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2020.09.24

クリエイター業界でもテレワークは実現できる?コロナ禍を在宅勤務で乗り切ったサイバーコネクトツーの場合

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 新型コロナウイルスのパンデミックは、ゲーム業界のビジネスにも大きな影響を与えている。政府の緊急事態宣言による外出自粛要請でソフトウェアの開発スケジュールが軒並み遅延する中、在宅テレワークに切り替えて事業継続を果たしたゲームメーカーもある。そんなメーカーの1社、サイバーコネクトツーに当時の事情を聞いた。

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写真右からサイバーコネクトツーの宮崎太一郎氏(取締役副社長)、福元俊介氏(開発支援課 サブチーフ)

働き方改革の取り組みがコロナ禍の初動に奏功

 コロナ禍の影響は、ゲーム業界にも前代未聞の事態をもたらしている。いわゆる“巣ごもり需要”という追い風に乗って記録的な増収増益を果たしたゲームメーカーがある一方、アミューズメント施設向けの業務用ゲームを取り扱うゲームメーカーは大幅な減収減益に陥るなど、明暗を分ける結果となっている。

 だがコロナ禍の影響範囲は、各社の業績にとどまらない。半ば強制的に在宅勤務に切り替えざるを得なかった状況の中、テレワークによるゲーム開発環境の整備が追い付かず、新作タイトルの開発スケジュールに大幅な遅れが生じたケースも多発している。

 そうした中、数は少ないながらも在宅テレワークによる影響を最小限に抑えられたゲーム会社もある。「NARUTO-ナルト- ナルティメット」シリーズ、「.hack」シリーズ、「ドラゴンボールZ KAKAROT」などの人気ゲームタイトルを手掛けるサイバーコネクトツーは、コロナ禍を在宅テレワークでうまく乗り切った企業の一つだ。

 サイバーコネクトツーはどのようにしてクリエイターの在宅テレワーク環境を成立させたのか。同社取締役副社長の宮崎太一郎氏は、早い時期から柔軟な働き方の実現を目指して在宅テレワーク環境の整備を進めてきたことが功を奏したと話す。

 「当社が働き方改革に取り組み始めたのは2017年のことです。出産を控えた女性社員から『子育てをしながら在宅勤務で働きたい』という声が上がったことがきっかけでした。そこから少しずつ在宅勤務制度やテレワーク環境の整備を進めてきました。このような経験があったので、コロナ禍によって在宅勤務に切り替えた際の初動がうまくいきました」(宮崎氏)

 宮崎氏によると、サイバーコネクトツーがコロナ禍によるテレワークを実施したのは3月半ばのこと。カナダ・モントリオールにある同社スタジオからの電話がきっかけだった。

きっかけは1本の電話「カナダが大変な状況にある」

 「コロナ禍によってカナダは大変な状況にあり、一刻も早く在宅勤務に切り替えたいという報告が現地スタッフからありました。これはまずいぞと、モントリオールのスタジオは、その日のうちに全社員に対し在宅勤務を指示しました。国内の福岡本社、東京スタジオについては、政府の緊急事態宣言発出に合わせて在宅勤務に切り替えました」(宮崎氏)

 在宅勤務に切り替えるにあたり、宮崎氏が悩んだのはテレワーク環境をどうするかという点だった。ゲーム開発現場では処理負荷の高い作業が多く、高性能なワークステーションは欠かせない。しかしスタッフの自宅に機材はないので在宅勤務中は開発作業が止まってしまうことになる。そこでモントリオールの現地スタッフには、スタジオで使用しているワークステーションなどの機材を自宅に丸ごと持ち帰ってもらったという。

 同様に日本のスタジオでも必要な機材を自宅に持ち帰るという対応が考えられた。しかし、“社内ネットワーク上にある機密情報へのアクセスをどうするか”というルールが明確化されておらず、実現が難しかったという。

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 その解決の糸口として用いられたのが、社外のPCから社内のワークステーションにアクセスして遠隔操作する手法だった。これならば必要なデータを外部に出すことなくアクセスできる。

 このリモートアクセスに使われたツールが、日本HPが提供する「HP ZCentral Remote Boost」(旧HP Remote Graphics Software)だった。

 サイバーコネクトツーでネットワークのインフラまわりの整備などを担う福元俊介氏(開発支援課 サブチーフ)は次のように説明する。

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 「当社では長年にわたって日本HPのワークステーション『HP Z Workstation』を採用しており、現在は開発スタッフが使用する作業用ワークステーションおよびソフトウェアのビルドサーバとして約230台の『HP Z4 G4 Workstation』が稼働しています。コロナ禍になる以前から、働き方改革を推進するためにHP製ワークステーション専用のリモートアクセスツールであるZCentral Remote Boostを使う環境が整っていました」(福元氏)

 福元氏によると、当初はWindowsに標準搭載されているリモートデスクトップ機能を使おうとしていたという。だが、クリエイティブ作業で重要なグラフィックス表示のフレームレートやパフォーマンスのチューニングにも限りがある。そこでワークステーションのリモートアクセスに特化したZCentral Remote Boostの採用に至った。

 日本HPのワークステーション「HP Z Workstation」に無償提供されているZCentral Remote Boostは、リモートアクセス環境下であっても、描画のパフォーマンスを重視した高圧縮技術などによって、3DCGや映像編集など負荷の高い作業にも対応しやすいリモートアクセスツールだ。

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 ワークステーションを使うクリエイティブな環境を第一に考えているため、4K解像度やマルチディスプレイ、タッチ、ジェスチャー操作への対応、同時に複数のユーザーが1つのワークステーションにアクセスして、同じ画面を見ながら共同作業するといったことも可能だ。

 ネットワーク帯域幅に合わせたハードウェアアクセラレーションや、ネットワーク環境の解析、パケットロスの改善など、操作の安定性なども追求している。ZCentral Remote Boostは「HP Z Workstation」に無償提供されており、追加コストなしで使用できるのも強みだ。

 「リモートアクセスツールの活用を社内に提案するにあたり、当初はコスト面で実現が難しいかもしれないと考えていました。しかしZCentral Remote Boostでは追加コストがほとんど発生しませんでした。(導入済みのシステムといった)今までの経験を生かすことができて良かったと思っています」(福元氏)

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在宅勤務の様子。ZCentral Remote Boostによりリモート環境下でも高いパフォーマンスを実現できているという。

在宅勤務中に浮き彫りになった新たな課題

 ZCentral Remote Boostにより在宅勤務に切り替えてからも事業を継続することができたサイバーコネクトツーだったが、テレワークによる業務遂行を続けていくうちにさまざまな課題が浮き彫りになっていった。

 「最初にテレワークで問題に挙がったのが各スタッフ自宅のネットワーク環境でした。スタッフによってはインターネット接続環境が十分ではない場合があり、処理負荷の高い作業が行えないといった問題も発生したのです。この問題を解決するために、機密情報の取り扱いについて委託元とルールを決めた上で、日本国内でもスタジオにあるワークステーションと機材を自宅に持ち帰らせることにしました」(宮崎氏)

 また、運用上の課題も見えてきたという。

 「最大の課題は、スタッフ間のコミュニケーションでした。当社ではMicrosoft Teamsをコミュニケーション/コラボレーションツールとして導入していますが、十分に活用できているとはいえない状況でした。基本的にチャットを使ってコミュニケーションを図るようにしましたが、不慣れなこともあり作業に無駄が生じたり、行き違いが発生したりといったことも多々ありました」(福元氏)

 コミュニケーションについては、さらに深刻な問題にも直面した。

 「各スタッフとオンラインで面談したところ『1週間以上、誰とも会話をしていない』というスタッフが何名かいて、事の重大さに気付かされました。在宅勤務期間中はやむを得ず、朝礼時間を延長してスタッフ同士の雑談の時間に充てるようにしたものの、完全な解決策には至りませんでした」(宮崎氏)

 このような課題を根本的に解決できない限り、在宅勤務の完全実施は難しいと判断したサイバーコネクトツーでは、緊急事態宣言解除後に原則オフィス勤務に戻したという。

 「テレワーク環境でまったく業務ができないというわけではありません。むしろZCentral Remote Boostを使えば、思っていた以上にテレワークで対応できたと感じています。しかし、例えばゲームコンソールの実機を使わなければできない開発工程もあるなど、現時点ではスタジオで仕事をしたほうが効率的だと判断しました」(宮崎氏)

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Face to Faceのコミュニケーションを大事にする宮崎氏

重要なのは、効率よく作業するためのルールや仕組みづくり

 現在、サイバーコネクトツーでは、モントリオールスタジオの現地スタッフは在宅勤務を継続し、日本国内のスタッフにおいては事情により出社が難しい4、5人のスタッフのみが在宅勤務を実施している。

 ZCentral Remote Boostなどのツールの存在によって、在宅勤務の可能性を切り開いた一方で、新たに明らかになった課題もあった。しかし、同社は在宅勤務・テレワークの実施を諦めるという考えはない。

 将来もパンデミックや自然災害のような災禍に見舞われるおそれはある。さらに優秀な人材の雇用を確保するという観点からも、在宅勤務という柔軟な働き方の選択肢が今後も求められると認識しているからだ。

 「今回のコロナ禍では主に自宅のネットワーク環境のようなハード面の課題にぶつかりましたが、こうした課題はネットワークインフラやハードウェア/ソフトウェアの進化によっていずれは解決されるものと見ています。それよりも開発プロジェクトがどんどん大型化し、200人を超えるスタッフの分業化が進んでいる現状において、在宅勤務でも業務を継続するには、効率よく作業するためのルールや仕組みづくりが重要だと考えています」(宮崎氏)

 サイバーコネクトツーはこれらの経験を糧に、今後もテレワーク環境を充実させていく方針だ。同社はこれまでも在宅勤務・テレワークの環境整備に取り組んできたからこそ、コロナ禍においてもスムーズな対応を取れたといえる。

 社会の在り方が大きく変化しつつある中で、企業が導入するツールの選定はこれまで以上に幅広い視野が求められるだろう。リモートアクセスツール「ZCentral Remote Boost」が無償で使える「HP Z Workstation」は、クリエイターの柔軟な働き方を手助けする頼もしいツールになりそうだ。

記事制作:ITmedia NEWS編集部

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