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2021.04.08

IT部門だからこそできるビジネス変革への貢献

エンジニア的思考の活用と評価・人事制度の改革が鍵になる

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 ビジネスのデジタル化が加速し、ITシステムが多様化した現在、情報システム部門が抱える課題は多岐にわたっている。一方、日本企業のDX推進は待ったなしの状況を迎えており、変革の担い手不足も指摘されている。こうした状況だからこそ、企業の情報システム部門の変革との向き合い方、部門自体のあり方が変革実現のキーファクターになるのではないだろうか。

 企業のビジネス変革の成功を目指すにあたり、情報システム部門に求められる視点や考え方について、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)代表 横塚裕志氏に話を聞いた。

特定非営利活動法人CeFIL理事長 DBIC(デジタルビジネス・イノベーションセンター)代表 横塚 裕志 氏

DXはビジネスモデルを根底から変える取り組み

―― 近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業は増えています。そうした中、情報システム部門に求められる役割は変化するのでしょうか。

横塚氏 デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)では、DXを「本格的なビジネスモデルの変革を進めること」と定義づけています。例えば禁煙化の流れにあるタバコ業界では、世界有数の企業であっても生き残りを賭けて電子タバコなどの製品開発やビジネスモデルの改革に取り組んでいます。トヨタ自動車でさえも、危機感を持って改革を進めています。自動車製造業から移動サービス業(MaaS)にシフトしなければ、近い将来に自社のビジネスが立ち行かなくなると考えているからです。その観点から言えば、古い基幹システムの刷新といったことは、確かに課題ではありますが、DXとはまったく別の話です。

 経営者はもちろん、情報システム部門の人間も含めて企業が考えるべきは「コーポレートトランスフォーメーションをどうするか」であり、それがDXにおける最大のテーマでもあります。既存のビジネスモデルのまま、ITで少しだけ便利にすることも否定はしませんし、それはそれで取り組めばよいことです。ただし、DXに本気で取り組むつもりなら、10年先を見据えて、自分の会社がどの程度の輝きを失う可能性があるのかと危機感を持つことが大切です。

―― 日本の上場企業を見渡しても、情報システム部門が組織と一体となりビジネス変容にまで取り組めている企業は、本当にわずかとも言われています。なぜDXが進まないのでしょうか。

横塚氏 うまくスタートを切れているのは、強い危機感を持てている企業です。特に印刷や電力、自動車のように業界自体が大きく変化しているところは、危機感を強く持つことができます。しかし、実はすべての業界で危機が迫っています。

 私が以前いた保険業界だってそうです。自動運転で事故が減るとなれば、ビジネスは大きく変わります。時代は変わっていくので、この先も順調に続く産業なんてないですよ。ところが、2~3年程度の短期間だとそれほど縮小するように見えないから、なかなか着手できずにいます。経営者が「自分の任期中ならまだ大丈夫だ」と考えてしまうと、今すぐ変えようとは思いませんよね。

IT部門は「改革」とどう向き合うべきか

―― DXの本質が、既存のビジネスモデルを変えるようなコーポレートトランスフォーメーションであるとして、その変革を担うのは情報システム部門になるのでしょうか。

横塚氏 はっきり言うと、情報システム部門がDXの主役になるとは思えません。私自身は情報システム部門の出身ですし、情報サービス産業協会(JISA)ではITベンダーの会長も経験しましたが、それでも会社の大変革を牽引していけるのは、おそらくビジネス部門だと考えています。

 もちろん情報システム部門の中にも、ビジネス改革について深く考えている方もいるとは思います。ただ、会社が存続できるかどうかというほどの変革を牽引できるのは、ビジネス部門を中心に、新しい製品やビジネスモデルを全社的に企画するタスクフォース組織でしょう。その中に、情報システム部門からデジタルの素養を持つ人材も参加する。これが最初のステップになると思います。

まずはタスクフォース組織に情報システム部門の人材を参加させることから
(PHOTOGRAPH BY Charles Deluvio / UNSPLASH)

 このとき、情報システム部門の人間に期待されているのは、システム的思考であったり、ビジネス全体を俯瞰して捉え、論理的に分析するような、情報システム部門ならではの能力であったりするはずです。単にパソコンやスマホに詳しいという話ではなく、普段からデジタルと向き合っている立場から、どうあるべきかを意見することです。

―― 新規事業のチームは、経営企画室のようなビジネス側の人材で構成されることが多いですが、DXでは情報システム部門に所属しているような人材にも重要な役割があるというわけですね。

横塚氏 そうです。ビジネス側の人材を否定するわけではありませんが、例えば営業が備える「人間関係を作る能力」と、エンジニアが持つ「全体を俯瞰して捉えて設計する能力」は、やはり異なると思います。それにエンジニアのほうが、いつも現場にいる人にはない視点で気づくこともあるはずですし、改革にはそういった要素が必要です。従来のビジネスモデルやビジネスプロセス、固定観念などを一旦捨てて、デジタル的視点でゼロから考えられる人材ということです。

 さらに、実際に運営するシステムを開発する段階でも、従来の情報システム部門に見られたスタイルではうまくいかないでしょう。重厚長大なシステムを大量の人材投入によって開発するのではなく、少数精鋭で、CX、UX、データベース、クラウドといった各分野のエキスパートが集まって取り組むべきです。スクラッチで開発するだけでなく、既存のサービスや技術も柔軟に組み合わせて、いかに素早く必要なものを作ることができるか。

 私が現役のころは、「一度要件を決めたらもう絶対変えません。それが品質を担保するのです」みたいな言い方が通用しました。しかし、これからは新しいビジネスを作るのですから、「どんどん要件を変えましょう」と、情報システム部門のほうから言い出すくらいでないといけません。そうなるとシステムにはそれを想定した設計が必要ですし、アジャイルやクラウドネイティブといった新しい方法論や技術も積極的に投入しないと難しいでしょう。

 これからの情報システム部門は、これまでのような20世紀型のシステム開発とは異なる、新しいやり方をもっと勉強していかないと期待に応えられません。人材にはアーキテクトとしての能力が求められますし、それを前提に人材育成も見直す必要があります。

長期視点で発想できる評価制度を設けよ

―― DXを成功に導くには、新しい価値観や基準での人材育成が重要で、情報システム部門においては特に重要ということですが、育成のポイントはどういうものでしょうか。

横塚氏 企業のビジネスモデルを変えられるほどのイノベーターになるには、今までの成功体験をすべて捨てて、新しいビジネスモデルを考える力が必要です。これは情報システム部門であってもビジネス部門であっても同じです。会社や業界の常識を一度白紙に戻して、新しい時代のビジネスはどうあるべきか、お客様はどう思うか、さらに地球温暖化のことや将来のデジタル技術のことまで、すべて含めてゼロから発想できる人を育成しなければいけません。

会社や業界の常識を一度白紙に戻して、新しい時代のビジネスを考える力が必要
(PHOTOGRAPH BY Startaê Team / UNSPLASH)

 DX人材と呼べるのかもしれませんが、そういう人材が少なくて皆さん困っていますよね。情報システム部門にもビジネス部門にも、さらにITベンダーにもコンサルタントにもいない。日本中にいないから、DXで成功している会社もない。だから、これはなかなか難しい問題でもあるわけです。

―― 企業としては、経営者やリーダーが危機感を持ち、それを現場にしっかり伝えて改革に取り組む形が理想であると思います。一方で、従来の情報システム部門はセキュリティ面などを含め、いかにリスクを減らすかという「守り」のミッションを担ってきました。このような姿勢を変える方法はありますか?

横塚氏 1つは評価制度を変えることです。私が現場にいたころは、1年間の評価で翌年の給料の3割をアップダウンさせるという、短期的視点の評価制度が主流でした。しかし、それだとチャレンジが難しい。研修を熱心に受けていたら、あいつは仕事してないとか言われて給料を減らされてしまう。当然、長期的なビジョンを持ったり、10年後どうするか考えたりできなくなりますし、それではクリエイティブな発想が生まれません。

 短期的な評価をやめたらサボるのではないか、という意見もありますが、そんなことはないですよ。人間というのは、そうなったらむしろ伸び伸びと考えるようになります。短期的に競争させれば一生懸命働くだろう、という考え方は、20世紀の軍隊型です。もちろん既存のビジネスもあるので、四半期でしっかりプロジェクトマネジメントすることは当然として、もっと長期に物事を考えられる仕組みを取り入れるべきでしょう。

 もう1つは人事制度を変えることです。同期が10人入社したら、そのうち4人が課長に、1人が部長になります。すると社内で出世競争が起きます。出世するために、「既存のビジネスでどう成果を出すか」だけ考えるようになるので、やはりクリエイティブな発想になりにくい。ゼロから新しいことを考えようという思いも、どんどん潰されてしまいます。

 クリエイティビティが生まれない組織、軍隊型のビジネスを前提にしたピラミッド型組織は、これからは通用しません。何でも自由に発想して、互いに言いあえる社内カルチャーをつくるには、今の人事制度は適していないと思います。

日本企業は社外や海外から学ぶべき

―― 長期的な視点を持ったりクリエイティブな発想を生み出したりするために、情報システム部門の一人ひとりができること、すべきことはなんでしょうか?

横塚氏 極端な言い方をすると、会社に行かないことですね。会社に行って同僚とだけ話している間は、クリエイティビティが生まれる可能性は低いでしょう。必要なのは、これから何をすべきかと考えて顧客の悩みを聞いたり、あるいは技術面でいえば社外の優秀なエンジニアたちとコミュニティを作って一緒に研究したり、会社を離れて活動してみることです。会社の同僚も大切な仲間で社会の一つではあるけれど、会社の将来を自分でなんとかしなければと思えば、自然と社外にも目が向くはずです。9時~5時で出社する前提の制度は前時代的ですよ。変化に適応できなければ会社が死ぬかもしれない、という瀬戸際になって、毎日会社へ行っていられますか。

 そうなったら、もちろん上司は「会社に来ないと給料下げるぞ」なんて言ってはいけません。大企業の社員でも「DBICの研修に参加するために、上司に説明するのが面倒だから有休取ってきました」とおっしゃる気の毒な方が多くいます。それでは、10年後の新しい世界なんて到底作れるわけがないんです。

―― 多くの企業がDXの前段階で試行錯誤しているということであれば、国内の企業から手本を探すよりも、海外に目を向けるほうがよいということでしょうか。

横塚氏 そうです。日本は、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた瞬間に成長が止まってしまいました。いまだに、日本が世界でナンバーワン、品質ナンバーワンだと誤解している人は多いでしょう。それが、今回のコロナ禍でいかに間違っていたかが明らかになったことは、不幸中の幸いと言えるかもしれません。

 DBICが提携しているスイスのビジネススクール「IMD」では、世界競争力ランキング※1を毎年発表しています。2020年の日本は過去最低の34位になってしまいました。さらにこのランキングは「経済状況」「政府の効率性」「ビジネス効率性」「インフラ」という4つの要素から成っていますが、ビジネス効率性で日本は55位です。これはかなり深刻で、危機感を持たなければいけません。

 ※1 IMD 世界競争力ランキング 2020年(https://www.imd.org/news/updates/IMD-2020-World-Competitiveness-Ranking-revealed/)

 DXにおいても、日本は世界の先進国から外れるどころか、3~4周遅れと言ってもいいくらいですよ。メディアでも、「この企業はDXにがんばって取り組んでいます」なんて、のんきな記事を出してばかりいないで、もっと真実を伝えるべきです。

―― 情報システム部門をはじめ、日本企業が守りの姿勢から攻めの姿勢に変えていくために、参考にすべき地域や国はありますか?。

横塚氏 シリコンバレーやイスラエルを視察する企業は多いですが、私が注目しているのはデンマークやスイス、スウェーデンといった北欧の国です。競争力ランキングでも日本より上位ですが、彼らがどういう考え方で世界的な競争力を発揮しようとしているのか、あるいはそれらの国の企業がどのようにビジネスをしているのか、学ぶべき点は多いです。

 日本は学ぶ力が弱いのかもしれませんが、学ぼうとすると上司からサボっていると言われかねないことも課題です。中国はもちろん、台湾も韓国も、日本よりよほど進んでいますよ。ところが、日本は韓国や台湾には勝っているはずだ、という意識が少なからずあって、学ぼうとしません。おごりがあり過ぎるように私は思います。

 ビジネスだけでなく情報システムについても同じで、いいシステムを作ろうと思ったら、普通は実際に現場を見に行きたくなるものです。今社会から求められているのは、言われたことだけやるのではなく、自ら学び続けるエンジニアです。

※本記事は 2021年3月23日 JBpress に掲載されたコンテンツを転載したものです

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