2018.11.29
Windows 10 を使用しているユーザーが快適にWindows 10 を使い続けるためには、年に2回行われる大型アップデートへの対応は欠かせません。2018年は、5月に1回目のアップデートが実施され、10月に2回目のアップデートが行われました。
本記事では10月に行われた Windows 10 october 2018 Updateについて、その内容を詳しく紹介します。新機能、変更された点、削除された機能などはもちろんのこと、配信直後に発覚した不具合についてもご紹介していきます。
Microsoftが行うWindows OSのバージョンアップは3年周期で計画されています。計画されたバージョンアップは、2016年からスタートし、2018年まで行われます。この期間はFeature Updateと呼ばれ、新しい機能を次々と追加していくバージョンアップになります。
2018年10月に行われたアップデートが 「Windows 10 october 2018 update」であり、10月2日よりワールドワイドで提供がスタートしました。日本では、10月9日から段階的に更新プログラムとしてインストールが行われています。
自動的に実行される更新プログラムのインストールに関する表示が出てくる前にこのアップデートを手動で実施したいときには、「更新とセキュリティ」から「Windows Update」を選び、更新プログラムのチェックを行うことで、ダウンロードが実施されます。
2018年10月3日にリリースされたWindows 10の大型バージョンアップ「Windows 10 october 2018 Update」ではありましたが、リリース直後に一部のユーザーから、ファイルが失われるという報告が相次ぎました。そのため、バージョンアップの公開を急きょ停止し、Microsoftはその解明に乗り出すとともに、不具合の内容を公開しバージョンアップを行わないように告知しました。
ではどのような不具合だったのでしょうか。この不具合は実は、今回が初めてではなく、前回の「April 2018 Update」でも発生していました。そのため「Windows 10 october 2018 update」では対策がとられていたのですが、今回は特定の複数処理の組み合わせによって不具合が発生することが報告されました。
不具合の現象としては、アップデートの際にファイル消失が起きてしまうというものになります。この不具合の原因は、「OneDrive」のうちのあるシステムに起因しています。ファイルを保護するためにデスクトップやドキュメントなどのユーザーフォルダーを「OneDrive」へ移すというステップが入っていましたが、それが正常に働かなかったことにより、結果的にファイルを保護できなかったというものです。
この不具合がユーザーから報告されたことを受けて、アップデートの公開は一時停止されました。
2018年10月15日現在、ファイル消失の原因をMicrosoftは明確にし、現地時間の2018年10月9日には更新プログラムのテスト版をリリースしました。このリリース版ではファイルが消失するという不具合は解消されています。
「Windows 10 october 2018 update」の配信は段階的に行われたため、不具合の原因となったビルドを適用するには、Windows Updateでの手動更新を実行するか、あるいは、更新アシスタントやメディア作成ツールを利用する必要がありました。そのため、最初の配信後、不具合が発覚するまでの間に「Windows 10 october 2018 update」のアップデートを実施したユーザーはそれほど多くはなく、これが不具合の影響を最小限に食い止めることに貢献しました。
不具合を解消した「Windows 10 october 2018 update」は、一部ユーザーを対象にテストを行い、問題が起きなければ一般のユーザーに対してもアップデートが再開される予定です。
「Windows 10 october 2018 update」では、モバイル対応およびクラウド環境での新機能や変更点が数多く見られます。この段落では、新機能と変更されたポイントについてより詳しい解説をしていきます。特にスマートフォン同期に関する機能追加は今後Windowsを使い続けていく中で大変便利な機能ばかりです。
今回のアップデートで、Android用のアプリ「Microsoft Launcher」でタイムラインが表示されるようになりました。ランチャアプリは、スマホのホーム画面や、アプリ一覧画面をカスタマイズできるアプリで、自分のスマホをより快適に利用するために多くのユーザーが使っています。
これによって「Windows 10 october 2018 update」ではPC、タブレット、スマホでの使い勝手もよくなり、いずれの端末からであってもWebサイトやファイルを表示させられるようになりました。この機能は、異なる端末をそのあとに使ったとしてもWebサイトを途中から閲覧することができますし、ファイルの編集作業を再開することも可能です。そのため作業者にとって、効率アップが期待できます。
最初のバージョンでは、Androidのみですが、追ってiOS向けの機能も提供される予定になっています。
PCとモバイル端末を相互関係で利用することは多くのユーザーにとってとても有効です。「Windows 10 october 2018 update」では、PCとスマートフォンとの連携のために新しくスマートフォン同期管理アプリが用意されました。Android 7.0以降の端末であれば利用可能で、連携設定をすることで、PCとモバイル間での画像の閲覧やドキュメントへ画像のコピー&ペーストができるようになります。 この機能はiOSは対象外になっています。
また、PCからスマートフォンを経由してSMSの送受信を行うことができます。
Windows 10 のデフォルトブラウザであるMicrosoft Edgeにも新たな機能と変更が見られます。
より快適な使用を実現するため、メニューの構成を6つのグループに分けました。これにより見やすさが各段に上がっています。また、よく使う機能のアイコンを自由にオン/オフしたりアイコンを全削除して見やすくするといったユーザーのカスタマイズにも対応可能になっています。
PDFを見るときには、ツールバーを上部に固定できるようになったため、より快適に閲覧ができます。固定を解除しているときもマウスカーソルをアドレスバーの下に持っていくだけでツールバーが表示されますので、操作性も上がったと言えます。
これら以外にも「行フォーカス」が追加されたり「オフライン辞書」の機能が整理されたりと使いやすさを重視したブラウザにアップデートされています。
クリップボードのクラウド化はユーザーの作業効率を大きく変える機能です。今回のバージョンアップにより、クリップボードの履歴をさかのぼって利用することができ、さらに、複数のWindowsパソコン間でクリップボードのデータ共有ができるようになりました。クリップボードのサイズもテキストは100KB、画像は1MBまでとなっています。
複数のパソコンを使って作業をしているユーザーにとってはクリップボードを共有化できることでコピー&ペーストが楽になり、作業時間を大幅に短縮できます。
新しいアプリとして今回提供された「切り取り&スケッチ」は、「画面スケッチ」の名称が変わり、いくつかの改良を加えたものです。
そのひとつが画面のキャプチャに関する機能です。「切り取り&スケッチ」では画面のキャプチャや、キャプチャした画面への書き込みが簡単にできるようになりました。
廃止が予定されていた画面キャプチャアプリ「Snipping Tool」は引き続き利用可能であることも使い慣れたユーザーにはうれしいポイントです。
今回のバージョンアップで、モバイルデバイスで使用が多くなってきたデジタルペンでの対応を可能にしたのが、タスクアプリ「Microsoft To-Do」です。空いたスペースに直接デジタルペンで書き込むことで文字が認識されるようになったため、使い勝手が数段上がりました。また、今までチェックをつけたり、完了ボタンを押すという動作を行っていたタスクの完了も、まるで手書きノートを使うように、ペンで線を引くだけで簡単に行うことができます。
VR体験ができる「Windows Mixed Reality」における変更点は、ヘッドセットをかぶったままVR空間から現実世界を見ることができる懐中電灯機能の追加です。また、VRの音声をヘッドセットとPCスピーカーで同時出力することができるようになったので、ヘッドセットをつけている本人だけではなく、周りにいるヘッドセットをかぶっていない人も、どのようなVR体験をしているかをその場で知ることができます。設定を変更すると、バックパック型パソコンとヘッドセットのみでVR体験をすることも可能になりました。
デフォルトのメーラーとしてユーザーの多いOutlookには、新たに2つの機能が追加されました。
ひとつめが、ドラッグ&ドロップ機能です。メールからタスクへのドラッグ&ドロップで新タスクを作成できますし、タスクからカレンダーへのドラッグ&ドロップで新しい予定を作ることも可能です。
ふたつめが、受信トレイです。各企業がMicrosoftにビジネスプロフィールを登録しておくと、検証済みアイコンが表示されます。また、この機能によってユーザーは商品の配送状況や店舗へのアクセス情報などをすぐに確認できるようになるのも大きな利点です。この機能は、アメリカのユーザーを対象に実装が開始され、順次ワールドワイドに展開されていく予定です。
検索機能もより使い勝手がよくなりました。アプリ、設定、ドキュメント、写真、Webのメニューをワンタップするだけで検索モードに入ることができるようになっています。また、ドキュメントのプレビューでは場所、最終更新日時、最終更新者、作成者などの詳細が表示されるようになりました。この機能の追加によって、わざわざファイルを開くことなく中身を判別できるためユーザーの検索効率が上がります。
今までほかの機能と同等におかれていたゲームバーがアプリケーションとして独立しました。このことで、スタートメニューやタスクバーからゲームバーを起動することが可能になっています。
また、オーディオコントロールも新たに実装されています。いままでゲームを起動したままでは行うことができなったオーディオやシステムサウンド、アプリの音声をゲームを離れることなく調節できます。
さらに、アップデートのインストールを抑制する機能が追加され、アップデート時のゲーム中断がなくなりました。
「Windows 10 october 2018 update」では、「Unicode 11」を採用しています。これにより新たに157個の絵文字が追加されました。この絵文字は、「Windows+.」で表示される「絵文字パネル」から入力することができます。 プライベートシーンで新しい絵文字でより快適なコミュニケーションをとることができます。
PCのキーボードであるQWERTYレイアウトに慣れたPCユーザーにとってもより使いやすいとして人気のSwiftKeyは、Microsoftが提供するアプリケーションキーボードです。「Windows 10 october 2018 update」では、予測変換、入力訂正機能が搭載されたソフトウェアキーボードとして搭載されています。このキーボードでは、指でなぞって文字の入力を行います。今回のアップデートでは、日本語には未対応です。
セキュリティへの対策はOSにとっては死活問題です。「Windows 10 october 2018 update」には新たに複数のセキュリティ対策が施されています。そのひとつに、リモートデスクトップのセッションを顔認証する「Remote Desktop with Windows Hello Biometrics」があります。また、サードパーティ製のアプリとサービスを一括管理する「セキュリティプロバイダー」などが追加されました。
一方、メニューや設定画面のテキストを大きくしたり、カーソルを画面中央に常に表示する機能などが追加され、より高いアクセシビリティを実現しています。
新たな機能が追加されている一方で、「Windows 10 october 2018 update」で廃止される機能もいくつかあります。これらは、新機能によってより高機能になったために置き換えられたり、ユーザーのニーズにより近づけるために推奨しなくなったものなどです。どのような機能が廃止されたかについて解説します。
DSM(分散スキャン管理)は、企業内において、Windows Serverの分散スキャン管理システムを使い事前に設定した個人の宛先情報などを一元管理し、必要に応じて配信を行うことができる機能です。この機能は、「Windows 10 April 2018 Update(バージョン1803)の際に非推奨となっていましたが、今回のバージョンアップで廃止となっています。
ホログラムは、3D空間でのみ利用される機能で、3D空間に3Dモデルを配置するアプリケーションです。実際に使用するためには、HoloLensやWindows MRヘッドセットが必要でした。
今回のバージョンアップで、「ホログラム」が「Mixed Reality Viewer」に置き換わることになります。3Dモデルの作成はペイント3Dで行い、Mixed Reality Viewerでは、そうして作った3Dモデルの表示や、3Dモデルと背景を合成して撮影するといった機能を使ったビューアーの役割を持たせます。
PCとモバイルとの連携をサポートする機能としてWindows 10 に搭載されていた「モバイルコンパニオン」は今回のアップデートで、「同期電話」に置き換わります。
「同期電話」は、スマートフォンとPCとの同期を行う新しい機能です。「Windows 10 october 2018 update」では、「同期電話」は、Androidスマートフォンにのみ対応していて、iPhoneは未対応になっています。モバイル端末の管理は「設定」カラムの「電話」で行えます。
「Windows 10 october 2018 update」では多くの新機能や追加機能が搭載されています。しかし一方では、ファイル消失というユーザーにとって大きな痛手を受ける重大な不具合も発生しました。この不具合は解決されたとの発表がありましたが、zipファイルの不具合などいまだ安定したバージョンアップとは言い難い状況です。
Microsoftは、早急な対処を行っていくと考えられますが、Windowsユーザーは今後の動向に注意を怠ることなく、情報のアンテナを張っておく必要があります。情報を素早くキャッチし快適にパソコンを使用していきましょう。