2021.08.23

自動認識技術とデジタル印刷の掛け合わせで高付加価値商材を生み出す
株式会社サトーの取り組みに迫る

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 ㈱サトー(東京都港区芝浦、小沼宏行社長)は多彩な意匠性・機能性ラベルをラインアップし、ブランドオーナーの商品展開をデザイン段階から支援。2012年にデジタルラベル印刷機「HP Indigo WS6000」を導入以降、現在はグローバルで10台以上の「HP Indigo」シリーズを稼働させている。

 デジタル印刷の活用シーンと将来性、使用感などについて、グローバル営業本部製品統括の吉富秀樹氏と、サトーホールディングスのアジア・南米地域事業・海外プライマリー事業統括、和田啓孝氏にインタビューを行った。

サトー 吉富 秀樹 氏(右) サトーホールディングス 和田 啓孝 氏

HP デジタル印刷機
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―― ラベル事業のコロナ禍の動静から伺います

吉富 当社は食品やリテール、ロジスティクス、FA、ヘルスケアといったさまざまな分野に対して意匠性・機能性を備えたラベルを提供しています。昨年の4月は緊急事態宣言に伴う巣ごもり需要によって食品分野を中心にラベル出荷量は伸びましたが、5月の大型連休明けからは失速。直近では回復傾向にあり、2021年度のQ1は19年度の同期並みに需要が戻ってきました。プライマリーラベルのジョブの内訳に関しては、新商品というより定番品が求められ、新版が減少してリピート注文が増えている印象です。

 また、昨年は自粛傾向の中で販促関連のイベント・キャンペーンが控えられていましたが、現在は21年度下期に向けたご相談もいただいています。自動車や電機、化学分野といったマニュファクチャリング市場もようやく回復傾向となりました。

 昨年から継続してEC関連も大きく動いており、実店舗をメーンに商品を販売されていたお客さまがECにも注力しているのに対して、ウェブの施策に合わせたラベル製品を提案しています。

和田 サトーグループは26カ国に拠点を構え90カ国以上に対してビジネスを展開し、ラベル製造工場は15カ国に22カ所を設置しています。海外のプライマリーラベルの動向については、食品や飲料、製薬といったエッセンシャル企業のお客さまが多数いらっしゃいますので、ロックダウンなどの影響も軽微でコロナ禍でも堅調に推移しました。

―― デジタル印刷機を導入した経緯とは

吉富 2012年に電子写真方式のロールモデル「HP Indigo WS6000」を導入しました。当時、デジタル印刷の役割は、多品種小ロット・短納期の要望に対応するためだけのオンデマンド印刷に過ぎないという認識があったと思います。

 当社としてもさまざまなメーカーのデジタル印刷機を検証した結果、オンデマンド印刷だけではなく、高付加価値の印刷が実現できる機種としてHP Indigoに決めました。後に「HP Indigo WS6800」も新たに追加で設置するなどし、現在はグローバル全体で10台以上を稼働させています。

意匠性・機能性ラベルに デジタル印刷のメリット

―― デジタル印刷機の活用法について

吉富 当社の独自製品である剥離紙のない環境配慮型製品「ノンセパ」の印刷に活用しており、販促用のPOP用途などでCMYKと白に加え、オレンジやグリーントナーも使って高意匠性ラベルを製造しています。

 ニスの厚盛りや可変デザイン、さらにブラックライトに反応する不可視印刷といったサンプルを基に訴求し、引き合いが増加傾向にあります。ノンセパ自体もマイクロミシン加工を入れ、必要な分だけ手で切れるなど環境配慮と利便性を両立させている反響の大きな製品です。

 そのほか、キャンペーン用途の2層シールでもデジタル印刷を採用しており、サトーが積み上げてきた技術的なノウハウと、HP Indigoの印刷品質を組み合わせて製品を展開しています。

和田 日本とは若干規模感は異なりますが、海外でも小ロットの案件でデジタル印刷機を活用しています。グループ企業の創立50周年を記念した酒類のラベルなどで実績があり、ベースのデザインをHP Indigoで印刷した後、デジタル印刷に追従する後加工機によってニスや箔といった加飾を施すことで付加価値を向上。ブランドオーナーのかたがたとデザイン段階から相談し、多彩な後加工を行っています。

 日本ではなかなか見かけないデザインだと思いますが、ロシアで販売しているウォッカのラベルでは、商品名をニスの厚盛りで際立たせたユニークな見栄えとなっています。

―― HP Indigoの使用感について

吉富 導入当初は安定稼働させるまでずいぶん苦労したものの、今ではオフセット印刷並みの品質だとお客さまから評価をいただいています。一方で「デジタル印刷とは小ロット・短納期の印刷物をコストダウンするだけのもの」と認識されているかたもまだまだいらっしゃるため、デジタル印刷ならではの付加価値を訴求していかなければならないと感じています。

 これまでは包装資材部門のお客さまとお話ししていましたが、商品や販促の企画部門のかたがたをターゲットにデジタル印刷の付加価値を訴求しているところです。

和田 海外のお客さまもコンベンショナル方式と比較して色味などを懸念するということはなく、十分に品質を認めた上で、小ロットにマッチする機種としてHP Indigoを活用できています。

 同機で印刷した機能性ラベルの引き合いも増加しており、近年関心が高まっているデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を支援するような管理用途の可変情報ラベルも提案していければと考えています。

―― 引き合いの多い機能性ラベルは

吉富 昨年、国内でボリュームが多かったのは、単色のバリアブルデータの印刷です。プライマリーラベルの印刷に個体識別を組み合わせるケースではHP Indigoが有用で、ラベルにQRコードを印字して情報を付与するタギングの手段として、可変印刷を生かしています。ラベルを単なる包装資材だと捉えると印刷の品質やコストの話に終始してしまうので、プラスアルファーの価値を創出していかなければなりません。

 直近ではモノの情報の管理だけではなく、温度などモノの状態の管理に対するニーズが高まっています。RFIDも活用してログを取ることで、トレーサビリティーやマーケティングといったさまざまな用途でモノの状態のデータを活用することが可能になるのです。今後、ラベル自体がマーケティング施策に有用なツールになっていくのではないでしょうか。

HP Indigoのさまざまなオプションの利用も視野に入れ、新たな機能性を訴求するアプローチを進めていきます。

和田 HP Indigo WS6000の導入以来、グループ内で技術や活用法に関する知見を蓄積して市場開拓に取り組んできました。グローバルでも高意匠性をはじめとしたメリットが受け入れられています。多彩な加工技術も併せて、お客さまのニーズに応えていきます。

環境配慮型製品「ノンセパ」などでデジタル印刷を活用

可変印刷生かす活用法 環境対応の展開も視野に

グローバルで10台以上の「HP Indigo」シリーズ(右)を導入し追従する後加工機も併せ多彩な印刷物を製造している

―― 貴社におけるデジタル印刷の立ち位置・期待感などについて

吉富 現在、国内のプライマリーラベル売り上げの1割弱がHP Indigoによるもので、海外ではもう少しデジタル印刷による売り上げの割合が大きくなっています。同機はモノに個体識別など情報を付与する当社のビジネスモデルに対して、非常に親和性が高いと感じています。大量の可変データの扱いにはデータそのものの品質と信頼性に加え、印刷物と可変データを正確に一致させることが必要となりますが、当社はお客さまに安心を提供できような管理体制を構築しています。

 今後、キャンペーンをはじめさまざまな用途で可変印刷の市場は拡大していくことでしょう。消費者視点で考えてもワン・ツー・ワンのラベルへの注目は高まっていますし、市場ニーズへ柔軟に対応できることがデジタル印刷の強みだと捉えています。

―― HP Indigoに対する要望・改善点などはありますか

吉富 生産を阻害する要因を事前に排除できる予防保全機能もあると聞きますが、稼働を安定維持させていくための改善策に期待しています。現状に満足せず、さらなる生産性の向上、効率化の提案を受けて生産体制の改革を推進していきたいですね。

和田 グループ全体では、スマートファクトリー化も推進していく必要があると感じています。その中でHP Indigoが効果を示すことができるのかが重要です。印刷機単体だけではなく、印刷の前後のワークフローも効率化して、お客さまのシステムとの連携も図っていくなど、広い視点で革命を起こしていただきたい。スマートファクトリー化に欠かせない機種となれば、さらに活用シーンは拡大していくことでしょう。

海外でもユニークな意匠性を発揮して酒類などで採用

―― HP Indigoを活用した今後の施策・構想は

吉富 マーケティング要素を取り入れた提案を行うデザインプロモーションとの連携を図っていきます。商品パッケージを軸にマーケティング戦略・デザイン・印刷製造までをワンストップで提供し、お客さまの売り上げ増に貢献していく所存です。ウェブ・ツー・プリントをはじめとした効率化も検討して、より対応力を強めたラベル製造を目指します。

和田 一部の国や地域では、ブランドオーナーが非常に高い意識で環境対応に取り組んでいます。ロットにもよりますが、デジタル印刷自体が版レスに加え、刷り出しに要する時間とヤレの低減、在庫の削減による環境配慮型の製造設備として訴求できるのではないでしょうか。

―― 国内の環境対応の動向はいかがでしょうか

吉富 環境に対する要望は間違いなく増加しています。コロナ禍にあってもトーンダウンしておらず、SDGs対応がメディアなどで取り上げられていることによって一般消費者の関心も高まり、ブランドオーナー各社も本腰を入れて環境負荷を低減させる具体策を講じています。

 当社としても、環境配慮型の製品をPRしているところです。ノンセパは製造工程から剥離紙を使わないため原料となる木材使用量を節減し、剥離紙の焼却処理も不要なのでCO2排出量削減にも貢献します。また、減プラを実現する紙製の透明シール「エコラベクリア」についても、HP Indigoによる印刷適性を検証中で、グローバルでも展開できる製品だと考えています。

―― 貴社の今後の展望を聞かせてください

吉富 ワン・ツー・ワンの印刷物への対応やデザインプロモーションの推進を狙っていきます。デジタル印刷ありきというより、お客さまに対するさまざまな提案のひとつとして、HP Indigoによる付加価値を備えたシール・ラベルを提供していきます。あくまでもお客さまの要望が第一であり、ニーズにフィットする印刷方式・加工技術を組み合わせて展開していきます。

 昨年11月には本社を移転し、受付フロアにガラス・キューブ型のショールーム「S-Cube」を開設しました。

 サトーの主要5市場である「リテール」「フード」「マニュファクチャリング」「ロジスティクス」「ヘルスケア」に加え、「プライマリーラベル」「テクノロジー」「RFID」といった3つのテーマの展示スペースを設け、製品やソリューションを紹介しています。こうしたショールームなどを通じて、サトーの強みである自動認識技術とデジタル印刷やRFIDを組み合わせた提案を行ってまいります。

キューブ型のショールーム「S-Cube」を開設している

【本記事は、ラベル新聞が作成しました(ラベル新聞2021年8月15日号掲載)】

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