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2021.03.02

コロナ禍で浮き彫りになったクリエイティブ企業の課題
経験をポジティブに生かすためにできること

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 新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業で在宅勤務の導入が急務になっている。それは社内にクリエイターを抱える企業も例外ではない。専門性の高い機材やクリエイターの技能、クリエイター同士のコミュニケーションが一層求められる業種だが、彼らはどのように難しい局面を乗り越えているのか。

 今回は家庭用ゲームソフトやVRゲームなどを手掛けるヒストリアの佐々木瞬さん(代表取締役)と、日本HPでワークステーション事業をリードする大橋秀樹さん(ワークステーションビジネス本部 本部長)との対談を通じ、コロナ禍におけるクリエイティブ企業の状況を追った。

コロナ禍で直面したビジネス上の課題

 ヒストリアは、ゲーム制作の土台となるソフトウェア(ゲームエンジン)の「Unreal Engine」を専門とするソフトウェアデベロッパーだ。ゲーム事業は主に家庭用ゲーム、アーケード、VRが3本柱で、アーケードゲームの「ジョジョの奇妙な冒険 ラストサバイバー」や、VRコンテンツの「アスレチックVR PAC-MAN CHALLENGE(パックマンチャレンジ)」など、数多く手掛けてきた。

ヒストリア公式サイトより

 現在は自動車や建築、テレビ番組で使われるCG映像などをUnreal Engineで制作するといったエンタープライズ分野にも事業を拡大している。

 ヒストリアの従業員は出向スタッフなどを含めて65人。コロナ禍では一時的に全社フルリモート体制に移行していた。

―― いつフルリモート移行の決断を下したのでしょうか

ヒストリアの佐々木瞬さん
(代表取締役)

ヒストリア・佐々木氏 弊社が完全リモートになったのは、緊急事態宣言が発出される直前の2020年4月第1週でした。私の知り合いも新型コロナを患うなど、従業員のことを考えると「これは無理だな」と。そこで会社のPCを自宅に持ち帰ってもらって仕事を継続させました。

日本HP・大橋氏 当社の営業担当も大変だったようです。4月になって緊急事態宣言が突然出てしまったので、多くの顧客から慌てて「ノートPCを増強したい」「リモート環境で(新たなデバイスを)評価させて欲しい」といった声が寄せられました。PCの調達が間に合わず、ヒストリアさんと同様に会社のデスクトップPCを家に送ったという話も多く聞いています。

佐々木氏 ここではセキュリティ対策が課題となりましたが、もともと数名がVPNを導入していたので、それを広げる形で展開しました。

―― フルリモート環境での工夫はありましたか

 佐々木氏 在宅ワークでも業務における指標や考え方は出社時と同じで、「自宅にある会社のデスクに座った(環境を再現する)」ということをコンセプトとしました。朝の点呼も行いましたし、勤務時間も変わりません。チームごとに音声でやりとりできるオンラインの常設部屋を作り、そこに入って仕事をする。カメラも基本はオンにしている状態で、オフィスにいる体験をなるべく再現しようと注力しました。

 大変だったのはVRコンテンツの制作チームですね。何人かはVRの機材を持ち帰りましたが、構成する環境は大掛かりですし、クライアントにコンテンツを見せてのチェックもできませんでした。また、VR以外でも通常は同じ部屋でチェックしていたのですが、リモート環境では(画面共有の)フレームレートが出なかったり共有する画像などが劣化したりなど、単純な画面共有では成果物のチェックにならないのです。

日本HPの大橋秀樹さん
(ワークステーションビジネス本部
本部長)

大橋氏 限られたネットワーク帯域の中で3Dデータにリモートアクセスするにはどうしてもいくつかの制限が出てきます。

 描画のクオリティーを優先するとネットワークへの負荷が高くなり3Dモデルをスムーズに動かせず遅延が発生してしまいます。逆に3D設計の場合は描画のクオリティーを落としても良いので遅延なく快適なレスポンスで3Dモデルを動かしたいニーズが高いです。

 同じ3Dデータへのリモートアクセスでも用途によってさまざまなニーズがありました。

佐々木氏 また弊社は多くの場合、ゲーム制作の最初のコンセプト設計など、上流から関わっています。プロジェクト初期はプロジェクトメンバー同士や他の制作会社とディスカッションすることが多くあり、ネットワーク越しではスムーズにいきませんでした。当時のプロジェクトでは特に、十分なコミュニケーションが取れずチームリーダーが疲弊しました。新人教育についても後手に回ってしまいました。

 こうして3カ月程度はリモートワークを行ってきましたが、いろいろ限界に来ており、成果物のクオリティーにも満足できなくなったため、7月にオフィスでの仕事へと戻しました。

―― その後はどのように業務を続けられたのですか

佐々木氏 7月にオフィスへ戻ってきた段階(出社体制に復帰)で考えたのですが、単純作業の場合は在宅でも作業に集中できるので問題ないことが分かりました。一度試した環境を無くしてしまうのはもったいない。そこで水曜日は自由出社日という制度を設けました。

ヒストリアの社内風景

 自宅から業務を行える体制としてリモートデスクトップ環境も整えました。どうしても操作面でのレスポンスは落ちてしまうのですが、会社のPCにアクセスできるという点が重要で、必要なファイルをローカルにダウンロードする必要が無くなるなど、セキュリティ的には十分だと感じています。

―― ヒストリアさんは意外と柔軟に対応できているように感じます

佐々木氏 例えばVPNを使った社外からのアクセスは、弊社でも育児休暇や産休で使った事例が2件ほどありました。そのときは簡単に整えただけでしたが、それをスケールアップすることで、今回のコロナ禍を乗り切りました。図らずも多様性に備えていたおかげで、受け身が取れたという状況です。

 今回は週1の自由出社日を設けましたが、規則やコミュニケーションの手法を含め、どこかに“解”を持っていたいと考えています。コロナ禍をポジティブに捉えるなら、フルリモート環境に移行してみて、何ができて何ができないのかを改めて実証実験できました。

 その上で、会社に戻すべきものを取捨選択したのが現状です。出社が困難なスタッフは引き続きリモートで作業を行っていますが、コロナ禍以前に比べてセキュリティ対策が施され、会社の制度が整った状態となりました。今回の経験の中で残せる資産となったと考えています。

―― 今後も新型コロナの影響が続きそうです。クリエイター企業としてどのように歩んでいこうと考えていますか

佐々木氏 業務が決まっていれば個人としての作業はやりやすい。一方で複数の職種がディスカッションを通じて新たな価値を作っていくには、顔を合わせたコミュニケーションが必要です。それをうまく組み合わせる必要があると考えています。

 今はリモートワークでコミュニケーションの総量が落ちていると聞きます。それに加え、どのような仕事で結果を出すかというジョブ型雇用が求められていることも合わせて語られることが多いですね。そんな時期がついに来たかと思っています。

 一般的な話として、会社としては全員平等にディレクターやリーダー職、何かのスペシャリストになって欲しいと同じ期待をかけるものの、仕事をしていくうちに適正によって差が出るのは仕方ありません。そんな中での選択肢として、ジョブ型雇用がある。これを選ぶならリーダーを目指さなくていい代わりに評価もそれに見合ったものになります、といった制度です。いままでジョブ型雇用のシステムをキャリアパスと業務内容の違いと捉えていましたが、働き方と合わせて考える時期が来たのかなと思っています。

 一方、弊社としては上流工程の割合を多く担当したいという方針のため、ほとんどのメンバーにはリーダー職や何かのスペシャリストになってもらえることを期待して雇っています。だからこそパートナーである多くの協力会社さんと一緒に作っていくという開発スタイルをとっていまます。ここが悩ましい点です。まだ手探りの中ですが、リモートのためのツールがそろいつつある現代の中で、改めて良いコンテンツを作るには何が最適かをゼロベースで突き詰めて考えられれば、未来につながる資産が構築できると思っています。

大橋氏 コロナ以前から人材を確保するために、働き方改革の検討がされてきたと思います。

 子育てや介護など、さまざまな理由で出社が制限される従業員をどうやってつなぎとめて人材として活用していくのかが課題とされてきましたが、コロナによって在宅勤務、リモートワークが一気に進んだことで人材確保・人材活用の道筋も見えてきたのではないでしょうか。この課題はクリエイター業界だけでなく全ての業界で考えていく必要がある課題だと感じています。

 当社も今はほぼリモートになっています。今後はオフィスの在り方自体を再検討する企業も増えるかもしれませんね。

―― いずれの課題について、PCメーカーとしてどのように取り組んでいけると考えていますか

大橋氏 リモートワークの状況で仕事を進めるにはPCが不可欠です。今はコロナ禍で需要が高まっており、供給が追い付いていない状況でもありますが、ハードウェア側のスペックを上げるだけではなく、リモートで働く人と会社をどうやってうまくつなげられるか、うまくつなげるための使い方をサポートするツールが必要だと考えています。そのあたりの進化がPCメーカーに求められていると実感しました。

困難を前向きに捉えること

 今の状況をポジティブに捉え、ヒストリアのようにリモートワークを働き方のバリエーションとして今後も取り入れていくと前向きに動いている企業も出てきた。

 社会を混乱に陥れたコロナ禍によって、緊急的な対応を強いられた企業や組織は多いが、これを機に、オフィスでなければできない仕事と在宅でも続けられる仕事の単純な切り分けだけでなく、「オフィスにあるPCやワークステーションを自宅から活用できれば、在宅で十分できる仕事」など、多角的な視点で仕事を切り分けて考えるチャンスでもある。

 特にクリエイティブな企業においては、ノート型のワークステーションがあれば全ての作業が可能なのか検討する必要があるだろう。長時間にわたるレンダリング、4Kや8Kを超えるような高解像度の画像や動画制作、VRコンテンツ制作等、本来はデスクトップワークステーションで安定的に作業を進めたいのではないだろうか。在宅勤務とハイスペックなデスクトップ環境を結び付けるためにも、高品質でセキュリティも担保されたリモートアクセスツールを導入するという手もある。

 日本HPのワークステーション「HP Z Workstation」シリーズは、プロフェッショナル向けのリモートアクセスツール「ZCentral Remote Boost」を無償で利用できる。このツールは、リモートアクセス環境下であっても描画のパフォーマンスを重視した高圧縮技術などによって、3DCGや映像編集など負荷の高い作業にも対応しやすいのが特徴だ。

 ワークステーションを使うクリエイティブな環境を第一に考え、4K解像度やマルチディスプレイ環境、タッチ、ジェスチャー操作などにも対応。さらに同時に複数のユーザーが1つのワークステーションにアクセスして、同じ画面を見ながら共同作業することも可能だ。

 これを活用すれば、オフィスに設置したワークステーションのマシンパワーをどこにいても発揮させることができるようになる。またこのツールは画面上のピクセルデータのみを暗号化して転送するため、データの流出が無く、高いセキュリティを担保してくれる。ニューノーマルな働き方を検討する上で、強力な武器になるはずだ。

 ツールを使う側、提供する側も、この困難を乗り越えようとさまざまな取り組みを進めている。あなたも、あらゆる可能性を追求して前向きな一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

【本記事は2021年1月28日 、ITmedia NEWS SPECIAL に掲載されたコンテンツを転載したものです】

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