2020.05.19
働き方改革の推進に関連して、テレワークというワークスタイルが注目を集めている。ニュースなどで「テレワーク先駆者百選」という言葉を耳にしたことがある読者も多いのではないだろうか。テレワーク先駆者百選は、テレワークに関してすでに十分な実績をあげている企業・団体の取り組みを紹介するものだ。テレワークの導入を検討している企業にとっては、学ぶべき事例も多いだろう。そこで、テレワーク先駆者百選に選ばれた企業の取り組みの中から、テレワークを有効活用するために役立つ施策などについて紹介する。
テレワークとは、ICTを活用して多様で柔軟な働き方を可能にするワークスタイルだ。時間と場所の制約を受けにくいことから、労働力人口の確保やワーク・ライフ・バランスの実現などに寄与するものとして期待されている。日本政府も、働き方改革推進の有効な手段として普及・促進に取り組んでいる。
テレワークの代表例としては、在宅勤務やモバイル勤務、サテライトオフィスの活用などが挙げられるだろう。企業がこのような働き方を認めれば、従業員は個々の都合にあわせて働き方を選べるようになる。育児や介護、治療などのためにこれまで就労が難しかった人でも、テレワークによって能力を発揮できるようになるかもしれない。また、経営者にとっても、コスト削減や生産性向上などさまざまなメリットがある。さらに積極的にテレワークに取り組めば、社会的ニーズに応えていくことも可能だ。場所に縛られないビジネスによって地方経済の活性化を促したり、CO2排出量の削減によって環境負荷の軽減に貢献したりといったことができるようになるだろう。
総務省では、2015年度からテレワークの普及・促進を目的としてテレワーク先駆者百選を公表している。テレワークを活用している企業・団体を「テレワーク先駆者」としたうえで、特に十分な実績がある団体を有識者が審査・選出したものだ。令和元年には、新たに32団体がテレワーク先駆者百選に加わった。これらの企業における取り組み事例は、これからテレワークの導入を考えている企業にとって大いに参考になるはずだ。
さらに、テレワーク先駆者百選のなかでも特に模範とすべき優秀な取り組みを行う企業・団体は、「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」に選ばれ表彰されている。令和元年には「アフラック生命保険株式会社」、「シックス・アパート株式会社」、「明豊ファシリティワークス株式会社」、および「リコージャパン株式会社」の4社が受賞した。
ここからは、テレワーク先駆者百選に選ばれた企業が実際に行っている取り組みについて紹介していこう。自社でのテレワーク導入や、各種施策の参考にしてほしい。
日本ヒューレット・パッカード株式会社/株式会社 日本HPは、創業当時から従業員の自律性を尊重している企業だ。1977年度にフレックスタイム制、2001年にはフリーアドレス制を採用するなど、従業員各自がもっとも成果をあげやすい働き方を選択できる環境を整えてきた。同社にとってのテレワークは、これら一連の取り組みの発展形にあたるものだ。2007年に制度が導入され、全社員を対象としたモバイルワークと、育児や介護などの事由がある社員を対象とした在宅勤務が認められた。その利用率は、全体の約9割にもおよぶ。
テレワークの活用により、直行・直帰でストレスの多い時間帯の通勤を避けて体力を温存したり、自己研鑽のための時間を確保したりといったことが可能になった。その結果、ワーク・ライフ・バランスの実現や生産性の向上などにも一定の効果がみられた。
日本マイクロソフト株式会社では、テレワークを特別なものとはみなしていない。いつものオフィスで働くことを当然とせず、誰もが時間と場所を有効活用して働ける環境を整えている。そのため、テレワークが可能な範囲についても制限がなく、全社員・全業務を対象としている。2016年にはフレックスタイム制のコアタイムも廃止し、より柔軟な運用を開始した。
このような労働環境を実現するために、同社ではルールやシステムを単一化している。メールやチャット、Web会議などを統合するとともに完全ペーパーレスとすることで、利便性を向上させながらセキュリティも保つことが可能になった。その成果は、経営効率の向上だけにとどまらない。災害時の事業継続性や従業員満足度が向上し、地方への移住による地域活性化でも一定の成果をあげている。
リコージャパン株式会社がテレワーク導入を開始したのは、2011年の東日本大震災後のことだ。その後2018年度からは全社展開を実施し、ICTツールの統一化などに取り組んできた。同年の西日本豪雨や台風21号の際には、テレワークを活用し事業継続性に関して一定の効果があることを確認している。また、顧客向けにテレワークのセミナーを開催したり、小規模な小学校における遠隔合同授業を支援したりといったことも、同社の興味深い取り組みだ。
テレワークの導入により、同社では生産性の向上がみられた。2016〜2018年の推移では、従業員あたりの労働時間が年間で97時間減少したにもかかわらず、599億円の売り上げ増があったという。
ChatWork株式会社は、ビジネス向けのチャットツールを提供する企業だ。その特徴を活かし、自社のチャットツールを活用したテレワークを全社員を対象に実施している。東日本大震災が発生したのはチャットツールを提供した直後のことだったが、このときにはテレワークが可能な体制がすでに整っていたため事業が滞ることはなかった。それ以降も、災害により出社が困難な状況に際しては、全社員を在宅勤務に切り替えることが可能な体制をとっている。
同社では、従業員個々のニーズに応じてフルタイムでの在宅勤務も認めている。これにより、支社が存在しない地方での人材確保や、離職率の低下を実現した。
サイボウズ株式会社は、グループウェアを提供する企業だ。積極的にテレワークに取り組みながらノウハウまで含めて情報提供することにより、自社のクラウド型グループウェアが多様で柔軟な働き方に役立つことを証明している。
同社では職種にかかわらず全社員を対象にテレワークを導入しており、災害時の事業継続性も高い。また、勤務時間の長さや勤務場所は、事前の申請によって選択可能となっている。個々のニーズにあわせた働き方を選びやすいことからテレワークが雇用機会の創出に一定の効果を発揮し、採用に関しても応募者が増加傾向となっている。
アフラック生命株式会社は、働き方の多様性を拡大するための試みとして2015年から段階的にテレワークに取り組み、翌2016年には全社への導入を達成した。全社員が対象となっており、実施の頻度や単位に制限はない。そのため、例えば1日に1時間のみの実施も可能だ。
同社ではテレワークの導入により在宅勤務者のワーク・ライフ・バランスが向上し、勤務時間を柔軟に配分できることなどから従業員満足度でも一定の改善がみられたという。また、予定される成果を事前に申請するルールを設けたことでアウトプットへの意識が高まり、計画的・効率的な業務遂行が習慣化した。
日産自動車株式会社では2004年にダイバーシティディベロップメントオフィスを設置し、2006年からテレワーク制度を導入した。当初は育児や介護との両立を目的とした在宅勤務を可能にするための制度としてスタートしたものだったが、後に事由による制限を撤廃。現在では対象を生産現場を除く全社員にまで広げ、働き方改革を推進するためのツールとして位置付けられている。
2015年からは、1日の労働時間である「8時間」を意識することで生産性の向上を目指す活動にも取り組んでいる。これはワーク・ライフ・バランスの実現を意図したものであり、社員からは実際にワークとライフの両面で満足度が高まったという意見が多く聞かれるようになった。
日本航空株式会社では、「画一的な男性の働き方」と「長時間労働」という課題を克服すべく、2013年から女性の両立支援に取り組んできた。より柔軟な働き方へのシフトを目指して2014年から在宅勤務のトライアルを実施し、翌2015年には制度化を実現。その結果、30代で会社に残る女性の割合が大幅に増加するという成果をあげた。
在宅勤務をする際に、その理由を問わないというのが同社の特徴的な方針だ。その背景には、在宅勤務は福利厚生の一環ではなく、生産性向上のためのものだという考え方がある。実際に在宅勤務を経験した従業員からは、生産性の向上は思った以上だという声も多く寄せられているという。
テレワークはICTを活用した制度テレワークの推進役。人事部がやるべきこととはだが、テレワーク先駆者の事例からは、単に技術的なインフラさえ整えればうまくいくわけではないということがうかがえる。従業員個々の生活の質をいかにして向上させるかという点までを含めて、多くの企業が自社に最適な方法を模索しているのだ。そのためには、人事部が中心となって行うべきことも多いだろう。テレワーク導入によるさまざまなメリットを得るためには、企業にとっての最大の資産は「人」であるということを再確認する必要があるのかもしれない。
【資料】テレワークは働き方改革のリトマス試験紙
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