議中の議事録の自動生成や会話の要約を実現。PowerPointでのスライド作成の自動化なども試行しました。また、社内SharePointサイトに蓄積された文書の検索やQ&Aに、「ナレッジグラフ拡張RAG」技術とCopilot を連携させることで、回答精度を向上させました。
- 効果:社員からは、会議の要約やスライド生成機能について、高い満足度が得られました。また、ナレッジグラフ拡張RAGとの連携により、複雑な問い合わせにも文脈を踏まえた高精度な回答を得ることに成功。Copilot 導入トライアルでも、会議メモ作成・チャット要約・社内情報検索といった作業の負担軽減に高い評価が寄せられています。
伊藤忠商事
伊藤忠商事は、幅広い事業領域で Copilot を活用し、業務効率化と新たなビジネスモデルの創出を目指しています。
- 課題:繊維、食料、情報、金融など、多岐にわたる事業を展開する伊藤忠商事。各部門で日々生み出される膨大なデータは、まさに「宝の山」ですが、その分析・活用には専門知識や多大な時間が必要とされ、一部の専門部署やデータサイエンティストに限られていました。さらに、市場調査や競合分析、報告書作成といった定型業務も、社員の時間を奪う要因となっていました。
- Copilot 活用:こうした状況を打破すべく、伊藤忠商事は Microsoft Copilot を全社的に導入。特に食料カンパニーでは、既存のデータ分析基盤「FOODATA」にAzure AIを組み込み、Copilot と連携させることで、商品企画・開発プロセスにおけるデータ活用を飛躍的に向上させました。具体的には、Copilot が市場トレンドや消費者ニーズを分析し、新商品のコンセプト立案やキャッチフレーズ作成を支援。さらに、商品のパッケージデザインのイメージ生成など、これまで言語化が難しかった業務もサポートします。
- 効果:Copilot の導入により、これまで一部の専門家しか扱えなかったデータ分析が、現場社員レベルでも容易に実現できるようになりました。これにより、データに基づいた迅速な意思決定が可能となり、業務効率が大幅に向上。さらに、Copilot は市場調査や競合分析を自動化・効率化することで、新たなビジネスチャンスの発見にも貢献しています。伊藤忠商事は、Copilot を「商いの未来」を創造する強力なパートナーと位置づけ、今後も全社的な活用を推進していく方針です。
その他の代表的な導入企業
上記の企業以外にも、Copilot を導入し、業務効率化や生産性向上を実現している企業は多数存在します。
- 日本ビジネスシステムズ株式会社(JBS):会議議事録の自動作成や契約書チェックの効率化に活用し、契約書レビューの平均所要時間を15分から5分へ短縮(約66%削減)。
- 株式会社デンソー:設計部門での活用により、月あたり12時間の業務削減と設計品質の向上を実現。
- ホンダ(本田技研工業):生産ラインの過去データをAIが分析し、最適な生産計画の立案や手作業工程の自動化を実現。
- KDDI株式会社:社内向けAIチャット「KDDI AI-Chat」を開発し、社員が日常業務で活用。Copilotの基本操作や活用方法を学ぶ「Copilot for Microsoft 365 ワークショップ」を開催。
- LINEヤフー株式会社:エンジニア約7,000名を対象にAIペアプログラマー「GitHub Copilot for Business」の導入を開始。
これらの事例から、Copilot が様々な業界、様々な規模の企業で活用できる、汎用性の高いツールであることが分かります。
Copilot の導入効果と成功ポイント
Copilot を導入することで、企業はどのような効果を得られるのでしょうか。また、導入を成功させるためには、どのような点に注意すべきでしょうか。
Copilot 導入のメリット
- 生産性向上と業務の自動化:Copilot は、文書作成、データ分析、メール処理、会議の議事録作成など、日常的な業務を自動化し、従業員の生産性を向上させます。
- データ分析や情報検索の効率化:Copilot は、社内外の膨大なデータから必要な情報を瞬時に抽出・要約し、データ分析や情報検索の効率を大幅に向上させます。
- 社内コミュニケーションの改善:Copilot は、Teams会議での議事録作成や要約、メールの返信案作成などを通じて、社内コミュニケーションを円滑にします。
導入時の課題と解決策
- 初期導入コストとROIの考え方:Copilot の導入には、Microsoft 365 のライセンス費用に加えて、Copilot for Microsoft 365 のライセンス費用がかかります。しかし、Copilot による業務効率化効果を考慮すると、中長期的には十分なROIが見込めます。まずは、小規模な部門で試験導入し、効果を検証した上で、全社展開を検討すると良いでしょう。
- AI活用の社内教育とトレーニング:Copilot を効果的に活用するためには、社員のAIリテラシー向上が不可欠です。Microsoft が提供する学習コンテンツを活用したり、社内研修を実施したりするなど、社員教育に力を入れましょう。
- セキュリティとデータ保護:Copilot はクラウド上で動作するため、社内データのセキュリティ対策を徹底する必要があります。Microsoft 365 のセキュリティ機能を活用し、アクセス権限の設定やデータ暗号化などを行いましょう。
成功企業に学ぶ導入のポイント
Copilot 導入に成功している企業には、いくつかの共通点が見られます。
- 小規模から始めて段階的に拡大:最初から全社展開するのではなく、まずは一部の部門や業務で試験導入し、効果を検証しながら徐々に活用範囲を広げています。
- 業務フローに適した活用シナリオの策定:各部門の業務フローを分析し、Copilot が最も効果を発揮できる活用シナリオを策定しています。
- 従業員の活用促進とフィードバックの活用:社員向けのトレーニングやワークショップを実施したり、Copilot に関する質問や相談を受け付ける窓口を設置したりするなど、社員が積極的にCopilot を活用できるような環境を整えています。また、社員からのフィードバックを収集し、Copilot の活用方法や運用体制の改善に役立てています。
Copilot の料金プラン比較
サービス名 | 価格(税込) | 対象 | 主な特徴 | できることの例 |
---|---|---|---|---|
Copilot (無料版) | 無料 | 個人 | テキスト、音声、画像でのチャット、画像認識、Webページ要約、画像生成(1日15回まで高速)、Web検索、プラグイン利用 | テキストでの質問応答、画像生成、Webページの要約 |
Copilot Pro | 月額 3,200円 | 個人 | Office製品(Word, Excel, PowerPoint, Outlook等)連携、GPT-4 Turbo優先アクセス、チャット回数無制限、画像生成(1日100回まで)、DesignerでカスタムCopilot GPT作成 | Officeアプリ内での文章作成・編集、データ分析、グラフ作成、プレゼン資料作成、メール作成、高品質な画像生成 |
Copilot for Microsoft 365 | 月額 4,497円/ユーザー | 企業/組織 | Copilot Proの全機能 + Business Chat(Teams内データ検索/分析)、高度なセキュリティ、Teams/Loop/Whiteboard連携、Formsアンケート作成、OneDrive連携、Viva Insightsダッシュボード | Teams会議の要約、議事録作成、Todoリスト自動抽出、組織内データに基づいた回答生成、共同作業コンテンツ作成支援、アンケート作成支援、ファイルからの情報収集と回答自動作成 |
Copilot Studio | 月額29,985円 25,000メッセージ/月 または従量課金制 |
企業/組織(開発者) | ローコードでのチャットボット作成、生成AIプラグイン、手動トピック作成、データ統合(Lakehouseテーブル, Power BIデータセット等)、アクセス制御、セキュリティ機能、利用状況分析 | 自社業務に特化したAIチャットボット作成(社内規定、過去案件Q&A等)、顧客対応チャットボット、データ分析チャットボット |
補足
- Copilot for Microsoft 365 の価格は、1ユーザーあたりの月額料金です。
- Copilot Studio は、AIチャットボットを開発・カスタマイズするためのプラットフォームです。
- 無料版 Copilot は、一部機能に制限があります(画像生成回数、チャット回数など)。
- Copilot の料金は2025年3月19日時点のものです。
おわりに
Microsoft Copilot は、手作業での入力を大幅に削減し、業務効率化や創造性向上を可能にする、強力なAIツールです。WordやExcel、Teamsなど、普段使い慣れたツールと連携することで、あなたの"副操縦士"として、日々の業務をサポートしてくれます。
まずは、資料作成やメールの返信作成など、Copilot を活用しやすい小さな業務から試し、徐々に活用範囲を広げていくのが効果的です。そしてゆくゆくは、企業全体の業務へ展開していき、AIを活用した業務改善を進め、より生産性の高い働き方を目指しましょう。
自社の業務ニーズに合わせて適切なプランを選択し、効果的に活用することが重要です。そして、AI技術は日々進化しています。Copilot も、今後さらに機能が拡張され、より多くの業務をサポートできるようになるでしょう。AI活用が今後の業務に与える影響を理解し、積極的に導入を検討してみてはいかがでしょうか。
そして、Copilot の進化は、PCの世界にも広がっています。AI機能を統合した Copilot+ PC が登場し、よりシームレスなAI体験が可能になりました。Copilot+ PC は、40TOPS以上の処理能力を持つNPU(ニューラルプロセッシングユニット)を搭載し、従来のPCより低遅延で高速な応答、AI処理を低い消費電力で効率的に行うことができます。
他にも標準搭載の「ペイント」アプリでの画像生成なども備えており、Copilot+ PC を使うことで、場所や時間を選ばずに、AI技術を最大限に活用することができます。
これからのビジネスは、AIと共に進化していきます。Copilot を導入し、AIを活用した働き方を実現することで、あなたのビジネスは新たなステージへと飛躍するでしょう。
HPは、ビジネスに Windows 11 Pro をお勧めします。
Windows 11 は、AIを活用するための理想的なプラットフォームを提供し、作業の迅速化や創造性の向上をサポートします。ユーザーは、 Windows 11 のCopilotや様々な機能を活用することで、アプリケーションやドキュメントを横断してワークフローを効率化し、生産性を高めることができます。
組織において Windows 11 を導入することで、セキュリティが強化され、生産性とコラボレーションが向上し、より直感的でパーソナライズされた体験が可能になります。セキュリティインシデントの削減、ワークフローとコラボレーションの加速、セキュリティチームとITチームの生産性向上などが期待できる Windows 11 へのアップグレードは、長期的に経済的な選択です。旧 Windows OSをご利用の場合は、AIの力を活用しビジネスをさらに前進させるために、Windows 11 の導入をご検討ください。
※このコンテンツには日本HPの公式見解を示さないものが一部含まれます。また、日本HPのサポート範囲に含まれない内容や、日本HPが推奨する使い方ではないケースが含まれている可能性があります。また、コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。


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