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2021.08.20

一歩先行く日本瓦斯のDX

競合や異業種との連携で新たな価値を創出

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 LPガス、都市ガス、電気の小売で関東圏を中心に188万件(2021年5月時点)以上の顧客を持つ日本瓦斯(商標:ニチガス、東京)は、クラウドやモノのインターネット(IoT)をいち早く活用してユニークなデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めている。その取り組みやエネルギー業界の将来像について、代表取締役の柏谷邦彦氏に日経BP総合研究所上席研究員の大和田尚孝が尋ねた。

2010年より基幹システムをクラウド化、IoTでLPガスの容器交換を変革

大和田尚孝(以下、大和田):御社は総合エネルギー企業として先進的かつユニークなDXに取り組んでいます。どのような経緯で現在の状態になられたのでしょうか。

柏谷邦彦氏(以下、柏谷):当社は創業当時からLPガスの小売事業を中心に拡大してきました。まず、自社開発で運営してきた業務基幹システムを2010年からフルクラウド化を開始し、「雲の宇宙船」と名づけてリニューアルしました。

 その後、LPガスに続いて都市ガスと電気が全面自由化されたため、2017年にそれらの小売事業を雲の宇宙船に追加。2019年には、商用としては日本初となるオープンソースのデータ連携技術「X-Road」とブロックチェーンの技術を導入しています。データの改ざんや第三者によるアクセスを抑制し、他の事業者のシステムを相互運用できるデータ交換基盤へと進化させました。

 一方、IoTの取り組みとしては、ソラコム(東京)の協力を得て独自のスマートメーターデバイス「スペース蛍」を自社開発し、一年半で自社のお客様約90万件 に設置しました。ガスメーターの開閉を遠隔操作で可能にするとともに、ガスボンベの内容量を1時間ごとに自動検針してデイリーに送信してきます。人が検針に行く必要がなくなり、ボンベ交換のタイミングを最適化できます。

日本瓦斯株式会社 代表取締役専務執行役員 コーポレート本部長 柏谷 邦彦 氏

大和田:具体的には、どのような効果を生むのでしょうか?

柏谷:標準的な家庭には、50キロのLPガスのボンベが2本ずつ設置されています。1本は予備で、1本が空になったら交換するのが従来のオペレーションでした。スペース蛍によってガスの使用量を実測値で正確に把握できるようになり、2本目のボンベが空になるタイミングを見計らって2本同時に交換できるようになりました。単純計算で交換の頻度が半減します。

日経BP総合研究所 上席研究員 大和田 尚孝 氏

世界最大規模のLPガス充てん基地で業界の常識を変える

大和田:LPガスの流通を変えるような大型施設をオープンしたそうですね。

柏谷:はい。川崎市に世界最大規模のLPガスハブ充てん基地「夢の絆・川崎」を建設し、今年3月から稼働を開始しました。ここではすべてのボンベや車両、人員の動きを高性能カメラ等で自動認識し、データ化して管理しています。完全自動化設備で5万トン/月を充てんできます。ここでボンベを集中的に充てんし、200本積載できる大型トレーラーで各地にあるデポ基地に一気に届ける仕組みです。デポ基地もセキュリティ・ゲートとカメラにより無人で管理されているため、深夜のオペレーションが可能になりました。渋滞の影響を受けず、短時間で配送できます。

 夢の絆と命名した理由は、同業他社にもぜひこの設備を活用していただきたいからです。小売の領域では、価格・サービス面で切磋琢磨しても、インフラの領域では逆に協力し合い、業界全体としてコストダウンを図っていきたいと願っています。

大和田:御社は経営陣が自らデジタル技術に精通し、IT部門やIT企業任せにしていない印象を受けます。これからの時代、企業の経営者はデジタルとどう向き合うべきだとお考えですか。

柏谷:経営者になるための素養として、かつては財務やマネジメントの知識が必要だと言われてきました。今はその筆頭にDXの知識が入ると思います。海外や他業界を見渡せば、DXの先行事例が数多くあります。それらを自分たちなりに取り入れ、試行錯誤を高速に繰り返して失敗を早く体験することが大切だと感じています。

大和田:御社でも失敗事例がありますか。

柏谷:もちろんありますよ。7~8年ほど前、オーストラリアで電力のバーチャルパワープラント(VPP)のベンチャー企業に資本参加しました。夏季や冬季に起きている電力需要のひっ迫を防ぐため、蓄電池やデマンドレスポンス(DR)などの技術でエネルギー供給の平準化を図る取り組みです。そのベンチャー企業は、企業や家庭内にIoT機器を設置して電力消費を最適化する技術を持っていましたが、事業としては失敗しました。着眼点は優れていたので、今後脱炭素が進んでいく中でのエネルギー事業の在り方を考えていく上で、当社としてはとても勉強になったと考えています。

 脱炭素の影響で、エネルギー原料の単価は上がっていきます。その中で、エネルギーの小売事業も変化していく必要があります。もしGAFAがエネルギー事業に参入してくるようなことがあれば、我々の優位性などあっという間に吹き飛んでしまうでしょう。だからこそ、常に新しいチャレンジを繰り返し、失敗しながら学んでいく必要があるのです。

DXで組織のフラット化が進行、エネルギーを定額料金で自由に使える時代へ

大和田:DXを推進していくための体制作りや、従業員に求められるスキルについてどうお考えですか。

柏谷:DXに関するプロジェクトは、ほとんどが組織横断型の取り組みになります。今後、組織のフラット化はますます進むでしょう。

大和田:やはりDX型の組織へ向かうには、縦割りの組織構造から脱却する必要がありそうですね。今後のビジネス展開については、どのようにお考えでしょうか。

柏谷:エネルギーの小売ビジネスでは、ガスや電気といった原料の垣根が次第に消えていきます。将来的には、どんなエネルギーでも定額料金で自由に使える世界が近いうちに実現するかもしれません。

 例えば、すでにハイブリッド給湯器には電気とガスの両方の仕様があります。また“走る蓄電池”である電気自動車(EV)の普及も加速しています。今後10年間に、当社の事業エリア内だけで2000万台の自動車がEV化し、灯油、ガソリン、軽油などの化石燃料が電気に置き換わっていくという試算もあるのです。

 ガスは比較的クリーンな化石燃料だと言われていますが、ここにEVが加わり、化石燃料から電化する分も含め、将来のエネルギー需要を見据えた分散型のテクノロジーが注目されていくと思います。そのために、当社は営業車を含むすべての社用車をEVに転換し、知見とノウハウを高めていく考えです。

コロナ禍以前から徹底したペーパーレス化でテレワークを実施

大和田:コロナ禍におけるテレワークに関しては、どのような取り組みをされていますか。

柏谷:雲の宇宙船により、お客様を訪問する従業員はスマートフォンを使ってあらゆる業務を現地で完結できる体制ができていました。現場の従業員は直行直帰が当たり前になっていたので、コロナ禍だからといって変化はありません。

 また、管理部門では以前からペーパーレス化を徹底し、テレワークを可能にしています。4年前にすべての机から引き出しを撤去し、書類ロッカーも廃止しました。天板のみの机に大型ディスプレイを2台ずつ置いて、フルデジタルで仕事をしています。

 実は、ペーパーレスやテレワークで大きな障害となるのは現金の扱いです。お客様から現金をもらってしまうと、その管理コストや本社から人を派遣する現金監査などが必要になります。営業所の人も夜間金庫に行かなければいけない。そこで、当社ではキャッシュレス化を徹底し、すべての営業所から小口現金をなくしました。

大和田:従業員が使用するPCには、どのようなものをお使いですか。

柏谷:テレワーク向けに日本HPのノートPCを1000台以上、従業員に配布しています。このPCを選んだ理由は、情報セキュリティをきちんと管理できることです。業務に十分な性能があり、自宅でもオフィスと変わらない作業環境を維持できる点に大きなメリットを感じています。

【本記事は2021年7月21日~8月24日、日経ビジネス電子版Specialに掲載されたコンテンツを転載したものです】

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