2022.01.31
我が国企業の海外展開支援をその事業の一つとしている独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)。企業の海外展開支援を強化する一環として、羽田空港第3ターミナルで訪日外国人客向けの特設会場を設け、日本の伝統工芸品をはじめとする商品を販売するテストマーケティングを実施。来場者の性別・年代・棚前での行動分析データを収集するべく「OPTiM AI Camera」を導入した。なぜJETROがこうした取り組みを実施することになったのか、またOPTiM AI Cameraにどのような期待を寄せたのかなどについて聞いた。
日本貿易振興機構(JETRO)デジタル貿易・新産業部 デジタルプロモーション課 課長代理 吉田暢氏(右)/押切啓介氏(左)
経済産業省所管の独立行政法人として、JETROは様々な事業を展開している。その中の一つに「中堅・中小企業の海外展開支援」がある。今回の取組を推進したのは、デジタル貿易・新産業部だ。
JETROは、これまで国内事業者の海外展開の足掛かりをつくるべく、支援の一環として国内外での商談会や展示会の開催や、バイヤーと企業の個別マッチングなどに尽力してきた。しかし、同時に課題も感じていたという。デジタル貿易・新産業部 デジタルプロモーション課 課長代理の吉田暢(よしだ・のぶる)氏は次のように語る。
「使い道が分かりやすく買いやすい価格帯の一般商材であれば、カタログベースでも商談が成立することがあるのですが、伝統工芸品や付加価値の高いデザインの雑貨はその価値を伝えるのが難しいことが課題でした」(吉田氏)
「たとえば、かつてから海外に輸出していたような日本の伝統的な製品について、輸出実績が近年下降傾向にあったものがあります。それは、長年にわたり培われてきた確かな技術や造り手のこだわりがある一方で、製品がマーケットのニーズを正確に捉えられていないことがひとつの原因ではないかと考えられています。つまり、現代の海外の人々のライフスタイルに合わせた製品の提案が十分ではなかった、ということです。では、どのような商品だったら彼らのライフスタイルに取り入れてもらえるのか。そのことを踏まえた上で、製品開発、パッケージング、あるいは売り場でのプレゼンテーションといったことを考えることが必要ではないかというのが、私たちが持っていた課題認識でした」(吉田氏)
そうした課題に取り組むべく、訪日外国人客が多く来場する羽田空港第3ターミナル出国エリアにおけるテストマーケティングを企画。JETROが日本製で高付加価値な工芸品、日用品、生活雑貨等の生産・販売を手掛ける事業者を募り、JETROの協力先である(株)羽田未来総合研究所が店舗の設計・運営を担当した。かくして「Essence of Japan –Mastery Collection- HANEDA and JETRO creation」として、4週間のテストマーケティングが実施された。具体的な内容は次の通りだ。
「商品棚に設置したタブレット端末のカメラを利用して、各棚前の来店者数、来店者の属性(性別・年代)および滞留時間(秒単位)を計測。来店者の数と滞留時間の長さを商品への関心度合いとして推計します。また、どのような国や年齢層の来店者に人気があったか、といった傾向を取得。
さらに、店舗内を俯瞰するネットワークカメラで、来店者の店内動線を把握し、来店者が購入を決定するまでの過程で、他のどの商品と比較していたかという消費者動向を定量化するといった内容です」(吉田氏)
羽田空港第3ターミナル出国エリア内にて実施。海外やインバウンド客向けの販売を希望する事業者を募り、全国各地で作られた日本の伝統工芸品を販売した
これまでに、羽田空港でのテストマーケティングは計2回実施しているが、1回目の結果を踏まえてさらに掘り下げた来場者データの取得への挑戦を決断した。
「1回目はデジタルサイネージを手掛ける企業にご協力いただいて、タブレットにコンテンツを流しながら内蔵カメラで来場者の属性を取得する方法を採りました。しかし、これは私どもの反省なのですが、棚前に来た人の情報を取ることばかりを考えていたので、その人が次にどこへ向かったのか、会場をどのように回っているのかという情報は分かりませんでした。(吉田氏)
この反省を踏まえて、2回目は来場者の店内行動を自動的に分析できる技術を持つ企業に依頼したいと考えたという。そして、複数社から選ばれたのがOPTiM AI Cameraを提供しているオプティムだった。
「1回目は年代・性別・棚前滞在時間を計測しましたが、2回目は来店者の『より強い興味・関心』をもう少し詳細に掴みたい、店内や棚前での行動詳細データを取りたいと考え、新技術の活用を検討していました。そこで、数社からお話をお聞きしたところ、オプティムはわれわれの取組に強く共感してくださり、また開発をチャレンジだと捉えてくれたことから、細かい要望にも柔軟に対応していただけました」
日本貿易振興機構(JETRO)デジタル貿易・新産業部 デジタルプロモーション課 押切啓介氏
オプティムとの取組では、発注者と受注者という関係性以上のパートナーシップを築けたと吉田氏は振り返る。
「たとえば、実証実験段階の新技術については、私どもとしては100%の精度でなくてもよいとお伝えしていたのですが、想定した以上にしっかりとした機能を準備いただけました。オプティムはこちらの意向を汲み、難しい内容であってもなんとか解決に向けて前向きな提案をしてくれるので、私どもとしても気兼ねなく相談することができました」(吉田氏)
また、吉田氏とともにテストマーケティングの運営を担当した押切啓介(おしきり・けいすけ)氏は、オプティムへの評価を次のように語る。
「羽田空港のテストマーケティングはJETROの中でも注目度が高く、1回目の結果を社内で報告した段階から、もっとこういうことはできないのかといった声が多く挙がっていました。そのため2回目の実施に当たって協力いただくベンダーに求めることも増えていきました。そうした内部の事情もあったことから、『できない』ではなく、どうやったら実現できるのかを一緒に考えて提案をしてくださったので、結果として組織内におけるプロジェクト全体への高評価へとつながりました」(押切氏)
OPTiM AI Cameraの導入によるデータ収集は、9割成功だったと声を揃える吉田氏と押切氏。得られたデータは出展した事業者に報告書として還元されるが、オプティムが提供するUI上でデータが自動的にグラフ化されているため、データ加工の労力も軽減できるという。さらに、そのデータの活用についても期待が持てると吉田氏は話す。
「現場にいると、どの商品が注目されているのか肌感覚で分かったような気になります。しかし、それはあくまでも肌感覚でしかないため、裏付けとしては弱いものです。その点、OPTiM AI Cameraによって集まったデータに基づいてみると、『この商品への興味・関心度が高かった』と現場担当者の肌感覚を数量的なエビデンスで証明することができます。人間が目で追える範囲には限界があるので、それを補完してくれるデジタルデータはとても有効だと考えています」(吉田氏)
また、注目と売上の関係を見ることによって、企業が取るべき戦略が見えてくると吉田氏。たとえば、注目度は中程度だったが売り上げは堅調だった商品は、商品そのものには力があると考えられるので、注目度を上げるためのプロモーションに注力すればさらに売上に貢献するのではないかといった仮説を立てることができる。かたや注目は高かったが、売上が今一歩であった企業は高い注目度を具体的な購買につなげるための、より分かりやすい商品説明やライフスタイルに訴えるプレゼンテーションの工夫を検討してはどうか、といった考え方につなげることができる。
「従来のマーケティングでは、売れたか、売れなかったかだけの尺度しか持てなかったと思います。しかし、OPTiM AI Cameraを導入すれば注目度というもう一つの軸をあわせて検証できる。このことにこそ、デジタルマーケティングシステムを使うメリットがあると考えます」(吉田氏)
最後にオプティムへの期待について聞いた。
「JETROの他部署からもOPTiM AI Cameraを活用したプロジェクトを検討したいという声が挙がり、オプティムを紹介しています。これからもパートナーとして、さまざまな取り組みにご協力いただきたいです」(吉田氏)
「事業者の海外展開支援を念頭に置くと、なんらかの仕組みを活用して来店者の国籍を聞ける機能が備わるといいですね。国籍の情報があると海外バイヤーとの商談時にも強い説得材料になると思います。OPTiM AI Cameraによって得られるデータは、商品の価値の検証に役立つだけではなく、ひいては日本企業の可能性を広げることにつながるはずです」(押切氏)
ジェトロは2003年に設立されました独立行政法人です。 海外74カ所、国内48カ所のネットワークをフルに活用し、海外ビジネス情報の提供、中堅・中小企業等の海外展開支援、対日投資の促進などに取り組んでいます。
URL:https://www.jetro.go.jp/
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