2020.03.19

AI・スマートシステムが変える小売店の形 「OPTiM INOVATION 2019」レポート

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2019年10月24日・25日、 AI・IoTソリューションの開発を行う株式会社オプティムが、同社初となるプライベートイベント「OPTiM INNOVATION 2019」を開催しました。同イベントでは様々な業種のリーダーが集い、"イノベーション"をテーマとしてAI農業の未来、AIカメラを活用したデータ解析、IoTが支える拡張頭脳と先端医療技術など多くの講演が行われ、AI・IoTを用いた今後のビジネスモデルを学べる場となっていました。

その講演のうち、AIとIoT を用いることで実店舗のあらたな活用にチャレンジされている『株式会社蔦屋家電エンタープライズ 商品企画部 商品調達Unit 木崎大佑氏』の講演および展示、株式会社MonotaROの展示についてレポートします。

ショールーミング化現象が進むなか、次世代型ショールームを目指す蔦屋家電+

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株式会社蔦屋家電エンタープライズ 商品企画部 商品調達Unit 木崎大佑氏
家電量販店に勤務後、2013年にカルチュア・コンビニエンス・クラブに入社。二子玉川 蔦屋家電の立上げに参画し、売場マネージャー、広報、マーチャンダイザーを担当。2018年4月より蔦屋家電エンタープライズにて蔦屋家電+の企画に携わる。

二子玉川 蔦屋家電のコンセプトは「ライフスタイルを買う家電店」。アート&テクノロジーというテーマのもと、店内では最新のテクノロジーに触れられるほか、美術館や博物館のように感性のあるものを展示し、まるで万博に来たと感じるような店作りがされています。

来客数は休日で2万5000人、平日は2万人。年間約760万人の来客数があり、家電販売店としては珍しく、女性比率が6割という特徴を持っています。

蔦屋家電のマーケティング戦略として大切にされているのは、とにかくユニークな商品を集めるということ。あの店にいったら面白いものがあるんじゃないか、とメディアが注目してくれて、メディアに取り上げられると顧客が足を運んでくれる。顧客が集まってくると今度はメーカーからイベントの依頼がきたり、ユニークな商品を持ってきてくれるようになる――。

このサイクルを回してきたことが功を奏し、2018年には小売店を評価する“Global Innovation Award“にも選ばれ、現在は世界で戦える小売店と言える存在になっています。

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しかし小売店を取り巻く環境は悪化しています。現在日本には100万店ほどの小売店がありますが、年間5000店ずつ閉店していっているのが現状です。同時にECストアは同じ数量で伸びを見せています。

この一つの要因はショールーミング化現象。小売店で商品を見て、ネットで買う消費者が増えているからです。

このままEコマースが発展すると共にリアル店舗は縮小していくのかというと、そうとも限りません。アリババ社の創設者であるジャック・マー氏は、2016年に時点で純粋なEコマースは、今後10年20年で消滅すると言っています。なぜでしょうか。

これはEコマースの成長があまりにも急速すぎて、消費者の数を上回ってしまうから、だそうです。

そこでジャック・マ―氏は、アリババを成長させるためにスーパーマーケットを作りました。日用品や家電製品だけではなく、生鮮食品もアプリで決済できるスーパーマーケットです。商品のQRコードをアプリでスキャンすると、注文情報が店員に伝わり、その情報をもとに専用のバッグに詰め込んで発送するシステムをとっています。また魚介を購入すると、フードコートで調理してもらうこともできます。

お客さまに新たな体験を提供することで、Eコマースのあらたなフィールドを作ろうとしているのです。

日本においても、新しい小売店運営にチャレンジしている企業があります。その1つがGUです。GU STYLE STUDIO原宿店は、店内で商品を購入できません。あくまで試着できる場となっています。商品のバーコードをアプリで読み取るとお気に入りに登録されるので、本当に気に入ったならあとからアプリ経由で購入できる。また店内では自分のアバターを作り、そのアバターにバーチャル試着させるサイネージも導入しています。

このように、今後の小売店は商品を、そしてブランドを体験してもらうための場となっていくのかもしれません。

蔦屋家電+は、世界中のユニークなプロダクトに触れることができて、作り手とコミュニケーションをとって製品開発に参加できる、次世代型ショールームです。開発中の商品やクラウドファンディング中のプロダクトが並べられ、触れられるのが特徴です。

メーカーにとってはプロモーションの場かつマーケティングの場として活用されます。設置されたカメラから取得した画像をOPTiM AI Camera for Retail CE を用いて解析させることで、マーケティング活動に役立つデータ(来店客が製品の前に立ち止まった滞在時間や顧客属性)を個人を特定できないデータに変換・収集し、出展したメーカーにフィードバックします。出展者ほぼリアルタイムにデータを閲覧することができます。

またスタッフとの会話の中で生まれる来店者の言葉には、商品開発の役に立つ様々なヒントなど、メーカーにとって有益な情報がたくさんが埋もれています。いままでの小売店はこのデータをすべて捨ててきていました。蔦屋家電+では、展示している製品への質問や要望などお客様のご意見をスタッフが集約し、出展者にフィードバックします。

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どれくらいのデータが取れるのか。計測によると、30日で7000件の製品の前に立ち止まった方の属性データと、50件ほどのご意見のデータがとれたそうです。

もちろんプライバシーにも配慮されています。OPTiM AI Camera for Retailは取得したデータを0.6秒で個人を特定できないデータに置き換えて、外部でも流用できるデータに整形します。もちろん店頭では顧客に対して分析を行っていることは明示されています。

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ヒートマップ表示で人気の高いプロダクトを見極める

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OPTiM INOVATION 2019の展示ブースにおいて、蔦屋家電+が導入しているOPTiM AI Camera for Retailのデモも拝見しました。展示商品の前にはタブレットが設置され、サイネージとして使うと同時にタブレットのカメラがお客さまの姿を捉え、ワイヤレスで映像データをワークステーションに転送します。同時に店内全体を映すIPカメラの映像もワークステーションに届けられます。

データを受け取ったワークステーションは、個人を特定するデータ部分を0.6秒で破棄。インターネットを通じてクラウド上のOPTiM AI Cameraに整形後のデータをアップロードして分析。外部からでも蔦屋家電+店内の状況を見守れるシステムになっていました。

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オプティム増田氏によれば、「お客さまの属性、年代の取得から、動線・対流分析によるヒートマップ作成が可能です。また不審挙動検出機能を活用することで、防犯セキュリティを高めることも可能です」とのことでした。

会場内に設置してあるモニターには、展示物に立ち寄ったお客様の情報がリアルタイムに映し出されていました。どの展示にどれくらいの人がどれくらいの時間、さらには属性や年代まで。これらの情報が分かれば展示物のレイアウトやそれこそ取り扱う商品まで、正確な情報を基に正しい判断を行うことが可能になるでしょう。

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ネットとリアルの融合を目指した無人AI店舗「モノタロウAIストア」

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Eコマースの顧客にとって配送時間は重要な視点です。従来の大型配送センターという集約型の物流方式では、顧客の利便性を追求すれば、どうしても配送コストの増大を防ぐことが難しくなってしまいます。顧客の利便性向上と配送コスト低減という2つの課題に対して株式会社モノタロウがチャレンジしたのは、ネットと実店舗の双方のメリットをかけ合わせた無人店舗の仕組みです。

「OPTiM AI Store」を採用し、佐賀イノベーションパークに生まれたモノタロウAIストア。本物の店舗が再現された展示ブースで、購入を体験してみました。まずスマートフォンの専用アプリを起動すると、アプリ画面に入店用のコードが表示されます。それを入り口に備わったスキャナに読み取らせることでゲートが開きます。

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商品棚をめぐり欲しい商品を見つけたら、スマートフォンのカメラでバーコードを読み取ります。すると専用アプリのカートに商品が追加されます。すべてのほしい商品を読み取ったら、決済ボタンをタップして事前にECサイトで登録済みのクレジットカードで決済完了。最後に、画面に表示されたコードを出口のスキャナに読み取らせて、ゲートを開けて退店します。
一連の流れは非常にスムーズに行うことができ、ストレスなく無人店舗での買い物を体験することができました。今後人手不足が予想される小売市場で、大いに活躍されることが期待できそうです。

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なお実際のモノタロウAIストアには、5台のカメラ を設置し,
OPTiM AI Cameraで解析しています。入店者の管理および属性検知のために使っており、このうち3台は店内の全体を捉えられるように設置し、1台は入り口ゲート、もう1台は出口ゲートをチェックします。

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説明していただいたオプティム増田氏いわく、「サイネージ連携や商品レコメンドも行えます。セキュリティに関してはモノタロウIDで入店者の情報を取得していますが、今後はAIカメラが棚の状況を把握して、決済内容との整合性を取ったり、顔認証による入退店制御と店内行動情報を紐付けたりすることも考えています」
さらに「導入コストも内容によって異なりますが、一般的なシステム導入などにかかるような数千万円というような規模ではなく、条件によっては非常に安価に導入をすることが可能です。まずはどのようなことがやりたいかご相談いただければと思います。」とのこと。

今後街中でモノタロウAIストアの仕組みを活用した無人店舗 が活躍する日も遠くなさそうです。

テクノロジーが実現する新しい小売店の形

"イノベーション"をテーマにAI・IoTを用いた今後のビジネスモデルを提示した「OPTiM INNOVATION 2019」。
中でもAIを使った新しい小売店の形を象徴する2つの取組みをご紹介しました。

モノタロウAIストアの事例では、小口取引と配送コストの問題を解消し、ユーザー体験を向上させる方法として、小売店の次の可能性を感じることができます。また、蔦屋家電+の事例では、ショールーミング化という市場変化に対する一つの答えとして、店舗の存在意義を定義し直すという気づきを得ることができました。
社会環境や市場変化に基づくビジネス課題に対し、AIをはじめとしたテクノロジーでどのように応えていくのか、その大きなヒントを得ることのできたイベントでした。

モノタロウAIストアと蔦屋家電+のシステムを支える
HPワークステーション


AIカメラが取得したデータは、それぞれの現場に設置されているHPのワークステーションによって解析が行われています。

使用されるワークステーションは、AIカメラが2台であれば小型な筐体強力なCPUとGPUを搭載可能なHP Z2 Mini G4 Workstation、5~10台であればミドルレンジの安定性の高いHP Z4 G4 Workstation、10~20台ならCPUを2枚搭載可能なHP Z6 G4 Workstationを用いるとのこと。それぞれ、必要な処理を行うために最適なCPUとGPUの組み合わせで構成されています。

複数のカメラ画像を、ネットワークを通じて転送することは現実的では無いため、必然的にエッジ側でAI処理することが必須となります。店舗での人物認識を高精細のカメラ画像に対して、高いフレームレートで行ったり、プライバシーの面からも、個人が特定できる画像データを破棄し、その場で、属性データを作成し、クラウド側に送信するなど高度なAI処理を短時間で処理できるエッジコンピューティングが必要になります。さらに、長時間の安定稼働、かつ高速演算性能を求める今回のようなユースケースでは、安定性の高いコンピューターが必要になります。HPのワークステーションはAIストアに求められるエッジコンピューティング環境を実現するためのベストな選択となっています。

『OPTiM AI STORE』について詳しい資料はこちら

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