2022.10.21
レーザープリンターとは、トナーパウダーを用紙にのせ、加熱して溶かし圧着することで色を定着させる方式の印刷機です。印刷スピードが速く大量印刷に向いているため、多くの企業で導入されています。そこで本稿では、レーザープリンターのメリットやデメリット、選び方まで解説します。
記事の後半では、オフィスの複合機を管理する担当者なら知っておきたいプリンターのセキュリティ対策についても解説しています。
レーザープリンターとは、「トナーパウダー」と呼ばれる樹脂の粉を静電気を利用して用紙にのせ、加熱しトナーを溶かして用紙に押しつけて色を定着させる印刷機を指します。印刷スピードが速く、会議や提案書など大量印刷が必要なオフィス利用に適しています。ここでは、インクジェットプリンターや複合機との違いを解説します。
レーザープリンターとよく比較されるのが、インクジェットプリンターです。インクジェットプリンターでは、液体であるインクを用紙に吹きつけて印刷します。
インクジェットプリンターは色の再現性が高く、写真やイラストなどを印刷する家庭用プリンターとして主に利用されています。
レーザープリンターとの違いは、次のとおりです。
レーザープリンター | インクジェットプリンター | |
---|---|---|
仕組み | トナーパウダーを加熱して紙に定着 | 液体状のインクを紙に噴射 |
主な用途 | 大量印刷が必要なビジネス | 写真や年賀状印刷など家庭用 印刷枚数が少ない在宅勤務用 |
印刷スピード | 速い | やや遅い |
色の定着性 | 定着性は高く、にじみにくい | 水に弱くにじみやすい |
消費電力 | 多い | 少ない |
コスト | 初期の導入費用は高い 1枚あたりのコストは安い |
本体の比較的コストは安い 1枚当たりのコストは高い |
レーザープリンターは、「帯電→露光→現像→転写→定着」というプロセスを経て用紙にトナーパウダーを定着させます。まず感光体と呼ばれる筒状の部品を帯電させ、レーザーで感光体に文字や画像を描きます。そして、レーザーが当たった箇所にトナーを付着させ、用紙に転写し加熱して定着させる仕組みです。
帯電工程にてOPC(Organic Photoconductor)ドラムによるマイナスチャージを用いた構成図
(参照元:https://shop.akebono-sv.co.jp/html/page62.html)
インクジェットプリンターとの大きな違いのひとつは、レーザープリンターの印刷プロセスでは熱が発生するという点です。フューザーと呼ばれる定着ユニットを高温にする必要があるため、レーザープリンターの方が消費電力は大きくなります。
複合機とは、プリント、コピー、FAX、スキャンなど複数の機能が搭載された機器です。
「A3対応のレーザー複合機」がオフィス利用における主流となっており、オフィスによっては単に「コピー機」と呼ばれることも多くあります。印刷機器には一般的には「プリンター」と呼ばれ、印刷機能のみが搭載された単機能機、「複合機」もしくは「プリンター複合機」と呼ばれ複数の機能が搭載された複合機があり、次のように分類できます。
レーザー単機能機 | 印刷機能のみを備えたレーザープリンター。印刷スピードが速く、文書の印刷を用途とする場合に最適。システムからの大量印刷などにも多く用いられる。 |
レーザー複合機 | 印刷、FAX、スキャン、コピー機能などが搭載された複合機。オフィス印刷機器の主流で、高速印刷だけでなく高機能スキャナーなどを搭載したモデルも多い。 |
インクジェット単機能機 | 印刷機能のみを備えたインクジェットプリンター。現在はビジネス用途に特化した製品が主流。 |
インクジェット複合機 | 印刷、FAX、スキャン、コピー機能などが搭載された複合機。写真や年賀状、免許証コピー等の用途で家庭用に用いられるものと、在宅勤務や企業の店舗などで用いられるビジネス用がある。 |
レーザープリンター方式のメリットについて2点解説します。
インクジェットプリンターと比較して、レーザープリンターは印字スピードが速いことがメリットのひとつとしてあげられます。HPのインクジェットとレーザープリンターの印字スピードを比較した一覧が以下になります。
<カラー印刷>
レーザープリンター | 約27枚/分〜46枚/分 |
インクジェットプリンター | 約7枚/分〜20枚/分 |
<モノクロ印刷>
レーザープリンター | 約27枚/分〜71枚/分 |
インクジェットプリンター | 約10枚/分〜24枚/分 |
モノクロ印刷のスピードを比較すると、レーザープリンターの方がインクジェットプリンターよりも、約3倍速く印刷できるということがわかります。文書を大量に印刷する機会が多いのであれば、レーザープリンターを利用する方が効率的です。
出典・引用:HP LaserJet レーザープリンター・複合機 / HP
レーザープリンターの印刷物は水でにじみにくいのも特徴のひとつです。一方、インクジェットプリンターは液状インクを吹きかけているので水に弱く、乾燥後でも濡れるとにじんでしまいます。また、インクに比較してトナーは耐光性が高いため、印刷物が劣化しにくいというメリットもあります。
次に、レーザープリンター方式のデメリットを3点解説します。
一般的にレーザープリンターの本体価格は、インクジェットプリンターより高い場合が多く、また、本体だけでなくトナーなどサプライ品単価が高い傾向にあります。しかし、プリンター本体の耐久性があるため長期にわたって利用ができ、トナーカートリッジ1本あたりの印字可能枚数が多く、少ない交換頻度で大量の印刷ができます。本体は高価ですが、1枚当たりの印刷コストが安価になるため、大量印刷が必要なビジネス利用に適しています。
レーザープリンターは、ウォームアップタイムが長いというデメリットがあります。ウォームアップタイムとは、印刷機の電源を入れてから最初の印刷までにかかる時間です。
レーザープリンターはフューザーと呼ばれる定着ユニットを高温にし、トナーを加熱する必要があるため、ウォームアップに時間がかかります。その点、インクジェットプリンターなら即座に印刷が可能です。少ない枚数をすぐに印刷したいなら、インクジェットプリンターの方が使い勝手が良いといえます。
レーザープリンターはフューザーを高温にし、加熱してトナーを紙に定着させる工程が含まれるので、ドライヤーやエアコンの暖房と同じくらい電気を消費します。そのため、使用頻度によっては電気代が高くなる場合があります。
コロナ禍におけるオフィス環境の変化に伴い、自宅でも印刷する機会が増加しています。オフィスワークと在宅ワークを組み合わせたハイブリッドワークも広がりを見せていますが、セキュリティについては考慮が必要です。
セキュリティというと企業システムや業務用パソコンを狙ったサイバー攻撃対策が想像されますが、狙われるのはそれだけではありません。ここでは、ハイブリッドワークにおける印刷環境の変化やサイバー攻撃について解説します。
ハイブリッドワークの普及に伴い、在宅勤務における業務効率を高めるため、印刷環境をどのように整備するかが喫緊の課題となっています。在宅勤務中、業務上の印刷に自宅の個人プリンターを利用する機会が増加しましたが、自宅の個人プリンターにまで十分なセキュリティ対策が取られている企業はまだ少ないのが現状です。
セキュリティ対策は、オフィスプリンター機器はもちろん、自宅で使うプリンターや複合機にも必要になっています。セキュリティ対策から漏れている可能性の高い機器へのサイバー攻撃、そこを踏み台にした侵入が懸念されるため、企業はいち早く対策を検討する必要があります。
近年、ソフトウェアではなくハードウェアを狙ったサイバー攻撃が増加しています。パソコンやスマートフォンだけでなく、プリンターや複合機も例外ではありません。プリンターも常にインターネットに接続され、ユーザー認証に必要なメールアドレスやスキャンデータなどを保有しているからです。
また、プリンターにも「ファームウェア」と呼ばれるハードウェアを制御するプログラムが搭載されている点も見過ごせません。ファームウェアを狙ったサイバー攻撃は急増しており、インターネットに接続される機器においてファームウェアへのセキュリティ対策がますます重要になってきています。
プリンターもセキュリティ対策が必要なデバイスであることを認識し、オフィス全体の印刷機器を適切に管理する対策が急務となっています。
次に、セキュリティ面を考慮したオフィス用レーザープリンターの選び方を3点解説します。
まずは、月間の印刷枚数、カラーまたはモノクロ、対応用紙サイズといった用途に応じて必要となる基本機能を確認します。
月間印刷枚数 | オフィス全体の平均月間印刷枚数を確認し、大量印刷が頻繁に必要であれば印刷スピードの速いプリンターを選択 |
カラーまたはモノクロ | カラー印刷まで必要か用途を確認し、必要なければモノクロ印刷のみに対応したプリンターを選択 |
対応用紙サイズ | A3用紙サイズでの印刷が必要かを確認し、必要なければA4用紙サイズまで印字可能なプリンターを選択 |
単機能または複合機 | コピーやスキャン、FAXなどの機能を利用するなら複合機を選択 |
上記のほか必要となるプリンター機能を整理します。
例えば、Wi-Fi対応、専用アプリの有無、省エネモード、クラウド接続、ネットワーク管理機能などが挙げられます。
セキュリティ対策もレーザープリンターを選ぶ上で重要な項目です。先述したように、プリンター機器もサイバー攻撃の対象となり情報漏えいのリスクがあります。
HPが総務やIT、DX推進部門を対象に独自調査したところ、「オフィス印刷機のセキュリティ対策済/対策を検討中」と回答した割合は、たった35%でした。つまり、6割以上の企業はオフィス印刷機器のセキュリティリスクの大きさを正しく認識できていない可能性があるのです。
情報漏えいなどが発生すると、社会的信頼を落とすだけでなく損害コストもかかるので、プリンター機器を含めて事前対策しておくことが求められます。
実際、イギリスの調査会社Quoricaが2022年に報告したプリンターのセキュリティに関する調査では、欧米のIT企業に所属する意思決定者の68%が「過去1年で印刷関連のデータ漏えいが発生した」と回答。さらに、1件あたりの平均損害コストは63万2,000ポンドにまで及んだことがわかりました。
このように、プリンター周りのセキュリティ対策を怠ると多額のコストがかかります。次にご紹介するHP MPS(マネージドプリントサービス)では、セキュリティ対策済みの機器を導入し、オフィスでも在宅勤務でも安心安全な印刷環境を整備することができます。
関連記事:デジタル時代のセキュリティ脅威から守る HPのオフィス印刷環境再構築ソリューション
出典・引用:デジタル時代のセキュリティ脅威から守る HPのオフィス印刷環境再構築ソリューション/ Tech & Device TV
Executive Summary Quocirca Print Security Landscape 2022 / QUOCIRCA
HP MPSは、企業の印刷環境全体を可視化し、安全な印刷環境をトータルで提供するサービスです。
このサービスでは、強固なエンドポイントセキュリティを標準機能として搭載した世界で最も安全なプリンターであるHP LaserJet Enterpriseプリンターを導入することにより、ファームウェア攻撃へのセキュリティ対策を実施します。また、認証システムや全体セキュリティを管理できるアプリケーションなどにより、安心安全に印刷ができる管理された印刷環境を提供します。
HP MPSが利用できるのは、オフィス環境だけではありません。在宅用プリンターにも対応できるので、ハイブリッドワークを採用している企業にも最適です。
以上のように、場所を問わず全社にわたり安全な印刷環境の整備をご検討の場合、HP MPSをぜひご利用ください。
関連ページ:マネージドプリントサービス(MPS)/ HP
レーザープリンターは印刷スピードが速く、大量印刷に向いているためオフィスで広く利用されています。しかし、コロナ禍でハイブリッドワークを導入するオフィスが増加した今、機能性に優れたプリンター選びだけでは不十分といえます。企業は働き方改革や生産性向上の掛け声と共に、印刷環境を根本的に見直す必要性に迫られているのです。
これからのプリンター選びには、機能性だけでなくハイブリッドワークへの適応やセキュリティ対策も念頭に置くことが求められています。そこで安全な印刷環境を整備するために、印刷環境全体を一元的に管理できるHP MPSの導入をぜひご検討してください。MPSやHPレーザープリンターに関する詳細は、以下の資料をご覧ください。
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