2020.05.19
政府も推奨するテレワークという働き方を、業種を問わずさまざまな企業が急ピッチで取り入れはじめている。その一方で、具体的なイメージがつかめないまま足踏みをしている経営者も少なくない。しかし、テレワークは経営効率アップや従業員の生活の質の向上など、さまざまな効果が見込める制度だ。本記事では、テレワークを推進する企業・団体の取り組み事例や導入のポイントについて紹介していく。これからテレワークを有効活用していくために、自社に最適な導入方法を考える際の参考にしてほしい。
テレワークは、働き方改革実現の手段として政府が推奨していることもあり、大企業を中心に導入が加速している。国や自治体もさまざまな助成金制度を提供し、普及・促進に本気の姿勢だ。では、なぜこれほどまでにテレワークに期待が寄せられるのだろうか。その背景には、労働力人口の減少にともない働き手の確保が難しくなってきているという社会的な課題がある。
テレワークが普及すれば、多くの人が場所や時間にとらわれない働き方を選択できるようになる。これまで個々の事情により働くことが難しかった人でも、多様性と柔軟性を許容する新しいワークスタイルによってその能力を発揮できるようになるのだ。企業側には、従業員のワーク・ライフ・バランスを実現しながら、業務効率化や生産性向上のための施策を打てるという利点もある。さらには、距離の制約を受けない雇用による地方経済の活性化や、災害時・パンデミック発生時における事業継続性の確保といった社会的要請にも応えられる。
このように多方面にメリットをもたらすテレワークを推進するため、政府による取り組みも多角的に行われている。東京都や関係団体と連携して2020年までの毎年7月24日に全国一斉のテレワーク実施を呼びかける「テレワーク・デイ」は、とりわけ象徴的なものだろう。2019年に実施した「テレワーク・デイズ2019」では、約1カ月で2887団体、約68万人が参加した。
国を挙げたテレワークの普及・促進を後押しすべく、東京都は2017年に「東京テレワーク推進センター」を立ち上げた。優れた人材の確保や生産性の向上を課題とする企業に対し、テレワークの導入を支援するワンストップサービスだ。
同センターでは、企業がテレワーク導入の際に必要となる製品やサービスについての情報を入手し、実際に試すことができる。また、すでにテレワークを有効活用している企業の取り組みに関する情報提供も行っている。人材確保や労務管理、セキュリティといったテレワークにまつわる疑問点について相談したり、助成金に関するアドバイスを受けたりすることも可能だ。
「テレワーク推進企業ネットワーク」は、総務省・厚生労働省が2016年にテレワーク導入企業とともに構築した官民連携のネットワークだ。すでにテレワークの実績があり「テレワーク先駆者百選」に選ばれるなど、十分な成果をあげている企業・団体が数多く参加している。
テレワークの導入に関心がある企業は、同ネットワークを通じて情報交換が可能だ。また、各社の取り組み内容について紹介してもらうこともできる。「他社ではどのようなシステムでテレワークを実現しているのだろうか」、「せっかく導入したテレワーク制度をもっと利用してもらうにはどうすればよいだろうか」といった具体的な疑問や課題をもつ企業が、有益な情報を得たい場合に役立つだろう。
ここからは、テレワークを有効活用している企業や団体の取り組みを紹介していこう。さまざまな事例を参考にすることで、テレワーク導入に関する疑問点も解消するかもしれない。
日本ヒューレット・パッカード株式会社は、従業員の自律性を重視して各自が働き方を選べる制度を整えている。テレワークを導入する以前からフレックスタイム制やフリーアドレス制を採用し、働く時間と場所に柔軟性をもたせることに力を入れてきた企業だ。同社のテレワークへの取り組みは、その延長線上にあるものだと言ってよいだろう。「信頼と尊敬」の企業文化に支えられながら、従業員は自分の力を最大限に発揮できる働き方を主体的に選択している。
同社が得意とするITの活用により、常に同じ環境で業務を遂行できる環境が整えられているのも注目すべき点だろう。これにより、従業員はいつでも、どこにいても普段通りのパフォーマンスを発揮できるのだ。
日本マイクロソフト株式会社ではテレワークを「フレキシブルワーク」と呼んでおり、一般的なテレワークよりも広い意味があるとしている。2016年にはフレックスタイム制からコアタイムもなくし、個々のポテンシャルとパフォーマンスを最大限に引き出すことに注力してきた。
同社のテレワークには、対象者を限定するような条件は存在しない。業務内容やライフステージにかかわらず、全社員が時間と場所にとらわれない働き方を選択可能だ。このような柔軟な制度を通して業務効率・経営効率アップだけでなく、従業員のワーク・ライフ・バランスの実現や「働きがい」の向上も目指している。
イエノコト株式会社は、リフォームを専門とする工務店だ。従業員が少なく、育児や介護といった理由で急な休みや遅刻・早退が発生すると、かつては仕事に遅れが生じる恐れがあった。同社のテレワークは、このような問題への対策として導入されたものだ。在宅中や移動中でも仕事を進められるようにすることで、納期が遅れるリスクを解消したのだ。また、時間と場所の制約を受けない働き方ができることで、従業員の「やる気」が向上するという副次的な効果もみられた。
株式会社ありがとうファームは、障がい者の職業訓練施設という役割を担いながら、アートやハンドメイド作品の制作・販売を手がける企業だ。訓練を受ける利用者(同社では「メンバー」と呼ぶ)は、健常者と同等以上の業務が可能な能力を備えている。しかし、精神障害のために人混みや他者からの視線に耐えられないことが多く、出勤が難しいという面があった。そのため、テレワークの導入により通勤が不要な環境を整えることで、働くことを可能にした。
同社では、スマートフォンやタブレットをテレワークに活用している。勤怠管理や成果の確認に用いるほか、素早い対応が求められる緊急時にはビデオ通話も可能な体制を整えている。
株式会社エフスタイルは、メディカル・サイエンスなど専門性の高い分野の広告執筆や音声起こしなどを手がける企業だ。高度な知識とスキルをもったスタッフが知恵を出し合いながら、日々の業務にあたっている。
同社はテレワークを導入する際に、オフィスで隣の席に座っているときのように気軽に会話できるシステムを構築した。さまざまな知識をもつスタッフ同士が話し合いながら問題を解決していくためには、たとえ離れた場所にいても距離を感じずに会話できる環境が必要だったためだ。また、必要な資料などはすべてクラウドに保管する必要があったため、強固なセキュリティも施した。
コニカミノルタジャパン株式会社は、在宅勤務を含むテレワークのトライアルを2016年から実施している。国内にある多数の拠点を活用し、常に業務遂行が可能な事業継続計画(BCP)を実現している点が特徴的だ。「社内ドキュメント・ストック・ゼロ」施策をかかげ、ペーパーレスで業務を進められるインフラも整備した。トライアルにより抽出された課題をベースに本格的な導入を目指しながら、全国を網羅したテレワーク普及活動も行っている。
佐賀県では、県民への迅速でわかりやすいサービス提供や災害時の事業継続性のために、テレワークを中心としたワークスタイルの変革を推進している。あわせてワーク・ライフ・バランスの実現も目指す同県では、全職員をテレワークの対象とした。育児や介護といった事由に関係なく、電子申請による迅速な手続で在宅勤務やモバイルワーク、サテライト勤務を実施可能な制度を整えている。
東京急行電鉄株式会社は、在宅勤務とサテライト勤務が可能なテレワーク制度を導入している。在宅勤務は育児や介護のための休業から早期復職した従業員を対象にしたものだ。サテライト勤務では、同社が東急沿線に展開するサテライトシェアオフィス「NewWork」を利用できる点が特徴となっている。さらに、コワーキングスペースやカラオケ施設とも提携することで、多数の拠点での執務が可能な環境を整えた。
テレワークに関して実績をあげている企業・団体の、さまざまな取り組みを紹介してきた。これらの事例からは、単に政府が推奨しているからという理由だけでテレワークを導入しているわけではないことが読み取れるのではないだろうか。従業員が働きやすい環境を整えることに加えて、個々の生活やライフステージにまで配慮する姿勢がどの企業にもうかがえる。このような取り組みのためには、人材のエキスパートである人事部門の存在が重要だ。テレワークの導入を考えている企業では、人事が推進役となってIT部門やそのほかの部署と連携していくことが求められるだろう。
【資料】テレワークは働き方改革のリトマス試験紙
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