2020.05.18
国による働き方改革推進の一環として、テレワークが推奨されている。働く場所を選ばないテレワークは働き手の多様なニーズに応えられることから、社員はもちろん企業にとってもメリットの多い制度だ。一方で、社員の顔が見えにくくなることから「さぼり」を懸念して導入をためらう企業も少なくないだろう。そこで、テレワークにまつわる課題とその克服方法、生産性を高めるためのポイントについて解説する。
テレワークの導入にあたっては、通信環境やセキュリティといった技術的な話題ばかりが注目されがちだ。だが、これらは適切なハードウェアやソフトウェアを導入することで解決できることが多い。しかし、企業のなかにはテレワークという働き方そのものを懸念する声も根強い。その理由のひとつが社員の「さぼり」だ。オフィスに出社するのが当たり前だったこれまでの働き方とは異なり、テレワークでは上司や同僚の目が届かない場所での自律的な労働が求められる。
一方、テレワークで成果を上げようと頑張り過ぎた社員が過重労働をしてしまうのも問題だ。社員の働き過ぎを防止することも、働き方改革により解決したい問題である。単に「怠けさせない」というだけでなく、いかに効率よく生産性を維持できるかがテレワーク導入のカギだといえるだろう。
テレワークにおける「さぼり」を防ぐためには、ツールによって社員が実際に働いていることを監視するという方法がある。例えば、在宅勤務でWebカメラの設置を義務付け、社員がPCの前にいるかどうかを常にチェックするのだ。監視の目があることで、オフィスで働くのと同じように社員は怠けずに自分が行うべき業務を遂行するだろう。業務内容や労働時間を管理しやすくなるというのもメリットだ。また、顔認証技術を併用すれば、カメラに写っているのが確かに本人であることを識別し「なりすまし」の防止にも活用できる。
しかし、行き過ぎた監視は、社員に必要以上のプレッシャーを与えてしまう。常に監視されているというストレスは、かえって生産性の低下を招いてしまう結果にもつながり兼ねないのだ。監視ツールの導入を検討する際には、テレワーク本来の意義を思い出したうえで、健全で生産的な労働環境を実現できるように配慮すべきだ。
テレワーク導入の意義は、「多様な働き方を許容できるようにする」「それによる労働力確保や生産性向上」といったことにある。この点を忘れて社員の監視を強めてしまうと、本来なら得られるはずだったメリットを自ら捨てるという本末転倒な結果にもつながり兼ねない。ここからは、テレワークで実現できる多様な働き方とは何かに、あらためて確認していこう。
テレワークを導入するということは、それまでは社内でしか行えなかった業務をどこにいてもできるようになることと同義だ。場所に縛られない働き方は、多くのメリットにつながる。出張中でも普段と同様に作業をこなせるのはもちろんのこと、家族の転勤などによって転居することになった社員にも仕事を続けてもらうことが可能だ。オフィスからの距離を理由に貴重な人材を逃さずに済むことは、企業にとって大きなメリットだろう。また、これまでは居住地の問題で採用をあきらめざるを得なかった人材も、積極的に採用できるようになる。たとえ海外に住まいを構えていたとしても、時差を考慮した働き方ができるなら協業が可能だ。
時間に縛られない働き方ができるという点も、テレワーク導入のメリットだ。働く場所を固定しないのなら、これまでのように就業時間を統一する必要もなくなる。社員それぞれが働く時間を柔軟に調整すれば、プライベートな事情にあわせた働き方ができる。例えば、子育てや介護などの事情を抱えている社員の中には、子供が急に熱を出したときや手続きなどのたびに休暇を取得しなければならなかった人も多いだろう。場合によっては、離職を余儀なくされるケースもある。だが、テレワークによって働く時間に融通を効かせられれば、離職せずに能力を発揮し続けてもらうという選択が可能だ。
これまで通勤に費やしていた移動時間は、テレワークによって削減(在宅勤務ならばゼロに)することが可能だ。ラッシュアワーの満員電車から受けるストレスを減らすとともに、余った時間でプライベートな時間を充実させやすくなる。社員の心身の健康は仕事に対するモチベーションの向上などにもつながることから、生産性が高まることも期待できる。また、外回りの仕事でも移動時間を減らせる可能性がある。テレワーク環境が整っていれば、ちょっとした作業や報告のためだけにオフィスに戻る必要がなくなるためだ。これまで無駄に消費していた移動時間は、より生産的な業務にあてられるようになる。
オフィスでは電話やメール、同僚との会話などで作業が中断されることも少なくない。コミュニケーションは仕事を円滑に進めるために必要な要素ではあるが、割り込みをなくして業務に集中すべき場面もあるだろう。テレワークには、社員各自が自分にとって集中しやすい環境を確保しやすいというメリットがある。在宅勤務であれば、居心地のよい静かな自室にこもって誰にも邪魔されずに作業に没頭することも可能だ。集中的に業務にあたる時間を確保することで、生産性の向上が期待できる。
テレワークによるメリットを最大化するには、監視の強化よりも適切なマネジメントのほうが効果的だ。信頼関係にもとづいてルールを設定すれば、社員のさぼりを防ぐだけでなく、むしろ作業効率を高めることもできるだろう。ここからは、テレワークに適したマネジメント手法について解説する。
チームとしての目標設定は行っているが、社員ごとの目標までは明確に定めていないという企業も多いだろう。これは「メンバーシップ型」などと呼ばれるマネジメント手法で、日本企業に多いのが特徴だ。メンバーが顔を合わせて働く従来の環境であれば、これで上手くいっているかもしれない。しかし、テレワークでは各自が自律的に業務を進めなければならない。ひとりひとりが達成すべき目標が曖昧なままでは、効率的な業務遂行は難しいだろう。
この課題を克服するには、「ジョブ型」のマネジメントに移行することが求められる。ジョブ型では、どのような役割を任せられているのかを社員各自に理解してもらったうえで、仕事の範囲と目標を事前に定めておく。これにより、自分が行うべき作業が明確になるため、テレワークの際にも「さぼり」が発生しにくくなる。また、作業内容そのものも成果につながる的確なものになるため、生産性の向上が期待できる。
メンバーシップ型のマネジメントとあわせて、「定性評価」を採用していることが多いのも日本企業にみられる特徴だ。定性評価では仕事の成果よりも、仕事にあたる姿勢などが評価されることが多い。そのため、上司や同僚からどのように見られているかが評価を左右することになる。ひとりで作業することの多いテレワークとは相性が悪く、誰からも見られない環境では「さぼり」が発生しやすい面がある。
テレワークにおけるモチベーション向上のためには、成果に応じて公正な評価が得られる労働環境が重要だろう。そのためには、成果の達成度合いによる「定量評価」への移行が必要だ。評価方法を変えることは簡単ではないと感じる管理者も多いかもしれない。しかし、達成すべき目標を事前に定めるジョブ型のマネジメントに移行するのであれば、これまでよりも定量的に評価しやすくなるはずだ。
適切にマネジメントされたテレワークでは、仕事にあたる姿勢より成果の達成状況が重視される。言い換えれば、社員がしっかり働いているかどうかを監視するよりも、目標達成に向けた勤務時間や進捗状況の管理に注力するということだ。このとき、「監視」と「管理」は異なるこということをよく理解しておくべきだろう。監視は行き過ぎれば社員にストレスを与え、生産性を低下させる原因にもなる。一方、管理は働き過ぎを防止し、定められた時間内で成果を出せるようにするためにある。
適切な管理は、モチベーションと生産性の向上につながる重要なものだ。社員の状況を日頃から把握するとともに、何か問題が発生した場合には直ちに対応できる環境を整えておくことがポイントになる。離れた場所にいるチームメンバーや上司とも話し合いができるよう、通信環境も整えておくのがよいだろう。
テレワークでの「さぼり」を防止するには、作業に集中できる環境づくりが欠かせない。そのためには適切なハードウェア・ソフトウェアの選定と、通信環境まで含めた快適な執務環境の構築が必要だ。また、インターネットに接続する以上は、セキュリティの確保も求められる。環境構築は社員の自己責任にせず、十分な性能と安全性を備えた社用PCを貸与すべきだろう。このことは、業務利用とプライベートでの利用を切り替えるうえでも役立つ。
社用PCは、テレワークに適したスペックが十分に備わっているかを考慮して選定することが重要だ。パフォーマンスの高さはもちろんのこと、持ち運びに適した軽さや丈夫さ、バッテリー性能などもチェックしておきたい。また、不正利用や盗難といった万が一の場合にも対応できるセキュリティ機能を備えたものであれば、導入できる業務の幅も広がってくる。
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