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2020.12.09

在宅勤務へのシフトに成功した企業の共通点

社会と企業と就労者、3者のメリットを最大化するための勘所

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一般社団法人日本テレワーク協会 専務理事 田宮 一夫 氏

 新型コロナウイルス対策として急速に普及したテレワーク。多くの企業が従業員の在宅勤務を推進する中、様々な課題が指摘されるようになっている。デバイスやネットワークなどの環境整備、ペーパーレス化していない業務への対応、人事評価・労務管理のあり方など、例を挙げれば枚挙にいとまがない。

 こうした状況の中、「自社にテレワークは馴染まなかった」という判断を下し、以前と同様にオフィス勤務を再開する企業も増えている。しかし、ニューノーマルの新たな働き方の模索は始まったばかり。従業員のニーズに対応すべく、自社に合った形でのワークスタイル変革を進める必要があるはずだ。

 今後、日本企業はテレワークを始めとする新たなワークスタイルとどう向き合い、どのように取り組めばよいのだろうか。企業のテレワーク推進の支援などを行う日本テレワーク協会 専務理事 田宮一夫氏に話を聞いた。

全社的な働き方改革としてのテレワークを支援

―― 本日は、テレワークを実施・継続する上での課題や解決アプローチについてお聞かせいただければと思います。まず初めに、日本テレワーク協会について教えてください。

田宮 一夫 氏(以下、田宮氏) 日本テレワーク協会は、総務省と連携してテレワークの普及活動を行ったり、厚生労働省、経済産業省、国土交通省といった各省庁の調査分析や助成金審査・交付等の支援活動を行ったりしています。近頃は「ワーケーション」(観光地などでテレワークを活用して、働きながら休暇を楽しむ過ごし方)について取り上げる報道も増えてきましたが、日本テレワーク協会では数年前から環境省と普及活動を行ってきました。

 政府の施策推進に加えて、独自の活動にも取り組んでいます。テレワークに対して積極的に取り組んでいる企業向けに賞を贈ったり、経営トップの方々にご参加いただくトップフォーラムを開催したり、といった具合です。テレワークを狭義的な意味で捉えるのではなく、「働き方改革」といった視点での取り組みに焦点を当てている点が特徴です。

―― 各省庁が働き方改革を推進する理由は様々だと思いますが、日本テレワーク協会がテレワークを推進する目的はどのようなことでしょうか。

田宮氏 そもそもテレワークは、働き方改革の中の一つと考えています。では、「なぜ今、働き方改革が必要なのか」と考えた時、初めに挙げられるのが人口動態の変化です。国内では少子高齢化が進み、労働人口が減り続けているわけですが、2060年は2016年比で労働人口が約半分になってしまいます。若い世代の負担は大きくなり続け、このままでは持続可能な社会の実現も困難といえます。

 こうした視点は社会全体だけでなく、企業経営の持続可能性を考える上でも共通しています。欧米諸国と比べたとき、日本企業は総労働時間が長すぎると言われてきました。そこで、年間1800時間を目標に掲げたわけですが、実現には至っていません。少子高齢化が加速し、優秀な人材の確保が各社の重要なテーマになっていることはご存知の通りです。だからこそ、今働いている従業員に継続的に就業してもらったり、新卒採用や中途採用で優秀な人材を獲得しやすくしたりするためにも、効率的、かつ生産的な働き方が重要になってくるはずです。

テレワークの導入を目的化してはいけない

―― 社会全体と企業各社、いずれの課題に対しても「テレワーク」というアプローチが有効ということですね。昨今のコロナ禍でテレワークに取り組む企業が急増しているわけですが、そうした中ではどのような情報発信や啓発活動を行っているのでしょうか。

田宮氏 コロナ禍で講演や取材の依頼をいただくことが増えており、テレワークの実践手順やWeb会議の活用方法、労務管理上の注意点等についてお伝えさせていただく機会も多々あります。しかし、そうした状況だからこそ敢えて「なぜ今、テレワークが必要なのか」をきちんと伝えることに注力しています。なぜならば、「社会」と「企業」に「労働者」を加えた三位一体の考え方がなければ、持続的にテレワークを推進することが難しいからです。

―― テレワーク導入が手段になっている企業が多い、ということでしょうか。

田宮氏 そうなんです。テレワークは本来、働いている方のワーク・ライフ・バランスや生産性向上のための一つの選択肢であるはずです。極論、テレワークを導入して生産性が下がるようであれば、テレワークという選択肢を外すことも考えなければいけません。

 そして、もう1点はお伝えしたいことは、テレワークにもいくつかの区分があるということです。1つ目は、在宅勤務を意味する「自宅利用型」。2つ目は、リモートワーカーに代表される「モバイルワーク型」。3つ目は、本社とは異なる拠点で業務を行う「サテライトオフィス型」です。

 会社を第1のワークスペース、自宅を第2のワークスペースとすると、サテライトオフィスは、第3のワークスペース、いわゆる「サードプレイス」といえます。例えば、NTTはサテライトオフィスを「支店」と名付けて運用をスタートした経緯があります。しかし、今はセキュリティ環境が担保されたコワーキングスペースとして運用されているように、各社の用途に合わせて運用する方法が考えられます。

人材獲得競争におけるテレワークの意義

―― 先ほど人材を確保する上でのテレワーク活用、というお話がありました。

田宮氏 はい、テレワークを活用することで、より多様な従業員を受け入れて活躍してもうことが可能になるはずです。例えば、高齢になったベテランの従業員に長く働いてもらったり、体が不自由な方にも十分に力を発揮してもらったりするなど、通勤がなくなることで様々な可能性が広がります。首都圏への一極集中から脱却し、地域活性化・地方創生を進める上でもテレワークという選択肢が役立つはずです。

 ある転職サイトが行った意識調査では、大学生の企業選びの軸として「テレワーク制度の有無」がポイントを伸ばしています。こうしたデータからみても、テレワークの制度があるかどうかが、人材確保のしやすさに影響しているとわかります。

―― 最近は、入社後に一度もオフィスに出社していない新入社員の方もいるようです。

田宮氏 そうしたケースも珍しくはなくなるでしょう。大手電機メーカーや大手ITベンダーの中には、サテライトオフィスを活用することで本社オフィスの50%削減を掲げる企業も出てきています。先日話を伺った企業さんも、従業員が20%くらいしか出社していないとのことでした。今後は本社オフィスに出社しないことが当たり前になる企業も増えていくはずです。

―― 第1~3のワークスペースの重みづけが変われば、従業員の方が自分自身で働く場所を選べるようにもなりそうですね。

田宮氏 今後は副業をしていたり、フリーランスとして仕事を請け負ったりする人も増えていくでしょう。そうした就業形態の多様化や個々人の考え方の変化に合わせていくためにも、テレワークへの取り組みが重要な意味を持ちます。

 東京都の小池百合子知事は、「ワーク・ライフ・バランス」の言葉の順番を入れ替えて「ライフ・ワーク・バランス」という表現をしています。これまでは育児や介護といった局面を迎えた場合、仕事を離れてしまう方が多かったはずです。しかし、テレワークを活用すれば、仕事を継続してもらうことが可能かもしれない。そうした選択肢を広げておくことが、企業がテレワークを導入する目的の一つだと考えています。

テレワークの方法論ではなく、平時の取り組みを見直すべき

―― 昨今の企業のテレワークへの取り組み方について、どのように見られていますか。

田宮氏 2018年時点で、企業のテレワーク導入率は全国で約19%といわれていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って在宅勤務が広まったことで、テレワーク導入率が約27%にまで上昇しています。東京都内に至っては約60%、従業員数300名以上の企業においては約80%がテレワークを導入しています。

 しかし、急速に導入を進めたことで、各社は労務管理やICT機器の管理の課題に直面しています。当協会では以前、1日の問い合わせ件数は10~20件程度でしたが、2020年4月には1日あたり約5000件、緊急事態宣言発令後には1日で9000件を超えるお問い合わせをいただくこともありました。

―― 毎日数千件の電話問い合わせが入ってきていた、ということでしょうか。

田宮氏 はい、電話が鳴り止みませんでした。それだけ各社がテレワークの準備をできていなかったということでもありますね。

 こうした状況から推測すると、テレワークの継続を断念した企業の中には、「自社にはテレワークが合わなかった」ということ以上に「テレワーク導入に向けた準備を進めていなかった」ということが背景にあると考えられます。

―― テレワークの導入に成功した例としては、どのような企業がありますか。

田宮氏 日本経済新聞の記事にもありますが、資生堂は8000名規模での在宅勤務へのシフトを実現しています。同社は2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に照準を合わせて、東京都が展開していた「テレワーク・デイズ」という取り組みにも2017年から参加していました。

 オリピックシーズンに入り、1000万人以上の方が海外から東京に来られることを考えると、交通事情にも様々な問題が出てくると考えられますよね。そこで、オリンピックの開会式の時期に合わせて各社がテレワークの予行演習を行ったのが「テレワーク・デイズ」です。昨年も約3000社、計60万人以上の方々が同時期にテレワークを体験し、在宅勤務でできること、できないことの精査を行っていました。

 昨年9月には台風15号が上陸し、約270万人の方が通勤難民になりました。同時期に「テレワーク・デイズ」を実施していたわけですが、参加企業の従業員の方々はテレワークという選択肢があったことで、各社が柔軟に在宅勤務に切り替えることができたわけです。事前に訓練を行うことで、課題の洗い出しや事前の対策も講じられるようになります。

 準備を重ねてきた企業が比較的スムーズに在宅勤務へ移行できていることを考えると、やはり有事に備えた平時の取り組みこそが重要なのではないか、と思います。

テレワーク推進に向けた3つの論点

―― 最後に、企業がテレワークの取り組みを進めるにあたり、社内で議論しておくべき点を教えてください。

田宮氏 1つ目は、労務管理。在宅ワークではオンとオフの切り替えが難しいからこそ、労働時間の把握や長時間労働の抑制が大切です。2つ目に、IT環境整備やセキュリティ。自宅のWi-Fiルーターを使う場合の費用負担や、セキュリティ対策の再考が求められます。3つ目は、コミュニケーションと評価の視点ですね。適切なマネジメントをする上では、どのようにコミュニケーションの方法を確立して、どんな観点で評価をするのか、明らかにする必要があります。

 この中で経営層の方々に意識していただきたいのは、勤怠管理です。例えば、育児や介護で日中に仕事ができなかった方が夜、あるいは休日に仕事をしようとすると、残業や休日出勤に該当するはずです。柔軟性を担保するためにフレックスタイム制を導入していたとしても、コアタイムの見直しを行う必要性が出てくるかもしれません。

 こうした点を十分に議論した上で、在宅勤務やサテライトオフィス勤務をケースバイケースで選択できるようにしていくべきです。「テレワークを導入すると従業員の生産性が落ちる」といった声もありますが、当然、何の準備もせず在宅勤務だけを実践しようとすれば、生産性は一時的に落ちます。生産性を高めるために、いかに移動時間や通勤時間の無駄をなくすか、いかに自由に働く場所を選べるようにするか、といったことがテレワーク本来の論点です。

 今後もテレワークの重要性は高まり続けるはずです。だからこそ、テレワークで課題に直面したのであれば、そこで得られた学びを次の取り組みに生かしてもらいたいと思います。

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