2020.03.10

先進的なVRシステムで日本の社会を変革する企業を支えるHPワークステーション

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日本のインフラ事業は品質、施工期間の短さ、それを支える優秀な人材など、あらゆる面で世界的に評価を受けていることはご存知のとおりだ。しかし、少子化の影響で、今後はその地位を維持することが難しくなってくるという見方が多くなっているのも事実だ。業務効率化が急がれる業種に向けて、先進的なVRテクノロジーを開発、提供している注目の企業が「シンメトリー・ディメンションズ・インク」だ。同企業の取り組みと、HPワークステーションがどのようにソリューションを支えているのか話を伺ってきたので紹介しよう。

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シンメトリー・ディメンションズ・インク
CEO
沼倉正吾氏

日本社会の基盤を変革するテクノロジーを開発

シンメトリー・ディメンションズ・インク(以降、シンメトリー社)は、2014年にVRソフトウェア開発を専門として米国に設立された企業だ(設立時の社名は「DVERSE Inc.」)。最新テクノロジーを利用した新規事業の組織作りから、企画、開発を専門としており、近年では国土交通省主導による土木事業におけるICTの全面的な活用を推進する「i-Construction」にも参加していることでも注目されている。

「私たちが提供しているサービスは、計算が大変だった3Dデータをスムーズに動かせるようにする技術です。VRテクノロジーを使ってデータを可視化し、誰が見ても分かりやすい環境を提供することが目的です。」と語るのは同社CEOの沼倉正吾氏だ(以降、沼倉氏)。

シンメトリー社は2016年から独自のVRソフトウェア「Symmetry」を建築、建設業界向けに提供しており、CADデータのVR化はもちろん、一歩進んだ「点群データ」を活用してリアリティ化することに成功している。「建築・設計などはもちろんですが、近年拡大傾向にある自然災害で被害を受けた地域の情報をいち早く取得して、専門家がすばやい判断をするのに役立ててもらうことも視野に入れています。」と沼倉氏は語る。

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VRテクノロジーを採用し、誰にでも簡単に扱えるようにした注目のソリューション「Symmetry」

すべての人にイメージを伝えるための点群データ

Symmetryが提供するソフトウェアはVRの中でも、実際の場所やモノを3Dデータにするテクノロジーだ。その情報源となるのが「点群データ」と呼ばれるものになる。

「点群データには大きく分けて2つあり、ひとつはレーザースキャナーを使って定点の情報を取得して3D化する方法と、もうひとつはドローンカメラで撮影した写真をベースに立体データを作るフォトグラメトリがあります。」と説明する沼倉氏。
レーザースキャンは三脚に乗せた専用機で周囲に向かってレーザーを照射。地面やモノに当たった部分を座標として取得するため、非常に正確な距離が測量できるのが特長だ。一方のフォトグラメトリは一つの場所につき1万枚といった規模で写真を撮影し、その画像データを元に3D化するため、リアルな情景が再現できる。
「レーザースキャンとフォトグラメトリはどちらが優れているというものではなく、何に使うのか、誰に見せるのかといった部分で使い分けることが大切です。」と沼倉氏。

例えば建築の場合、設計や施工はプロがおこなうが発注する側はプロではない。そのため、図面を見せたとしてもその場では分からず、施工後に「ここが思っていたのと違う」といったことがおこりがちだ。「2Dでは伝わらなかった感覚も3Dなら伝えることができます。VRなら施工後のイメージも伝えられるので部屋を見渡したり、ビルを下から見上げたりも自在です。」沼倉氏。

また災害時には土砂崩れの現場をいち早くドローンで撮影、すぐにVR化することで、比較的経験が浅い現場監督であってもどこから手を付ければ早く復旧工事ができるか、すばやい判断がおこなえるようになる。「そのほか都心は地下が入り組んでいますが、図面だとどうやって避難したらよいかなかなか伝わりません。しかし、3Dデータを取得すれば3次元的な避難経路を示すことができるので、混乱の少ない避難誘導に役立てることができるのです。」と沼倉氏は解説する。

土砂崩れの実際の現場

ドローンによる現場の点群化①

ドローンによる現場の点群化②

使い手を選ばない“分かりやすさ”も実現

こうした技術を聞くと、とても複雑なオペレーションを連想してしまいがちだが、Symmetryが提供するソリューションはそれとは正反対に直感的なUIに特長があるのだという。「手軽であること、コンピューターの知識がなくても操作できることを念頭に開発を進めてきました。データを入力すれば自動的に変換されるのでシンプルに扱えます。実際にデモなどをおこなうと、最初は一緒に操作をしますが、いくつかのデータを操作していくうちにすぐ理解していただけます。操作もボタンを押したり、VR内でポインターを合わせたりするだけなので、コンピューターに慣れていない方ほどこういった技術を試していただきたい。」と沼倉氏は語る。

実際に操作をしてみると、VRの中では360度の方向でも見ることができるうえ、俯瞰で見るために自分が上昇したり、ポインターを任意の地点に合わせてそこまで一瞬で移動したりと、非常に簡単な操作でリアルな映像を体感することができる。

直感的かつ柔軟な操作性で、専門知識や年齢問わず誰でも扱えるのも特長

そんな同社が今取り組んでいるのは、5Gを使ってユーザーがデータをアップロード、そのデータをSymmetryによって分析し、結果をストリーミングで提供するサービスだ。「その際には電気、ガス、水道といったエネルギーや交通などの現実世界の情報を都市の3Dモデル上に重ね合わせることで、デジタルツインの世界で最適な都市計画を立てていくことができます。」と沼倉氏は解説する。

「デジタルツインの仕組みを活用することで、これまで事後の対応しかできなかったことが事前に対応できるようになる。そのためのシミュレーションに役立てられるのが特長です。」と沼倉氏は語る。例えば工事現場などで天気データを連動することで、本社から現場を監督し、降雨情報があればそれを元に施工の順序を組み替えて事前に雨に備えるといったことも可能になってくる。

この技術を従来のコンピューターで再現しようとすればかなりの負荷が予想できるが、Symmetryはどのような要件をもっているのだろう。「いわゆる“VR Ready”といわれるスペックは当然要求されます。私たちがいま取り組んでいる新しいサービスの場合、現時点でトップクラスのスペックで安定性の高いマシンが必要になります。」と沼倉氏。そんな同社が選択したのが、HP Z8 G4 Workstationだ。

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”顧客にストレスなく利用してもらうために” 第9世代 インテル® Xeon® Gold プロセッサーとNVIDIA Quadro RTX8000をそれぞれデュアルで搭載したハイエンドWorkstation

「HPとは起業当時からHPの製品を選択してきました。かなりハードに使っていますが、安定していて安心感があります。安定稼働しているためサポートを使ったことがないほどです。ですから、現在のサービスを考えたときにも特に様々なメーカーの見積もりを取ることなく、HPの営業に相談し最適なマシンを提案してもらいました。」と沼倉氏。

クラウドで提供されることが前提となっている最新のSymmetryのために作られたワークステーションは、HP Z8 G4 Workstationをベースに、CPUにインテル® Xeon® Gold 5122 プロセッサー(3.6GHz/4コア)をデュアルで搭載、メインメモリは96GB、グラフィックスはNVIDIA Quadro RTX8000が2枚、NVLinkでリンクされ、ワークステーションとしてはトップクラスのスペックで構成されている。
この屈強なマシンを使った今回の実証実験では、メキシコ第二の都市グアダラハラの185㎢に及ぶ広域で大容量な点群データのすべてをVRAMに読み込んで、数十億点という高密度な点群データをリアルタイムにレンダリングし、遅延のないVR体験を実現した。

シンメトリー社が開発した技術を現実のものにする大きなポイントはやはり、グラフィックボードとして採用されているNVIDIA Quadro RTX8000だ。これはCUDAコア4608基、大容量48GBメモリにより、レンダリングや大規模データセットで大幅に処理能力を向上させたウルトラハイエンドグラフィックスボードになる。AIのパフォーマンスに大きな影響を与えるNVIDIA Tensor コアも576基が搭載され、ディープラーニングにおいて、これまで以上にスループットが向上している。これを単基ではなく、2基並列で稼働させることで、従来のサーバクラスと同等、あるいはそれ以上のパフォーマンスを発揮することに成功しているのだ。

実際の実証実験はすでに始まっており、その分析も進んでいるという。HP Z8 G4 Workstation導入で業務効率はどのように向上したのだろうか。「もちろん、分析する情報量や種類が現場ごとに違うので正確な比較はできませんが、従来のコンピューターで40時間掛かっていたレンダリングも、今回用意したHP Z8 G4 Workstationだと1時間程度で完了しました。」と沼倉氏。ただし、あくまでも実証実験による結果なので、「これからもっと巨大なデータを扱ったときにどうなるか、より高速化できるようにしていくのが我々の仕事です。」と沼倉氏は厳しい表情で語る。

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ハイエンドプロセッサーとハイエンドグラフィックスがそれぞれデュアルで搭載された圧巻のスペック。シンメトリー社の取り組みはテクノロジーの進化が社会に大きな変革をもたらす好例でもある。

「日本ではどんどん人口が減っていき、今現場で働いているベテランたちが退職した後、若い世代による現状維持がとても難しいという課題があります。そこでテクノロジーをつかって、より分かりやすく、簡単に施工や工事ができるようにしてあげることがとても大切になります。
その時が来てから取り組みを始めたのでは遅すぎるので、今からその時代にデジタルを使って何かを残してあげることが急務だと考えています。」と沼倉氏。具体的な未来についても聞かせてくれた。AIとの連動により、例えば前述の工事現場のデジタルツインの例であれば、天気図を読むことができなくてもリアルタイムに情報を分析し数時間後の天気を予測するだけでなく、現在進行中の作業をどこまで進めるべきか的確な情報を提供してくれる。

ほかにも設計図面作成においては、何パターンも作成するのは熟練の設計者でも非常に時間がかかるが、面積や目的・予算などを入力することでAIが何百通りもの設計図面を瞬時に提供することができるだろう。また将来的にはヘッドマウントディスプレイは一種のセンサーとなり、ユーザーの好みを把握することができるようになり、何百もの設計図面をVR内でリアルに体験させ好みを把握することで、最適な図面作成の精度を上げることも可能だろう。人口減少・匠の技の継承など日本が抱える近い未来の難題に立ち向かうべく、既にVRとAIの連携も視野に入れた未来を構想しているという。

日本だけでなく、世界からも熱い注目が注がれる彼らの取り組みを支えるべく、HPは今後もサポートを続けていく。

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【Movie】SYMMETRY Point Cloud

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