2020.05.22
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は、私たちの生活に深刻な影響をもたらしています。刻々と状況が変化する中、この困難な局面に立ち向かうために、いま私たちに何ができるのか――。
HPは、世の中の変化に合わせて人々の暮らしをテクノロジーで豊かにしていくことを使命としています。世界中が不安定な今、HPのテクノロジーが、身を削って奮闘する医療現場の方々や地域社会に対して少しでも役に立てないかと考え、HPのテクノロジーを活用したお客様、パートナー企業、そしてHP自身のさまざまな取り組みをご紹介します。
最新の情報を提供し続けることが、少しでも感染拡大防止の一助となり、また、私たちが直面しているさまざまな課題に立ち向かう参考になればと思います。
HPのテクノロジーを駆使して日本の自治体、医療機関、医療従事者、地域社会を中心に貢献する取り組みをご紹介します。
クリアファイル素材を活用した簡易型フェイスシールド
HPデジタル印刷機、HP Indigoユーザーである大洞印刷は岐阜県本巣市に本社を構え、印刷にまつわる様々な付加価値サービスを提供しています。
抗菌仕様を施したクリアフォルダへの特殊印刷を得意する同社は、医療物資の品薄が続く中、少しでもフェイスシールド不足の解消につながればと、HPが提供するデザインデータをもとに改良を重ね、自治体や医療機関向けの簡易型フェイスシールドを製造。シールド部分はPP、ベルト部はPET素材で、一般的なクリアファイルの素材よりも透明度が高く、視認性が高いことが特長です。クリアファイル素材を活用することで、素早くそしてとにかく安価に量産できるため、岐阜県から始まり、現在では全国の病院や薬局などを中心に原価に近い価格で提供しています。
ソーシャルディスタンスを保つフロアシール
5月4日に専門家会議で提言された「新しい生活様式」は、長期間にわたって感染拡大を防ぐための日常生活における対策です。その1つである、人と人との間隔を約2メートル確保する「ソーシャルディスタンス」の取り組みは、スーパー、飲食店、学校、病院、郵便局などあらゆる場所で取り入れられています。
ウイルス対策が長期化に及ぶ見通しから、これからさらにソーシャルディスタンスが大切になると考え、大洞印刷は適切な距離を保つための足型マークのフロアシールを開発。順番待ちの床にソーシャルディスタンスシールを貼ることで、距離を見える化し、適切な間隔を保つよう促します。また、このようなマークを貼ることで、一人ひとりが距離を保つことの重要性を再認識し、意識向上の促進にも役立ちます。
抗菌コーティングの安心クリアファイル・マスクケース
大洞印刷の主力製品であるクリアファイルは、病院や公共施設などで不特定多数の人が利用したり、繰り返し使用したりすることが多い文具です。同社は抗菌製品技術協議会(SIAA)の基準を満たした抗菌加工を施し、衛生的なクリアファイルを提供しています。信頼のSIAAマークを表示することも可能で、銀イオン(Ag+)でコーティングされたクリアファイルは、マスクケースやランチョンマットに加工することもできます。抗菌加工されていないものと比較すると、細菌の増殖割合は百分の一以下に抑えられるため衛生的です。
一人ひとりが安心して生活できるようにという願いのもと、大洞印刷は、自社の得意分野を活かしてできることを模索し続けています。
地元のために立ち上がり、全国にポスターとデザインデータを無償配布
和歌山県西牟婁郡が本社の株式会社マージネット。商業印刷を主な生業とし、HP Indigoのデジタル印刷技術をダイレクトメールなどの印刷に展開し、地方からビジネスの全国展開を実現する印刷会社です。
和歌山県は、初期の段階で感染者が確認されたことから、地元の飲食店をはじめ地域社会に影響が出ていました。そんな中、マージネットの30代若手社員から「自分たちに何かできないか」と声が挙がったといいます。印刷会社としてできること、それは多くの人に印刷物を介してメッセージを届けること。そう考え、社内のCSR委員会で検討し、多様なデザインを施したA3ポスターを作成しました。
ポスターは、感染防止対策啓蒙、コロナ詐欺注意喚起ポスター、飲食店を応援する「お持ち帰りやってます!」のPRポスターなど、デザインデータの無料ダウンロードとHP Indigoで印刷済みポスターの無償配布を行い、関係機関や取引先に広く配布をしています。同社の社員がランチタイムに会社近くのお店でお弁当をテイクアウトするかたわらポスターを配るといった地道な活動も見られます。
地域のために何かしたいと社員が立ち上がった時、その裏にはその気持ちを支える企業文化とスピーディな決断がありました。印刷業界も厳しい状況に置かれている中、コストをかけた印刷物を無償で配布することは容易ではありません。そこには、「事態が収束した時にV字回復できるように、みんなで協力して乗り切るための一助になれば」という社長の思いがありました。「今、わたしたちにできることを。」 ―― 当たり前と思っていた日常を取り戻すために、マージネットはデジタル印刷技術を駆使して日本全国の新型コロナ感染防止の運動を支援しています。
http://www.mergenet.co.jp/restorepeace/
3Dプリンターを活用した医療物質を無償提供
HPがグローバルで展開している“HPデジタルマニュファクチャリングネットワーク”に加盟するSOLIZE Products 株式会社は、国内最大級の3Dプリントサービスビューローとして3Dプリンティング技術やノウハウを活かし、試作品や少量量産品の造形サービスを行っています。
同社は、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、公益社団法人東京都医師会を通じて、医療機関向けに医療物資の無償提供を行っています。第一弾として、医療機関からの要望に応じて、HPの3Dプリンティングソリューションにより生体適合性のある材料を使用して製作したフェイスシールド用フレームを無償提供しています。
SOLIZE Productsは、自社の製品開発エンジニアが、部品設計や細かい要望に応じた改良を行うことができ、緊急性の高い医療従事者のニーズにも迅速に対応できます。フェイスシールド用フレームは、東京都医師会からの要望を設計データに反映し、頭部形状に合わせられるようアジャスターを追加。シールド部は各医療機関でも調達でき、プラスチック板、OHPシート、クリアファイルなどさまざまな種類の透明板を装着・交換することができます。また、シールド部は穴あけが不要で、装着・交換を楽にできるように工夫がされています。
SOLIZE Productsは、感染拡大が終息するまでの期間、医療機関や医療従事者からの要望に応じた継続的な支援を実施したいと考え、今後はマスクやその他必要とされる医療物資の製作・提供を検討しています。
https://www.solize.com/news/2020/0430/
3Dプリンターを活用したフェイスシールド 1万セットを無償提供
医療現場における防護具不足は深刻な問題となり、私たちの命を救うために奮闘している医療現場で、フェイスシールドの供給が追い付かない状況に陥っています。そのような中、合同会社DMM.comのDMM.make 3Dプリント事業では、医療機関からの要望に応じて、フェイスシールド1万セット(フレーム1個、取り換え用フィルムシールド1枚)の部品生産、無償提供をしています。
フェイスシールドは、合同会社DMM.comが加賀市に保有する日本最大級を誇る3Dプリンター工場のHP Jet Fusion3Dプリンティングソリューションを使用して生産。HPが提供する造形データを使用し、全国の医療機関からの要望に応じて、すでに提供が開始されています。
フェイスシールドの無償提供については、多くの反響があり、予想以上のスピードでお申し込みがあったため一旦締め切りとなりましたが、DMM.comは、今後も感染の診断・治療に日夜奮闘されている医療従事者や感染防止に尽力されている方々を応援し、3Dプリント技術で新型コロナウイルスの終息に貢献できることに取り組もうとしています。
https://dmm-corp.com/press/press-release/28613?fbclid=IwAR3oz8yuYhznnJo1JhGg5sXChhYqnVOZAuTE5vngZrdHOZvJfh1U0SU88VI
義肢装具士への支援として3Dプリントマスクを無料提供
ラピセラ株式会社(本社:埼玉県桶川市)は、3Dプリンティングをはじめとしたデジタル技術で義肢装具の設計・製造を支援しています。医療資源の枯渇が危惧される中、同社は、HP Jetfusion5200で3Dプリントマスクを製造し、全国の義肢装具士向けに無料提供を実施しています。
「義肢装具士」は、医師の処方のもと患者さんの採型・採寸をおこない、義肢装具を製作する医療職です。主に民間企業である義肢装具製作事業所に所属し、提携している病院やリハビリテーション施設で、メディカルスタッフと連携してチーム医療を実践しています。しかしながら、義肢装具士は医療従事者でありながら病院所属ではないため、マスクの優先購入ができず、入手に苦労されている方が多いのが現状です。そんな中、ラピセラは、義肢装具士の業務サポートの一環として、義肢装具士が自らデザインした繰り返し使用可能な3Dプリントマスクの無料提供に踏み出しました。
マスクの材料は、耐摩耗性に優れ機械部品などにもよく使用されるPA12(ナイロン)で、吸排気部が二層構造で孔が非貫通になっているため、3Dプリントならではの層間約0.8mmという飛沫の拡散が抑えられる構造となっています。内側にガーゼを入れることも、ガーゼなしで使用することも可能で、水での洗浄はもちろん、アルコール消毒や煮沸もでき、ヒートガンで変形させることも可能です。
義肢装具を必要とする方々のQOL 向上をサポートする専門職として日々活躍する義肢装具士を一番近くでサポートしたい、その一心が行動につながっています。
http://rapithela.co.jp/news/20200416mask/
3Dプリント技術はこのようなフェイスシールドやマスクを始め、さまざまな医療器具にも応用されており、医療現場への供給不足対策として国内外からも注目を集めています。どのような医療器具の部品が3Dプリンターで製造され、どのような場面で感染拡大防止に役立っているのか、世界の展開例をご紹介します。
HPは、世界中のどこでも部品を製造できるように、さまざまな造形データをウェブで公開しています。また、3Dプリンティングを活用した分散型のオンデマンド造形を広げることで、エンドユーザー様がサプライチェーンの分断を回避できるよう支援。パートナーのテクノロジーやサービスを合わせ、世界中でCOVID-19の感染被害を最小限にとどめるための部品が展開されています。
ハンズフリードアオープナー
ドアの取っ手は、多くの人が直接手で触るため、住宅、病院、工場、介護施設などで最も細菌が侵入しやすいものの一つです。Materialise社は、ドアに取り付けて、腕でドアの開閉ができる、ハンズフリーのドアオープナーの3Dプリント用造形データを無償で提供しています。
また、HPでは持ち運び可能なドアオープナーを開発しました。ウイルス汚染の可能性があるドアハンドルに触れることなく、フックのような形状でさまざまなドアを開閉することができるツールです。ストラップで衣類やバッグのベルトなどに取り付けることができるため、持ち運びに便利です。
フィールド人口呼吸器
3Dプリンターによる初の産業用フィールド呼吸装置として製造され、ICUなどで使用されます。COVID-19の感染患者が急増する中、緊急時の短期的な呼吸器として使用できる機械式バッグバルブマスク(BVM)用の部品を3Dプリントで製造することで、医療機器が不足している時期に迅速に機器の供給ができることが最大のメリットです。1日あたり50~100台の生産能力が期待されています。
鼻腔用検査スワブ
COVID-19の検査に使用される鼻腔用検査スワブを3Dプリントで開発しました。スワブのデザインは、臨床評価のためにHPと複数の研究パートナーが協力し、試験データの収集や、材料・デザインの改良を行いました。FATHOM社によって製作されたスパイラル形状のスワブは、100点以上ものデザインから選ばれ、IRBの認定のもと米国の検査センターなどで使用される予定です。HP Jet Fusion 3Dプリンターで10万から数100万本の大量生産を目指しています。
マスクアジャスター
マスクのゴムにかけて後頭部に回して装着するマスクアジャスターは、長時間マスクを着用しなければならない医療従事者の方々の耳の痛みを軽減します。このアジャスターは、現場の医師や看護師からの意見をもとに、Peak Sport Products社とHPが共同で設計しました。HP Jet Fusion 5200または4200 3Dプリンティングソリューションで、一度に最大約1000個のマスクアジャスターを製造できます。
リストカバー
病院では、白衣の袖の端と手袋の端の間で露出する腕の部分を完全に覆うために、2つの手袋を用意し、白衣の袖の端部を閉じるために1枚の内装手袋を使用し、その上に使い捨て手袋を重ねて使用する場合があります。この滅菌可能なリストカバーは、露出した腕の部分を覆うために開発されました。医療従事者からの意見をもとに設計され、このリストカバーを使うことにより、手袋を二重で使用する必要がなくなり、手袋の消費量を抑えることができます。
3D造形データ、推奨材料などはこちらで公開しています。
https://jp.ext.hp.com/printers/3d-printers/services/covid-19/ (日本語)
https://enable.hp.com/us-en-3dprint-COVID-19-containment-applications(英語)
このようにさまざまな部品をスピーディに製造できる3Dプリント技術ですが、一般的なプリンターでも気軽に取り入れられる取り組みもご紹介します。
写真つきIDステッカー
病院では、マスクや防護服、フェイスシールドで顔や表情がわからないと患者さんが不安になるということから、マスクやシールドをしていても本人の顔がわかる写真つきIDステッカーを作りました。顔写真と【内科医師】【看護師】などを示すシールを白衣などの目立つところに貼るというものですが、再訪時の患者さんの反応が違うといいます。これは医学生のアイデアをもとに実現し、病院の小児科などで採用されていますが、手軽に取り入れることができ、患者さんの不安緩和や、コミュニケーションの向上に役立っています。
2Dの各種設計図・テンプレートはこちらで公開しています(英語)
https://www.notion.so/COVID-19-open-source-design-and-manufacturing-instructions-for-Face-Shields-and-Photo-ID-stickers-fo-f972afe49cc74bb891462833dc786f8c
日本HPがお客様向けにサポートする活動をご紹介します。
おうちで楽しく過ごそう!
家庭のプリンターで印刷して楽しめる自宅学習向けの素材を公開しています。お子さんが楽しめる塗り絵、パズル、迷路、間違い探しや、ペーパークラフトやお面などの工作ものがあります。女性を中心にコロリアージュが流行っていますが、複雑な塗り絵も掲載しており、幅広い年齢層の方にお楽しみいただけます。
https://jp.ext.hp.com/printers/personal/inkjet/special/print_and_play/
HP PrintOSの有償アプリケーションを無償で提供
HP デジタル印刷機 ユーザーの皆様の事業運営支援を目的として、オペレーティングシステムHP PrintOSの有償アプリケーションを2020年8月1日まで無償で提供しています。HP PrintOSは、製造の効率化・自動化と生産管理、経営を支援するソリューション。クラウドベースのため、遠隔地間での業務遂行が可能で、リモートワークにも適しています。また、今回 無償対象となるアプリケーションの内容および使用方法に関するオンラインセミナーをハンズ オン形式で開催します。
https://jp.ext.hp.com/lib/jp/ja/printers/digital-presses/indigo/service/printos_free_program.pdf
在宅勤務をパワフルに支援 ― PCセキュリティツールを無償提供
感染拡大による緊急事態宣言により、自宅での勤務を推奨する企業が急増しています。そんな中、セキュリティ対策が不十分な個人所有のPCなどで業務を行うケースが多く見られることから、PCセキュリティツール「HP Sure Click Pro」を2020年9月39日まで無償で提供しています。HP Sure Clickは、対象はWindows 10搭載PCで、HP製/他社製ともに対応。
https://jp.ext.hp.com/business-solution/security/
また、突然在宅勤務になって困惑をしている方も多いと思います。テレワーク成功のポイントや、在宅勤務で考えるべきことといった動画や特集記事なども公開しています。
https://jp.ext.hp.com/techdevice/workstyle/