2020.05.19
テレワークは、多様で柔軟な働き方を選択可能にする制度のひとつだ。子育て世代にとっても、テレワークは家庭と仕事の両立を実現する有効な手段になると期待されている。一方で、実際にテレワークを経験した人からは、子供がいる環境でのテレワークは難しいという声もあるのが現実だ。そこで、子育て世代が抱えるテレワークの悩みと、企業が行うべき対策について解説する。
テレワークは、日本でも大企業を中心に年々増加している。これには、2019年から順次施行されている働き方改革関連法や、企業のテレワークへの取り組みを紹介する「テレワーク宣言企業」を厚生労働省が公募していることなども少なからず関係しているだろう。国や自治体がさまざまな助成金を提供するなど、テレワークの導入はまさに国を挙げて推進されている。
その背景として挙げられるのは、人口減少時代における労働力の確保が社会的な課題となっている点だ。労働力不足を解消するために、政府は働き方改革を実現する「柔軟な働き方ができる環境づくり」の具体的な取り組みとしてテレワークを推奨している。テレワークを活用すれば場所や時間にとらわれない働き方が可能になり、さまざまな事情でこれまで労働に参加するのが難しかった人々も労働力になり得るからだ。
テレワークの導入は、企業にとっても従業員にとってもさまざまなメリットをもたらす。ここでは、家庭と仕事の両立が必要な子育て世代の従業員に着目して、どのようなメリットがあるのかについて解説していく。
従業員の中には、結婚や妊娠、出産を機に退職を決意するという人も少なくない。しかし、すべての人が望んで退職しているとは限らないのが現実だ。特に子育て中の場合は、育児と仕事との両立を図りたいと考えていても、就業規則などとの折り合いがつかず退職せざるを得ないケースもあるだろう。このような場合でも、テレワークという選択肢があれば従業員の退職を回避できる可能性がある。場所や時間にとらわれずに働けるテレワークなら、従来の働き方よりも子育てなどにかける時間を多く取れるからだ。企業側にとっても、予期せず人材を失うのは決して好ましいことではない。仕事に慣れた貴重な人材を手放さずに済むテレワークのメリットは大きいと言える。
子育て世代の従業員には、新居を構えるというライフイベントもよくあることだろう。もし転居先が毎日の通勤が難しい場所であったとしても、テレワークを導入済みの企業であれば問題がない。在宅勤務を選択することによって、これまで通り業務を遂行することが可能なためだ。テレワークによる仕事の質そのものについては、居住地がどこであろうと左右されることはない。ただし、在宅勤務を許可する場合でも、チームワークを維持するために週1回程度の出社義務を設けている企業もあるだろう。定期的な出社義務がなくても、臨時での出社を要請しなければならないような事態もあるかもしれない。そのため、通勤が全く不可能な場所への転居は現実的ではないケースも存在する。
テレワークによる在宅勤務を選択した従業員は、通勤の必要がなくなる。ラッシュアワーの満員電車によるストレスを受けなくなるとともに、これまで通勤に費やしていた分だけ時間的なゆとりが生まれるだろう。その結果、家庭と仕事を両立させ、より充実した健康的な生活を送りやすくなる。いわゆる、「ワーク・ライフ・バランスの向上」が期待できるのだ。従業員の心身の健康は、仕事に対するモチベーションにもよい影響を与える。より積極的に業務にあたれることは、業務効率のアップにもつながるだろう。
子育て中の家庭では、子供の送り迎えや食事の用意などの家事が断続的に発生することも多い。このような場合でも、テレワークでは勤務時間を柔軟に調整できる。仕事を一時中断して家庭の用事をこなし、また仕事に戻るということが可能なのだ。勤務時間の管理をどこまで各自の判断で行えるかについては、事前に取り決めておく必要があるかもしれない。とはいえ、在宅勤務では従業員を信頼して任せたほうがうまくいく部分も多い。ある程度の自己管理能力がある従業員には、細かいルールを設けずに能力を発揮してもらうほうがメリットが大きいだろう。
テレワークのメリットについて説明してきたが、子育て世代でもテレワークなら仕事ができるというのはどこまでが真実なのだろうか。実際にテレワークによる在宅勤務を経験した人からは、そう簡単にはいかないという意見も聞こえてくる。ここでは、具体的にどのような悩みがあるのかを解説する。
テレワークにおける子育て世代に多いのが、子供の世話のたびに作業が中断するという悩みだ。小さな子供がいる家庭では、どうしても頻繁に世話をしなければならない。子供の面倒を見ながら仕事の集中力を持続させる必要があるのだ。例えばビデオ会議など、プロジェクトメンバーやクライアントとオンラインでのコミュニケーションを取る際も、子供が割り込んでこないように場所を変えたり、別の誰かに子供をみてもらったりする必要がある。また、子供の面倒を見ながら同時に家事もこなさなければならないという人も多いだろう。
上記のような背景で子供が起きている間はとにかく仕事にならないのだとすれば、子供が寝ている間に働くしかない。そのため、睡眠時間を削って夜間や早朝の短い時間に仕事をせざるを得ないというケースも多い。時間の融通が効くテレワークだからこそできることではあるが、これでは決して健康的な働き方とは言えないだろう。
紹介してきたように、子育て世代におけるテレワークの実情を見ると、テレワーク本来のメリットを充分に得られていないケースも少なくない。家族構成や居住地域などの事情で、家庭ごとに抱える問題も異なるだろう。しかし、企業はこのことを個人的な悩みとして片付けるべきではない。従業員の生産性やワーク・ライフ・バランスの向上は、企業のメリットにもつながるからだ。各自が自力で解決すべき問題として片付けるよりも、従業員と力を合わせて改善方法を模索していくほうが建設的だろう。
実際のところ、テレワークによる在宅勤務では、これまで通勤にかけていた時間を育児などに充てられるようになるのは確かである。そのうえで、従業員が抱える悩みを個別にヒアリングし、企業としてどのようなサポートができるかを考えていくのだ。育休や時短勤務など、子育て支援につながる人事制度とあわせて検討するのもよいだろう。それには、子育てに理解を示し、従業員が相談しやすい企業風土づくりを含めた環境構築からはじめることが重要だ。
多様で柔軟な働き方を選択可能にするテレワークは、働き方改革を推進するうえで欠かせない制度だ。しかし、テレワークさえ導入すればすべて解決するというわけではない。導入が進むにつれ、働き方改革推進の障壁となる問題点が、企業ごとにしだいに浮き彫りになってくるだろう。ICTの力で解決できる問題もあれば、人事部門が中心となって解決策を検討しなければならないものもある。それぞれの課題に真摯に向き合いながら、ひとつずつ改善を重ねることが大切だ。テレワークが本来の効果を発揮できるようになれば、企業と従業員の双方が数多くのメリットを享受できるようになるだろう。
【資料】テレワークは働き方改革のリトマス試験紙
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